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弁護士小森榮の薬物問題ノート

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弁護士小森榮の薬物問題ノート
ブログ紹介
近著のご紹介
1,000件を超える薬物事件の経験を集約して、弁護人のための実務書をまとめました。鑑定、予試験、尿の押収など、薬物事件に特有の手続は、とくに力を注いでいます。
もう一歩踏み込んだ 薬物事件の弁護術
小 森  榮:著
発行:現代人文社(GENJIN刑事弁護シリーズ15)
税込価格:3,996円

ご注文は、現代人文社ホームページへ
http://218.42.146.84/genjin//search.cgi?mode=detail&bnum=20221


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小森 榮の葬儀のご案内

2017/01/29 09:58
闘病中だった小森 榮は、
1月26日早朝、入院先の病院で永眠いたしました。

つきましては、下記のとおり葬儀を執り行いますので、
ご案内申し上げます。

■通夜式
平成29年2月2日 18:00〜19:00
■告別式
平成29年2月3日 11:00〜12;00

喪主 小森洋子(妻)
通夜式および告別式は無宗教の形態で行います。

■式場 
代々幡斎場
 東京都渋谷区西原2-42-1
 電話 03-3466-1006
 式場の案内は下記をご覧ください。
 http://www.yoyohata-saijou.info/map.html

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小森 榮が永眠いたしました。

2017/01/26 17:24
闘病中だった小森 榮は、
1月26日早朝、入院先の病院で永眠いたしました。

皆様方のご指導、ご支援に感謝しながら
心安らかに人生の幕を降ろすことができました。

ありがとうございました。

なお、葬儀については後ほどご案内申し上げます。
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医療用大麻について―その3

2017/01/20 13:10
中断していた医療用大麻の連載記事を再開します。
先行記事は
■第1回 医療用大麻について(2016/11/26)
 http://33765910.at.webry.info/201611/article_2.html
■第2回 医療用大麻について―その2 (2016/11/30)
 http://33765910.at.webry.info/201611/article_3.html

3 連邦法と州法の衝突
 1980年代から90年代にかけて、米国社会が薬物に対する不寛容さを強めていくなかで、医療用大麻の容認を求める声もしばらくは低調でしたが、やがて、カリフォルニア州でエイズ問題が顕在化し、また先進国共通の問題としてがん患者が増加し、エイズやがんの化学療法による吐き気や食欲不振といった症状に見舞われた患者たちが自己治療的に大麻を使うことが増え、医療用大麻を求める声が再び大きくなり始めました。
 医療用大麻州法の第二波は、1996年にカリフォルニア州が、住民投票を経て、医療用途での大麻使用を可能にする州法を成立させたときに始まり[@] 、今日に至っています。(同年、アリゾナ州でも医療用大麻州法が住民投票に付され、多数票を獲得しましたが、州議会によって同法の制定は拒否されました。)

 しかし、連邦法では依然として大麻はスケジュールT薬物であり、医療用の使用は認められていません。医療用大麻をめぐって、州と連邦との間の確執が、再び展開されることになりました。
前述したように、1970年代からの第一波では、医療用に大麻を処方する医師に対して、連邦麻薬取締局が麻薬処方資格を取り消すという動きに出ましたが、第二波として新たに制定された州法では、この点について解決が図られ、医師が患者に対して直接大麻を処方することを避ける形がとられるようになりました。つまり、患者を診察した医師は、その患者の症状に対して大麻が有効であると思われる場合には、医療用大麻の使用を推薦する書面を作成し、州の機関がこの推薦状に基づいて、医療用大麻使用患者を認定するという方式が採用されるようになりました。医師が専門的な知見に基づいて意見を述べることに関しては、連邦政府も麻薬取締局も、口をさしはさむことはできないわけです。

 ところが、第二波では、また新たな局面が浮かび上がり、州法において明確に規定されていなかった医療用大麻供給所に対して、連邦政府の摘発が続きました。
 医療用大麻を容認する州法の多くは、認定された患者と介護者が、患者の治療に使うために一定量の大麻草を栽培し、収穫した大麻を所持することを認めています。そして、登録された会員患者に大麻を提供するのが、州の免許を受けた医療用大麻供給所です。医療用大麻供給所は、個々の患者が自ら栽培する代わりに、協同組合によって大麻草の栽培や大麻の管理を行い、非営利で、会員に大麻を供給します。たとえばカリフォルニア州では、患者及び介護者が協同組合(cannabis cooperatives)を結成して、大麻を栽培することができるとしています。
 その一方、連邦が定める規制物質法は、大麻の栽培や分配、分配目的の所持は違法行為としています。1998年、連邦政府はカリフォルニア州で稼働していた協同組合に対して、連邦法に違反して大麻を栽培し、分配しているとして、その活動の仮差止請求を行い[A] 、その後は類似手法による摘発・取締まりが続きました。
 2009年10月、オバマ政権は、医療用大麻を容認する州法を整備した州では、医療用大麻の認定患者の摘発を見合わせるとしたガイドラインを発表し[B] 、ようやく連邦法と州法との間である意味での和解が成立しましたが、供給所をめぐる衝突は、まだ着地点が見えていません。

 2011年10月、米連邦がカリフォルニア州内の収益追求型の医療用大麻供給所に対して、重点的な取り締まりを行うと発表し、州内では、連邦司法省の要請に従って閉鎖する供給所が相次ぎ、また閉鎖要請に応じない供給所に対する強制捜査や関係者の逮捕も報じられました。
 たとえば、2013年1月、サンディエゴで2店の医療用大麻供給所を運営する男性に対して、サンディエゴ連邦地裁は、100か月(8年4か月)の拘禁刑と犯罪収益の没収を言い渡しました。被告人は、1000キログラムを超える大麻の供給、薬物関連施設の運営、マネーロンダリングなどで起訴されていました[C] 。判決メモによると、この被告人には、カナダ産の高品質大麻の密売にかかわった経歴があり、当時の主要な大麻の入手相手が2008年に逮捕された後、医療用大麻の取り扱いに転身したとされています。通信傍受などによって明らかになったのは、被告人が、非営利組織であるはずの医療用大麻供給所を利用して、大麻を大量に販売し、多額の収益を得ていた事実です。2か所の供給所は、1日平均5千ドルから7千ドル(約45万円から64万円)の大麻を販売していました。供給所の1店では1,732人の会員が登録されていましたが、その大半は18歳から22歳の若年者でした。
 しかし、カリフォルニア州で展開されている医療用大麻供給所に対する取り締まりで、連邦法違反に問われている被告人は、このケースだけに限りません。ニューヨークタイムズが2013年1月の記事で取り上げているのは、カリフォルニア東部で医療用大麻供給所を経営していた34歳の男性です[D]。彼は、2009年に供給所を設立し、75人の従業員を雇用し、会計士や弁護士を顧問にし、800万ドルの年商をあげていました。前科はなく、大学を出て様々な業種で働いた後、起業した男性です 。記事は、カリフォルニア州法にのっとってビジネスを展開し、連邦法によって起訴されたこの男性の上に、米国の大麻政策の大きな矛盾を描き出しています。

[参照と出典]
@ Proposition 215, or the Compassionate Use Act of 1996
A United States v. Oakland Cannabis Buyers’ Cooperative(May 14, 2001)
B MEMORANDUM FOR SELECTED UNITED STATES ATTORNEYS,October 19, 2009
C DEA>San Diego Man is Sentenced to 100 Months for Running Marijuana Dispensary and Money Laundering(January 24, 2013)
http://www.justice.gov/dea/divisions/sd/2013/sd012413.shtml
D NewYork Times, In California, It’s U.S. vs. State Over Marijuana(January 14, 2013)
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遺すことば

2017/01/19 21:52
私は、いま食道がん末期の病床についています。
昨年5月、胃に違和感を覚えて受けた検査で食道がんがみつかり、治療を開始して以来8か月、数えきれないほどの検査を重ね、様々な治療を試み、一時的に改善することもありましたが、がんの進行を抑え込むことはできず、今は8回目の入院中です。

この間に、社会では、薬物問題に関して多くの出来事があり、その都度、メディア関係の皆様から多数のご連絡を頂きましたが、体調が許さず、ごく一部しか対応できないことが重なりました。お話ししたいことは山ほどあるのですが、残念です。

世界は、いま、大きな変革期を迎えているようです。薬物問題というフィルターを通しても、社会の流れが様変わりしていることがひしひしと感じられます。
この数年、社会変化のダイナミズムを実感し、この重要な節目に居合わせた私たち世代が、記憶し、記録し、語り継いでいくべきことがあると思いながら、私は薬物問題に取り組んできました。

このブログでも、多くの話題を取り上げながら、断片的に語り散らしてきました。連載記事を書きかけたまま、中断してしまったものも多数あります。
長い闘病生活の末、体力も気力も衰えてしまっていますが、残された時間のなかで、少しでも、まとめをしておきたいと思います。

次の時代へ遺すことば、少しずつ、書いていきます。
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違和感が消えない不起訴処分―ASKAさん事件

2016/12/20 04:38
執行猶予付き判決で社会復帰していたミュージシャンがふたたび逮捕されたのが、先月28日。当時の報道では、任意で提出された尿を正式鑑定した結果、覚せい剤が検出されたといいます。
ところが、勾留期限の昨日午後、嫌疑不十分で不起訴処分となりました。いったい何があったのでしょうか。私は、強い違和感を覚えながら、ニュースを見ていました。

不起訴と聞いたとき、私が真っ先に思い浮かべたのは、尿の任意提出手続の信頼性です。当時の被疑者については、覚せい剤の作用下にあることを強くうかがわせる言動があったといわれます。こうした状態の当事者が、仮に手続書類にサインしたとしても、尿を提出することの意味を正しく理解し、確実に同意したといえるでしょうか。

しかし、問題は別なところにあったようです。
報道によると、地検は、任意提出された液体からは覚せい剤成分が検出されたが、液体が本人の尿と立証するのは困難だとして、不起訴としたそうです。
また、警視庁組織犯罪対策5課は、確認するため、トイレに入った被疑者の背後に捜査員と被疑者の妻が立っていたが、トイレが狭く、手元までは見えず、確実に本人の尿だとの確認まではできなかったと説明しているそうです。

まず、ここに第一の違和感があります。
通常、採尿の場には捜査員が立ち会いますが、手狭な個室トイレなどでは、ときには被疑者の背後から確認することもあります。また、主要な場面は写真撮影されますが、もちろん、被疑者の手元まで撮影することはないでしょう。
でも、経験を積んだ捜査員なら、たとえ被疑者の肩越しでも、肝どころを見逃すことはないようです。捜査員の目を盗んで、採尿容器に水やお茶を入れるのは、至難の業です。

さらに、正式鑑定では、その資料が、まちがいなく人の体内を経て排出されたものであることが、科学的な方法で確認されています。分析に着手する前に、通常はペーハーが測定されているはずです。さらに、ガスクロマトグラフィー分析では、覚せい剤(メタンフェタミン)を検出すると同時に、微量なアンフェタミンが含まれているかどうかについても、確認するのです。アンフェタミンは、覚せい剤として摂取したメタンフェタミンが体内で代謝されて生まれたもので、これが同時に存在することで、その液体が、人の体内を通ってきたものだということがわかるのです。
今回の事案でも、こうした検査が行われたはずだと思うのですが。

警察が行う採尿の手順は、厳格に決められています。
その眼目は、
・提出された尿が、まちがいなく本人のものであること
・封かんされるまで、尿以外のものが混入されていないこと
が疑いなく認められるよう、複雑とも思える手順が定められているのです。

そもそも、現在のやり方は、
・採尿が手順どおりに行われ、
・採取した尿の取り扱いに問題がなく、
・鑑定のための分析検査が正しく行われていれば、
問題など起きないように、組み立てられているといってよいでしょう。

問題が起きているとすれば、尿を採取し保管する過程か、鑑定の過程に何か問題、あるいは何らかの手抜かりがあったのではないかと、考えてしまいます。

ここで、第二の違和感が浮かび上がります。
だったら、もういちど尿を採取する選択があったはずではないか。
採尿をやり直すのは、捜査に不透明感を残しやすく、あまり感心したやり方とはいえません。しかも、覚せい剤を摂取して一定時間が経過すると、尿中に排泄される覚せい剤は急速に少なくなります。このケースで、果たして二度目の採尿が妥当だったかどうかは、わかりませんが。

この事案は、任意提出された尿中に覚せい剤が検出されたことから、捜査が開始されました。
覚せい剤使用罪の立証において、尿の鑑定書は、最も有力な証拠とされていて、たとえ当事者が否認し続けていても、有罪を認定する根拠とされることさえあるのです。
もちろん、ほかに有罪に結びつく証拠がないまま、鑑定書だけで公判を維持するのは、あまりに強引です。そのために、警察は被疑者の周辺を捜査し、細かな証拠を収集します。
ところが、今回の事案では、被疑者の関係先からめぼしい証拠品が押収されなかったようだといわれていました。
思えば、そのころから急に、捜査の進展状況について、一切の情報が聞こえなくなってきたようです。捜査活動が、暗礁に乗り上げていたのでしょうか。

検察や警視庁の発表が報じられても、私の感じている違和感は、いっこうに収まりません。当初から、世間の耳目を集めてきた事案だけに、もっと納得できる説明がほしいところです。

ところで、報道のなかに、今回被疑者から提出された尿が少なかったため、再鑑定ができなかったという説明がありましたが、この点は誤解です。現在、鑑定のための採取された尿は、量の多少に関係なく、鑑定の過程で全量を使い切ります(残量は廃棄する)。再鑑定のために残量を保管する仕組みがないのです。
ちなみに、スポーツドーピングの検査では、採取した尿の半量を保管し、後日の再鑑定に備えています。

<メディア関係の皆様へ>*****
いまも療養中の私は、現在、またしても入院治療中で、ご連絡いただいた方の、ほんの一部しかお応えできない状態が続いています。
まだしばらく入院生活が続きそうです。
当面は、ご理解くださるようお願いします。

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医療用大麻について―その2

2016/11/30 20:03
2、米国での規制強化と医療用大麻運動

 大麻は、1961年の麻薬に関する単一条約で国際的な麻薬規制の対象として規定され、米国では、その批准に伴う国内法として規制物質法(Controlled Substances Act:CSA)が1970年に導入されました。
 この法では、乱用のおそれのある物質がスケジュールTからXまでの5段階に分類されています。あへんから精製されるモルヒネ、コデインなどのオピオイド系麻薬や、コカイン、アンフェタミンやメタンフェタミン(日本でいう覚せい剤)などはスケジュールUに分類され、医療用途での使用が認められているのに対して、大麻はスケジュールTに分類され、医学的用途での使用を含め一切の使用が規制されています[下記参照@] 。

 [スケジュールTの基準]
 ・乱用の危険性が高い
 ・現時点で合衆国において、一般に認められた治療のための医学的用途がない
 ・医療管理下での使用において一般に認められた安全性の欠如

 [スケジュールUの基準]
 ・乱用の危険性が高い
 ・現時点で合衆国において、一般に認められた治療のための医学的用途、もしくは厳格な制限事項を伴う医学的用途がある
 ・乱用により、深刻な精神もしくは身体依存に至らしめる危険性がある

 新法の整備とともに、薬物犯罪を取り締まる連邦の機関として連邦麻薬取締局(DEA)が創設され、大麻の違法栽培や密輸、密売などに対する取り締まりが強化されました。さらに、ニクソン大統領が「薬物問題はアメリカにとって一番の敵」と宣言し、政府をあげて薬物との戦い(War on Drugs)を開始するなど、この時期のアメリカ社会は、薬物に対する不寛容さを急速強めていきました。

 しかし、当時の米国は、ちょうど青春を迎えたベビーブーマー世代を中心に若者の間に大麻使用が広がり、中流階級の子弟にまで薬物乱用が拡大していた時期に当ります。1975年には、全米の中高校生を対象にしたモニタリング•ザ•フューチャー調査が開始されましたが、1978年調査では、高校3年生の過半数が過去1年以内に大麻を使ったことがあると回答しています[下記参照A] 。
 拡大しつつある薬物乱用に対処しようと、犯罪としての取締まりを強化する連邦当局に対して、取り締まりの行き過ぎに警戒する様々な立場から、反対意見も湧き上がり、活発な論争が行われるようになったのも、この時期からです。当時、若者を中心に最も広まっていた大麻に対する政策が議論の中心になり、非犯罪化や医療用途での使用容認など、様々な主張を掲げる社会的な運動が広まり始めたのです。

 1970年代半ば、医療用大麻に関しては、運動のその後を決定づける重要な出来事がありました。大麻栽培で逮捕された男性が、裁判で、自分の緑内障の治療のために大麻が必要だと訴えたことが認められ、検察官は彼に対する刑事告発を取り下げたのです[下記参照B] 。この裁判を受けて、連邦政府は新薬のコンパッショネート・プログラム(Compassionate Investigational New Drug program)を開始し、認定された特定の患者に対して、政府機関を通じた大麻供給が開始されました。
 このプログラムはごく限定的なもので、対象となった患者は限られていましたが、その後の運動に大きな影響を及ぼし、州単位で、医療目的での医師による大麻の処方や、大麻の臨床研究を容認する州法を制定する動きも活発になり、1978年にはニューメキシコ州で最初の医療大麻州法が成立しました。1982年末時点で、全米で31の州とワシントンDCで医療用途での大麻使用に関する内容を含む州法が制定され、米国における医療用大麻運動の第一波となりました[下記参照C] 。

 しかし、連邦政府はこうした州の動きに対して、対抗策を取り始めました。医師の麻薬処方資格を審査する連邦麻薬取締局は、州法に基づいて大麻を処方する医師に対して、麻薬処方資格を取り消すという措置に出たのです。当時の州法では、処方を受ける患者が刑事処分を受けないように保護する規定は盛り込まれていましたが、処方する医師の資格を守る手段は講じられていませんでした。
 結局、1980年年代半ばころには、医療用途で大麻の処方を容認することを定めた州法のほとんどは廃止され、あるいは実質的に無効化されて、第一波は終わりを告げました。

[参照と出典]
@ US Code - Section 812: Schedules of controlled substances
A 全米の中高生を対象にした薬物アルコールの実態調査、1975年に開始されて以来、毎年調査が行われている。現在は、下記のサイトで2016年調査の速報が発表されている。
  http://www.monitoringthefuture.org/
B US v. Randall, November 24, 1976
C RL Pacula et al., State Medical Marijuana Laws: Understanding the Laws and their Limitations, 2001
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医療用大麻について

2016/11/26 18:20
少し前のことですが、医療用大麻の解禁を訴えていた元女優が大麻所持で逮捕され、ひとしきり医療用大麻が話題になっていたころ、私はちょうど入退院を繰り返していたため、多くの問合せをいただきながら、対応できずにいました。
ようやく私の体調も落ち着き、しばらく遠ざかっていた世間の話題に目を通している今も、ボツボツと「医療用大麻ってなんですか?」といった声が寄せられます。

遅くなりましたが、ここで、医療用大麻についてまとめを掲載しておこうと思います。
ここで取り上げる話題の多くは、すでに、当ブログで語ってきたことですが、折々のテーマの中に埋没してしまったので、あらためてまとめてみます。

医療用大麻とは何か
 医療用大麻の運動は、1970年代の米国で始まり、今日では、28州とワシントンDCでは医療用大麻制度として導入されているものです。
 米国の連邦法では、大麻はスケジュールT薬物に分類されていて、医療用の目的が全く認められていないのですが、医師の監督下で特定の病気の患者や介護者が、病気治療のために大麻を取り扱った場合に、違法として刑事処分を受けないとするのが、医療用大麻制度です。
 最近では、この制度の亜流として、大麻の成分のなかでも、酩酊をもたらすTHCの含有が少なく、神経系の鎮静作用に優れているといわれるCBD(カンナビジオール)を豊富に含む製品に限って、医療用として認めるというものも現れています。

1、医薬品としての大麻
 長年使われてきた薬用の動植物から、薬効成分を抽出し、その化学構造を解明する技術が大きく進化したのは、19世紀半ば以降です。19世紀ころまでの医療では、エキス、チンキといった形で、薬用植物の成分を濃縮した製剤が、様々な症状の治療に用いられてきました。医師たちも、薬用あへんの濃縮液つまりあへんエキスやあへんチンキ、大麻の成分を濃縮したインド大麻エキスやインド大麻チンキ、といった製剤を使っていたのです。
 なお、このころの医学界では、薬用に用いる大麻を「インド大麻」と呼んでいます。当時は、繊維や種子を採取するために、大麻草の栽培が世界中で広く行われていましたが、ヨーロッパや日本など温帯から寒冷地にかけての気候では、屋外で栽培する大麻草が分泌する樹脂成分は少なく、大麻草から抽出される薬効成分はわずかです。いっぽう、熱帯地域で生育する大麻草は、豊富な樹脂成分を分泌し、多量の薬効成分を含むため、医療用に用いるのに適しています。当時の人たちは、熱帯地方で生育する大麻草を「インド大麻」と呼び、自分たちの生活圏で栽培される大麻草とは別種のものと考えていたようです。

 1896(明治29)年、最初の日本薬局方が編纂されたとき、その参考にしたのは、当時のヨーロッパの医学、薬学だったことから、日本薬局方には、薬用植物の粉末、エキスやチンキといった製剤が多数取り上げられていて、その中には「印度大麻越幾斯(インド大麻エキス)」も含まれていました。
 私が確認できた最も古い資料は、1891(明治24)年の改定日本薬局方 ですが、そこに収載された説明は、次のようなものです。原文は漢字とカタカナの表記ですが、カタカナをひらがなに、旧字を現代の文字に改めています。(出典:三上春豊編『改正日本薬局方』明治24.5、国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収蔵)

 [印度大麻草]
 Herba Cannabis Indicae.  Cannabis sativa Linn.
印度大麻草は印度北部に於て其果実稔熟の初期に当り採集せる帯花枝尖にして多くは雌性なり其分葉は狭くハ鍼状をなし粗き鋸歯を有し両端に向て殊に狭隘となり間樹脂様の物質に由て穂本に粘着す臭気は峻烈麻酔性味は微に苛辣なり
本品は緑色なるを可とす又茎並に果実を混有するも僅微に過く可からす
注意して貯ふへし (同書169-170頁)
[印度大麻越幾斯]
Extractum Cannabis indicae.
印度大麻越幾斯は
印度大麻草粗末        一分
を取り
酒精               五分
を注き六日間冷浸し濾漉し又其残滓に
酒精               五分
を注き三日間冷浸し濾漉し漉液を合し濾過し蒸発して●(のぎへんに周)厚越幾斯とな し製すへし
本品は黒緑色にして酒精には澄明に溶解し水には溶解せす
注意して貯ふへし (同書119-120頁)

 さて、かつては医薬品として重要な地位を占めていた薬効植物の濃縮液、エキスやチンキといった製剤ですが、19世紀初頭にあへんからモルヒネが単離されたのを端緒に、製薬技術がめざましい進歩を遂げるとともに、より安定した効果を得ることのできる今日のような医薬品に置き換えられていき、今日では、医療の場であまりみかけなくなっています。現在では、あへんから生まれるモルヒネ、コデイン、テバインといったオピオイド系の医薬品は鎮痛薬や風邪薬まで幅広く使われ、また、コカの葉からとれるコカイン塩酸塩も、局所麻酔薬として使われています。

 いっぽう、大麻の薬理成分に関しては研究が遅れ、最も重要な成分であるデルタ9-THCの単離に成功したのは20世紀半ばになってからです。その後、大麻に含まれる成分(カンナビノイド)が次々と解明され、主要なものだけで60種を超えるカンナビノイドが明らかになっています。
 近年では、カンナビノイドに関する研究が急速に進み、大麻からの抽出成分や、カンナビノイドに類似した合成薬を用いた医薬品の開発も進められていますが、オピオイド類などと比べて研究の歴史がまだ浅いことから、医薬品としての信頼性や完成度をどう評価するかについて、医学・薬学会での論調は必ずしも固まっているとはいえません。現時点では、このギャップが、医療用大麻をめぐる重要な争点になっているのです。
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