弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS メキシコからの覚せい剤密輸摘発、トラの置物から25キロ

<<   作成日時 : 2016/03/06 22:05   >>

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覚せい剤の密輸手口が、運び屋による小口密輸から、貨物便による大量密輸へと急速に移行しつつあるなかで、また貨物便による密輸が摘発されました。
貨物の発送地は、またしてもメキシコ。航空貨物として到着した大きな陶製のトラの置物の内部から、約25キロの覚せい剤が発見されたということです。

<ニュースから>*****
●トラの置物に17億円相当の覚醒剤 密輸容疑でメキシコ人2人を逮捕 警視庁
トラの置物に覚醒剤約25キロ(末端価格約17億5千万円相当)を隠して密輸したとして、警視庁組織犯罪対策5課は、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)容疑で、ともにメキシコ国籍で住居不詳の運転手C(24)と、農業のA(49)の両容疑者を再逮捕した。同課によると、ともに容疑を否認している。
同課によると、覚醒剤は陶器製で全長約190センチのトラの置物の中に袋に分けて入っていた。メキシコから横浜市内の会社を経由し、千葉県いすみ市内に郵送された。2人が覚醒剤を取り出してスーツケースに入れ、車で持ち出そうとしたところを同課が同法違反(営利目的共同所持)容疑で現行犯逮捕していた。
再逮捕容疑は1月下旬、覚醒剤約25キロ入りの航空貨物をメキシコから成田空港に輸入したとしている。
2016年3月4日 17:36産経ニュース
*****

この数年、日本に流れ込んでくる覚せい剤の供給源として、メキシコの存在感が強まっています。先日、財務省が発表した税関での密輸取り締まり状況の報告によると、2015年中に摘発された覚せい剤密輸事案では、メキシコを仕出し地とするものが、押収量の半分以上を占めています。
伝統的に、日本の覚せい剤の供給源として主要な地位を占めてきた中国・香港と、急速に存在感を増してきたメキシコ、世界の覚せい剤の2大供給拠点が、日本の密売市場を分かち合っているかのようです。
画像

↑税関で摘発された密輸覚せい剤の仕出し地・2015年
税関の発表データ(下記参照@)に基づいて筆者がグラフ化したもの

●世界を二分する覚せい剤の巨大マーケット
現在、日本で「覚せい剤」として流通しているのはメタンフェタミンです。
このタイプの薬物が最も広まっているのは、東アジアから東南アジア、オセアニアにかけての地域で、国連薬物犯罪事務所の推計によると、この地域での覚せい剤ユーザーはおよそ950万人に及ぶとみられています(UNODC, Trends and Patterns of Amphetamine-type Stimulants and New Psychoactive Substances, 2015)。ここでは、この地域を「アジア太平洋圏」と呼ぶことにしましょう。
アジア太平洋圏で最大のメタンフェタミン供給基地は、中国・香港です。日本への伝統的な供給地であるだけでなく、韓国、オーストラリアといった購買力の高い市場への主要な供給基地となってきました。

いっぽう、太平洋をはさんだ北米(メキシコと米国)にも、覚せい剤の大きなマーケットがあります。この地域を「北アメリカ圏」と呼ぶことにしましょう。
主な消費地はアメリカ合衆国ですが、メタンフェタミンは、乱用薬物として決してメジャーな存在とはいえず、ユーザーは150万人程度です。公的な調査によると、メタンフェタミンの使用経験のある人は12歳以上のアメリカ人の4.90%、過去1年以内の使用者は0.5%で、コカインの場合は使用経験のある人が14.80%、過去1年以内の使用者が1.70%であるのと比べて、かなり少ない数字になっています(National Survey of Drug Use and Health・2014年)。

ところが、この地域内に流通しているメタンフェタミンの量は極めて多く、その意味では巨大流通圏であるということができます。
流通量の目安となるのは地域内での押収量ですが、2011年から2012年にかけてメキシコでトン単位の大型押収が続いたことから、この時期には、世界全体の押収量の約半分をこの地域が占めていました。2013年には押収が減少しましたが、それでもアジア太平洋圏を上回る量のメタンフェタミンが、北アメリカ圏で押収されています。
画像

↑世界の2大覚せい剤流通圏
 筆者がアジア太平洋圏、北アメリカ圏の概要をまとめたもの

米国にメタンフェタミンが本格的に広まったのは、1980年代ころからですが、当初は国内で小規模に密造されたものが圏内にでまわってきました。ところが、2000年代半ばに米国でメタンフェタミン密造に対する取締まりが強化されたことから、密造拠点が国境を越えたメキシコに移ったといわれます。その後、メキシコでのメタンフェタミン密造は次第に大規模化し、2010年ころから、メキシコ各地で工場規模の密造施設が相次いで摘発されるようになりました。
現在では、北アメリカ圏では、圏内の需要をはるかに上回る量のメタンフェタミンが流通しているとみられています。

これと対照的に、大量のユーザーを抱えたアジア太平洋圏では、常に需要が供給を上回っている感があります。

その結果は、誰が考えてもわかることです。供給過剰の北アメリカ圏から、品薄感のあるアジア太平洋圏に、メタンフェタミンが流入し始めたのです。
日本では、2013年ころからメキシコ仕出しの覚せい剤密輸が目につき始めましたが、これは日本だけの現象ではありません。同じころ、韓国でもメキシコ仕出しの覚せい剤密輸が摘発され、フィリピンではメキシコ系組織が関与した密造施設が摘発されています。またオーストラリアでもメキシコ系組織の活動が活発化していると報告されています(UNODC, Trends and Patterns of Amphetamine-type Stimulants and New Psychoactive Substances, 2015)。

つまり、これまで中国・香港ルートからの供給に頼ってきた、アジア太平洋圏の主要な消費市場に対して、いまや、メキシコからの供給が本格化しているのです。
しかし、この2大供給勢力が、メタンフェタミンの有力市場をめぐって競争や衝突を展開しているようにも見えません。両者の間に、何らかの提携や協力関係があるのかどうか、残念ながらその実態はなかなか見えてきません。

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