弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 覚せい剤密輸事件、差し戻し審で逆転有罪判決

<<   作成日時 : 2015/03/25 23:54   >>

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2009年7月、実行役の男性がトルコから関西国際空港に覚せい剤約4キロが入ったスーツケースを持ち込んだ事件で、輸入の指示をしたとして起訴されたイラン人男性の差し戻し審(裁判員裁判)が、大阪地裁で行われていましたが、3月24日、被告人を有罪とする判決が言い渡されました。

<ニュースから>*****
●覚醒剤密輸のイラン人に逆転有罪 大阪地裁の差し戻し裁判員裁判、共謀を認定
覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)などの罪に問われ、裁判員裁判の無罪判決が破棄されたイラン国籍のアブディ・スマイル被告(46)の差し戻し裁判員裁判の判決公判が24日、大阪地裁で開かれた。芦高源(みなもと)裁判長は、無罪判決で否定された共謀を認め、懲役15年、罰金750万円(求刑懲役18年、罰金800万円)を言い渡した。
産経WEST 2015.3.24 20:32
*****

2011年1月、第一審の裁判員裁判で無罪が宣告された被告人ですが、その後、控訴審が一審の判決を破棄して審理を大阪地裁に差し戻すことを言い渡しました。これまでの裁判経過は下記のとおりで、事件発生から間もなく7年になります。
@第一審 大阪地裁 2011年1月28日判決 無罪(求刑・懲役18年、罰金800万円)
A控訴審 大阪高裁 2012年3月2日判決  原判決破棄、差戻
B上告審 最高裁  2014年3月10日決定 上告棄却(差し戻しが確定)
C差戻審 大阪地裁 2015年3月25日判決 懲役15年、罰金750万円

差し戻しを受けた裁判所は、新たに裁判員を選任して、改めて事件を審理するのですが、その事件については上級審の裁判所の裁判における判断に拘束されることになっているため、差し戻し審では、高裁判決や最高裁決定を念頭に置いて、事件を審理することが要求されます。
それをにらんで、この事件の審理のあり方に注文をつけたのが、最高裁の上記Bの決定です。補足意見として、第一審では、公判前整理手続きの争点整理や審理計画の策定が不適切だったことから、審理全体が分かりづらいものになり、不合理な判断に至ったと批判しているのです。たとえば、公判前整理手続で確認された争点は「覚せい剤の輸入の共謀があったか否か」という点であったのに、公判では、携帯電話の通話記録と、A証人の供述との整合性を細部にわたって必要以上に要求し、また、A証人への尋問や被告人質問にきわめて長い時間をかけたことなどが、具体的に指摘されました。

そういえば、上記の意見は第一審の判決書にも触れていました。「同判決書は,本文だけで43頁に及ぶもので、この種事件にかかる裁判員裁判の判決書としては異例ということもできるほど長く、裁判員が一読して直ちに理解できたであろうかとの感を抱かざるを得ない。」と、手厳しく批判しているのです。たしかに、発表された判決書を読んだ時の私の第一印象も、まさしく「長い!」でした。裁判員裁判が導入されて以来、判決書の書き方がわかりやすくなり、しかも要点を簡明にまとめたものが増えたと感じているなかで、ひときわ目だっていたものです。

さて、今回の差し戻し審では、裁判官、検察官、弁護人ともに、通常の裁判の何倍ものプレッシャーを受けながら、十分な準備を整えて臨んだことでしょうが、最高裁の示唆した「わかりやすい審理」がどこまで実現したのでしょうか。判決書が公表されるのが待たれます。

ちなみに、この事件は、裁判員裁判の第一審で無罪となった覚せい剤輸入事件としては3番目(第一審判決日)の事件です。
私は、季刊刑事弁護(第78号、2014年4月)に、裁判員裁判の第一審で無罪となった覚せい剤輸入事件について簡略にまとめたものを執筆しましたが、そこではこの事件は「トルコ通話事件」と略称しています。

[参照]
上記Bの最高裁決定は、裁判所ウェブサイトで読むことができます。
平成24年(あ)第744号 覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件
平成26年3月10日 第一小法廷決定
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140313093649.pdf

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