弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS NYタイムズの大麻合法化ディベート2

<<   作成日時 : 2014/08/04 23:28   >>

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ニューヨークタイムズが、「連邦政府は、大麻禁止を撤廃すべきである」という主張を掲げて、大麻合法化ディベート特集の連載を開始しました。各州での大麻法制見直しが加速する中で、米連邦は依然として大麻を全面的に禁止している現状を変えるときが到来しているとして、米国民に議論を呼びかけています[下記参照@]。
シリーズで掲載されている記事について、簡単にまとめておきます。なお、第2部に関しては、従来から私が興味を持ってきた分野でもあり、NYタイムの記事をベースに、若干の補足も加えました。

■第1部「大麻について州に決定権を」JULY 26, 2014
連載の2回目は、各州で進んでいる大麻法制見直しの現状を取り上げています。
コロラド、ワシントン両州で始まった娯楽用大麻の販売は、他の州にも波及し、今年中にも数州で大麻合法化をめぐって住民投票が行われる見通しです。また、18州およびワシントンDCでは医療用大麻の販売が容認されています。さらに、米国では州法によって、少量の大麻の単純所持罪に対する科刑の引き下げが進み、一定量以下であれば犯罪扱いしない例や、簡単な手続きによる罰金で対処する例も少なくありません。
このように多様な形で大麻法制の見直しが進んでいる現在、全米50州のうち、37州およびワシントンDCで何らかの大麻法制改革が導入されており、しかも、人口規模の大きな州ほど、こうした制度を取り入れる傾向にあるようです。特集記事によれば、米国民の76%までが、大麻法制が何らかの形で緩和された州法の下で生活しているといいます。
この現実を踏まえれば、大麻に関する法制度に関しては、最終的な判断を州法に委ねるべきではないかと記事は説いています。

■第2部「大麻による逮捕の不公平」JULY 28, 2014
大麻法制の見直しを訴える市民運動が掲げてきたスローガンのひとつに、「薬物との戦いwar on drugs」による人権の侵害、人種的不公平の是正があります。1980年代90年代にかけて急速に進展した「薬物との戦い」では、少量の大麻所持といった軽微な罪に対しても、再犯を繰り返すと極端に重い刑(終身刑を含む)が科されるといった、過酷な制度が導入されてきました。また、逮捕者の大多数が黒人やヒスパニック系の男性で占められている事実は、人種による法の不公平と糾弾されてきました。

その代表的な例に挙げられるのが、ニューヨーク市警察による大麻所持による微罪逮捕です。NY市は、治安回復策のひとつとして大麻所持による微罪逮捕を積極的に推進してきました。逮捕とはいっても、警察署の留置場に一晩留め置いた後に釈放し、その後は在宅での手続きとなるのですが、将来、重要犯罪に関わるリスクの高い層を微罪で検挙して、指紋やDNAデータを登録しておくことで、重要犯罪の抑止につなげようとするこの方式は、「破れ窓理論」の実践事例として頻繁に紹介されてきました。
NY市警察は、2001年から2010年の間に、820万人以上を大麻所持罪で逮捕したといいます。しかも、警察官は低所得層の住む地域で重点的に職務質問を実施しては大麻所持を検挙してきたため、逮捕者の大半は黒人やヒスパニック系の若い男性で占められていました。

この現状に具体的な反論を突きつけたのは、国際人権団体Human Rights Watchが2012年に発表した報告書でした[下記参照A]。大麻所持による逮捕者のその後の犯罪記録を追跡調査したところ、7−8年の追跡期間中に何らかの犯罪(felony)に及んだ者は全体の10%弱にとどまり、90%以上が犯罪に関わっていないといいます。再犯の内訳は、1犯以上の非暴力犯罪に及んだ者が6.2%、1犯の暴力犯罪があった者は3.1%、2犯以上の暴力犯罪に及んだ者はわずか0.4%でした。
なお、この調査は2003年、2004年に大麻の単純所持での逮捕者から、前科のない3万人を抽出し、犯罪記録を追跡調査して2011年6月までの間の再犯状況を調べたものです。
画像

↑2003−2004年の大麻逮捕者のその後の犯罪関与のコホート分析
下記参照@資料2頁より転載

NY市は、犯罪予防のためにこの方式を推進してきたのですが、しかし、市当局の意図は、的外れであり、大麻所持による微罪逮捕は犯罪抑止につながらないと、報告書は指摘し、その見直しを迫りました。
これまでも多くの批判にさらされてきたNY市のやり方は、この報告書の公表を契機に市議会でも取り上げられ、見直しされました[下記参照B]。

さて、NYタイムズの特集記事は、大麻所持罪での逮捕の観点から「薬物との戦い」のもたらした問題をとらえていますが、もちろん、人権侵害や不公正といった問題は大麻事犯だけに限られるものではありません。
下記参照資料Cは、コカインやLSDなど薬物の少量所持罪などで終身刑を言い渡された人たちの事例を取り上げたCNNの写真特集です。「薬物との戦い」が推進されていた時期には、ありふれた薬物事犯者でも、再犯を重ねた場合(3犯目)には、通常なら殺人やごく凶悪な犯罪者に対して科されるはずの終身刑が言い渡され、現在もまだ刑に服している人たちがいるのが、米国の現実です。
なお、米司法省は、最近、過去の過酷な科刑状況の是正にようやく乗り出し、現在の科刑水準で引き直せば、すでに刑期を満了しているはずの人たちを早期釈放すると発表しています[下記参照D]。

<参照>
@NYタイムズの特集「潮時:大麻合法化特別編集版シリーズ」
The New York Times/ High Time: An Editorial Series on Marijuana Legalization
http://www.nytimes.com/interactive/2014/07/27/opinion/sunday/high-time-marijuana-legalization.html?action=click&contentCollection=Opinion&module=RelatedCoverage&region=Marginalia&pgtype=article
A国際人権団体Human Rights Watchの報告書
「燻製ニシン―大麻での逮捕者は暴力的な犯罪者にはならないA Red Herring―Marijuana Arrestees Do Not Become Violent Felons」
http://www.hrw.org/sites/default/files/reports/us_mj1112webwcover.pdf
B「ニューヨーク市警の大麻取締りを見直し」2012年4月3日
http://33765910.at.webry.info/201204/article_2.html
CCNNによる長期刑を言い渡された薬物受刑者の特集
CNN/Faces of mandatory minimums
http://edition.cnn.com/2014/04/23/politics/drug-clemency/index.html
D米司法省による薬物受刑者の早期釈放に関する報道
Prison panel approves early release for tens of thousands of federal drug prisoners
Associated Press July 18, 2014
http://www.usnews.com/news/politics/articles/2014/07/18/panel-to-vote-on-early-release-for-drug-felons

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