弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 新たな危険ドラッグ「笑気ガス」の乱用問題

<<   作成日時 : 2015/08/25 17:43   >>

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実は、この場で取り上げることがためらわれて、意図的に取り上げてこなかった、新しい乱用薬物があります。英国などヨーロッパで、合法ドラッグ(legal highs)として急速に広まっている「笑気ガス」です。ヨーロッパでの乱用拡大を受けて、わが国でも、一部でインターネット販売されているようですが、規制の難しい対象だけに、いたずらに注目度をあげたくないと思い、私自身はこの話題を避けてきました。
しかし、先週あたりから、わが国の報道も取り上げ始め、また、和歌山県が知事監視薬物に指定したので、そろそろ、警告情報の発信を開始します。
画像

↑BBCのニュース画面(下記参照A)

英国では、数年前からこのガスの乱用が広まり始め、2006〜2012年の間に英国では17人が、このガスを吸引して死亡したといいます。2014年夏、英国の地方自治体協議会(Local Government Association)は警告情報を出し、笑気ガスの乱用拡大への対策を求めてきました。
この夏のVフェスティバルでは、最近導入された公共の場の安全性確保命令(Public Space Protection Order)によって、警察が「笑気ガス」などの危険ドラッグの取締まりに当たりましたが、今日のBBCニュースによると、逮捕者は63人、警察が押収した「笑気ガス」の容器は17,000本を超えたといいます(下記参照@)。

●「笑気ガス」とは
「笑気ガス」とは、亜酸化窒素(N2O)のガスで、銀色のメタリックな容器に高圧充填された状態で販売されています。
亜酸化窒素には、鎮痛・麻酔作用があり、乱用者は、陶酔感やリラックスした感覚を味わうために、このガスを吸引するといいます。

「笑気ガス」は、100年以上も前から麻酔薬などに使われてきたもので、現在では、食品添加物としてしても重要な材料となっています。乱用者が手に入れる充填容器も、本来は、様々な実用目的のために販売されているものです。
・鎮痛麻酔薬として、歯科医院で歯を削ったり詰め物を入れたりする際に、酸素とともに吸入する
・補助的な麻酔薬として、他の麻酔薬と合わせて使われることがある
・エンジンの出力を増加させる補助剤
・安定窒素ガスとして食品包装用に使う
・泡立て調理器具用のガス

●乱用による問題
英国では、乱用目的で吸引する人たちの間で少なからぬ事故が報告されていますが、他の薬物による中毒とは、いささか異なる性格の事故が多いのが特徴です。
英国政府系の薬物情報サイト「FRNK」は、亜酸化窒素の危険性を次のように記載しています。
****
■亜酸化窒素にはどんな危険性がありますか?
亜酸化窒素は、めまいを引き起こしたり、判断力に影響を及ぼし、不注意な行動や危険な振舞いによって、とくに危険な環境下では、自らを危険にさらすことが起き得ます。
その他の危険性としては
・酸欠による意識消失や死亡
これは、亜酸化窒素によって、呼気中の有効酸素が実質的に追い出されることによって起きます。締め切った空間で吸引したり、ポリ袋で口や鼻を覆っている場合には、危険性はさらに高くなります。
・亜酸化窒素の大量・継続使用は、ビタミンB12の欠乏や、貧血を招くことがあります。(以下省略・下記参照B)
*****

●規制の難しさ
最近、英国では、急速に「笑気ガス」の乱用が拡大しているとみられ、対策が検討されていますが、現在は、この薬物を直接的に取締まる制度はありません。
亜酸化窒素は、現に様々な用途に使われていること、また、乱用者の事故や死亡も報じられていますが、そのほとんどは、この薬物による直接的な中毒とはいえないことなどから、現行法で取り締まることは難しいとみられています。
でも、英政府がいま議会提案している危険ドラッグ全面禁止法案では、これまでの規制枠ではとらえきれなかった「笑気ガス」も規制対象にすることができると説明されています。しかし、いま下院で審議中のこの法案が成立したとしても、英国の「笑気ガス」問題が一気に解決に向かうかどうかは、予断を許さない状況だと思います。

なお、「笑気ガス」の問題をわかりやすく解説している記事が、BBCのサイトにあるので、ぜひご参照ください。

@「笑気ガス」を解説しているBBCの記事
BBC / How dangerous is laughing gas?(31 July 2015)
http://www.bbc.com/news/magazine-33691783
A最近のVフェスティバルでの「笑気ガス」押収の話題
BBC / V Festival police seize 17,000 gas canisters(24 August 2015)
http://www.bbc.com/news/uk-england-essex-34039720
B薬物情報サイト「FRNK」の亜酸化窒素に関する情報
FRNK / NITROUS OXIDE
http://www.talktofrank.com/drug/nitrous-oxide

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コメント(3件)

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>規制の難しい対象だけに、いたずらに注目度をあげたくないと思い、

この点、コンビニでいくらでも買える、ライター用ガスの吸引の問題と軌を一にしますね。
ちょっと思ったんですが、ライター用ガス(ブタン)と亜酸化窒素はどちらが乱用性が高いのでしょうか?
私はどちらも試したことはないのですが、ブタンガスは、高濃度になると不整脈誘発作用があるため、死に直結する危険があります。
しかも不整脈閾値は、安静時より運動時の方が低くなりますから、横になってガスを吸っているとき、例えば来客や電話があってあわてて立ち上がって歩き出したりするような場合、容易に閾値を超えて心臓発作を起こして亡くなる危険性があります。

もちろん、亜酸化窒素も危険な面はあるのでしょうが、脱法ドラッグユーザーが多く集まるおーぷん2chの趣味一般板では、「30秒しか効かない」と、馬鹿にされているドラッグです。
しかも、料理用のボンベに「シバガス」というシールを貼っただけで数倍の値段で売っている、悪徳商法だという事もすでに知られており、私の感覚では、あまり買う人もいないだろうな、と思います。

しかし、和歌山の規制の細かい内容は分かりませんが、シバガスのシールを貼らずに料理用と同様の外観で売れば、いくらでも売れるのではないかと思います。
(違っていたらすみません)
滅智蓮寺 熾
2015/08/26 01:49

自動車用途では以前より、NOSシステムが有名です。

ハリウッド映画『ワイルド スピード』シリーズの劇走シーンで度々登場しました。

運転席脇に付いたガスボンベのスイッチを入れると、快音と同時に強烈な加速を示します。

日本でもJAFライセンス競技以外で、競技レギュレーションが曖昧な草レース等で、NOSシステムを使った運転手をよく見かけます。

ターボチャージャ、スーパーチャージャに比べて、派手な見た目の改造具合が分かるNOSシステムは人気があります。

しかしエンジン制御系統を緻密にセッティングしないと、簡単にエンジンブローを起こします。

現実的には多額のメンテナンス費用が発生するため、コストパフォーマンスも悪く、それなりの資金力が必要です。

それでも特に日本人は『頭文字D』同様に、『ワイルド スピード』シリーズの影響を受けた自動車改造好きが現れ、この手のエンジンチューニング店は、計算通りに顧客のエンジンをブローさせて儲けています。

顧客の物を壊して利益を生み出すマーケティングです。
神流美 王井門
2015/08/27 19:06

成分の違いはよく分かりませんが、都区内有名ナイトクラブでは演出効果として、『窒素ガス』を売り物にしています。


具体的には天井から放出される大量の白い窒素ガスに、カラーレーザ、ストロボフラッシュライト等を照し、ビジュアル的な効果を演出します。

かつて世界ナイトクラブランキング4位だった渋谷に在る店舗では、窒素ガスを多用した演出が大人気です。 先駆けて窒素ガスで演出した事から、ハリウッド映画『バベル』の東京ロケでも、このお店の演出シーンが使われました。

特に売り物なのは、大晦日のニューイヤーカウントダウンパーティ。背丈よりも高い大量の窒素ガスでダンスフロアが埋まり、そこへカラーレーザとストロボフラッシュライトを激しく点滅。
演出効果は抜群で、外国人にも大人気です。




神流美 王井門
2015/08/28 19:23

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