弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 米で警報!致死量わずか2rの最強麻薬出回る

<<   作成日時 : 2016/09/26 22:14   >>

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「最強の麻薬」「死のオピオイド」といわれるカルフェンタニルが、いま米国の乱用市場に出回り、オーバードーズによる死亡事故が多発しています。米麻薬取締局(DEA)は、9月22日に全米に向けて警戒情報を出し、注意を呼びかけています(下記参照@)。

カルフェンタニル(4-カルボメトキシフェンタニル)は、強力な作用を持つ合成麻酔薬フェンタニルの構造類似体(アナログ)で、その作用の強さはモルヒネの1万倍、フェンタニルと比べても100倍といわれます。
強い効き目から大型動物の全身麻酔用に使われることもありますが、人への使用は想定されていないので、正確な1回使用量は分かりません。もしも、人に使うとすれば、1回の使用量はマイクログラム(1グラムの100万分の1)単位になるでしょう。
DEAによれば、わずか2ミリグラムが致死量になりうるということです(下記参照A)。

画像

↑カルフェンタニルの致死量はわずか2ミリグラム
DEAの資料から、ペニー硬貨と比べた2ミリグラムの粉末(下記参照A)

こんなものが、いま米国の乱用薬物市場に紛れ込んで流通しています。最近問題になっているのは、「ヘロイン」として密売される白い粉末に、カルフェンタニルが混入されたもので、いつものヘロインだと思い込んで、同じように使ったユーザーが、たちまちオーバードーズに見舞われ、救急搬送されたり、命を落したりする事故が相次いでいるのです。

カルフェンタニルだけではありません。近年、米国には様々なフェンタニル類似薬物が流入し、オーバードーズ事故が急増しているのです。
オピオイド系鎮痛薬の乱用が広まり、乱用者のなかにはさらに効き目の強いヘロインに手を伸ばす人も少なくない米国では、乱用薬物のマーケットでオピオイド系の成分の需要が、かつてないほど高まっています。そこへ、中国の化学会社が生み出す、多様なフェンタニル系の薬物が流れ込んでいるのです。

●相次ぐ中毒事故
ヘロインによるオーバードーズ事故の集中発生が急増し始めたのは、8月末のことでした。
オハイオ州シンシナティ地区では、8月末の6日間に174件のヘロイン過量摂取事故が発生しました。同じころ、ニュージャージー、ケンタッキー、インディアナ州でも、ヘロインのオーバードーズ集中発生が報告されています(下記参照B)。
さらに地元のニュースサイトによれば、9月24日、オハイオ州のクリーブランド地区では、ヘロインの過量摂取による中毒死が相次ぎ、わずか24時間のうちに7人が死亡するという事態に至りました(下記参照C)。

現在、原因物質を特定するための調査が進められていますが、「ヘロイン」として密売された粉末に、カルフェンタニルなどの薬物が混ぜられていたのではないかとみられています。

●捜査官にも被害が発生
ごくわずかな量で致死的なオーバードーズが起こりうるのが、フェンタニル系薬物の特徴です。しかも、呼吸器や粘膜、ときには皮膚を通じて吸収されることもあります。そうなると、事故の現場に臨場した捜査員に、中毒事故が起きることも考えなくてはなりません。

じっさい、捜査現場では中毒事故が発生しているといいます。今年6月、DEAサイトで「フェンタニル―法執行における現実の脅威」という、捜査官向けの啓発ビデオが掲載されました。
ビデオに登場するのは、ニュージャージー州の捜査員2名です。彼らのチームは、捜査現場でフェンタニル系の薬物と思われる粉末を発見したのですが、簡易検査のために袋を開けようとして、誤って少量の粉末が飛び散り、その場にいた2人がたちまち中毒症状に陥ったのです。幸い、迅速な医療措置のおかげで命拾いしましたが、「身体の機能がとまり、死ぬと思った」と語っています(下記参照D)。

●無知が生んだ悲劇
ユーザーが次々にオーバードーズ事故を起こすような品物は、売り手の側からみても失敗作です。これでは、愛好者が広がらず、大きな利益が生まれないからです。
ところが、誰も望んでいないはずの致死性ドラッグが、次から次へと、乱用市場に現れているのです。

技術の進歩によって、新種の薬物が際限なく生み出され、しかもインターネットを通じて簡単に入手できるのが、今の時代です。お手軽に原料を個人輸入して、素人が適当に調合したものが、乱用薬物として流通するなかで、このようにケタ違いに危険性の高い品物が出回ってしまうことも、ありがちです。無知が生み出した悲劇と言えるでしょう。

つい先年、危険ドラッグ流行の末期には、日本でも、こんなケースが多数出現したものです。幸い、日本は危険ドラッグの危機をとりあえず乗り切りましたが、米国では、未だに危機が進行しています。
こうした新たな危険要素が、日本に飛び火してこないよう、祈るばかりです。

[参照]
@DEAの報道発表
DEA Issues Carfentanil Warning to Police and Public(September 22, 2016)
https://www.dea.gov/divisions/hq/2016/hq092216.shtml
Aカルフェンタニルについての資料・米DEA
Carfentanil: A Dangerous New Factor in the U.S. Opioid Crisis https://www.dea.gov/divisions/hq/2016/hq092216_attach.pdf
Bオハイオ州での中毒事故集中発生の報道
The Washington Post>'This is unprecedented': 174 heroin overdoses in 6 days in Cincinnati(August 29)
https://www.washingtonpost.com/news/morning-mix/wp/2016/08/29/this-is-unprecedented-174-heroin-overdoses-in-6-days-in-cincinnati/
C地元ニュースサイトの記事
WCPO>Cleveland area has 7 drug overdose deaths in 1 day(Sep 25, 2016)
http://www.wcpo.com/news/state/state-ohio/cleveland-area-has-7-drug-overdose-deaths-in-1-day
D捜査官向けの啓発ビデオ
Fentanyl―A Real Threat to Law Enforcement
https://www.dea.gov/video_clips/Fentanyl%20Roll%20Call%20Video.mp4

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カ(ル)フェンタニルは確か、もう10年以上前からドラッグユーザーの間ではしばしば話題に登っていた薬物ですね。合成方法もインターネット上にありますし。ただマーケットに出せる規模の合成技術が存在しないでいた状況が、変わったという感じなのでしょうか。それとも規制強化に伴い行き着いてしまったのでしょうか。

カフェンタニルだけではなくコカインのアナログでもコカインの数千倍の力価が有るものがあったりしますし、アシッドのアナログの力価もこれらと同じぐらい強いものですが、どれも合成が困難なものばかりだったのですが、近年、中国でもこれらをマーケットに供給できるレベルでの合成スキルの向上があったのでしょうか。もしくは規制の回避のイタチごっこの末、カフェンタニルにたどり着いたのでしょうか。

lol again
2016/10/03 14:43
これらの密輸の摘発は非常に困難なものとなるのでしょう。今まで10kg密輸しないといけないものが1g程度で済んでしまうのですから。1gぐらいならどこにでも隠せてしまうのではないでしょうか。

このような状況下において薬物の規制の方向も変えていく必要があるのではと思います。まだまだ私の知る限りでも数百を超える強力に奏功するRC(リサーチケミカル)が存在しています。これらが市場に出回るのは時間の問題です。規制強化の方向では対応が追いつかないようにも思えます。啓発活動の強化とともに規制のあり方自体も大きく方向転換する必要があるのではないでしょうか。

危険ドラッグが蔓延して、規制を強化した結果、更に強力で危険性が高いものが出回るようになり、余計状況を悪化させてしまったというフェーズがあったかと思います。マリファナを支持する気は毛頭ないのですが、初期の段階でマリファナを合法化していれば悲惨な事件も起こらなかったかもしれませんね。

他の薬物に関しても規制を強化すれば、より凶暴なRCが市場に出回り、問題が悪化するという側面が有ると思ったりします。今の覚せい剤の問題にしても多分に法的規制があるために資金源として成立してしまっているというの側面が有るのではないでしょうか。

法的規制の緩和と啓発活動で薬物問題が減少したという例も幾つかの国ではあるようですし、根本的にドラッグに対するスタンスの見直しが必要なのではないかと思ってしまいます。
lol again
2016/10/03 15:03

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