弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 強力大麻の問題|英国の大麻規制2009年の変更4

<<   作成日時 : 2009/04/24 00:23   >>

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英国が大麻規制見直しに動いた背景に、スカンクなどの強力大麻の供給が急増していることへの警戒感がありました。
今回の見直しに関する政府の方針を説明する文書として、『1971年薬物乱用法(修正)命令2008年に関する説明的メモランダム EXPLANATORY MEMORANDUM TO THE MISUSE OF DRUGS ACT 1971 (AMENDMENT) ORDER 2008』が公開されていますが、その6-7ページに、次のような説明があります。
「危険の大きい強力な大麻の入手可能性と使用が増加している。「スカンク」の名で知られる、主要な精神活性成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)のレベルが高い、平均より効力の強い大麻の、入手可能性と使用が、近年では増加している。内務省の2008年大麻の効力研究Cannabis Potency Studyは、乾燥大麻は、2002年には警察が押収したうちの30%前後を占めていたが、2004/2005年では55%であったと推定されると報告している。さらに、現在では「スカンク」が英国の大麻市場を支配しており、末端で押収される大麻中で、最大で80%に至っているが、その効力(訳注:THC含有をさす)は、従来の大麻樹脂の標準が5%であったのに比べ、およそ16%である。これは、大麻の使用人口が減少しているにもかかわらず、実際には、THC摂取の総量と平均値が増加していることを示す重要な指標であるかもしれない。
近年では、産業規模の大麻栽培の顕著な増加があった。重大組織犯罪対策局Serious Organised Crime Agencyの組織犯罪による英国の脅威アセスメント2008/09は、英国(UK)における産業規模の大麻栽培が増加しているとしている。2004年の中頃から2007年1月の間に、産業規模の量で「スカンク」を生産する2000以上の大麻工場が、イングランドとウェールズの41の警官管区で発見され、スコットランドの5つの管区では約70が発見された。これらはしばしば組織化された犯罪集団によって運営され、人身売買によって集めた、子供を含む労働力を使っている(Kapoor, A 2007 : 児童の人身売買監視プロジェクト、UK児童労働とオンライン保護センター、ロンドン)。)
EXPLANATORY MEMORANDUM TO THE MISUSE OF DRUGS ACT 1971 (AMENDMENT) ORDER 2008
http://drugs.homeoffice.gov.uk/publication-search/cannabis/acmd-cannabisreclassification

ここであげている2つのポイント、つまり強力大麻が増加していることと、産業規模の大麻栽培が増加していることは、密接に関連しています。英国のように北方に位置する国では、屋外で大麻を栽培するとTHC含有は低くなりがちです。そのため、従来は中東やアフリカから密輸される大麻が英国の市場を支えてきました。ヨーロッパの中央部でとくに需要が高かったのが、モロッコから密輸される大麻樹脂でした。

それが変化し始めたのは、2000年ころからです。末端の乱用者や密売人から押収される大麻が変化したのです。従来は、外国からの輸入品と思われる大麻草の葉を中心としたものがほとんどだったのが、雌株の花穂部分を乾燥したシンセミアの割合が増え始め、しかも、そのほとんどが高いTHCを含有する強力大麻だったのです。
上記でも引用している「内務省大麻の効力研究2008 Home Office Cannabis Potency Study 2008」は、押収されたサンプルを分析した結果、その97%以上がシンセミアとして栽培されたものであったとしています。この報告書は、押収大麻の変化を写真でわかりやすく説明しているので、興味のある方はご覧ください。
http://drugs.homeoffice.gov.uk/publication-search/cannabis/potency?view=Binary

変化をもたらしたのは、スカンクに代表される改良品種と、シンセミアを大量に得るための室内栽培技術が広まったことだといわれています。最近では、ヴェトナム人グループによる大規模な大麻工場の摘発が続き、ニュースをにぎわしました。

同じ「大麻」と呼ばれていても、1990年代までの大麻と、現在のものでは、含まれているTHCの量がまったく違っていることになります。大麻の精神作用は含まれているTHCによるもので、摂取したTHCの量が多ければより強い作用が現れます。供給される大麻が効力の強いものに変わったとするなら、もたらされる影響もより深刻になっているのではないか。
今回の見直しを後押ししたのは、こうした懸念であったといってよいでしょう。

きわめて明確で、わかりやすい話のように思われます。ところが、この仮説を検討した薬物乱用諮問協議会(ACMD)は、中毒情報や医療機関のデータは「近年、より強力な大麻を入手しうるようになって、大麻の急性中毒が増加したという結果を示してはいない。」としているのです。「大麻:分類と公衆保健Cannabis:Classification and Public Health」11ページ http://drugs.homeoffice.gov.uk/publication-search/acmd/acmd-cannabis-report-2008

強力大麻が増え、英国に出回る大麻が変化したことは間違いのない事実です。しかし、今のところ、危惧された急性中毒の増加が起きているというデータはない。今後どうなるか、それは誰にもわからない問題なのです。では、この問題にどう対処するのか。
今回、英国政府の出した回答は、予防のために厳しい措置をとるというものです。当然、別の選択肢もあるでしょう。しばらくは英国内外での議論が続きそうです。

ところで、これら報告書を読んでいると、現在の日本の近未来への不安が大きくなってきます。変化が目に付き始めて10年足らずで、英国の大麻の状況がこれほど変わりました。もっとも大きな要因は、室内栽培の拡大だったと思います。油断してはいられないぞと、つい日本の明日を考えてしまいます。

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