弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS カナダの産業用大麻政策を考える―その5

<<   作成日時 : 2008/12/24 00:06   >>

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カナダは、産業用大麻の栽培を許容しています。カナダ保健省(Health Canada) のホームページにあるRegulatory Impact Analysis Statementという記事を通じて、カナダの大麻規制政策を考えてみようと思います。
Health Canada > Drug and Health Products> Regulatory Impact Analysis Statement
http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/pubs/precurs/rias1089/international-eng.php

●国際的なモデルの評価
カナダは、産業用大麻の栽培に関する方針を決定するに当たって、他の国や地域で行われる管理政策モデルを評価し、自国での規制のあり方を求める方法をとったようです。上記資料の1〜3ページに、各国の規制策の概要がまとめられています。その部分を私の私的な翻訳で紹介します。

[ヨーロッパ]
ヨーロッパ全体として単一のモデルはない。数カ国では、低THC大麻の産業用栽培を許可している。国によって、規制の取扱に著しい違いがある。欧州評議会は、産業用大麻として許容しうるTHCとして0.3パーセントを採用した。欧州諸国のなかには、より高いTHC濃度を許容する国もある。カナダでは、欧州と比べて、大麻を栽培しうる土地の規模が大きいことが、監視に当たって困難を生じる。さらに、ヨーロッパ連合(EU)では、大麻栽培の補助金が規制方法に影響を与えている。それは、実現可能な部分では、規制を調和させるものもあるが、カナダには、ヨーロッパの解決策は適切でないかもしれない。最近、EUは、産業用大麻の耕作に対する管理と、国家機関による監視活動が不十分であるという見解を示した。EUは、現在、管理及び監視の機能を向上させる手段を模索している。
[オーストラリア(ビクトリア州)]
薬物・毒物及び規制物質法(修正)議案は1997年10月14日に議会を通過した。この法案は、自然資源及び環境省に申請して、低THC大麻を栽培することを可能にするものである。申請者は、偽りなく、精神作用のための使用に関係しない、研究又は商業目的であることを証明する書類が求められる。商業的生産は、収穫作物を供給する市場を有していることを示す者に限られる。
[アメリカ合衆国]
合衆国は大麻の商業耕作を許可していない。研究目的のための大麻の耕作は非常に限られている。大麻種子の派生物は規制されていない。合衆国内のあらゆる認可された会社は、すべての大麻種子を、分配する前に、発芽不能処理しなければならない。規制薬物法(Controlled Substances Act:CSA)と麻薬取締局(DEA)規則は、含まれる量にかかわらずテトラヒドロカンナビノールを含むあらゆる材料、化合物、混合物、あるいは前駆物質をスケジュールTの幻覚性物質と規定している。大麻草から得られる油脂は、大麻草の規制部分である樹脂、花穂、葉などを含まなければ、合衆国では規制されない。大麻の種子から得られた油脂は、量にかかわらずテトラヒドロカンナビノール(THC)を含む場合は、スケジュールTの規制物質である。あらゆるスケジュールTの規制物質を合衆国に輸入する者は、DEAに登録し、輸入許可を受けなければならない。
(Regulatory Impact Analysis Statement Health Canada http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/pubs/precurs/rias1089/international-eng.php

上記を読むと、カナダの政策は、ヨーロッパですでに採用され、また1997年にオーストラリアが採用した、低THC大麻の産業用利用政策をモデルにしたものだということが理解できます。しかし、アメリカのように、こうした政策を受け入れない国もあります。薬物規制のあり方は、国によって大きく異なっており、とくに大麻に関しては、その差異がきわめて大きいのです。

カナダは、1997年に「規制薬物・物質法(Controlled Drugs and Substances Act:CDSA)」を施行し、1998年には産業用大麻政策を導入。次いで、2001年に医療用大麻取締規則(Marihuana Medical Access Regulations)を制定しています。薬物規制のあり方を総合的に見直し、規正法の体系を組み立てなおす、一連の政策立案と導入が行われてきたのです。こうした決定に当たって、外国における薬物管理政策のモデルを検討し、自国の進むべき道を模索する試みが続けられてきたようです。

カナダ連邦議会のサイトには、「違法薬物特別委員会」のコーナーが設けられ、委員会での調査報告書が掲載されています。
Special Committee on Illegal Drugs(37th Parliament - 1st Session)
Committee Research Papers
http://www.parl.gc.ca/37/1/parlbus/commbus/senate/Com-e/ille-e/research-papers-e.htm
このなかに、膨大な調査報告書とともに、各国の薬物規制政策の概要をまとめた資料があります。オーストラリア、フランス、スウェーデン、スイス、オランダ、連合王国(英国)、合衆国(米国)と、各国の法制度やその運用、主要な報告書や論文の概要などが詳細に紹介されていて、私は、実に便利な資料としてこれを利用してきました。大半が2001年にまとめられたもので、ちょっと古いのですが、貴重な資料です。興味のある方は、上記のサイトをぜひお読みください。

なお、カナダは2000年前後に相次いで、産業用大麻、医療用大麻の政策を導入していますが、そのいっぽうでは、特定の薬物犯罪に対して、最低限の拘禁刑を例外なく科すというマンデトレイ・ミニマム判決の制度を導入するなど、違反者に対する罰則の引き上げも最近行われました。
世界ではいま、薬物犯罪に対処する方法論をめぐって、さまざまな動きがあります。多様な規制緩和策の試みと、その修正としての規制強化がめまぐるしく入れ替わり、時々刻々と変化しています。その変化を監視しながら、大きな潮流を常に意識していないと、世界の動向を読みそこなうことになってしまうでしょう。

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