弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 覚せい剤供給の急増|世界薬物報告書2014

<<   作成日時 : 2014/06/29 12:03   >>

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先週、国連薬物犯罪事務所から、2014年版の「世界薬物報告書World Drug Report」(下記参照@)が発表されました。コカインやヘロインといったメジャーな麻薬の需給が概ね安定傾向を示すなかで、覚せい剤(メタンフェタミン)や、脱法ドラッグとともに各国に広まっている合成カンナビノイドなどの新型薬物の勢いは、収まる気配を見せません。

●世界の覚せい剤(メタンフェタミン)押収量が急増
覚せい剤を中心とするATS(アンフェタミン型興奮剤・下に注釈)の押収量は、5年ほど前から急速に増え始め、2008年には24トンだったものが、2012年では114トンに達しました。

2012年の世界の覚せい剤押収状況
・世界での覚せい剤総押収量は約114トン
・メキシコと米国での押収量が、世界全体のおよそ半分を占めている
・東アジア・東南アジアでの押収量が、世界全体のおよそ4分の1を占めている
といった状況になっています。
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↑世界のATS押収量の推移
下記参照@資料、p.47より転載

上のグラフは、2003年から2012までの10年間のATS押収状況を示したものですで、薄いベージュ色で表示された折れ線グラフが、覚せい剤(メタンフェタミン)の押収量を表しています。覚醒剤の押収は、2008年以降加速度をつけて増加し、とくに2011年、2012年では急増したことがわかります。

*ATSとはアンフェタミン型興奮剤(Amphetamine-Type Stimulants)のことで、アンフェタミン、メタンフェタミン、MDMAなどを含みます。現在、世界で押収されるATSの約80%が覚せい剤(メタンフェタミン)です。
我が国では、覚せい剤取締法はアンフェタミンとメタンフェタミンを「覚せい剤」と定義していますが、国内ではアンフェタミンの流通はほとんどなく、覚せい剤事件のほぼすべてがメタンフェタミンに関する事件です。

画像

↑世界のATS押収状況・2012年
下記参照@資料 ページより転載
・丸印の大きさは押収量を表す
・オレンジ色は増加傾向、黄色は増減なし、青は減少傾向

この数字を押し上げている要因として、まず挙げられるのは、メキシコでの覚せい剤密造が急増していることです。上述したように、メキシコと米国での覚せい剤押収量を合わせると、世界の総押収量の実に半分に達するのです。
同じUNODCが先月発表した合成薬物に関する報告書(下記参照A)が、北米地域(カナダ、米国、メキシコ)の覚せい剤状況について、大変興味深い分析をしているので、簡単に紹介します。
ここ数年、メキシコからU.S.A.に密輸される覚せい剤がうなぎ上りに増加していますが、米国内ではとくに覚せい剤の乱用が拡大している兆候はみられず、増加分は米国国内市場に向けた供給というより、むしろさらに外国へ供給する目的で密輸されているのではないか、というのです(p.p.50-51)。
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↑メキシコ国内での覚せい剤の移動ルート
下記参照A資料p.52より転載

メキシコでは、いま、米国の需要を上回る大量の覚せい剤が密造されています。余剰を抱えたカルテルの次の目標が、覚醒剤に対する需要が高いアジア太平洋地域に向けられる・・・そんなシナリオが急速に現実味を帯びてきて、関係各国は警戒レベルを引き上げているのです。
そういえば、近年のわが国では、メキシコ仕出しの大型覚せい剤密輸事件が相次いで摘発されていますが、さらに、米国を迂回しての密輸ルートにも目を向ける必要がありそうです。

ところでアジア太平洋地域は、急速に膨張するメキシコに陰に隠れているとはいえ、もともと覚せい剤に対する需要も高く、地域内での生産・流通も盛んな地域です。日本を取り巻くこの地域の状況については、次回で検討することにします。

[参照]
@UNODC, World Drug Report 2014
■報道発表(26 June 2014)
http://www.unodc.org/documents/wdr2014/WDR_2014_Press_release.pdf
■報告書(英文)
http://www.unodc.org/documents/wdr2014/World_Drug_Report_2014_exsum.pdf
AUNODC, Global Synthetic Drugs Assessment(20 May 2014)
http://www.unodc.org/documents/scientific/2014_Global_Synthetic_Drugs_Assessment_web.pdf

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