弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 大麻取締法改正論を批判する―その5

<<   作成日時 : 2008/12/08 23:40   >>

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■論点その2、大麻取締法に使用罪がないのは不備か
1、日本の薬物規正法のなかでは

2007年、わが国では、約14,790人が薬物事犯として検挙されましたが、違反態様別にみると、「使用」、「施用」の違反での検挙が6,929人と、全体の47%を占めています。ちなみに、「所持」違反での検挙人員は6,196人(42%)です(警察庁編『平成19年の犯罪』第85表、2007)。学校では「薬物の使用や所持は法律で禁止され、違反すると懲役刑が科される」と教えていますが、たしかに、わが国の薬物事犯者のほとんどが「使用」と「所持」で占められているのです。

現在、わが国で薬物乱用の取り締まりに適用されている法律は、覚せい剤取締法、大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法、あへん法です。覚せい剤取締法には「使用」罪があり、麻薬及び向精神薬取締法では「施用」、あへん法では「吸食」と呼び方は異なっていますが、いずれも対象となる薬物の摂取を禁じ、違反者に懲役刑を科すことを定めています。また法律の体系が少し違いますが毒物及び劇物取締法、刑法のあへん煙に関する罪にも使用罪に相当するものがあります。
そのなかで、大麻取締法には、使用罪に相当する規定がありません。同法4条1項は「何人も次に掲げる行為をしてはならない。」としていますがその2、3号に掲げられているのは「2、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。」「3、大麻から製造された医薬品の施用を受けること。」であり、大麻を使用することを禁じる規定がありません。また、違反者に対する処罰を定めている箇所にも、いわゆる使用罪に関する規定は見当たりません。なお、24条の3に「大麻を使用した者」という記載がありますが、これは、研究のための使用をさすもので、いわゆる大麻乱用の場合はこれに当たらないと解釈されています。

日本の薬物規正法を比較してみると、大麻取締法だけに使用罪がないのは、たしかに異例であるといえるでしょう。

さて、大麻と使用罪の問題をもう少し突っ込んで検討してみたいと思います。
まず、なぜ、大麻取締法に使用罪がないのか。
その理由として、大麻取締法制定時に、大麻栽培に従事する農業者が誤って成分を摂取する危険性を考慮して、使用罪を設けなかったという話が報道されています。この説明の真偽はともかく、同法の前進である大麻取締規則(昭和22年)では、使用罪が規定されていたのに、昭和23年に同法が制定されたとき、なぜか、使用罪がなくなったのです。私は、その理由を捜していますが、明確な根拠や理由を示す資料には、まだ出会っていないので、私自身が納得する答えをまだ見つけていません。
しかし、他の法律との均衡をはかることが必要であるなら、同法が制定されて60年の間に、改正の機会はいくらでもあったはずです。同法は、制定以来何度も改定されてきました。昭和28年までは一貫して栽培者の負担を軽減する方向で改定が行われましたが、その後は、国際条約に対応するための規定の見直しや、乱用拡大に対応した罰則の引き上げが行われましたが、その過程で、使用罪を設けることは議論されたことがないように思います。改定の機会が何度もあったなかで改定されずにきたことは、一定の意味を持っていると思います。

次回は、薬物使用罪というものについて、もう少し考えを進めてみることにします。

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