弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 危険ドラッグ対策レビュー・10

<<   作成日時 : 2015/07/31 22:23   >>

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「危険ドラッグ対策レビュー・9」2015/07/26からの続きです。
前記事http://33765910.at.webry.info/201507/article_11.html
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⑵ 死亡事故の連続発生と対応

@危険ドラッグによる死亡事故の発生
 2012年2月、名古屋市内のマンションで危険ドラッグを吸った男性が死亡するという事故が発生しました。今次の危険ドラッグ流行で、使用者の死亡が最初に報じられたケースです。
 当時、名古屋市内では、繁華街の栄などを中心に、「合法ハーブ」を販売する店舗が急増し、それとともに、救急搬送例が急増していました。2011年11月、中日新聞は危険ドラッグによる中毒事故が多発している現状をとりあげ、警鐘を鳴らしていました。

<当時の新聞報道から>*****
●脱法ドラッグ「ハーブ」まん延 
・・・救急搬送される例が今年に入り顕著になっているが、摘発対象でないため公式なデータがないのが現状だ。
名古屋市内の救命救急センター指定6病院に「ハーブ」の搬送件数を問い合わせたところ回答のあった4病院で今年に入って計18件の搬送例があった。
このほか名古屋大病院にも10月までに12件の救急搬送があった。
名古屋医療センターは14件で、5件が集中治療室に入院。大半が20〜30代の男性だった。
名大病院も全員が男性で、路上で呼吸停止状態で倒れているところを通行人が119番通報し、危うく一命を取り留めた例もある。
名古屋掖済会病院では先月、カップルで吸引して女性が意識もうろうとなり、200を超える高血圧で嘔吐とけいれんを繰り返して搬送された。
名市大病院にも3例あり、最近の救急隊との症例検討会で話題に上ったばかりという。
中日新聞 2011年11月26日
*****
 
 この当時、ヨーロッパでは危険ドラッグとして広まったメフェドロンなどによる死亡事故が多発していましたが、日本では、名古屋市の事故以前には、危険ドラッグ使用者の死亡が報告されたことはありませんでした。
 名古屋市の事故は、社会に大きな衝撃をもたらしましたが、しかし、死亡事故の詳細について具体的な発表はされず、危険ドラッグ使用と死亡との因果関係についても、確認されないままになりました。
 当時は、市販されていた危険ドラッグ製品に含まれている成分に関する情報が極めて限定されていて、検死解剖が行われたとしても、体内から中毒原因となった成分を検出することが難しかったことを考えれば、中毒原因の究明が進まなかった事情もある程度理解することはできます。しかし、事態があいまいなままになってしまった最も大きな理由は、危険ドラッグによる中毒死と思われる事態に対処し、その実態解明にあたるべき体制がはっきりしていなかったことにあるのではないでしょうか。
 そして、関係者の多くが、錯綜する情報に混乱しながら奔走している間にも、第二、第三の死亡事故が相次いで報じられたのです。

<2012年中に報告された危険ドラッグによると疑われる死亡事故>*****
 ■2月、名古屋市内で24歳男性が死亡。脱法ハーブを吸引後、突然暴れ、動かなくなった。
 ■4月、横浜市内で26歳男性が死亡。飲酒後、脱法ハーブを吸引して意識不明に。
 ■5月、東京・渋谷区恵比寿の路上で暴れていた30歳代男性が、搬送先の病院で死亡。
 ■8月、横浜の繁華街で暴れていた30歳代男性が死亡。薬物使用による心不全。
 ■10月、静岡県菊川市で全裸で暴れていた男性が死亡。薬物中毒の疑い。
 ■11月、東京・渋谷区で20歳代女性が、ハーブを吸って意識不明に。搬送先の病院で死亡。
*****

A 愛知県の対応
 いっぽう、2月に発生した死亡事故を契機に、愛知県は独自の危険ドラッグ対策の整備に乗り出し、その動き、やがて県条例の導入へと形を表し始めました。愛知県が独自に行った2012年中の主な動きは、次のような物でした。
■危険ドラッグ販売店への立入調査
 2月16日、県内の危険ドラッグ販売店(34店舗)に対して、立入調査を開始すると発表しました。報道発表によれば、調査は違法性が確認された店舗又は疑いがある店舗のみを対象に実施するものではなく、無許可無承認医薬品販売が行われていないか、販売方法について調査するもので、事前に販売店舗へ連絡をせず、抜き打ちで行う、と説明されています[1]。
 その後、7月には新規指定薬物の施行に伴う調査として、県薬務課と警察による合同立入調査も行われました。
 こうして頻繁な立入調査を重ねる過程で、8月15日までに4店舗の閉鎖が確認され[2]、さらに12月19日時点では確認された店舗数(通信販売等無店舗営業店等を除く)は21店となり、うち4店舗は廃業・閉店[3]と、県内の危険ドラッグ販売店は着実に減少し始めました。
■救急搬送事例のとりまとめと公表
 2012年2月、死亡事故の発生を受け、愛知県は県内の医療機関と消防に対して、危険ドラッグを吸引したことが理由とみられる救急搬送事例の情報提供を求め、その概要を発表しました。その後、救急搬送データは毎月更新され、現在に至っています[4]。
 当時、急性中毒によって救急搬送される危険ドラッグ使用者の急増は、社会の関心を集めていましたが、まとまったデータとして発表されたものはほとんどなく、愛知県のこのデータは、大変貴重な資料となりました。
 なお、集計を開始する前の2011年1月から2012年1月分についても遡って調査し、搬送数のみですが、発表しています。
画像

↑愛知県での危険ドラッグ関連の救急搬送者の推移
 愛知県発表データに基づきグラフ化したもの

■県条例の制定 2012年10月16日
 こうした動きの延長線上で、やがて、県独自の条例制定に向けた準備が開始されます。すでに独自の条例を導入していた東京都や、条例制定に向けた準備を始めていた大阪府などと連携して準備作業が進められ、同年9月の県議会で条例案が可決され、10月16日、全国で2例目の条例が公布されました[5]。

<出典と注釈>
[1] 愛知県報道発表資料「いわゆる「合法ハーブ」を販売する店舗への立入調査について」2012年2月16日
[2] 愛知県報道発表資料「違法ハーブの販売を確認するために行う関連店舗への県と県警との合同立入調査結果について」2012年8月15日
[3] 愛知県報道発表資料「違法ハーブの販売を確認するために行う関連店舗への県と県警との合同立入調査結果について」2012年12月19日
[4] 愛知県HP「危険ドラッグが原因と疑われる救急事例に関する報告の集計結果について」http://www.pref.aichi.jp/0000065261.html
[5] 愛知県薬物の濫用の防止に関する条例(愛知県条例第51号)2012年10月16日公布


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続きは「危険ドラッグレビュー・11」へ
http://33765910.at.webry.info/201508/article_3.html

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