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弁護士小森榮の薬物問題ノート

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弁護士小森榮の薬物問題ノート
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地方裁判所で取り扱う刑事事件の約15%を占めているのが、覚せい剤事件です。実際の事件の多くは、若者が安易な考えで薬物を乱用したというもので、本来は犯罪と無縁なはずの彼らが、犯罪者として処罰されてしまうことが、私には残念でなりません。
私が弁護士として、薬物事件に取り組むなかで直面する、薬物乱用にまつわる諸問題の断片をつづってみます。
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日本の薬物政策NOW|罪と罰・薬物犯罪特集1

2009/11/24 23:58
一般の方にはほとんど知られていない『罪と罰』という機関誌があります。日本刑事政策研究会報として年に4回発行される雑誌で、法務省のおこなう刑事政策や犯罪白書と密接に関連した内容を取り上げています。
この雑誌は、ときおり薬物犯罪の特集を組むのですが、最新号(といっても9月に刊行されたものですが)でも、テーマが薬物犯罪でした。掲載された論考のタイトルは
●薬物乱用者処遇の課題と展望 /●薬物問題の現状と警察の対策 /●薬物犯罪の抑止に向けた法務検察の取組について /●薬物犯罪と税関における水際取締り /●薬物乱用とその周辺について /●海上保安庁における薬物の密輸入水際阻止への対策
論考を寄せているのは、警察庁、検察庁、税関、厚生労働省、海上保安庁などで薬物対策に当たっている方たち。
平たく言えば、この1冊で日本の薬物対策の公式見解がまとめてわかる特集というわけです。
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日本刑事政策研究会『罪と罰』46巻4号(2009年9月)
機関誌の紹介、購読案内などは下記にあります。
日本刑事政策研究会 http://www.jcps.or.jp/

この小さな1冊は、情報貧国の日本では、ある意味で貴重な資料です。そこで、掲載された各論考を読みながら、日本の薬物政策の現在を考えてみようと思います。

とりあえず今回は、安田 尚之氏(厚生労働省麻薬対策課)の「薬物乱用とその周辺について」を読んで、ちょっと感心したことがあったので、その点について。
同書63−64ページの「最近のトピックについて」のなかで、「大麻の種子に関する国際的な取り組み」という項目があり、高THC大麻の栽培用に改良された種子の国際的な拡散に対して、国際的な取り組みをする必要性に触れ、「我が国は本年3月の国連麻薬委員会において、国際機関が大麻に関する情報を収集・分析して、各国に提供するしくみをつくること、各国は不正目的の大麻の種子の輸出入をしないように努力すること等の決議案を提案し、採択されています(国連麻薬委員会52/5)。」とあります。

この記載を読んで、私はちょっとうれしくなりました。そう、大麻の種子問題は、こうした方向で解決するべきなのです。厳正取締だけで対処するのは下策。国際的な流通を監視し、国内での流通を制約し、規制し、それでもなお禁を犯して栽培してしまった者に対しては刑事手続きをもって対処するのが、あるべき対策だと私は考えています。

この論考を読んだ当時、私はさっそく国連薬物犯罪事務所(UNODC)のサイトで、この決議について検索してみました。
Resolution 52/5 Exploration of all aspects related to the use of cannabis seeds for illicit purposes
決議52/5 「大麻種子の不正目的利用に対する全方面での探索」
http://www.incb.org/pdf/e/narcotics/questionnaires/CND_Resolution-English_52_5.pdf

大麻の不正栽培が各国で問題になりながら、その種子の流通に対して具体的な対策をとることを怠ってきた国際社会が、この決議によって、有効な国際監視ネットワークをつくりあげることに期待します。
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刑務所と薬物|ヨーロッパのニュースから

2009/11/23 17:08
英国王室領ジャージーの刑務所では、収容者の薬物売買が頻繁に行われていると、BBCニュースが伝えています。下記はBBCジャージーの英文記事を私が個人的に翻訳したものです。

<BBCニュースから>
●ラ・モアイ刑務所の薬物売買
ジャージーのラ・モアイ刑務所では、薬物を売買しようとした収容者がいつも捕まっていると、管理官は認めている。
同刑務所では、薬物が持ち込まれたり、塀の外から投げ込まれたりするのを防ぐよう、セキュリティ・システムが所内のあちこちに設けられている。また、釈放に備えて、施設外のコミュニティで監視つきで作業をする収容者に対しては、薬物検査も行われている。
しかし、管理官のビル・ミラー氏は、係員がすべての経路を排除できるわけではないと語った。彼はBBCニュースに対して、面会時に、係員は定期的に人々を捕まえていると言っている。
BBC NEWS, Sunday, 22 November 2009
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/jersey/8373355.stm

欧米の刑務所なら、これは特に驚くようなニュースではなく、あ、ここでも・・・といった話題のひとつでしょう。
私は、これまでにいろんな土地の刑事施設を見学してきましたが、開放的な処遇がされている欧米の刑務所では、たいてい、外部から持ち込まれる薬物に対する警戒システムが敷かれています。面会時にこっそり受け渡しが行われたり、施設外へ出かける収容者が持ち込んだり、ときには郵便や小荷物に隠して届けられたり。

刑務所の収容者には、多くの薬物乱用者が含まれていて、さまざまな方法で持ち込まれた薬物が、刑務所内で取引されているといった状況は、たしかに、見過ごすことのできない問題です。
日本の刑務所では、こうした問題はまず起きません。ときに、拘置所や刑務所に持ち込まれた薬物がみつかり、大騒ぎになったこともありますが、そんな不祥事は極めてまれなこと。日本の刑事施設は、ほぼ完璧にドラッグ・フリーです。

でも、私たちはこれを誇っていいのでしょうか。日本の刑事施設で薬物の持込が起きないのは、あまりにも鉄壁の隔離と管理が行われている結果なのです。一般面会は仕切板越しで、職員の立会い付き。手元で保管できる私物はごくわずか。収容者が外部に出ることも、外部者が施設に立ち入ることも厳しく制限されており、収容者は社会と隔離された時間を送り、そして何よりも、収容者のプライバシーが制限されていること・・・。欧米ではほとんど考えられない状況です。
欧米では、このような処遇が行われるのは、特殊な凶悪犯罪者のための重警備施設だけです。以前、ヨーロッパの重警備施設を見学したときのこと、案内の職員はこの施設での管理の厳しさを強調し、見学者の顔を見回して反応を確かめようとしたのですが、日本人の弁護士グループは少しも驚きません。だって、日本の刑務所では、厳重管理なんて当たり前で、どこの刑務所でも行われていることなのです。

日本の刑事施設がドラッグ・フリーなのはすばらしい実績ですが、それを維持している裏に、人権をぎりぎりまで制限している管理体制があることを思うと、このニュースを読む私の心境は、少し複雑です。
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薬物密輸|覚せい剤が活発化、パーティピルズ赤信号

2009/11/22 15:26
●成田覚せい剤摘発最多 今年1〜10月押収、昨年の3倍72キロ
東京税関成田支署が発表した成田空港の不正密輸事件摘発状況(今年1〜10月)によると、覚せい剤密輸の摘発件数は59件で、過去最高となった。年間摘発件数の最多だった2004年の数字を11件上回り、押収量は昨年の約3倍の約72キロに及ぶ。
同支署は摘発増の理由について、「昨年の北京五輪や洞爺湖サミット開催に伴う取り締まり強化を警戒していた密輸組織が動きを活発化させたため」とみている。旅客が覚せい剤などの違法薬物を持ち込もうとした事件の摘発件数が前年同期比約1・6倍に増え、複数の運び屋が違法薬物を手荷物に小分けにして持ち込もうとする「ショットガン」と呼ばれる手口が広がっているという。
また、インターネットを使って「マインドキャンディー」と呼ばれる麻薬を国際郵便で密輸しようとする事件も相次いでおり、同支署で警戒を強めている。
(2009年11月22日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chiba/news/20091121-OYT8T01190.htm

先日、福井県で講演した際に、会場の方から「覚せい剤はどこから来るのか。」という質問がありました。中国、マレーシア、トルコ、南アフリカ、カナダ、メキシコ、カタール・・・、最近私が手がけた密輸事件の仕出し地を列挙したのですが、文字通り世界中の空港から、日本に向けて覚せい剤が積み出されています。
日本で密売される覚せい剤は、いま、世界でも群を抜いた高値マーケットになっています。このおいしい市場をめがけて、世界中から覚せい剤が密輸されてくるわけです。

さて、ここ数年、覚せい剤密輸のパターンに変化が起きています。上の記事にある「ショットガン」方式もそのひとつ。目立たない個人旅行者を運び屋として使い、1人当たり少量ずつ、多数が分散して覚せい剤を密輸するのが、主流になっているのです。運び屋をつとめるのは、普通、犯罪組織の部外者です。依頼は何人もの人を介しているので、密輸の首謀者が誰なのか、運び屋にもわからないことも珍しくありません。
割のいいアルバイト、しかもタダで外国へいけると、安直に考えて覚せい剤の運び屋を引き受けてしまった青少年の事件を担当することもあります。彼らは、あまりにも警戒心をゆるめて選択したあげく、裁判を受けることになってはじめて事態の深刻さに打ちのめされているのです。密輸事犯に対する刑は重く、覚せい剤約500グラムを運んだAさんは懲役6年、1キロのBさんは懲役8年、1人で2キロを持ってきたCさんは懲役10年。さらに数百万円の罰金刑も加わります。とんでもないアルバイトです。

ところで、上の記事にある「マインドキャンディ」。これはインターネットで注文して国際郵便で商品を受け取る個人輸入ですが、これも薬物密輸入には違いありません。最近相次いでいるのが、英国の脱法ドラッグ業者のサイトなどで、いわゆるパーティピルズと呼ばれる錠剤を個人輸入しようとしたパターン。
マインドキャンディについては、当ブログの下記記事を参照してください。
■マインド・キャンディという名の錠剤|脱法ドラッグへの警告9
http://33765910.at.webry.info/200906/article_16.html

英国ではリーガルハイ(脱法ドラッグ)として販売されているものには、わが国で麻薬として厳しく規制されているBZP、TFMPP、メチロンなどを含むものが多く、これを輸入することは麻薬の密輸入に当たります。
また、指定薬物の成分を含むものもあり、この輸入も薬事法違反として処罰の対象になります。
外国のサイトで「リーガル」と称しているものでも、わが国では麻薬や指定薬物となっているものが多いことを忘れないでください。

なお、名古屋税関のサイトに、パーテーピルズの輸入に関する最近の摘発事例が掲載されています。写真もあるので、参考にしてください。
●イギリス来郵便物に隠匿された麻薬含有錠剤密輸入事件を告発(平成21年10月26日発表)
名古屋税関は、愛知県警察本部刑事部薬物銃器対策課及び愛知県港警察署との共同調査により、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(イギリス)から国際郵便を利用して麻薬含有錠剤34錠を密輸入しようとした日本人男性2名を平成21年10月26日(月)、関税法違反嫌疑により名古屋地方検察庁に告発した。
http://www.customs.go.jp/nagoya/mituyu/tekihatu/index.htm
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裁判員に「認識」の判定を求めるのは負担が重いかも

2009/11/20 23:40
成田国際空港を抱えた千葉地裁では、多数の薬物密輸事件を審理しています。密輸事件の裁判員裁判も、薬物密輸事件が続くのは無理のないことでしょう。
千葉地裁で20日に判決があったのは、覚せい剤約1.2キロを靴底とスーツケース内のサンダル2足に隠して密輸しようとしたとして起訴されたスペイン人男性の事件で、被告人は「覚せい剤が仕込まれているとは知らなかった」として無罪を主張していました。
<11月20日16時41分配信 時事通信>
●無罪主張のスペイン人に懲役10年=覚せい剤密輸、裁判員裁判−千葉
覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)などの罪に問われたスペイン国籍の測量技師の裁判員裁判で、千葉地裁(栃木力裁判長)は20日、懲役10年、罰金500万円(求刑懲役12年、罰金700万円)の判決を言い渡した。
同被告は「薬物が入っていたと知らなかった」と主張したが、判決は「供述には数々の疑問点があり、一連の行為として信用できない」として退けた。
量刑については「同様の犯罪を将来に向け押さえ込んでいく意志を示すためにも、従前よりやや刑を重くすべきだ」とした。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091120-00000117-jij-soci

18日の毎日新聞は、第1回公判の様子を次のように報じていました。
<11月18日11時0分配信 毎日新聞ニュースより抜粋>
●裁判員裁判:覚せい剤密輸、県内初の無罪主張 「靴底隠し」認識争点に /千葉
靴底と荷物内に覚せい剤が隠されていることを被告が知っていたかどうかが争点。検察側は冒頭陳述で「検査時の不自然な態度などから報酬目的での密輸は明らか」と述べた。弁護側は「密輸組織に利用されただけ。靴やサンダルに外見上異常はなく、サンダルには指紋もない」と無罪を主張した。裁判員らは、検察側が提出した靴やサンダル、透明な袋に小分けされた覚せい剤の実物を手にとって熱心に調べた。手荷物を調べた税関職員の証人尋問があったが、裁判員から質問はなかった。
公判後、弁護人の小林幸也弁護士は「裁判員に証拠物を見てもらえよかった。税関検査はイメージがわきにくく難しい事件だ」と話した。千葉地検の園部典生・公判部長は「税関職員の証言で検査時の被告の態度から、覚せい剤があると知っていたことを証明した」と述べた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091118-00000017-mailo-l12

いわゆる「運び屋」による薬物の密輸事件では、被告人が無罪を主張する例が少なくありません。とくに、スーツケースや靴底などに細工して薬物を隠して持ち込むケースでは、一見しただけでは、薬物が隠されていると見抜くことは難しく、運搬を引き受けた当人が薬物の存在を知っていたかどうかの判断は、きわめて微妙なものになります。被告人が、薬物が隠されていることを知らずに運搬を引き受け、気づかないまま入国しようとしたのなら、処罰することはできず、無罪となります。

こうした事件では、被告人の供述と被告人の所持品だけしか手がかりはありません。関係者はなく、背後関係もわからず、被告人が本国でどんな生活をしていたのかさえ、わからないのです。
こうした事件を担当すると、私たちは、税関検査から公判までの被告人の一連の供述を細かく調べ、その移り変わりを吟味し、内容が合理的か不自然か考えます。また被告人のパスポートや所持品から、なんとか情報を引き出そうと細部を探しまわり、証拠と格闘する、地味な仕事です。しかも「被告人が薬物を運搬することを知っていたかどうか」という判断は、微妙です。「何かマズイものかもしれない」という程度の認識では不十分だとされているのです。
いわゆる運び屋による薬物の密輸事件は、事実認定の過程が微妙で、従来は法廷で極めてテクニカルなやりとりを重ねてきたタイプの事件です。裁判員裁判に向けてできるだけ簡略に、わかりやすくと工夫が重ねられていますが、それでもなお、判断に難しさがつきまとうことだと思います。
裁判員の皆さんにとって、負担の大きすぎる事件にならなければいいのですが・・・。
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スパイスゴールド規制7|若者へのメッセージ

2009/11/19 18:41
「マッドドクターが人間をモルモットにしている。」
これは、英国の若者向け薬物乱用防止機関のFRANKが、この9月から展開している脱法ドラッグ警告キャンペーンのスローガンです。
「マッドドクターは、合法ドラッグとして売り込むペンキはがしや牛の虫くだしの商品テストのために、人間をモルモットにしています。こうしたドラッグは、現時点では合法だというだけで、安全だというわけではありません。広く出回っている脱法ドラッグの代表的なものについて、ぜひ知ってほしいことがあります。」
強烈なのはアイキャッチの図柄で、いかにもマッドドクターという雰囲気の白衣の男性が、お尋ね者の手配写真風にアレンジされています。
あれこれ説明するより、FRANKのサイトを開いてみてください。
http://www.talktofrank.com/article.aspx?id=3607

英国では、いま、インターネットやヘッドショップで販売される脱法ドラッグが青少年の間で広まり、死亡事故を含む深刻な影響が出ています。乱用が拡大している主なものは、つぎのようなものです。
●GBL(ペンキはがしなどに含まれる有機溶剤で、体内でGHBに転換される)、●BZP錠剤(パーティピルズと呼ばれる多様な錠剤。BZPや類似の化合物が主成分、「牛の虫下し」というのはBZPの本来の用途のひとつ)、●喫煙用ハーブミックス(スパイスなど合成カンナビノイドの含有が確認されている)●メフェドロン(4-メチルメトカチノン:4-MMC、アンフェタミンに似た作用をもつ。カートという植物の形で使用されることもある)●サルビア(幻覚成分を含むサルビア・ディヴィノラムという植物)

間もなく抜本的な規制策がとられる見込みですが、規制策の検討が開始されると同時に、青少年向けの警告キャンペーンもスタートしました。
英国内務省の説明によると、このキャンペーンでは
・ クラブ、バー、レコード店の内外での広告。
・ オンラインを対象とした広告で、オンラインで特定の脱法ドラッグを買おうとすると現れる。
・ 青少年クラブや学生向けサイトでの広報。
などが展開されているとのことです。

そういえば、日本にも薬物乱用防止の広報機関がありましたね。でも、最新情報の提供に関しては、いつも期待を裏切られてしまっています(残念ですが)。
そもそも脱法ドラッグは、定義自体もあいまいで、早いサイクルで流行商品が入れ替わっています。いま広まっているアイテムについて、具体的な危険情報を提供すること、これが広報活動の基本だと思います。日本の公共機関でも、若者が注目しているドラッグについて、彼らを引き付けるような警告情報をもっと提供してほしいと願っています。
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スパイスゴールド規制6|包括的規制への模索

2009/11/18 22:34
各国は、スパイスや類似のハーブミックス中に確認された合成カンナビノイドに対して、法規制し、その流通をコントロールする措置をとりはじめました。
しかし、繰り返し述べてきたように、合成カンナビノイドは無数にあり、何種類かは化学製品として流通しています。前回まで紹介してきたEMCDDAの報告書で取り上げたのは、最近ヨーロッパの各国で確認された、わずか数種類で、分析手法やデータの制約から、まだ確認されていない化合物もあるのではないかといわれています。

規制策がとられ始めると、いつもの現象が現れます。規制された化合物に変えて、別な化合物が登場し、新しい名前で販売されるのです。規制と業者の間で繰り返されるイタチごっこ、あるいはモグラたたき、脱法ドラッグの市場では、何度も観察されてきた現象です。でも、この現象を封じるために、従来と発想を変えた規制のあり方を模索する動きも、実はすでに始まっているのです。

英国(UK)では、スパイス問題に対処する規制策として、広範な合成カンナビノイドに対して一括して規制する、新しい方式が検討されていると伝えられています。その内容を示す文書の一部が公開されているので、紹介します。
英国(UK)の薬物政策に対して助言する科学アドバイザー組織、薬物乱用諮問協議会(Advisory Council on the Misuse of Drugs;ACMD)が、内務大臣の諮問に対して答申した「主要なカンナビノイド・アゴニストに関するACMD報告書―主要なカンナビノイド・アゴニストの考察 ACMD report on the major cannabinoid agonists―Consideration of the major cannabinoid agonists」は、スパイス製品などに含有されるいわゆる合成カンナビノイドの危険性を評価し、その法規制のあり方を考察した報告書で、英国内務省のサイトで公開されています。
http://drugs.homeoffice.gov.uk/publication-search/acmd/acmd-report-agonists
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報告書末尾に添付された内務大臣への書簡には、大意、次のような文章があり、後追いに終始してしまいがちな従来の規制を超えて、包括的規制を採用すべき必要性について、委員会からの提言を説明しています。
「今日、スパイス中に確認されている合成カンナビノイドはごくわずかである。しかしながら、製造者(主として中国に拠点を置いているようであるが)は、法改正に対応して、添加する化合物を変える余地がある。最近、ドイツでは、カンナビノイドの1種を規制すると、別の合成カンナビノイドに移行する動きがみられた。合成カンナビノイドのバリエーションは多様であり、法律で特定の物質を規制するやり方では、常に脱法ドラッグの後を追うことになる。(27ページより、文章の大意)」

さて、ここでいう包括的規制とは、どのようなものでしょうか。この報告書の8-9ページでは、「6.コントロールの選択肢」として、「包括的コントロール」と「特定コントロール」を併用した規制策についての提言が示されています。「包括的コントロール」とは、主なカンナビノイドをその化学構造によって6グループに分類し、グループ単位で包括的に規制していく考え方のようです。化学物質についての説明が中心なので、私には詳細が理解できませんので、原文をご参照ください。6グループの具体的な説明と主なカンナビノイドのリストは、16ページ以下にあります。

包括的規制の是非については、各国で、何度か提案され、検討されていると聞き及んでいますが、しかし、広く規制することには、かならずデメリットや行き過ぎ、危険性が伴うもので、慎重な検討が行われなければならないでしょう。英国の規制策の具体化に、注目しておきたいと思います。
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スパイスゴールド規制5|作用と健康への影響

2009/11/17 22:01
スパイスゴールドなど喫煙ミックスに含まれる合成カンナビノイドの問題について、もっとも信頼できる資料のひとつ、EUの薬物研究機関The European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction (EMCDDA)が公表している「テーマ別資料:スパイス現象を理解するThematic papers : Understanding the 'Spice' phenomenon」から、一部を紹介しています。今回は、資料の15-16ページの「EMCDDAの調査EMCDDA survey」から。
EMCDDAのサイトで公開されている英語版に基づき、私が私的に翻訳したもので、ご紹介します。

●使用のパターン
使用のパターンに関する情報のほとんどは、ユーザーが使用体験を語り合っているインターネットを通じて収集された。「スパイス」製品は、喫煙することができ、時には大麻と混合して使われ、煎じて飲食することもできる。スペインはユーザーはパイプを使うよう勧められていると報告しており、スロバキアでは火のついたミックスの煙を吸い込むとしている。
「スパイス」製品は通常、ティーンエイジャーと若者によって使用されていると報告されている。各国から寄せられた報告のうち、注目すべき主な点は:
・ 大麻のユーザーが、薬物テストに合格するために代替品としてスパイスを使ったことがある。(ドイツ)
・ ナチュラル系の脱法ドラッグ(legal biogenic drugs)に関心のある人たちが「スパイス」を使用している。(ドイツ)
・ 新しい物好きや、薬物を使い始めたばかりの人がメディアの情報によって「スパイス」に惹かれている。(ドイツ)
・ 刑務所や保護観察での問題として「スパイス」が報告されている。(スウェーデン)

●使用量、薬理作用、および報告された健康上の問題に関する情報
この分野で報告された情報はきわめて限られているが、それは、「スパイス」製品が比較的最近になって薬物マーケットに現れたという事実によって説明しうる。
ドイツの研究者(Auwärter他, 2009)はスパイスの薬理作用は、大麻使用によるものと同様であると報告している。
「薬理上の活性を証明し、この薬物に対して陽性の血液および尿のサンプルを入手するために、2名の共同執筆者による自己試験が行われた。0.3グラムのスパイスダイアモンドを含むタバコを喫煙して、血液と尿のサンプルを採取した。摂取後およそ10分で現れた最初の目だった作用としては、結膜がかなり赤くなり、脈拍が速く、口腔が乾燥し(ドライマウス)、気分と知覚の変化が起こった。客観的な精神運動検査では、各項目はやや損なわれている印象があるが、異常は検出されなかった。作用はゆるやかに減衰しながら、およそ6時間続いた。翌日は終日、ささやかな後遺症状が観察された。これらの発見は、インターネット上で入手できる報告と矛盾しないもので、薬理上の活性のある化合物の存在が確認された。」((Auwärter他, 2009, p. 832)

ドイツでは、複数の救急事例(心悸亢進、ときには短期の記憶消失といったような、心臓血管や神経系への作用)が報告されている。こうしたケースはマスメディアや個人的なコミュニケーションを通じて報告されている。(マインツ毒物コントロールセンター)
イタリアは、糖尿病のある53歳の女性がスパイスを喫煙し、使用の1時間後に救急治療室で治療を受けた1例を報告している。彼女は興奮状態にあり、激しい精神運動を示していたが、ベンゾジアピンによる治療が成功した。患者は数時間にわたってモニターされたが、重大なパラノイアは記録されていない。救急治療室で12時間の治療を受けた後、患者は安定し、退院した。これらの事例全てで、毒物分析によって合成カンナビノイドを確認してはいない。
スウェーデンの毒物情報センターでは、2008年中に、51件(全45事例)の参照事例があり、うち40件は医療情報であった、すなわち、「スパイス」を使用したと申告する患者の治療に当たった医師から発せられた情報である。これら事例ではいずれも毒物学上の確認はされていない。
オーストリアのカウンセリング・センターの小数の記録によれば、「スパイス」の主観的な作用はきわめて多様であると報告されており、おだやかとするものから強力とするものまでの幅があり、大麻と同様であるというものも、まったく異なるとするものもある。同様の報告はルーマニアのユーザーからも寄せられており、「スパイス」の作用は乾燥大麻と同様か、あるいはより良いとしている。
出典 EMCDDA, Thematic papers : Understanding the 'Spice' phenomenon,pp15-16(2009)
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スパイスゴールド規制4|ヨーロッパの経験

2009/11/16 22:18
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当ブログは、スパイスシリーズと合成カンナビノイドの問題について、継続して取り上げてきました。関連記事が何本かあります。まとめてお読みになるには、右コラムの<テーマ>から、<脱法ドラッグ>を選択してください。
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スパイスゴールドなど喫煙ミックスに含まれる合成カンナビノイドの問題について、もっとも信頼できる資料のひとつ、EUの薬物研究機関The European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction (EMCDDA)が公表している「テーマ別資料:スパイス現象を理解するThematic papers : Understanding the 'Spice' phenomenon」から、一部を紹介しています。今回は、資料の13ページ以下の「EMCDDAの調査EMCDDA survey」から。
EMCDDAのサイトで公開されている英語版に基づき、私が私的に翻訳したもので、ご紹介します。

EMCDDAの調査
[基本]
スパイス製品への専門家と一般大衆少なからぬ関心から、EMCDDAに対して情報を求める声が寄せられた:資料が不足していたため、EU加盟国におけるこれら製品の入手可能性に関する情報を収集するために、2009年1月にセンターは短期の調査を開始した。この調査は、現在進行中のヨーロッパにおける薬物問題調査の一部として行われ、ヨーロッパ協議会決定2005/387/JHA (協議会決定, 2005)で規定された手続きによる拘束力のある正式なデータ収集と混同すべきでない、限定的な活動とされた。

[方法論]
2009年1月20日に、Reitox NFPsに対して短い質問票(下記の8項目の質問)がEメールで送付された。質問には「スパイス」製品およびJWH-018が含まれていたが、この時点でEMCDDAに報告されていなかったCP 47,497とそのホモログ、JWH-073 、 HU-210は含まれていなかった。しかし、その後EMCDDAはNFPの連絡を取り、これらに関する情報もCP化合物として含めるよう依頼した。NFP参加国(EU27カ国およびクロアチア、トルコ、ノルウェーの30か国中30か国)からの回答は、2009年1月23日から3月3日の間に回収された。調査票の回収を確実なものとするため、必要な場合は督促状を送付し、質問を明確にするために簡単な電話インタヴューも行った。質問票は、各国のEWSシステムによって確認され、各国の化学分析専門家または各問題の責任者が現在の状況に関してその専門知識に基づいて、回答を記入した。したがって、この結果は専門家の意見とみなされるべきである。

[調査結果]
●「スパイス」製品の入手可能性
参加30カ国中21カ国で「スパイス」製品が確認された。調査の目的として、「確認」とは、(司法化学分析による確認を前提とはぜず、下記の質問を参照)こうしたタイプの製品がなんらかの手段で入手可能であることを意味する。調査の時点では、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、エストニア、ギリシア、マルタ、オランダ、ノルウェーとトルコでは「スパイス」製品が確認されなかった。

●毒薬学または司法化学分析によって確認された「スパイス」製品及び/またはJWH-018
これら製品が入手可能な21カ国中8カ国―オーストリア、ドイツ、フィンランド、フランス、ハンガリー、ポーランド、スロベニア、およびイギリスでは、JWHまたはCP化合物が毒薬学または司法化学分析によって確認された。キプロス、ルクセンブルク、リトアニア、およびスウェーデンでは、分析が進行中であった。確認されたのは以下の物質である。
・オーストリア: それぞれ別の「スパイス」サンプルからJWH-018およびCP 47,497のC8ホモログが確認された。(2008年12月)
・ ドイツ:JWH-018およびCP 47,497のC8ホモログが確認されたが、別の「スパイス」サンプルからCP 47,49シリーズの別な物質も特定されている。(2008年12月)さらに、複数の研究所(BKA, Bavarian Police, University of Freiburg, University of Braunschweig)では、Scope Vanilla, Scope Wildberry, Scope Sex on the beach, Suncoast Herbal Teas SH, Sencation 、Forest HumusといったサンプルからJWH-073も確認されている。(2009年4月20日付け情報)
・ フランス:「スパイス」製品のうち4種(Gold, Diamond, Arctic Synergy and Tropical Energy)をインターネットを通じて直接入手した。すべてがCP47,497を含有していた。スパイスのArctic Synergy、Tropical EnergyにはJWH-018、ビタミンE、カフェイン、メントールの含有も確認された。(2009年2月)
・ ハンガリー:スパイスダイアモンドとスパイスゴールドを分析した。後者にはJWH-018の含有が確認された。サンプルは高濃度のクロムを含有していた。(2009年2月)
・ ポーランド:調査したスパイスArctic Synergy、Smoke、Genieのサンプル中にJWH-018が確認された。(2009年1月末)
・ スロベニア:押収されたスパイスゴールドのブランドのはいったタバコ中に、CP 47,497のC8ホモログとビタミンEが確認された。(2009年2月)
・ 連合王国(UK:英国):MHRAは2008年11月にボーンマスで、スパイスゴールド、スパイスシルバー、スパイスダイアモンドのサンプルを入手した。後にそれらにはJWH-018の含有が確認された。
・ フィンランド:ウェブ上で注文しあるいは入国郵便物のなかから押収された製品から、識別(特定はしていないが)を行った。これらのデータは、合成カンナビノイドを特定する分析の困難さをもって慎重に解釈されなければならない。これら物質はほとんどのEU諸国で規制されていないことなどから、分析データは限定されており、司法化学分析機関に提供されにくい。加えて、多数のJWHおよびCP化合物が存在しており、研究所では常にすべて物質のスペクトラムを検索するわけではないことから、報告書間に相互に矛盾するものが生じることもある。

●各国言語でのウェブサイトおよびその他の供給源
参加国は「スパイス」製品を提供している国内のウェブサイトに関する情報を提供するよう依頼され、他の供給源についての情報も示すよう要請された。ほとんどのケースでは、「スパイス」製品が報告されている。英王室領のジャージーでは、インターネットで販売されたスパイス中にJWH-018とCP 47,497が確認され(データは2009年3月に連合王国を通じてEMCDDAに報告されている)、またヘッドショップやスマートショップではさらに頻繁に販売されており(オーストリア、ドイツ、ハンガリー、アイルランド、ルクセンブルク、リトアニア、ラトビア、ポルトガル、およびイギリス)、セックスショップでの販売(リトアニア)やガソリンスタンドでの販売(ルクセンブルグ)もある。
出典 EMCDDA, Thematic papers : Understanding the 'Spice' phenomenon,pp13-14(2009)

次回は、各国から報告された、スパイス等の使用と関係すると思われる救急事例の部分を紹介する予定です。
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スパイスゴールド規制3|問題は終わっていない

2009/11/15 22:28
いわゆるスパイス・カンナビノイド3種に対する指定薬物としての規制が、間もなく施行されます。今回規制の対象となるのは、日本で流通しているスパイスゴールドなどの喫煙用ハーブミックス中に含有が確認された次の3種の合成カンナビノイドです。
●合成カンナビノイドJWH018
1-ナフタレニル(1-ペンチル-1H-インドール-3-イル)メタノン
1-Naphthalenyl(1-pentyl-1H-indol-3-yl)methanone
●合成カンナビノイドCP-47,497
(1RS,3SR)-3-[2-ヒドロキシ-4-(2-メチルオクタン-2-イル)フェニル]シクロヘキサン-1-オール  
(1RS,3SR)-3-[2-Hydroxy-4-(2-methyloctan-2-yl)phenyl]cyclohexan-1-ol
●合成カンナビノイドCP-47,497のモノログ
(1RS,3SR)-3-[2-ヒドロキシ-4-(2-メチルノナン-2-イル)フェニル]シクロヘキサン-1-オール (1RS,3SR)-3-[2-Hydroxy-4-(2-methylnonan-2-yl)phenyl]cyclohexan-1-ol

さて、これでスパイス問題は解決すると安心してよいのでしょうか。残念ながら、私には、そうは思えません。まだ問題は始まったばかり。脱法ドラッグの世界に新しく登場してきたこの種の合成カンナビノイドについて、私たちは警戒をゆるめるわけに行かないのです。この新顔の薬物について、私たちはまだ知らないことだらけです。

世界に先駆けて合成カンナビノイドと取り組んできた、EUの薬物研究機関The European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction (EMCDDA)は、先ごろ、「テーマ別資料:スパイス現象を理解するThematic papers : Understanding the 'Spice' phenomenon」という資料を公開しました。これは、昨年末からヨーロッパで続けられている取り組みについての現況をまとめたもので、5月に公表された「EMCDDA 新種薬アクション概要説明書:‘スパイス’現象を理解する」の改訂版です。EMCDDAのサイトで公開されています。
http://www.emcdda.europa.eu/publications/thematic-papers/spice

この最新のこの最新資料を読みながら、もう少し、この問題を考えてみたいと思います。まず最初は、多くの方がもっとも気にしておられる、合成カンナビノイドの危険性評価に関して。資料の13ページから、私の個人的な翻訳で紹介します。
●Are those products dangerous for the consumer?
これらの製品は使用者にとって危険なのか?

大麻やその主要な精神活性成分であるTHC、および人体のカンナビノイド受容システムが知られるようになって15から20年になる。この20年間に、主として、治療上有用な精神活性作用と望ましくないものを分離することを目的とした、生体外試験や動物試験による研究(Aung他, 2000)や、構造―活性相関性研究(Wiley他、1998; Huffman,2009; Compton他,1993; Huffman他,2005; Vann他,2009)などの 医学文献が発表されている。しかしながら、この種のカンナビノイドの製品化はまったく行われておらず、人体での研究も行われていない。
現在までのところ、合成カンナビノイド化合物の代謝や毒性に関しては、ごくわずかしか知られていない。合成カンナイノイドの使用に関するリスクが、必ずしも、THCでみられるものに対応すると考えることはできず、実際、これらの薬物は害をもたらす危険性がより高いと考えるいくつかの理由もある。なぜなら、「スパイス」製品中の合成カンナビノイドは、実験室で研究(生体外または動物試験)されたのみであり、喫煙した場合の健康上のリスクは未知である。JWH-018の場合、その構造上の特徴から、発がん性のおそれがあるかもしれないと推測されている。さらに、同一の製品中でも、バッチごとにカンナビノイドの種類や量が異なる場合があり、重篤な精神症状の危険を伴う過量摂取が起こりうる危険性が高い。一般的にいって、過量摂取によって致死的な結果をもたらす、CB受容体に対するフルアゴニスト(THCが部分アゴニストとして作用するのと異なり)が出現する危険は大きい。さらに、これら合成カンナビノイドはかなり速やかに耐性を形成するとみられており、そのため依存を引き起こす可能性が高いといわれている(Zimmermann他、2009)。こうした危険性を確実に評価するには、さらなる研究が必要なことは間違いない。
いわゆる「ハーバルスモーク」に用いられる合成カンナビノイドの血液サンプルによる化学分析手法(直近の摂取を検査する手法)は、複数の研究所ですでに利用されている。しかし、より長期間の使用を検査することができる尿中の代謝物の検査法は、更なる開発が必要である。
出典 EMCDDA, Thematic papers : Understanding the 'Spice' phenomenon,pp13(2009)
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「やめられない」を越えて|覚せい剤問題の新しい局面

2009/11/15 01:58
平成21年版犯罪白書の概要が報道発表されたと、ニュースが伝えています。トピックは、再犯率の上昇。覚せい剤事犯者では、検挙者の57%が再犯者で占められたといいます。少し長い記事ですが、産経ニュースから。

<ニュースから>
●【犯罪白書】一般刑法犯と窃盗の再犯者率過去40年で最高 覚醒剤も高水準
法務省は13日、『平成21年版犯罪白書』を公表した。犯罪の5割前後を占める再犯者の防止施策充実を特集。「一般刑法犯」の検挙者34万人のうち、再犯者は14万人で再犯者率42%、窃盗も再犯者7万5000人で43%と、ともに連続した統計のある昭和43年以降で最高だった。覚醒(かくせい)剤事犯者は再犯者6200人で56%だった。
とくに再犯性の高い窃盗と覚醒剤事犯者への特別調査では、居住・就労状況や監督者、保護観察など「人」の果たす再犯の抑止になる効果を強調した。白書は「犯罪者を改善更生させ、社会の構成員に取り込む点からも、再犯防止は国民全体の大きな利益になる」としている。東京、横浜の地・区検が処理し、平成16年に一審で確定した窃盗、覚せい剤取締法の執行猶予者を追跡調査。約1200人(男1000、女200)のうち再犯者は窃盗は男30%、女33%、覚醒剤では男32%、女21%。再犯者の8割が前回と同一罪名で、再犯までの期間は窃盗は1年半以内、覚醒剤は2年以内が過半数だった。
再犯防止・リスク要因として、居住・就労状況別では、窃盗で再犯が多いのは「単身(定住)・不安定就労(アルバイトなど)』で40%、以下、「単身(住居不定)・無職」「単身(定住)・無職」で、最も再犯が少ない「家族と同居・安定就労』では8割以上が再犯に及ばなかった。覚醒剤では居住状況を問わず、「無職」が再犯に及ぶ割合が多かった。
その他の要因では、裁判で釈放後の監督を誓約した親・親族、雇用主ら「監督者」がいた場合、窃盗の再犯は20%、いない場合は40%に、覚醒剤では25%と50%に。「保護観察」があるかないかでは再犯割合に大差なく、制度の趣旨(リスクが高い者につける)からすれば、相当の抑止効果があるとした。一方、覚醒剤では女子の場合、「共犯」がいた場合の再犯は33%、いない場合は15%と、人の影響を受けやすい実態もわかった。
2009.11.13 10:21 msn.産経ニュースより抜粋
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091113/crm0911130938010-n1.htm

再犯者の割合が高まった―この現象を裏側から見ると、新たな覚せい剤乱用者の増加に、一時的にせよ、歯止めがかかっているということになります。その背景にあるのは、覚せい剤乱用市場が縮小し続けていること。第三次乱用期の幕開けといわれる平成8年ころには2万人に迫っていた検挙者が、平成20年には約11,000人にまで減少しています。

特筆すべきは、青少年層での減少がとくに著しいことです。犯罪白書(私の手元にあるのは平成20年版ですが)のデータによれば、つぎのことがわかります。
・ 平成8年には、30歳以下の青少年層が、覚せい剤事犯検挙人員のおよそ半数(49.5%)を占めていた
・ 平成19年では、30歳以下が占める割合はおよそ4分の1(26.5%)にまで減少している
私は、この変化を日々の仕事を通じて、実感しています、今、刑事司法の場面に登場する覚せい剤乱用者の中心層は、30歳代〜40歳代、覚せい剤の前科を持つ人が多く 、初犯者の場合も長期間乱用してきた人が目に付きます。かつて主流を占めていた、乱用歴の浅い青少年層はすっかり影を潜めてしまったようで、めったに出会うことはありません。

覚せい剤問題について、いま、最も重要なことは、最新版の犯罪白書が指摘しているように、再犯を繰り返す覚せい剤乱用者に対する対策なのです。
長期間にわたる薬物乱用者の多くは、失敗体験を重ねて自信喪失に陥っているといいます。覚せい剤はやめられないと、あきらめかけている人たちに、「やめられる」希望を示すことが必要なのです。ところが、私たちは、乱用防止のための啓発活動にばかり目を向けて、薬物の恐ろしさばかりを伝え、回復について語ることを忘れてきたのではないでしょうか。
最近、芸能人の薬物事件が相次ぎ、メディアは連日のように薬物問題を取り上げました。専門家や経験者の声も多数伝えられましたが、薬物依存の克服の困難さや、再犯の多さをことさら強調するものが目立ったことを残念に思います。薬物の害を伝えることは大切ですが、「やめられない」側面だけが誇張されては、断薬・回復の努力を続けている現実の乱用者やその家族の希望を砕くことになりかねません。
わが国では、長く「一度やったらやめられない」をキーワードに薬物乱用防止活動が展開されてきました。でも、これからは、「覚せい剤はやめられる」というメッセージも必要だと思います。

覚せい剤乱用者が減っている現在は、日本の薬物問題を大きく改善するチャンスです。「やめられない」から「やめられる」へ、まず、私たちの意識を少し切り替えておきたいと思います。
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執行猶予と海外渡航|執行猶予からの再出発7

2009/11/12 18:18
執行猶予付きの判決を受けて社会生活を再開した人にとって、外国への旅行には何かと制約がつきまといます。

●執行猶予中の制約
執行猶予中は、懲役○年という有罪判決を受けた立場で、法令によって制約を受けることがいくつかあります。パスポートの発給を受けることも、そのひとつです。
新たにパスポートを取得しようとすると、まず、申請書を提出することになります。この申請書には、刑罰等関係という欄があり、質問に対して答えるようになっていますが、薬物事件で刑事裁判を受けた人に関係があるのは、次の質問です。
<刑罰関係>
2.現在日本国法令により、犯罪につき起訴されていますか。
3.現在日本国法令により、仮釈放、刑の執行停止、執行猶予の処分を受けていますか。また、刑の執行を受けなければならない状態にありますか。

上記の質問2 は、起訴されてまだ裁判中であるかという質問です。すでに裁判が終わっていれば、「いいえ」に該当します。質問3 に対して、執行猶予中(保護観察付き執行猶予中も)の人、仮釈放中の人は、「はい」と回答しなければなりません。
この質問は、申請者が刑を受けるかもしれない立場にいるかどうかをチェックするもので、すでに執行猶予期間を満了した人は、「いいえ」と回答します。
この回答に「はい」と答えた項目のある人は、パスポートの受給に際して、旅券課で個別に審査を受けることになります。当然、審査にはある程度の時間がかかるでしょうし、場合によれば、パスポートが発行されないこともあるかもしれません。
なお、旅券法は、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」に対して、一般旅券の発給を制限するとともに、すでに発給した旅券の返納を命じることができると定めていますが、これまでに、有罪判決を受けたことで、すでに取得したパスポートの返納を求められたという例に、私は出会ったことがありません。

●犯罪歴のある人に対する制約
次は、相手国への入国手続きですが、ここで問題になるのは、執行猶予中であることではなく、犯罪経歴があることなのです。つまり、執行猶予が満了しても、犯罪歴が残る限り、問題は続きます。
<観光目的の短期旅行>
短期間の観光旅行の場合、ビザなし渡航を利用することが多いでしょう。日本国のパスポートがあり、正当な手続きで渡航する旅行者に対して、ほとんどの国では、犯罪歴の有無をとくに問題にしていないようです。
ところが、日本人にとって旅行先としてもっとも多いアメリカ合衆国は、逮捕歴のある人がビザなし渡航で入国することを認めていないのです。アメリカ大使館は次のように言っています。
「有罪判決の有無にかかわらず逮捕歴のある方、犯罪歴(恩赦や大赦などの法的措置がとられた場合も含む)がある方、(略)は、ビザ免除プログラムを利用することはできません。渡米するためには、ビザを取得しなければなりません。ビザを持たずに入国しようとする場合は入国を拒否されることがあります。」
在日米国大使館>ビザ免除プログラム
http://tokyo.usembassy.gov/j/visa/tvisaj-waiver.html

<留学や商用での渡航>
留学や仕事のために長期間外国に滞在する場合には、ビザ免除による短期の旅行とは異なり、どの国でも基本的にビザが必要になります。留学や商業活動のビザを申請する際に、多くの国では、警察による犯罪経歴証明書を添えるよう求めています。
犯罪経歴証明書とは、犯罪の有無について、日本語・英語・フランス語・ドイツ語および
スペイン語で記載される書類で、都道府県警察本部が作成します。申請には、相手国の大使館などが発行した文書を添えて証明が必要な理由を明らかにしなければなりません。また、証明書は申請者本人が開封できないよう、封印して交付されます。
警察には個人の犯罪経歴の記録がありますから、有罪判決を受けたことがあれば、その旨が記載された証明書が発行されることになります。この証明書のほかに判決謄本を添えてビザを申請することになります。審査にあたっては事件の内容や判決の趣旨、判決を受けてから経過年数などが考慮されるようです。

私は、薬物事件に関わって有罪判決を受けた多くの若者たちの、その後の人生を見守り、アドバイスや手助けをしてきましたが、彼らが直面する問題で、もっとも多いのが、外国への渡航です。相手国への入国が認められるかどうかは、相手国の法律や制度の問題で、日本の法令によるものではないため、日本の弁護士には具体的な支援をすることはできませんが、さまざまなケースでビザの申請をしてきた人たちの経験談を蓄積し、彼らを応援してきました。
ビザの手続きをするには、時間も労力も必要ですが、意外に多くの人たちがビザを取得して、外国へ出かけています。つい昨日も、海外に定住している青年から、近況報告をもらったところです。

*****
薬物事件で有罪判決を受けた人が、その後の社会生活で出会う制約などについて、詳しく解説した資料を私のHPに掲載しています。具体的に調べたい方は、こちらも参照してください。
HP「ドラッグについてきちんと話そう」http://www2u.biglobe.ne.jp/~skomori/
薬物乱用と取り締まり>薬物前科ってなんだろう>薬物事件で有罪判決を受けた人へ(PDF)
http://www2u.biglobe.ne.jp/~skomori/law/zenka2.pdf

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執行猶予と資格|執行猶予からの再出発6

2009/11/11 22:00
●資格の多くは刑による制限がない
運転免許をはじめ、美容師、理容師、自動車整備士など、刑に処せられた人に対する制約をとくに定めていない資格は、たくさんあります。
たとえば、国家検定制度として行われている技能検定は、多くさまざまな職種について技能検定を行うものですが、前科の有無に関わりなく受けることができ、合格すれば技能士になることができます。また、職場の労働災害防止のために定められている、ボイラー技士、クレーン・デリック運転士、衛生管理者なども、前科の有無に関わりなく免許試験を受けることができ、合格すれば免許を申請することができます。

●刑による資格の制限
ただし、資格のなかには、刑に処せられたなど一定の条件に該当する人に対して、免許や登録などを制限しているものがあります。こうした規定を<欠格条項>といい、規定の内容を<欠格事由>といいます。
有罪判決を受けた人に対する制限は、「禁固以上の刑に処せられた者は、○○○○になることができない。」といった形で規定されています。
執行猶予付きの判決を宣告された人は、執行猶予中は有罪判決を受けた立場にあるわけですから、この制限の対象になりますが、執行猶予を取り消されることなく猶予期間を満了すれば、刑の宣告による効果がなくなるため、この制限を受けることがなくなります。

●受験の制限
資格試験のほとんどは、刑に処せられた人でも受験できますが、ごく一部に、刑に処せられた人に対して、資格試験の受験を制限するものがあります。

●免許や登録の制限
公的資格のなかには、試験に合格した後、免許を受けたり、登録するにあたって、刑に処せられた人に対する欠格条項を設けているものがあります。具体的には、資格試験に合格した後、免許や登録の申請をする際に、欠格事由に該当するかどうかを申告することになります。もちろん、自己申告だけで判断されるわけではありません。犯罪に関する経歴を管理している本籍地の市区町村に照会して、正式に確認することになっています。

●制限の有無を知るには
受験案内書や説明書などには、受験や登録に必要な資格条件が記載されています。その資格に欠格条項があるなら、その内容も記載されているはずです。
また、少しむずかしいかもしれませんが、法律をきちんと読めば、資格の制限についてすべてが書いてあります。法律は、インターネットで読むこともできます。総務庁の法令データ提供システム(http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi)は、最新の改正などが反映されていますので、参考にしてください。
国家資格は、それぞれ国の法令で定めるもので、たとえば介護福祉士について定めているのは、社会福祉士及び介護福祉士法で、その第3条には、試験に合格するなどの条件を満たしても、社会福祉士あるいは介護福祉士として登録できない<欠格事由>が定められています。その第1項2号にあるのが、ここでいう<刑による制限>に当たるものです。

社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年五月二十六日法律第三十号)
第3条  次の各号のいずれかに該当する者は、社会福祉士又は介護福祉士となることができない。
1  成年被後見人又は被保佐人
2  禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して2年を経過しない者
3  この法律の規定その他社会福祉に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して2年を経過しない者
4  第32条第1項第2号又は第2項(これらの規定を第42条第2項において準用する場合を含む。)の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して2年を経過しない者

覚せい剤の所持や使用で有罪となれば、懲役刑を言い渡されるので、<禁錮以上の刑に処せられ>た者となります。執行猶予付きの場合は、執行猶予中は有罪判決を受けた立場にあるわけですから、この制限の対象になりますが、執行猶予を取り消されることなく猶予期間を満了すれば、刑の宣告による効果がなくなり、禁錮以上の刑に処せられた者でなくなるため、この制限を受けません。つまり、執行猶予中は、試験に受かったとしても、社会福祉士又は介護福祉士として登録することができないが、執行猶予期間を無事に満了すれば、登録することができるわけです。

なお<その執行を終わり>以下は、懲役刑(実刑)を終えた人に関する規定で、刑の執行終了(仮釈放の日ではなく刑期満了の日)または刑の時効の完成や恩赦などによって刑を受けることがなくなった日から、2年間は社会福祉士又は介護福祉士として登録することができないと定めています。
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執行猶予と制限|執行猶予からの再出発5

2009/11/10 22:02
芸能人の薬物事件の裁判が次々と終了して、今度は、執行猶予判決を受けた人たちが、これからどんな生活をしていくかという点に、世間の関心が移ったようです。執行猶予中の資格取得や海外渡航について、問い合わせが続いていますので、当ブログでは、何度か取り上げた話題ですが、もう一度まとめておきます。

●まず、執行猶予という制度について。
話題になった芸能人たちは、「懲役1年6月、執行猶予5年」や「懲役1年6月、執行猶予3年」という判決を受けたとニュースは伝えています。正しくは、「被告人を懲役1年6月に処する。この裁判確定の日から○年間その刑の執行を猶予する。」と言い渡されたことでしょう。これは有罪の判決で、被告人は、1年6か月の懲役刑を宣告されたのですが、その執行(現実にその刑を受けること、ここでは刑事施設に収容して作業につかせること)を○年間猶予するという意味です。
実は、「猶予する」という言葉の裏には、もっと重要なことがあります。執行猶予期間を無事に満了すれば、判決の言い渡しはその効力を失うという刑法の規定があるのです。簡単にいうなら、上記の「被告人を懲役1年6月に処する。」という判決の宣告そのものが消滅する、いいかえれば、有罪判決の宣告がされなかったことになるということです。

執行猶予とは、○年間と限って刑の執行を猶予し、その期間を満了すれば宣告された刑が消滅し、有罪判決を受けなかった状態に戻るという制度なのです。ただし、もし猶予期間中に犯罪を行って有罪判決を受けるなどして、執行猶予を取り消されれば、猶予されていた宣告刑(ここでは1 年6 か月の懲役刑)を現実に受けなければなりません。

<刑法 第27 条>
刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。


●執行猶予中の制約
執行猶予付き判決が言い渡された後は、ごく普通の社会生活を送ることになります。仕事をし、学校に通い、日常生活の自由を制限されることはありません。ただし、公的な資格の取得などに関しては、制限を受けることもあります。
現行法令には、刑に処せられた人に対して、資格を取得することを制限しているものがあります。執行猶予中は、刑の執行が猶予されているだけで、言い渡された判決の効力がなくなったわけではないので、こうした制限を受けることになります。執行猶予期間を無事に満了すれば、判決の言い渡しはその効力を失うので、制限を受けることはなくなります。
また、今後、もし、再び罪を犯して裁判を受けることがあれば、再犯者として厳しい判決を受けます。そもそも、執行猶予付きの判決が法律上認められない場合もあり、また、法律上は認められる場合でも、実際に執行猶予付きの判決を期待することは困難になります。
<詳しくは別記事で説明します>
●海外旅行の制約
外国旅行に関しては、<執行猶予中の制約>+<犯罪歴のある人に対する制約>があります。
まず、パスポートを新たに受給する際。
執行猶予中は、パスポートの受給に際して、旅券課で個別に審査を受けることになります。当然、審査にはある程度の時間がかかるでしょうし、場合によれば、パスポートが発行されないこともあるかもしれません。ただし、執行猶予期間を満了すると、こうした制約を受けることはなくなります。
次は、相手国への入国手続きですが、ここで問題になるのは、執行猶予中であることではなく、犯罪経歴があることなのです。つまり、執行猶予が満了しても、犯罪歴が残る限り、問題は続きます。
<詳しくは別記事で説明します>
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キャンディやフルーツ風味のタバコ販売禁止2|アメリカの話題から

2009/11/09 17:33
他の話題で中断してしまっていた、キャンディやフルーツ風味のタバコについて、続けます。前述したように、FDAは今アメリカ人の喫煙削減に取り組んでいますが、そのなかで青少年の喫煙防止が重要な課題となっています。研究では、成人喫煙者の約90%はティーンエイジャーの時期に喫煙を始めていることが示されていますが、若者の歓心をひきるける風味つきタバコは、喫煙開始を誘発しやすいとして、その販売が禁止されたわけです。

さて、FDAがインターネット上で提供している情報に、風味つきタバコの問題を理解する重要なポイントが掲載されているので、その一部をかいつまんで紹介します。

●青少年のデータ
・2004年では、17歳の喫煙者の22.8%が過去1ヶ月の間に風味つきタバコを使ったと申告している。ちなみに、25歳以上では6.7%であった。
・2008年の世論調査では、12から17歳の若者の5人に1人が、風味つきタバコそのものか広告をみたことがあるが、成人では見たことがあるのは5人中1人であった。
・13から18歳の喫煙者に関するある研究によると、風味つきタバコの話を聞いた人の52%が興味を持って試してみたいと感じたといっている。また、60%が風味つきタバコは一般のタバコより風味がよさそうだと感じている。
・ビディやフーカーなどのフレーバー付きタバコに対する青少年の期待感に関する研究によると、若年の喫煙者はこうしたフレーバー付きタバコを「風味がよい」「より安全」と感じて選択していることがわかった。

●タバコ会社のマーケティング
・企業の記録は、風味つきタバコが若者をターゲットに計画されたことを明らかにしている。
・ある企業の外部アドバイザーは、コーラやリンゴ風味、甘い風味などの「若者向けシガレット」のコンセプトを開発したが、「ティーンエイジャーは甘いもの好きだということは広く知られている。はちみつ風味だってありうる。」と語っている。
・別な企業が従業員宛に出したメモには、「若者にはっきり絞り込んだタバコを作ること。たとえばキャンディのような風味で、しかしタバコの満足感がしっかりあるといった、名称やブレンド、フレーバー、マーケティング技法・・・を取り入れなければならない。」とある。
・別な企業内記録には「より若年の、喫煙を始めたばかりのティーンエイジャーが、風船ガムみたいと思ってくれるように」製品に甘い香りをつけると記載されている。
出典 FDA >風味つきタバコ製品のファクト・シート
http://www.fda.gov/TobaccoProducts/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/FlavoredTobacco/ucm183198.htm

社会全体がティーンエイジャーの喫煙に悩み、なんとか減らそうと試行錯誤している時代に、この層に受ける商品として、キャンディ風味のタバコの開発にしのぎを削る人たちも存在しているのだなと、考え込んでしまいました。
この話題、タバコだけではなく、脱法ドラッグにも通じるものがあります。目先の新しさを喜ぶ若い消費者の歓心を買うために、あの手、この手の販売戦略が投入され、気がつくと世界市場の商品が生まれていたりするのです。
行き過ぎた薬物規制に反対する人たちの中には、問題解決は、基本的に市場原理にゆだねておくべきだという意見もありますが、少なくとも青少年を保護する方策は必要だろうと、こうした記事に触れて、私は改めて考えています。
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合成カンナビノイドに関する最新資料

2009/11/08 20:39
スパイスゴールドなどに含まれる合成カンナビノイドの問題に関して、私がたびたび参照し、引用してきたのが、EMCDDA の資料EMCDDA Action on new drugs briefing paper: Understanding the ‘Spice’ phenomenonです。たまたま先ほど、前記事の関連事項を調べていて、EMCDDAのサイトをみたら、この資料が改定されているのに気づきました。11月公開の改訂版は、「スパイス現象を理解するUnderstanding the ‘Spice’ phenomenon」
http://www.emcdda.europa.eu/publications/thematic-papers/spice

その後の規制状況や、危険性評価に関して、新しい情報が追加されているようです。時間を作って、これから読んでいくつもりです。
画像
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錠剤ドラッグからも合成カンナビノイド

2009/11/08 15:31
ミシガン州でみつかった、バタフライ模様の錠剤から、合成カンナビノイドJWH-073が検出されたと伝えられています。
この情報が掲載されたのは、アメリカ合衆国麻薬取締局(DEA;The Drug Enforcement Administration)の化学分析機関が発行するマイクログラム・ブリティン(Microgram Bulletin)の2009年9月号。
記事によれば、ミシガン州で押収されたエクスタシー風の錠剤が3種について、中央分析研究所ヴァージニア分室でその内容物を分析したところ、合成カンナイノイドJWH-073が確認されたということです。
押収された錠剤は、両面にバタフライのロゴマークが刻印された丸いもので、コーティングが赤色のもの、ライムグリーンのもの、紫色のものがあるといいます。
画像

●MDMA MIMIC TABLETS SEIZED IN MICHIGAN
MICROGRAM BULLETIN, VOLUME 42, NUMBER 9, SEPTEMBER 2009
http://www.justice.gov/dea/programs/forensicsci/microgram/mg0909/mg0909.pdf

JWH-073はいわゆるスパイス・カンナビノイドのひとつで、2008年にスパイス製品中に含有が確認されたJWH-018(わが国でも最近指定薬物に指定された)に類似した化学構造を持っています。EMCDDAがまとめた資料EMCDDA Action on new drugs briefing paper: Understanding the ‘Spice’ phenomenonによれば、JWH-073は2009年にドイツでスパイス類似の製品中に含有が確認され、デンマークやオランダでも押収されているそうです。
これまで、主に喫煙用ミックス中に含有される合成カンナビノイドが問題になってきましたが、今度は、エクスタシー風の錠剤からも合成カンナビノイドが検出されたわけで、大麻まがいの作用をもたらす錠剤ドラッグまで登場したことになります。
もっとも、医療用に開発されたマリノール錠は、もともと錠剤ですから、べつに目新しいものではないのかもしれませんが。

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キャンディやフルーツ風味のタバコ販売禁止1|アメリカの話題から

2009/11/07 17:28
アメリカ合衆国の食品医薬品局(FDA; Food and Drug Administration)が、インターネット上で販売する業者に対して、「キャンディ、フルーツ、クローブ風味のタバコ」の販売を停止するよう警告を発したというニュースが使えられました。記事によれば、こうしたタバコは、とくに若者にアピールしており、新たな喫煙人口を生み出すとされ、今年9月に販売を禁止されているとか。
●CBSNEWS > FDA Warns Web Companies Not To Sell Flavored Cigs
http://www.cbsnews.com/stories/2009/11/06/ap/business/main5550982.shtml?tag=contentMain;contentBody

へぇ、キャンディ風味のタバコねえ・・・。と興味をもった私は、FDAのサイトから関連記事を拾い出してみました。アメリカでは最近、バニラ、オレンジ、チョコレート、チェリー、コーヒーなどのフレーバーをつけたタバコが販売され、とくにティーンエイジャー向けの商品として広まっていたとのことです。フルーツの絵が入ったピンクやクリーム色のかわいいパッケージ、一見するとキャンディかフレーバー紅茶のようなイメージです。50グラム入りで3ドル50セントくらい。

まず、2009年9月22日に発表された販売禁止措置は、概略次のように伝えています。
「米食品医薬品局は、本日、フルーツ、キャンディ、クローブの風味をつけたタバコの禁止令を発表した。これは、新しく制定された『家庭の喫煙予防及びタバコ抑止条例』による措置であり、合衆国内の喫煙を減らすFDAの取り組みの一環である。
喫煙はアメリカ人の主要な死亡原因のひとつである。フルーツやキャンディ風味のタバコを禁止するのは、子どもが喫煙を開始し、危険なタバコ依存になることを予防するためである。
成人喫煙者の約90%はティーンエイジャーの時期に喫煙を始めている。こうした風味つきタバコは、子どもやヤングアダルトを習慣的喫煙者にするゲートウェイとなっている。研究によれば、17歳の喫煙者は、25歳の喫煙者と比べて、風味つきタバコを使う割合が3倍であった。
FDAは、風味つきタバコの危険性に関するアドバイスを公開した。子どもの喫煙を案じる親やタバコ使用者は、ウェブサイトで情報を得ることができる。
FDA > Candy and Fruit Flavored Cigarettes Now Illegal in United States; Step is First Under New Tobacco Law (Sept. 22, 2009)
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm183211.htm

さて、次はアドバイスに目を通しましょう。FDAが掲載するアドバイスは、次のように3部構成になっています。
●風味つきタバコ製品に関する親のためのアドバイス
http://www.fda.gov/TobaccoProducts/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/FlavoredTobacco/ucm183196.htm
●風味つきタバコ製品のファクト・シート
http://www.fda.gov/TobaccoProducts/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/FlavoredTobacco/ucm183198.htm
●特定風味つきタバコの禁止に関するQ&A
http://www.fda.gov/TobaccoProducts/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/FlavoredTobacco/ucm183228.htm

上記のファクト・シートに、ちょっと気になる情報があるので、次回も引き続きこの話題を続けます。
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大麻合法化の影響は?|ニューヨーク・タイムズの特集から2

2009/11/05 20:49
前回に続いて、ニューヨーク・タイムズの7月19日付の「もし大麻が合法化されたら、依存が増えるか?」と題した紙上討論から。5名の専門家パネラーの見解を紹介します。ここでは、パネラーの発言の一部を取り出して、その概要をお伝えしますが、できれば、原文をお読みください。
出典:The New York Times> If Marijuana Is Legal, Will Addiction Rise?
http://roomfordebate.blogs.nytimes.com/2009/07/19/if-marijuana-is-legal-will-addiction-rise/

●祖父の時代の大麻ではない
大麻の合法化に反対する主張として代表的なものが、「祖父の時代の大麻と同じではない」というもので、近年、大麻の効力が強くなり、危険性が高まっているので、禁止策を緩めることはできないという。
現在販売されている大麻は、1970年代のものよりはるかに多量のTHCを含んでいる。もしも、変化したのがTHCだけなら、ユーザーは使用量を加減すればすむ。しかし、現在の大麻は、昔のものと比べ、THCのCBD(カンナビジオール)に対する割合が変化しており、THC含有が高く、CBD含有が低くなっていて、そのためにパニック発作の率が高くなっていると思われる。THCは不安発作を促進させる傾向があり、CBDにはこれを押さえる傾向があるといわれる。大麻が合法化されるとしたら、THCと同時にCBD含有率にも制限を課すことも考えられる。大麻の効力が高まっていることは問題ではなくなる。
完全な合法化によって、ヘビーユーザーは増加するだろう。合法化された大麻産業は、アルコール産業と同様に、その収益の半分以上を物質乱用障害をもつ人によって得ることになるだろう。その対策として、使用者自身が自分で栽培するという選択肢もありうる。自己使用する個人または小規模な非営利協同組合による栽培を許可し、営利的な販売を禁止するのである。
マーク・AR・クレイマンMark A.R. Kleiman
U.C.L.A.の公共政策の教授。「薬物政策分析ジャーナルthe Journal of Drug Policy Analysis」の編集者。

●オランダの教訓
米国では、成長過程で大麻を経験することは特別なことではない。1960年以降の出生者の半分以上は、21歳までにこの薬物を経験している。米国では、単純所持での逮捕者は1991年の3倍に当たる75万人に達した。
もし大麻が合法化されたらどうなるか。コーヒーショップでの大麻販売という、オランダの事実上の合法化が、もっとも近い事例である。この国での大麻使用は、ヨーロッパの諸国より低く、過去1年で大麻を使用したのは、15-64歳のオランダ住民の6%であり、米国では11%である。
オランダが現実的な選択をしたのに比べ、米国での合法化には、より商業的な側面が含まれる可能性がある。大麻生産者の活動が拡大するのを防ぐには、自己使用目的および無償のギフト目的での栽培に対する禁止を廃止すべきだろう。闇市場が形成されるのは間違いないが、完全な商業化をせずに大麻にアクセスすることが可能になる。
合法化によって、大麻使用者は増加するだろうが、75万人という逮捕者がなくなることと比較衡量されるべきであろう。
ピーター・ロイター Peter Reuter メリーランド大学の公共政策スクールおよび犯罪学部の教授

●タバコの先例
1億人を超えるアメリカ人が法律に違反して、少なくとも1回以上大麻を使用しているのだから、これは、悪しき公共政策だといえる。
大麻が合法化されれば、現在は取り締まりによって使用を見合わせている人の一部は、大麻を使用することになるだろう。しかし、現状ではかなり厳格な罰則があるにもかかわらず、米国はすでに人口1人当たりの大麻消費量では世界をリードしていることを考えると、大規模な増加がいつまでも続くとは思えない。さらに、一部規制を伴う合法化(regulated legalization)と課税政策によって、政府は、予防プログラムと同時に、すでに大麻を乱用している人たちへのトリートメントやカウンセリングを提供することができる。公教育によって、1名も逮捕することなく、タバコの消費を半減したように、大麻使用を減らすこともできるかもしれない。
反対論でもっとも大きなものは、合法化は子どもたちに誤ったメッセージを送ることになる、というものだろう。部分的な規制を伴う合法化は、未成年者に対する大麻の供給を厳格に禁止することなしには、成立しえない。
ノーム・スタンパー Norm Stamper シアトルの前警察本部長
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大麻合法化の影響は?|ニューヨーク・タイムズの特集から

2009/11/04 22:54
カリフォルニア州で大麻の合法化が具体的な検討に入っていることから、アメリカのメディアは頻繁に大麻問題の特集を組んでいます。そのひとつ、ニューヨーク・タイムズの7月19日付のデイベートを紹介します。「もし大麻が合法化されたら、依存が増えるか?」と題した紙上討論ですが、その冒頭に、パネラーとして5名の専門家が見解を述べており、大麻合法化のいろいろな側面が現れています。
大麻の合法化というと、特定の主張を掲げて運動しているグループだけの議論と受け取られがちですが、けっして一部の人だけのものではなく、多くの学識者や実務家を巻き込んで語られてきた、大きなテーマです。実はアメリカでも過去数十年にわたって、大麻の合法化討論は続けられてきており、その蓄積の上で、いまこうした議論がされているわけです。いまアメリカでは、「大麻合法化」というテーマで何が語られているのか、5人の専門家の意見は、決して単純なものではありません。
なお、ここでは、パネラーの発言の一部を取り出して、その概要をお伝えします。細かいニュアンスまで紹介できないので、できれば、原文をお読みください。
出典:The New York Times> If Marijuana Is Legal, Will Addiction Rise?
http://roomfordebate.blogs.nytimes.com/2009/07/19/if-marijuana-is-legal-will-addiction-rise/

●より正直であらねばならない
米国では、大麻の自由化に対して積極的な傾向が強まっているが、その方法には2つある。
第一は「合法化」で、適法な栽培と販売をふくむもの。第二は「非犯罪化」で、少量の所持に対する刑罰を廃止しながら、栽培や販売に対する刑罰を維持するものである。
大麻が「非犯罪化」されたら、より多くの人が大麻を使うようになるだろうか。おそらく、そうはならない。合衆国での研究の多くが、非犯罪化は成人および少年の大麻使用率を上昇させることはないという結果を示している。では、大麻が「合法化」された場合はどうか。誰も断言はできない。
オランダの「コーヒーショップ」の例は、われわれにヒントを与えてくれる。オランダの事実上の合法化は、それ自体では、成人でも少年でも大麻の使用率の上昇を招かなかった。しかし、コーヒーショップの数が増加したときには、若年者の大麻使用率が上昇した。当時は、コーヒーショップに立ち入ることのできる年齢は16歳であった。その後、コーヒーショップの数が削減され、立ち入ることにできる年齢が18歳になり、使用率は低下した。合法化の検討は、大麻使用によってもっとも傷つきやすい子どもや少年をいかにして保護するかという、綿密な計画を含んでいなければならない。
私は、大麻所持に対して刑罰に代替する手段を講じることを支持しているが、しかし、こうした討論をするには、我々はもっと正直になるべきだ。大麻の合法化を支持する者たちは、大麻は無害だというのをやめるべきだ。無害ではないのだから。大麻所持を犯罪としておくべきだと信じる者たちは、成人の機会的使用者の大半が大麻の害を受けていないことを認識しなければならず、また所持を犯罪として取り締まることが、その害を避ける最良の手段だということをデータをもって示す必要がある。
ロジャー・ロフマンRoger Roffman(ワシントン大学ソーシャルワークの教授)

●依存の問題を比較衡量する
「大麻合法化」とは何かによって、その影響も異なってくる。
拘禁刑を罰金刑に置き換えることを想定するなら、「合法化」は依存者の増加につながることはないであろう。もし大麻の使用、栽培、販売を合法化するという意味であれば、近代国家でこのようなことを試みた例がないので、その影響を予見するのは困難である。
大麻の使用と販売を合法化すれば、より多くの人がこれを使用し、おそらく大麻依存も増加することになると考えるのが常識だろう。しかしながら、どの程度増加するかについては、合法化された市場において使用を削減するような変動要素が不確定であるため、推定するのは困難である。たとえば、課税によって価格を調整して使用機会を削減すること、含有するTHCの規制、未成年者への販売制限、パッケージに健康への警告を記載することなど。
これらの可能性を考慮すれば、合法化された市場が大麻依存の増加にどの程度寄与するかを推定することは、困難となる。大麻依存の問題は、大麻を何らかの方法で合法化することを検討する際には、考慮しなければならないが、また同時に、現行制度の抱える負の担要因―より強力な大麻の創出や、法制度の軽視につながる大麻規制の広範な無視などと比較衡量することも必要である。
ウェイン・ホールWayne Hall (クィーンズランド大学(オーストラリア)公衆保健スクールの公衆保健の教授)

次回へ続く
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政府VS諮問委員会|英国の大麻規制2009年の変更10

2009/11/03 19:07
前記事でお伝えしたように、大麻の規制分類に関する発言をめぐって引き起こされた、英国(UK)の薬物乱用諮問協議会(ACMD)と内務省との対立は、ますます混迷の度合いを深め、メディアの報道も激化しています。
11月2日には、この問題について、内務大臣が議会下院で答弁を行い、その内容がBBCニュースに掲載されています。BBCの最新記事に基づいて、もう少し、この話題を読んでおきます。

下院での答弁で、ジョンソン内務大臣は、ナット教授を解任した理由は、「委員会の業務に関することではなく、彼の役割は助言であって、批評ではないという点を・・・彼は認めなかったという過ちがあったことによる。」と説明しました。さらに大臣は「薬物政策に関する私の主要なアドバイザーとして、ナット教授の能力への信頼を失った。」「ナット教授の言動は、政府を支持するというより、むしろ政府を害するものである。」と付け加えています。

ナット教授の解任に抗議してACMD委員を辞任したキング博士は、BBCのインタヴューで、彼の辞任理由を語っています。大臣は、薬物の規制分類に関して、政府がすでに決定済みの課題について諮問協議会に諮問し、協議会を「ゴム印を押す機関」として利用したと批判し、このままでは協議を続けることはできないとしています。

薬物乱用諮問協議会(ACMD)は、ナット教授の解任と、これに抗議して2人の委員が辞任し、現在は28人の委員が残っています。ACMDは、内務大臣に書簡を送り、「委員のほとんどはナット教授の解任と、他の委員の今後について深刻な懸念を持っている。」と伝えました。また「このような状況下で、内務大臣が協議会の答申をどのように受け止めており、また将来においてどのように受け止めるのかを明らかにし、保証するよう、委員は望んでいる。」という内容も添えられているということです。
以上は、次の記事を参照した内容です。
BBC NEWS>Drug experts' warning to Johnson
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/8337185.stm

重要な政策決定に当たって、専門家による審議会に対して政府が諮問を行い、その答申に基づいて政府案をまとめるという流れは、日本でも行われています。薬物規制の分野でも、従来からこの方式が行われており、最近では今年8月に開催された、薬事・食品衛生審議会の指定薬物部会の議事録が公開されたところです。
政府の審議会委員としての活動と、専門家としての活動が、必ずしも同じ路線をとるとは限りません。いま英国で起きている問題に、他人事ではないという思いで注目して折られる方もあるでしょう。
とはいえ、わが国では、諮問委員会の審議がごく形式的なものに終わってしまう例も多く、また、その答申が政策に反映されないことも珍しくないため、深刻な対立もあまり起きないという、馴れ合いの土壌がしっかり形成されてしまっているのかもしれませんが・・・。
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