弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 覚せい剤急性中毒|相次ぐ保護対象者等の死亡2

<<   作成日時 : 2011/11/08 23:47   >>

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「暴れている人がいる」と通報を受けて警察官が駆けつけると、顔面蒼白で目の焦点が合わず、意味不明の大声をあげ、暴れている男を発見。腕には真新しい注射痕があり、周囲には使い終えた注射器や空のビニール袋が・・・。私の手元の事件記録には、逮捕手続きの報告書中に、このような状況が克明に説明されているものが多数あります。
たいていの場合、大暴れしていた男は、数時間もすれば落ち着き始め、やがてだるさや眠気を訴えるようになります。
でも、異様なまでの精神興奮状態の裏側で、頻脈、血圧上昇、高体温などの身体症状も起きていることを、忘れてはいけません。覚せい剤には、中枢神経興奮作用とともに、交感神経興奮作用があり、交感神経興奮作用によって心悸の亢進、血圧や体温の上昇などが生じます。ときには心臓発作や脳出血を招くケースもあるのです。
覚せい剤の急性中毒では、体内でどんなことが起きているのか、もっと具体的に知っておくことも、必要かもしれません。救急医療の現場で、その実際を追ってみましょう。

精神科救急医療のガイドラインでは、覚せい剤急性中毒の症状を次のように説明しています。
■覚せい剤急性中毒
[症状]
精神科救急の現場では、覚せい剤による急性中毒症状は幻視・幻聴・幻臭などを伴って被害・関係妄想と激しい精神運動興奮を呈するケースに多く遭遇する。覚せい剤の使用後1時間以内に精神・身体症状が出現し、大部分が2、3日以内に消失することが多い。
精神症状としては、著明な精神運動興奮の他に、不眠、気分高揚、多弁・多動、常同行動などあり、診察中もじっとしていることができないケースも多い。また、光線や音響に対する知覚過敏、幻視(動く人影など)、幻臭(ガスの臭いなど)、幻聴(注察妄想、考想察知を伴う場合が多い)、さらに周囲状況の誤認や妄想知覚、追跡・被害・関係妄想、包囲攻撃される妄想などがしばしば認められる。幻覚や妄想の内容は場面状況的であり、それにひとつひとつ敏感に反応し、行動化することが多い。
交感神経刺激作用による身体症状としては、歯噛みなど口周囲の不随意運動、頻脈、血圧上昇、不整脈、顔面紅潮または蒼白、不眠、食欲低下、悪心、嘔吐、著明な発汗、高体温、呼吸困難、瞳孔散大、口渇、四肢振戦、腱反射亢進、けいれんなど様々な症状が出現する。40℃以上の高体温・頻脈・低血圧を呈する場合には、心筋壊死による循環虚脱から急死する危険性も高くなる。
[出典]
日本精神科救急学会編『精神科救急医療ガイドライン(規制薬物関連精神障害)2007年1月19日版』19‐20ページ

また、ある法医学者は、覚せい剤中毒による頭蓋内出血の解剖事例について、次のように報告しています。少し専門的な内容ですが、該当部分を紹介します。
■覚せい剤濫用と頭蓋内出血
事例1:40歳代の男性.某ホテルに一人でチェックインした。2日後の朝になっても応答がないのでホテルの従業員が部屋に行ったところ、ベッド上でうつ伏せ状態で死亡していた。・・・右の肘窩には新旧の注射痕が認められた。肺はうっ血水腫状であった。脳は1.67sと重く、著しく浮腫状であった。側脳室内、中脳水道内および第4脳室内に多量の軟凝血が認められた。尿の薬毒物検査により、覚せい剤メタンフェタミンとその代謝物のアンフェタミンの存在が確認された。血中メタンフェタミン濃度は、典型的な中毒死を引き起こすレベルの1/10程度であった。血液中からアンフェタミンは検出されず、死亡までの経過が速やかであったことが示唆された。
事例2:20歳代、産褥期の女性。出産5日目に退院し、その日の午後10時ごろ児をつれて某ホテルに夫婦でチェックインした。夫から覚せい剤30〜40rと注射器を受け取り、午後11時から翌日午前1時の間に2回に分けて自己注射した。2回目の注射の約20分後に激しい頭痛に襲われて意識不明となった。夫は妻を部屋に残してチェックアウトした。その約8 時間後にホテルの従業員が部屋を訪れたところ仰臥位で死亡していた。・・・死者の体格は良好で、右の肘窩には出血を伴う新しい注射痕が認められた。心臓内には豚脂様凝塊が認められた。脳は1.2sで、くも膜下の広範囲に強い出血が認められた。脳動脈瘤や脳動静脈奇形などの異常はなかった。脳実質や脳室内に出血は認められなかった。心臓血からメタンフェタミンが検出されたがアンフェタミンは検出されず、死亡するまでの時間経過は比較的短かったと推定された。血中メタンフェタミン濃度は、典型的な中毒死を引き起こすレベルの数分の1程度であった。
・・・覚せい剤による頭蓋内出血は、脳動脈が覚せい剤の直接作用により中膜平滑筋の急性の炎症を来たして脆弱となり、これに覚せい剤によって遊離されたカテコールアミンによる血圧上昇が加わって破綻するために生じると考えられる。したがって、救急医療の現場では、若年者の予期しない頭蓋内出血例の場合には一応覚せい剤の使用を疑ってみることが必要である。
[出典]
守屋文夫「剖検例を基盤とした医療・福祉への中毒病理学的アプローチに関する戦略研究(講演要旨)」

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