弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 日本の特殊事情への対応|職場の薬物検査1

<<   作成日時 : 2011/08/04 23:47   >>

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大阪市交通局は、バスや地下鉄の運転士ら全乗務員を対象に、薬物検査を実施すると発表しました。2009年に実施したのに続いて2回目、さらに、継続的な抜き打ち検査も計画されているとか。
薬物乱用防止のかけ声の下、職場での薬物検査がすでに動き出していますが、人権侵害に抵触しかねない、非常にデリケートな要素が含まれているこの問題、クリアしておかなければならない点がまだまだ残されています。

<ニュースから>*****
地下鉄運転士らに薬物検査、拒否なら乗務停止も
大阪市交通局のバス運転手が覚醒剤取締法違反(使用)容疑で逮捕された事件を受け、同局は3日、バスや地下鉄の運転士ら全乗務員約2300人に、薬物使用を調べる尿検査を実施することを明らかにした。
同局では2009年にも元地下鉄運転士による覚醒剤使用事件があり、薬物検査を1度行ったが、その際、N容疑者に陽性反応は出なかったという。今後は年1回程度、検査を行い、陽性反応が出れば警察に通報する。
検査には本人の同意が必要なため、前回は6人が検査を拒否。今回は、検査を受けない職員は乗務から外す方向で検討している。このほか、弁護士や専門家らを交えた服務規律に関する委員会を局内に設置し、薬物乱用防止のための研修や指導方法などを見直す。
読売新聞 (8月4日(木)6時12分配信)
*****

●世界のスタンダードは労働者保護、しかし日本では・・・
職場における薬物テストは、1986年、レーガン大統領が連邦政府の職場のドラッグ・フリー化を達成するための大統領令に署名したときに始まったといいます。それから25年以上経った今日、アメリカの企業では上位500社の8割以上が職場での薬物テストを導入しており、いまや新興国でも導入例が報告されています。
根強い反論もあるなかで、欧米社会で、職場での薬物検査が、なんとか定着してきたのは、テスト結果が労働者の不利益に直結しないよう、また個人のプライバシーをできるだけ守るよう、運営や制度を作り上げ、基本的には労働者保護の観点で薬物検査を実施する体制が整ってきたことによるものだといってよいでしょう。
たとえば、アメリカでは、仮に薬物検査で陽性反応が示された場合も、労働者がすぐに解雇されるケースはむしろ少数で、多くは、治療プログラムを受けるように勧められ、治療後は職場に復帰できる体制が整えられているといいます。

ところが、わが国では、こうした労働者の保護を前提とした体制をとることができません。テストで陽性結果が示された場合は、犯罪の疑いがあるとして、警察に通報しないわけにはいかないのです。

日本では、薬物の使用を犯罪と規定し、処罰対象としています。ところが、世界のほとんどの国では、薬物の所持や売買行為は処罰の対象になるのですが、「使用罪」で処罰されるという規定がないのです。つまり、薬物検査の結果が陽性であっても、それだけで警察に通報されることはないわけです。テストの結果、陽性を示した労働者に対して、治療や教育によって問題を克服するよう、企業側がサポートするというシステムが生まれる余地があるのです。

実は、この違いが、これまでわが国で薬物検査の導入を阻んできた最大の理由だと私は考えています。
わが国では、これまで職場での薬物テストは、ほとんど実施されてきませんでした。これまでに、大規模な薬物テストが行われて話題になった例といえば、2006年〜自衛隊、2008年〜大相撲、2009年大阪市交通局くらいでしょうか。

日本で薬物検査を実施する以上、陽性結果→警察への通報→懲戒免職という筋書きを避けて通ることはできないのです。だからこそ、検査すべき明確な理由や、検査手順の透明性、科学性、検証可能性などあらゆる要素が、欧米以上に厳しく検証されなければならないでしょう。
日本の薬物法制の特殊性を踏まえた、薬物検査のあり方について、引き続き考えてみたいと思います。

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