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2012/01/24 02:17
●デザイナードラッグの登場
今日、「合法ドラッグ」と呼ばれて流通しているものが最初に登場したのは、1980年ころのアメリカ、カリフォルニア州でした。
「ダメ・ゼッタイ」ホームページに、そのエピソードの断片が紹介されています。
「デザイナー・ドラッグ(疑似麻薬)が最初に発見されたのは1979年カリフォルニアで、二人のヘロイン中毒者が死体で発見されたときのことです。彼等の死体の近くにはヘロインに似た粉末の入ったパケ(パケは「包み」。麻薬など薬物の末端密売用の小さな包みで、アルミフォイルかポリマーでできている場合が多い)が幾つか落ちていました。最終的にこの物体の正体が、DEAによって判定されるまでに、同様の死亡事故が更に13件発生しております。結局、DEAの判定は、外科手術によく用いられる麻酔剤であるフェンタニルのアナログ・ヴァージョン(疑似物として作成した物)でした。」[1]
ここで述べられているのは、当時、ヘロインよりはるかに強力な「合成ヘロイン」として流通していた、「チャイナ・ホワイト」と呼ばれる脱法ドラッグのことです。
1979年12月に相次いで報告された2人の死亡例では、死亡者にはヘロインの使用歴があり、解剖所見はヘロインの過量摂取による中毒死と一致していました。ところが、体液の毒物分析ではヘロインやその代謝物が一切検出されなかったのです。まさに謎の死亡です。その後も謎の死亡が相次ぎ、1980年の末までに15例の死亡が報告されています。また、街の密売人から「ヘロイン」として押収された薬物のなかにも、分析試験の結果ヘロインが検出されない例も相次ぎました。
DEAの調査の結果、問題の薬物はα−メチルフェンタニルであり、強力な麻酔・鎮痛薬として医療用に使われるフェンタニルに類似した化学構造の化合物(アナログ)であると発表され、1981年9月、α−メチルフェンタニルはスケジュールT薬物として規制対象に加えられました。
ところが、この時点では、化学構造の一部をさらに組み替えたパラフルオロフェンタニルが市場に登場していたのです。その後、少しずつ構造の異なるフェンタニルのアナログ物質が次々に登場しますが、なかでも3−メチルフェンタニルは、一連のフェンタニル類似薬物の中でもっとも強力な作用を持つ薬物で、医療用のフェンタニルの6000倍ともいう強力な作用をあらわします。この薬物が市場に登場した時期には、過量摂取による中毒死が相次ぎました。
このころ、「チャイナ・ホワイト」あるいは「合成ヘロイン」として売られていた脱法ドラッグが広まるとともに、多くの密造者が類似作用を持つ化合物を作り、同じように売り出しました。フェンタニルの類似薬物だけでなく、様々な合成オピオイドが同じ名前で流通していたのです。
そのなかで、とくに大きな問題を起こしたのは、MPPP(医療用鎮痛剤として使われるメペリジンの類似化合物)で、これを常用した人たちに、神経細胞の破壊によるパーキンソン病の発症が相次いだのです。後に、パーキンソン病を引き起こしたのは、MPPPを合成する過程で温度とペーハーの管理が不十分だったために、脳に重大な損傷をもたらすMPTPが副産物として含まれ、これがパーキンソン病を発症する原因だとわかりました。
1980年代初めのカリフォルニア州で、ヘロインより強力な「合成ヘロイン」として登場し、急速に広まった脱法ドラッグ「チャイナ・ホワイト」が巻き起こした重大な健康被害は、薬物規制のあり方に新しい論点を提起しました。
既存の薬物の化学構造の一部を組み替え、次々と新規化合物が生み出され、脱法ドラッグとして市場に供給される事態に対処するために、新しい法規制の手法が求められ、やがて連邦アナログ法令が誕生することになります。
なお「チャイナ・ホワイト」とは、もともとアジア産の高品質ヘロインをさす名前で、当時ゴールデン・トライアングルで産出されるヘロインがアメリカへ密輸され、「チャイナ・ホワイト」「ナンバー4ヘロイン」などの名で呼ばれていました。この名が脱法ドラッグに用いられた経緯はわかりません。
[参考文献]
[1]ダメ・ゼッタイ>薬物データベース>デザイナー・ドラッグズ(DESIGNER DRUGS)の詳細
http://www.dapc.or.jp/data/other/6-1.htm
[2]フェンタニルのアナログ薬物について
Henderson, G. L
Designer Drugs: Past History and Future Prospects
Journal of Forensic Sciences 33(2), 569-575 (1988)
[3]MPPPと連邦アナログ法令について
GREGORY KAU,
FLASHBACK TO THE FEDERAL ANALOG ACT OF 1986:MIXING RULES AND STANDARDS IN THE CAULDRON
The University of Pennsylvania Law Review Volume 156, Issue 4
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