弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 処方薬オーバードーズへの取り組み|米の処方薬乱用問題

<<   作成日時 : 2016/03/04 04:05   >>

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米国では、処方薬の過量摂取(オーバードーズ)による死亡が増え続け、新たな社会問題になっています。
米疾病管理センター(CDC)が発表した集計によると、2014年中の処方薬オーバードーズによる死亡は25,760人。この数は、コカインやヘロインといった違法な薬物による死亡者よりはるかに多く、全米の交通事故死に近い人数になっています。
なかでも、死亡事故の発生が集中しているのが、オキシコドンなどのオピオイド鎮痛薬によるものです。2014年の死亡は18,893人、1日当たり52人、1時間当たり2.16人が、米国のどこかで死亡していることになります(下記参照@)。
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↑米国の処方薬オーバードーズによる死亡
CDCのWONDERデータに基づいて筆者がグラフ化したもの

●処方薬のオーバードーズ問題
強い痛みを緩和するために使われるのが、オキシコドンなどのオピオイド鎮痛薬ですが、こうした医薬品には、ヘロインなどの麻薬に特有の依存性があるため、慎重に適量を見極めながら使用していく必要があり、医師の処方せんがなければ入手できない仕組みになっています。ところが、こうした鎮痛薬が様々な形で正規のルートから流出し、処方を受けた患者ではない人の手に渡り、本来の医療目的とは違う形で乱用され、問題が起きているのです。

ティーンエイジャーの間では、家族や知り合いのところから持ち出してきた鎮痛薬を持ち寄り、適当に混ぜ合わせて服用してハイな気分を味わう危険な遊びが、「ピル・パーティ」と呼ばれて広まっているといいます。
また、日々のストレスに悩む働き盛りの人たちや、慢性の痛みを抱える中高年女性など、男女を問わず幅広い年齢層の人たちにも、処方薬乱用は広まっています。
加えて、医師の処方を受けている患者のなかにも、複数の医療機関から重複して鎮痛薬の処方を受けたり、手元の薬品を一気に大量摂取して、オーバードーズ事故に至るといった例もあります。

さらに近年では、処方薬の乱用を続けた人たちが、より強い効き目を求めてヘロインへ手を伸ばすといった、新たな問題も浮上してきました。オキシコドンなどの鎮痛薬はヤミ市場ではかなり高額で取引されています。使用量が増えた人たちにとっては、少量で強い効果が得られるヘロインの方が、安くつくという事情もあるようです。
米国では、2011年ころからヘロインの押収量が増え始め、それと同時にヘロインのオーバードーズによる死亡者が急速に増加しています。
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↑米国でのヘロイン押収量の推移・2010〜2014年
DEA編「National Heroin Threat Assessment Summary」p.4より転載
http://www.dea.gov/divisions/hq/2015/hq052215_National_Heroin_Threat_Assessment_Summary.pdf

●オーバードーズへの取り組み、ホワイトハウスは
ヘロインやオピオイド鎮痛薬の乱用問題の解決には、専門的な治療体制が欠かせません。こうした薬物は、身体依存を引き起こすため、急に断薬すると身体は急激な禁断症状に見舞われ、生命の危険にさらされます。覚せい剤やコカインといった、身体依存性のない薬物の場合とは、対処の仕方が全く違うのです。

断薬の過程では、それまで使っていた有害な薬物の代替として、より害の少ないメタドンなどを投与しながら、他の療法と組み合わせた治療法もよく行われます。場合によっては、ヘロインそのものを医師の監督下で自己注射する施設を設ける、という特有の方法が使われることもあります。
また、ヘロインやオピオイド鎮痛薬のオーバードーズは、死亡に直結しやすいため、すぐその場で生命を救う治療薬として、ナロキソンの配備も欠かせません。
ところが、こうした体制を備えた治療施設は、米国でもごく限られていて、そのため、多くの命が失われているのが現実です。

ホワイトハウスが宣言したのは、ヘロインやオピオイド鎮痛薬依存に対応できる、専門的な医療体制の拡充です。
今年2月初め、ホワイトハウスは、オピオイド処方薬とヘロイン問題に対処するために、2017年度予算で新たに11億ドルを投入すると発表しました。
対策の重点は
➢アメリカ国民の全てが、確実に必要な治療を受けることができるよう支援
➢オピオイド薬使用障害に対する医薬品を組み入れた治療を利用しやすく
➢薬物使用に対する治療プロバイダーを利用しやすく
となっています(下記参照A)。

伝統的にヘロインなどオピオイド乱用者が多いヨーロッパでは、ハームリダクション政策を背景に、依存者の生命を救う治療に重点が置かれてきたのに比べ、米国では治療体制が未整備だったといえます。
しかし、大量の処方薬依存者を抱えてしまったいま、米国の薬物治療のあり方も、変化の時を迎えたようです。この流れがどのように定着していくか、私たちも大いに関心をもって見守りたいと思います。

[参照]
@CDCの発表
Increases in Drug and Opioid Overdose Deaths — United States, 2000–2014(January 1, 2016)
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6450a3.htm
Aホワイトハウスの報道発表
Addressing the Epidemic of Prescription Opioid Abuse and Heroin Use(FEBRUARY 2, 2016)
https://www.whitehouse.gov/blog/2016/02/01/preventing-epidemic-opioid-abuse-and-heroin-use

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