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弁護士小森榮の薬物問題ノート

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弁護士小森榮の薬物問題ノート
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地方裁判所で取り扱う刑事事件の約15%を占めているのが、覚せい剤事件です。実際の事件の多くは、若者が安易な考えで薬物を乱用したというもので、本来は犯罪と無縁なはずの彼らが、犯罪者として処罰されてしまうことが、私には残念でなりません。
私が弁護士として、薬物事件に取り組むなかで直面する、薬物乱用にまつわる諸問題の断片をつづってみます。
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覚せい剤密輸|税関検査の可視化を問う

2012/05/18 23:48
今朝、羽田空港で11キロの覚せい剤密輸が摘発されたと、NNNのTVニュースが伝えています。

<ニュースから>*****
●スモークサーモンの箱から覚醒剤9億円相当
18日朝、覚醒剤約11キロをスモークサーモンの箱に隠し、アメリカから羽田空港に持ち込んだとして、アメリカ国籍の男女3人が覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕されていたことが捜査関係者への取材でわかった。末端価格にして9億円相当で、警視庁は国内で密売しようとした可能性があるとみて捜査している。
日本テレビ系(NNN) 5月18日(金)19時11分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20120518-00000058-nnn-soci
*****

お土産用にきっちりフィルムで包装した箱や、開封された跡がほとんど目立たないチョコレート缶、ラミネートパックで小分け包装された食品、瓶入りの酒・・・。密輸事件では、外国からのお土産品としてよく見かける食品のケースに、覚せい剤が巧妙に隠された例にしばしば出会います。そういえば、アメリカでは冷凍魚の腹にコカインをぎっしり詰め込んだ例や、野菜や果物をくりぬいて詰めたという例もありました。
この連休に外国へ出かけて、こんなお土産をどっさり抱えて帰国された方も多いのではないでしょうか。
手にとって眺めたとしても、ちょっと気付かないほど巧妙に隠された覚せい剤。手の込んだ隠匿は、税関検査をうまく通り抜けるための工作であると同時に、何か口実を設けてこの荷物を運搬させる運び屋の目を欺き、安心させる目的もあるのではないか・・・。私は最近、そんなことを感じ始めています。荷物を渡されて飛行機に乗り込んだ運び屋は、目的地までの長い時間に、託された荷物のことをあれこれ考え、眺めてみたりすることでしょう。外見に怪しいところが見つかれば、それが態度に出てしまい、税関で密輸が発覚することにつながります。荷物を運ばせる依頼人は、そこまで考えているのかもしれません。
密輸計画に関係のない第三者が、何らかの口実で荷物の運搬を頼まれるタイプの密輸事件では、荷物の中身をどこまで知っていたかで有罪・無罪が別れるのですが、その認識は実に微妙です。

覚せい剤密輸事件の裁判では、ほとんどの場合、検査に当たった税関職員が証人として出廷し、検査時の様子を供述することになります。多くの事件で語られるのは、覚せい剤を隠した荷物の異様さではなく、その荷物を持ち込んだときの被告人の様子の不自然さや、ちぐはぐな対応ぶりです。
多数の事件に当たってみて、私は、連日何百人もの旅行客に対応しているベテラン職員だからこそ感じる、ほんのちょっとした違和感が、密輸摘発のきっかけになっているだと、つくづく感じています。でも、法廷での供述や、定型化された報告書では、検査の際のリアルな印象は、なかなか伝わってきません。

覚せい剤輸入事件の裁判員裁判で無罪判決が相次いでいることから、関係機関で裁判における立証方法の再検討が進むなかで、密輸発覚の鍵となる税関検査の可視化も話題になっていると聞きます。犯罪捜査のために行うわけではない税関の検査過程を刑事事件の立証に供することには問題もあるでしょうが、私自身は、税関検査の録画を見ればきっと重要な発見があるだろうと、しばしば感じています。客観的な画像記録は、必ずや、無罪の証明にもつながると感じているのです。
手詰まりの感さえある密輸事件の立証にあたって、税関検査の可視化について、突っ込んだ討論を期待しています。

●ちょうど税関はいま密輸取締強化月間中
折から、全国の税関ではいま密輸撲滅キャンペーンを展開中、水際での取締を強化するとともに、密輸防止を広く一般に呼びかける活動をしています。羽田空港でも5月10日にイベントが行われ、海外旅行客及び空港従業者に密輸情報提供リーフレットを配布するなど、密輸入取締りへの協力を呼びかけたところです。強化月間とも知らずに覚せい剤を隠した箱を持ち込むとは、大胆なのか間抜けなのか・・・。
最近の密輸手口を紹介したビデオなど、広報資材をぜひご覧ください。

【参照】
● 税関チャンネル広報ビデオ「不正薬物の運び屋にならないで! 密輸防止キャンペーン」(You Tube)
http://www.youtube.com/watch?v=KNI2Lagk9-w&list=UUwnOIo5t_ZinLDoLiuLZYow&index=1&feature=plcp
● 東京税関広報資料「5月の薬物及び銃器取締強化月間における水際取締の強化」
*最近の密輸摘発事例を紹介したリーフレットが添付されています
http://www.customs.go.jp/tokyo/info/201205_kyokakikan.pdf
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脱法ドラッグ対策|過去の経験を振り返る1

2012/05/15 18:32
脱法ドラッグ販売業者の実態把握が、ようやく全国規模で行われるようになったようです。これまで報告のなかった地域でも、実態の把握が進んだ結果、全国29都道府県で389業者が脱法ドラッグを販売していることが明らかになりました。

<ニュースから>*****
●脱法ドラッグ販売、全国に拡大 29都道府県で389業者
「脱法ハーブ」など、麻薬に似た幻覚症状や興奮作用がある脱法ドラッグを店頭やインターネットなどで販売している業者数が3月末現在、29都道府県で389業者に上ることが14日、厚生労働省のまとめで分かった。厚労省は規制強化を検討している。
厚労省によると、3月末現在で業者数が最も多かったのは東京の94、次いで大阪73、愛知34、沖縄27、福岡21。
厚労省は3月、各都道府県からの報告を基に『1月18日現在で17都府県212業者』と明らかにしていたが、3月末現在で再報告を求めたところ大幅に増加。大都市圏にとどまらず各地に業者が広がっている実態が浮かび上がった。
2012/05/14 08:56 共同通信/47NEWS
http://www.47news.jp/news/2012/05/post_20120514085802.html
*****

● 日本は8年前に同じような事態を乗り越えてきた
現在の脱法ドラッグ市場は、日ごとに拡大の勢いを増しているように見えますが、日本社会は、いまはじめて脱法ドラッグ問題に直面しているわけではありません。今から8年ほど前の2005(平成17)年ころにも、同じように脱法ドラッグが広まり、大きな社会問題になったことがありました。当時の資料を改めて読み直すと、販売店の数やその分布などが現在の状況と似ており、また、健康被害例の報告が相次いでいたことも、現在の状況と重なります。
さて、かって日本の社会が直面していた脱法ドラッグ問題ですが、決してスムーズではなかったものの、多くの議論や試行錯誤を繰り返した末、私たちの社会はその問題をある程度解決することができたのです。2007年、現在の指定薬物制度が制定され、当時の脱法ドラッグ市場の人気商品がいっせいに規制対象に指定された後は、脱法ドラッグ販売業者がみるみる減少しました。
当時どんな対策がとられたのか、その足跡を振り返ってみることにしましょう。

2000年を過ぎたころから、脱法ドラッグの世界ではいわゆるケミカル系の新規薬物が次々と供給され始めていました。1990年代にアメリカの薬理学者アレクサンダー・シュルギンによって刊行された「PiHKAL」(愛しのフェネチルアミン)「TiHKAL」(愛しのトリプタミン)という2冊の本によって、合成薬物に対する一般の認識が大きく広がり、この2冊に掲載されたフェネチルアミン系(メチロン、2C-T-2、 2C-T-7、 2C-Iなど)とトリプタミン系(AMT、5-MeO-DIPTなど)の新規薬物が脱法ドラッグとして、続々と市場に登場していました。
しかも、折から本格的に普及し始めたインターネットの波に乗って、インターネット上にも大量の「合法ドラッグ」販売サイトが開設され、店舗販売とあいまって、脱法ドラッグ販売は急速に拡大し、死亡事故を含む多数の健康被害事例や、薬物使用に関連した殺人事件なども発生し、野放しになっている脱法ドラッグに対する取締りを求める声は、次第に高まっていました。

最初に対策に乗り出したのは東京都で、2005(平成17)年3月に「東京都薬物の濫用防止に関する条例」を制定し、知事指定薬物を指定すると同時に、販売業者に対する立ち入り調査などを強化して、問題の解決に向けて動き出したのです。
私の手元に、当時の資料が少しだけ残っていますが、それによると、条例制定前に都内で121 軒確認されていたいわゆる脱法ドラッグの取扱店舗が、監視指導体制を強化した結果、平成18 年9月末時点には37 軒になるなど、販売店舗は大きく減少したと報告されています[下記資料9ページ]。
同じ資料には、条例制定後に東京都が行った指導監視強化の内容が具体的に示されていますが、把握されていた販売店に対する立入調査を繰り返して行い、違反事業者に対しては警告書を交付し、また違反が悪質であれば警視庁による摘発も辞さずに取り組んだ軌跡を読み取ることができます。
[東京都の資料から]
2 指定後の一斉監視指導(4回実施)
ア 平成17 年6月:121 の対象店舗のうち80 店舗を立入調査
イ 平成17 年9月:60 の対象店舗のうち54 店舗を立入調査
ウ 平成18 年2月:55 の対象店舗のうち52 店舗を立入調査
エ 平成18 年9月:37 の対象店舗のうち35 店舗を立入調査
すべての立入店舗で知事指定薬物の取扱いはなかった。
3 都による警告例(2件)
平成17 年12 月、知事指定薬物の「5−MeO−MIPT」を含有する脱法ドラッグを販売していた都内の有限会社に対し、条例に基づき警告書を交付、当該品の販売中止、回収、廃棄を指示した。
また、平成18 年8月、知事指定薬物の「3CPP」を含有する脱法ドラッグを販売していた都内の株式会社に対し、条例に基づき警告書を交付、当該品の販売中止、回収、廃棄を指示した。
4 警視庁による摘発例(1件)
平成17 年11 月、警視庁は、知事指定薬物の「5−MeO−MIPT」を含有する脱法ドラッグを販売目的で所持していた都内在住の男性を逮捕した(50 万円の罰金刑が確定)
[下記資料34ページ]

【参照資料】
東京都薬事審議会編「東京都薬事審議会答申:東京都における今後の薬物乱用対策の推進について」2007(平成19)年12月
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覚せい剤で逮捕後に被疑者が死亡|覚せい剤急性中毒

2012/05/13 23:54
<ニュースから>*****
●容疑者死亡:覚せい剤譲渡容疑、聴取1時間後に−−大津署 /滋賀
大津署は12日、覚せい剤取締法違反(譲渡)容疑で逮捕した大津市・・・職業不詳、K容疑者(48)が取り調べ中に意識を失い、まもなく急性心不全で死亡したと発表した。
同署によると、K容疑者は今年2月22日ごろ、同市内で30代女性に覚醒剤を含む水溶液を譲り渡した容疑があり県警が行方を追っていた。12日午前2時15分ごろ、同市打出浜の大津署前の県道交差点でダンプカー(3トン)とワンボックスカーが絡むトラブルが発生。ダンプカーの助手席にいたK容疑者が大津署に駆け込み、署員が4人がかりで3階の取り調べ室に運び、同容疑で逮捕した。
数分後にK容疑者はぜんそくの症状を訴え、意識を失ったため病院に搬送したが同3時半ごろ死亡が確認された。司法解剖の結果、K容疑者から覚醒剤の陽性反応が出た。同署は「取り調べや対応に問題はなかった」としている。(当事者の氏名等を省略)
毎日新聞 2012年05月13日 滋賀版
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120513ddlk25040311000c.html
.*****

●覚せい剤による死亡について
わが国では、覚せい剤乱用による害といえば、依存性がとくに強調されてきたため、覚せい剤乱用によって多くの人命が失われている事実が、とかく忘れられていますが、過量摂取(オーバードゥーズ)、自殺、交通事故や飛び降りなど、覚せい剤の作用によって直接的に、あるいは間接的に、少なからぬ人が死亡しています。
勾留中の被疑者が体調の急変や、ときには自殺を図ったりして、病院へ送られることもそう珍しいものではありません。4月には、鳥取県で、勾留中の被疑者が自殺した事件が報じられました。

<過去のニュースから>*****
●警察で勾留中の男、留置室で首をつり死亡 : 社会
鳥取県警は22日、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕され、米子署で勾留中の男(43)が留置室で首をつり、搬送先の病院で死亡した、と発表した。
県警は自殺を図ったとみている。
県警警務課などによると、16日午前8時半頃、男が独房内のトイレでドアにスエットの上着を掛けて首をつっているのを、巡回中の署員が見つけた。
すでに意識がなく、病院に搬送されたが、21日夜に死亡した。(記事の一部)
2012年4月22日  読売新聞
*****

下記は、警察庁の資料から、過去15年間の「薬物に起因する乱用死者数等」を拾い出してみたものです。この資料で「乱用死」としているものは、薬物の過量摂取によって急性中毒症状を引き起こした結果、心不全などによって死亡したもので、一般に過量摂取(オーバードゥーズ)による死亡といわれるものです。
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↑薬物に起因する乱用死者数等の推移
警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課編『平成18年中の薬物・銃器情勢』(2007)41ページより転載
画像

↑薬物に起因する乱用死者数等の推移
警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課編『平成23年中の薬物・銃器情勢』(2012)22ページより転載

さて、改めて15年分のデータを並べてみると、およそ10年前、わが国に流通する覚せい剤の量が急速に減少するとともに、「乱用死」の数も減少している様子がわかります。覚せい剤の流通量が増加すれば乱用者が増え、それに対応して、急性中毒や、覚せい剤の影響下で起きる事故などによって、薬物関連死亡の数も増えることになるのです。

ちなみに、欧米では薬物関連の死亡は、わが国と比べると、はるかに多くなっています。欧米では一般に、わが国より薬物乱用が広まっていることもありますが、実は、統計の取り方の相違による差も大きいようです。欧米の統計では、薬物関連の死亡をもう少し広い概念で捕らえているようで、注射針を介して広まる感染症による死亡なども含んでいます。
薬物関連の死亡数に関しては、充実した国際的なデータがあるのに、わが国で、比較可能な形で統計がされていないため、外国と比較することができません。上記で紹介した警察庁のデータのほかに、国際比較が可能な集計も、ぜひとってほしいものです。
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脱法ドラッグの危険性|米国の研究報告から

2012/05/12 07:49
合成カンナビノイドを含む「脱法ハーブ」を使用した人が、急性の中毒症状を起こして救急搬送される例が続発しているのは、わが国に限ったことではありません。米国では、2010年に連邦レベルで合成カンナビノイド規制が導入されたにもかかわらず、その後も使用成分を切り替えて「脱法ハーブ」の販売は行われ、依然として多くの急性中毒患者が発生しています。
米中毒管理センターが受信した合成カンナビノイドによる中毒情報は、2010年・2,906件、2011年・6,959件、2012年1〜3月・1,901件。







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↑ABC News ‘Fake Pot Sending Kids to ER’(2012年3月19日)

米国では最近、医学関係者による中毒症例の臨床報告や、医学データの分析研究などが立て続けに発表され、メディアもその実態を報道しており、5月9日には、全米の中毒情報1,353例を分析した研究報告が、医学専門雑誌に掲載されました。たいへん貴重な報告なので、その概要をお知らせします。なお、以下は、医学のことは何も知らない私が、急いで日本語に置き換えたもので、不十分な説明や不適切な用語がありましたらお許しください。

●米中毒管理センターのデータ分析
全米の中毒管理センターには、合成カンナビノイド製品を使用して中毒症状を起こした患者の情報が多数寄せられていますが、最近、このデータを分析した研究報告が発表されました。分析の対象は2010年1月から10月の9か月間に寄せられた中毒情報のうち、合成カンナビノイド製品のみを使用した1353例です。
患者の大半は、医療措置を要しないレベルの症状がおよそ8時間にわたって持続しました。いっぽう、患者のうち7.3%(98名)は生命にかかわる重篤な症状を示し、また1名は死亡に至っています。
[報告された症状]N=1,353
 頻脈・・・・・・ 40%(541名)
焦燥・苛立ち・・・23.4%(317名)
嘔吐・・・・・・・15.3%(207名)
眠気・無気力・・・13.5%(183名)
精神混乱・・・・・12%(164名)
幻覚・錯乱・・・・9.4%(127名)
高血圧・・・・・・8.1%(110名)
めまい・・・・・・7.3%(99名)
胸痛・・・・・・・4.7%(64名)

最も典型的にみられた症状は頻脈ですが、これは大麻による急性中毒例でもよくみられる症状です。また、焦燥・苛立ちも、実は大麻の急性中毒の場合にもよくみられるものだといいます。一般に、大麻の急性中毒では精神運動活性の低下、沈静、無気力といった症状が特徴的ですが、著者らが行った大規模追跡研究によると、次いで多いのが焦燥・苛立ちだということです。
合成カンナビノイド中毒に特有の(大麻中毒ではみられない)ものとして、少数ながら発作の報告例があり、最近の臨床報告には3例の心筋梗塞事例があります。その原因が、製品に含まれた未知の合成カンナビノイドの作用によるものか、製品に含まれた合成カンナビノイド以外の成分によるものか、まだ解明されていません。
【参照】
@米中毒管理センター協会の資料
「合成カンナビノイドデータ・2012年4月16日改定」
http://www.aapcc.org/dnn/Portals/0/Synthetic%20Marijuana%20Data%20for%20Website%204.16.2012.pdf
AABC News ‘Fake Pot Sending Kids to ER’(2012年3月19日)
米Pediatrics誌に掲載された合成カンナビノイド中毒で救急搬送された10代の患者の臨床報告に関連した報道
http://abcnews.go.com/Health/video/fake-pot-k2-spice-sending-kids-to-emergency-room-15955181
BC.O.Hoyte,et al., A Characterization of Synthetic Cannabinoid Exposures Reported to the National Poison Data System in 2010, Annals of Emergency Medicine
http://www.annemergmed.com/webfiles/images/journals/ymem/FA-cohoyte.pdf

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規制手続開始とともに情報の提供を|脱法ドラッグ規制

2012/05/07 23:55
先日行われた指定薬物部会の結果、来る6月上旬から指定薬物として規制対象になる物質の案が、パブリックコメントで公表されています。今回は、合成カンナビノイド7物質、カチノン類1物質、メトキセタミン(MXE)という内容。
新たに指定される予定の合成カンナビノイドのなかには、従来のものとはまったく異なる基本骨格をもつ新タイプがいくつか含まれています。これまで、脱法ドラッグ市場に登場する多様な合成カンナビノイドは、5タイプの基本骨格に分類できるとされていたのですが、今や基本骨格は7タイプとも8タイプともいわれ、通称名さえ見当たらないものもあり、私のような素人には手に負えなくなってきました。

それにしても、規制開始に当たって、なぜ、一般向けの情報提供がないのでしょう。とくに今回の規制対象には、多発している健康被害に関係した物質がいくつか含まれているはずです。不幸にして起きてしまった死亡事故に関係している物質はどれか?多くの救急搬送事例に関係している物質はどれか?人体のカンナビノイド受容体への結合力がとくに高いことが危惧されている物質はどれか・・・?ユーザーを守るために必要な、こうした情報は、少しでも早く提供されなければならないはずです。

これまでの方式は、規制開始までのプロセスを隠密裏に運んで、販売側にインパクトを与えることに重点が置かれていたように思います。しかし、危険な成分や製品に関する情報を速やかに公表して、販売側の自主的な管理によって、危険度の高い製品を排除するよう促す努力もあってよいでしょう。

そういえば、今回の案に含まれているメトキセタミンについては、ちょうど英国(UK)でも、4月5日から暫定クラス薬物として規制が開始されたばかりです。図らずも、日英でほぼ同時に、メトキセタミンに対する規制がスタートすることになりますが、英国では、政府がメトキセタミンの規制を検討し始めたことがメディアで発表され、政府系の薬物情報提供サイトでは、若者向けにメトキセタミンの具体的情報が提供されました。
法規制へ向けた準備が、一切の発表もないまま隠密裏に進められているわが国の対策と、警戒情報を発しながら規制開始への手続きをスタートした英国の方法と、はたして社会はどちらを支持するでしょうか。

【参照】
@パブリックコメントとして公表された指定薬物の案について
パブリックコメント>「薬事法第二条第十四項に規定する指定薬物及び同法第七十六条の四に規定する医療等の用途を定める省令の一部を改正する省令」(案)に関する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495120045&Mode=0

A英国でのメトキセタミン対策に関する過去記事
■MXEへの緊急対策|英国の脱法ドラッグ対策(2012/03/10)
http://33765910.at.webry.info/201203/article_5.html
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健康被害危険情報|EUの脱法ドラッグ情勢3

2012/05/03 22:06
4月26日に発表されたEMCDDAとユーロポールの共同年次報告書を参照して、加速する新薬物の状況について考えています。今回は、新規薬物に関連して、最近のヨーロッパで起きている健康被害情報について紹介します(報告書11〜13頁)。ここで取り上げられているのは、主にフェネチルアミン系やカチノン類のドラッグです。
【参照】EMCDDAとユーロポールによる共同年次報告書
EMCDDA–Europol 2011 Annual Report on the implementation of Council Decision 2005/387/JHA(April 2012)
http://www.emcdda.europa.eu/publications/implementation-reports/2011

●PMMA(パラメトキシメチルアンフェタミン)関連の死亡事故
PMMAは覚せい剤(メタンフェタミン)や麻薬のPMAによく似た化学構造を持つ薬物で、1990年代末ころからMDMA類似の脱法ドラッグとして出回り、複数の死亡事故が発生していました。2001年にはEUレベルで規制され、わが国でも2010年に指定薬物として規制が開始されていますが、近年、ヨーロッパで再び出回っているようです。
ノルウェーの国立公衆衛生院は、2010年7月から2011年9月の間に、PMMA関連の死亡事故が20件あったと報告し、またスコットランド、オーストリアでも死亡事故が発生しました。
 通称名:PMMA、パラメトキシメチルアンフェタミン
 法令上の扱い:(薬事法・指定薬物第48号)1−(4−メトキシフェニル)−N−メチルプロパン−2−アミン1−(4− メトキシフェニル)−N−メチルプロパン−2−アミン及びその塩類
 化学名:1-(4-methoxyphenyl)-N-methylpropan-2-amine
画像

BBCニュースは、2011年7月に、スコットランドでPMMAを含む錠剤型の脱法ドラッグが大量に押収されたことから、警察が危険情報を発したと伝えています。
確認されたのはPMMAを含む錠剤で、エクスタシー錠剤として出回っていたものですが、粉末状のものが押収されることもあるといいます。PMMAはMDMAに似た作用がありますが、作用感がいくらか弱いため、ユーザーはもっと強い効き目を得ようと重ねて服用し、その結果、過量摂取による事故を起こしやすいということです。
【参照】BBC>Police chiefs issue warning over PMMA drug(22 July 2011)
http://www.bbc.co.uk/news/uk-scotland-14258153

日本では、PMMAは2010年4月に指定薬物として規制対象になっていますが、2011年に東京都の試買調査で、リキッド型ドラッグ2種からPMMAが検出され、製品の販売中止及び自主回収等が指示されました。
【参照】東京都>指定薬物を含有する違法ドラッグの発見について(2011年7月28日)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/07/20l7s400.htm

● 4−メチルアンフェタミン
ベルギーで、2011年9−10月間に、4−メチルアンフェタミンに関連した死亡事故を含む急性中毒事故が連続して発生。ほとんどのケースで、患者が摂取したドラッグおよび患者の血液から、4−メチルアンフェタミンとともにアンフェタミンが検出されています。EMCDDA調べでは、オーストリア、フィンランド、ルクセンブルグでも同種の薬物が確認されているといいます。
 通称名:4−MA、4−メチルアンフェタミン
 化学名:1−(4−メチルフェニル)プロパン−2−アミン、1-(4-methylphenyl)propan-2-amine
画像

↑Wikimedia Commonsより

4−メチルアンフェタミンはアンフェタミンに似た化学構造の薬物で、セロトニン、ノルエピネフリン、およびドーパミンの放出を促進させる作用があります。過去には食欲抑制剤として研究されたこともありますが、現在は医薬品として使われていません。ベルギーで確認されているのは、黄色がかった白色粉末。
なお、下記の参照サイトによれば、ほかに2011年に英国で、また2012年にはオランダで、4−メチルアンフェタミン関連の中毒例が報告されています。
【参照】Belgian Early Warning System on Drugs>4-Methylamphetamine alert by EMCDDA
http://ewsd.wiv-isp.be/Main/4-Methylamphetamine%20alert%20by%20EMCDDA.aspx

●MDPV
「バスソルト」として販売される脱法ドラッグの成分として広まったMDPVに関しては、欧米で多くの中毒事故の発生が報じられています。くわしくは、サイト内に関連記事があるのでご参照ください。
【サイト内関連記事】
@メフェドロンとMDPVがアメリカで問題になっている
http://33765910.at.webry.info/201101/article_15.html
AMDPV(アイボリー・ウェーブ)について|新ドラッグ警戒情報
http://33765910.at.webry.info/201103/article_7.html
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増え続ける合成カンナビノイド|EUの脱法ドラッグ情勢2

2012/05/02 00:08
4月26日に発表されたEMCDDAとユーロポールの共同年次報告書を読みながら、さらに加速する新薬物の状況について考えます。
【参照】EMCDDAとユーロポールによる共同年次報告書
EMCDDA–Europol 2011 Annual Report on the implementation of Council Decision 2005/387/JHA(April 2012)
http://www.emcdda.europa.eu/publications/implementation-reports/2011

●新タイプの登場と健康被害
前回の記事で述べたように、2011年中にヨーロッパ市場に現れた新規の合成カンナビノイドは、23種と急増しました。UKなどが包括規制を採用して多種類の合成カンナビノイドを一括して規制することで、新規物質の登場をある程度押さえ込んできたのですが、2011年に入って、市場に出回る合成カンナビノイドの種類が一気に増えたのです。新規物質のなかには、化学構造からみて従来とは異なる基本骨格を持つグループもみられます。

報告書の巻末に、2011年に報告された新規物質の一覧表がありますが、そこに記載された新規合成カンナビノイドの一部をあげておきます。
CRA-13 2011年1月、ドイツ
(naphthalen-1-yl-(4-pentyloxynaphthalen-1-yl)methanone)
JWH-250誘導体 2011年3月、ポーランド
 (1-(2-methylene-N-methylpiperidyl)-3-(2-methoxyphenylacetyl) indole)
AM-2233 2011年8月、フィンランド
(1-[(N-methylpiperidin-2-yl)methyl]-3-(2-iodobenzoyl)indole)
Org27569 2011年8月、フィンランド
(5-Chloro-3-ethyl-1H-indole-2-carboxylic acid [2-(4-piperidin-1-yl-phenyl)-ethyl]-amide))
Org 29647  2011年8月、フィンランド
(5-Chloro-3-ethyl-1H-indole-2-carboxylic acid (1-benzyl-pyrrolidin-3-yl)-amide, 2-enedioic acid salt)

さて、このように新規物質が大量に出回る時期には、健康被害の発生に対して警戒しなくてはなりません。報告書が取り上げるのは、2011年にドイツのSzaboらが発表した臨床報告で、合成カンナビノイドを含有するハーブ製品を使用した後に病院搬送された29症例をまとめたものです。
中毒の原因物質として最も多かったのはJWH−210(12症例)、次いでJWH−122(11症例)、JWH−081(7症例)、JWH−250(4症例)となっています。
観察された症状としては、頻脈が患者の76%にみられ、焦燥(41%)、知覚変化/幻覚(38%)、高血圧(34%)、血漿グルコースの上昇(31%)、血漿カリウム濃度の減少(28%)、吐き気/嘔吐(28)となっています。

なお、合成カンナビノイド製品の使用に関連した中毒症状に関する臨床報告は、アメリカにもいくつかあります。いま、私の知人の中元総一郎医師が、アメリカの臨床報告を読んでおられるので、近く、最近の傾向などについて、中元医師のお考えを紹介することができそうです。
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