弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 10月14日からデパス、アモバン等が向精神薬に

<<   作成日時 : 2016/09/15 23:32   >>

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エチゾラム(代表的な製品名はデパス)等3物質を向精神薬に指定する政令が、昨日9月14日に公布されました。施行は30日後の10月14日から(下記参照@)。
公布を受けて、製薬会社も「お知らせ」を発表し、関係者に注意を促し始めました(下記参照A)。

前記事でも述べたように、施行後は、デパスやアモバン(同成分のジェネリック医薬品も)は向精神薬として規制され、許可を受けない個人輸入や譲渡、譲渡目的所持などは麻薬及び向精神薬取締法違反として厳しく取り締まられることになります。

■向精神薬に指定される物質
@化学名:(RS)−6−(5―クロロピリジン−2−イル)−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン−5−イル=4−メチルピペラジン−1−カルボキシラート
別名:ゾピクロン
➢代表的な製品名はアモバン、数種類のジェネリック製品もあります。
A化学名:4−(2−クロロフェニル)−2−エチル−9−メチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン
別名:エチゾラム
➢代表的な製品名はデパス、ほかにも多くのジェネリック製品があります。
B化学名:7−ブロモ−5−(2−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−オン
通称:フェナゼパム
➢日本で承認された製品はありません。
*なお、前記事で紹介したように、パブリックコメントの案では、ゾピクロンの鏡像異性体(S体)であるSゾピクロンも指定されると記載されていましたが、今回の報道発表をみると、Sゾピクロン(製品名ルネスタ)については触れていません。正式な通知文書などがまだ確認できませんが、今回の指定ではSゾピクロンを特に指定対象として特定していないようです。

■政令の公布と施行
政令の公布・・・2016年9月14日
施行予定・・・・2016年10月14日

●処方薬乱用の現状
処方薬のなかでも、睡眠薬、抗不安薬には乱用による問題が、いつもつきまとっています。その実態を継続的に取り上げている調査研究として、国立精神・神経医療研究センターなどが継続的に行っている「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」の報告書をみてみましょう。

最新の2014年調査では、精神科医療機関で薬物関連障害患者の治療を受けた1,579 例のうち、「主たる薬物」が処方薬(睡眠薬・抗不安薬)だったのは13.1%、覚せい剤、危険ドラッグに次いで第3位となっています。また、対象者の18.4%が最近1年間に処方薬を治療目的以外で不適切使用したことがあるという結果も出ています(下記参照B)。 同調査では、処方薬(睡眠薬・抗不安薬)が主たる薬物であるかどうかにかかわらず、現在もしくは過去において乱用したことのある処方薬の薬剤名に関する情報も収集していますが、なかでも、最も多くの患者が乱用していた薬剤が、エチゾラム(120 例)でした。

報告書は、次のように述べ、警鐘を鳴らしています。
「今回、乱用患者数の多さが特に突出していた薬剤がetizolamであった。この薬剤は向精神薬指定がなされていないために長期処方が可能であることから、乱用者にとってはきわめて入手が容易である。また、われわれが埼玉県薬剤師会の協力を得て実施した薬局調査(松本ら, 2011b)では、向精神薬のなかではこの薬剤が最も重複処方(一人の患者に対して同時期に複数の診療科から重複して処方されること)されていることも判明している。おそらく適用症が多岐にわたること、後発品が多いために、処方医の側でも重複に気がつかないケースも少なくないと推測されるが、このような事情も乱用者にとっては入手を容易にする要因となりうる。すべての診療科の医師に対して注意を喚起する必要がある。」
画像

↑上記調査で10例以上の患者によって乱用されていた処方薬(睡眠薬・抗不安薬)
(下記参照Bより転載)

上の表にリストアップされた睡眠薬、抗不安薬のほとんどは、乱用のおそれがあり、また乱用された場合に重大な有害性があるとして向精神薬に指定されていますが、1位のエチゾラム(デパス等)と、11位のゾピクロン(アモバン等)は、これまで向精神薬に指定されていませんでした。そのため、様々な診療科で多様な症状に対して気軽に処方され、長期処方や重複処方といった問題も起きていたといいます。乱用者にとっては、入手しやすいクスリだったといえます。
今回の指定は、まず、この2種を向精神薬として規制することで、安易な処方を引きしめることが、第一の狙いなのでしょう。

●最近、処方薬の個人輸入がとくに気になる
同時に、向精神薬として規制することは、ユーザーの安易な入手に対しても警鐘を鳴らすことになります。
これまで、デパスやアモバンに関しては、他人への個人的な譲渡や、個人輸入といった行為に対して、とくに取り締まりが行われることがなかったことから、ユーザーのなかには、処方薬を安易に他人とやり取りしたり、外国から個人輸入することを漫然と繰り返してきた人も、少なくありません。

数か月前、私は事件処理のために、インターネット上の「pharmacy(薬局)」を名乗る販売サイトや、輸入代行業者のサイトについて、調べたのですが、その急増ぶりを改めて実感しました。そういえば、わが国で危険ドラッグ販売が沈静化したころから、この種のサイトが急速に増え始めたように思います。

睡眠薬や抗不安薬は、ED治療薬やダイエット系の治療薬とともに、こうしたサイトの主力商品として、幅を利かせています。デパスのジェネリック、あるいはデパス同成分とうたう製品も、多数見かけました。
本来なら、医師の処方で使うべきものが、実に簡単に手に入るのです。

今回の向精神薬指定を機に、違法な個人輸入に対して警告を発するために、違反者の摘発にも力がはいることでしょう。でも、違反者を摘発するだけでは片手落ちです。デパスやアモバンに限らず、医師の処方を受けずに、睡眠薬や抗不安剤を個人輸入して使うことの危険性を広くアピールし、ユーザーの意識を引き締める啓発活動が行われることに、期待します。

なお、向精神薬乱用問題の重大な側面として、自殺との関係について簡単にまとめた記事が当サイト内にあります(下記参照C)。よろしかったら、こちらもご参照ください。

[参照]
@厚生労働省の公報
「新たに3物質を向精神薬に指定し、規制の強化を図ります」平成28年9月14日
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000136558.html
Aサノフィ(株)、日医工(株)
「アモバンⓇ錠 7.5」「アモバンⓇ錠 10」向精神薬指定のお知らせ
http://www.nichiiko.co.jp/data2/55330/12_information/o-amoban_t-20160914bI1(2).pdf
B研究報告書・2014年調査
「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」
http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/J_NMHS_2014.pdf
Cサイト内過去記事
「向精神薬密売事件が照らす、自殺との深刻な関係」2015/11/15
http://33765910.at.webry.info/201511/article_7.html

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内 容 ニックネーム/日時
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495160131
上記ページの「別紙」では、ゾピクロン「及び鏡像異性体」と書かれています。
ゾピクロンの鏡像異性体はエスゾピクロン(商品名ルネスタなど)ですが、今回規制はされないのですね。
エスゾピクロンはゾピクロンの半分の用量でほぼ同等の作用を得られるので規制されないのは不思議です。
匿名U
2016/09/16 20:30
>なお、前記事で紹介したように、パブリックコメントの案では、ゾピクロンの鏡像異性体(S体)であるSゾピクロンも指定されると記載されていましたが、今回の報道発表をみると、Sゾピクロン(製品名ルネスタ)については触れていません。正式な通知文書などがまだ確認できませんが、今回の指定ではSゾピクロンを特に指定対象として特定していないようです。

私の不勉強でしたら申し訳ないのですが、化学名の「(RS)」というのは、R体とS体の混ざった「ラセミ体」であることを意味するので、キラル体であるS体も当然含まれる、という解釈ではないのでしょうか?
それとも、「(RS)」と書いてある場合は、ラセミ体に限定され、純粋なR体やS体は規制対象外となるという読み方になるのでしょうか?
しかし、その場合「S体が90%、R体が10%」という、「光学純度の低いキラル体」はどういう扱いになるのだろうと思います(笑)
滅智蓮寺 熾
2016/09/21 01:28
熾氏はどこでも飛躍した書き込みをしていて面白いですね。自分の疑問を書いても意味ないですよ
MD排除推進委員会
2016/10/03 15:19

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