弁護士小森榮の薬物問題ノート

アクセスカウンタ

zoom RSS 大麻取締法の生い立ちを考える・その16−大麻の使用罪

<<   作成日時 : 2008/10/04 01:59   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 6

大麻取締法について考えるとき、何度も突き当たる疑問があります。わが国の薬物規正法では、基本的に、対象薬物の使用を処罰しているのに、大麻に限って使用罪がないことです。
最近、大麻にまつわる話題が増え、大麻の使用罪についても、マスコミ等でとりあげられる機会が増え、私もたびたび質問を受けます。実は、この点について、私にもまだ良くわかっていないことがあります。

まず、少し整理しておきます。
わが国の薬物規正法は、基本的に薬物の使用を処罰しています。そのなかで、大麻取締法だけは、いわゆる使用罪の処罰規定がありません。
大麻取締法は昭和23年7月に制定された法律です。その前身である大麻取締規則(昭和22年)では、大麻の施用を禁止しており、違反者に対する罰則も規定されています。
第二条 何人も左に掲げる行為をすることはできない。
 一、大麻草の栽培及び大麻草又はその種子の栽培地外への持出
 二、大麻の輸出、輸入
 三、大麻の販売、購買譲渡、譲受、所有及び所持
 四、大麻の施用(大麻の配伍した処方箋の交付を含む。)

それが、昭和23年に大麻取締法として制定されたときには、次のように変化しました。
 第四条 何人も左に掲げる行為をしてはならない。
 一 大麻を輸入し、又は輸出すること
 二 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること

その後、法律は何回か改定を経ていますが、「大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること」を禁じる規定は変化していません。現在の法は、次のようになっています。
 第四条  何人も次に掲げる行為をしてはならない。
 一  大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)。
 二  大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
 三  大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
 四  医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等(医薬関係者又は自然科学に関する研究に従事する者をいう。以下この号において同じ。)向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、大麻に関する広告を行うこと。
 2  前項第一号の規定による大麻の輸入又は輸出の許可を受けようとする大麻研究者は、厚生労働省令で定めるところにより、その研究に従事する施設の所在地の都道府県知事を経由して厚生労働大臣に申請書を提出しなければならない。

ごく単純にいえば、昭和23年の法律制定時に、大麻の使用罪がなくなったのです。その理由、あるいは背景を見つけようと文献を探してきましたが、いまだにみつかっていません。
この問題を解明するには、おそらく、日本の薬物規制の歴史を最初から、徹底的に研究してみる必要があります。大麻取締法と麻薬取締法(その後改定されて麻薬及び向精神薬取締法)が分離した当時にまでさかのぼり、あへん法や覚せい剤取締法とも比較・分析してみなければならないのです。
あらためて、日本の戦中戦後と麻薬問題に、本格的に取り組みます。途中のメモを随時掲載していきます。

ところで、わが国の法令では、麻薬の施用や覚せい剤の使用などを禁じ、処罰していますが、欧米では、薬物の使用を処罰する例は、ごく限られています。大麻取締法に使用罪の処罰規定がないことを、まるで法の不備であるかのようにいう人がありますが、むしろ、これが国際標準に近い内容なのです。その意味で、私は、大麻取締法が不備であるとは考えていません。それどころか、薬物使用を処罰する規定を廃止するべきだというのが、私の持論です。
そもそも、わが国の法令が禁止してきた「施用」が、最初から、いわゆる薬物の自己使用を意味していたのかどうかについても、検討してみる必要があります。
問題は、ますます広がってしまいました。数年がかりの仕事になりそうです。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
イギリスBeckley FoundationのThe Cannabis Commissionが2009年のUNGASS evaluation(国連のドラッグ政策の本格的な見直し)に向けて取りまとめた報告書は以下の内容を含んでいる。
”この報告書は、国家的あるいはsub-national(地域的)統制体制における成人の使用のための管理された利用可能性を許可するための、大麻の現在の国際条約の状態を改めるうえでの可能な方策のレヴューを含む。個々の国あるいは国の集まりに利用できる様々な可能な方針がある中で、最も重要な注意は、国際法と政治的な実情の標準という点で、最も有力に実現可能となるものについて払われた。その章は、たばこ規制枠組条約をモデルにした大麻に関する可能な新しい条約における具体的な条項の考察を含む。”
http://www.beckleyfoundation.org/policy/cannabis_commission.html

来年の国連の薬物政策の評価に向けて日本政府はどのような取り組みを行っているのでしょうか?
野中
2008/10/04 18:59
通りかがりで失礼します。
大麻についての記事読ませて頂き引き出しの多さを
感じました。

使用罪ですが、昔こんな話を聞きました。

大麻栽培者が大麻を加工する際に大麻の成分?を
吸引してしまうから使用罪が設けられなかった。

大麻には工業用/衣類用、様々な大麻の活用法が
あるので、昔は大変だったのでしょうね。
その為に御上のお墨付き免許制度になり、生産者
保護の観点から使用罪を設けなかったのだと
自身では推測しています。
大麻の花を燃焼しなければさほどの問題成分は
ほとんど影響ないことも研究されてなかったの
ではないでしょうか。
また、江戸時代では農家の人々が当時高価なタバコ
を買えず、安価な大麻をキセルで吸引していたとも
噂話レベルで聞きます。
今で言うなら飲み屋の手軽なほろよいセットだった
のかもしれません。

大麻解放より、まずは誤認をなくし、大麻による
差別的な報道を無くす。
そしてより良いモラルが構築されることを
願っています。
enokida
2008/10/05 11:29
生産者保護の観点から使用罪を設けなかったという話は確かに一部で伝わっているようですが、当時の国会議事録などを読むと、どうも違うような気がします。
制定時期は少し後になりますが、あへん法を独立させた際には、使用罪があります。あへんの採取に当っては、あへん成分を摂取してしまう危険がはるかに高いにもかかわらず。
この問題、整合性のある答えを見つけるのはたいへんです。
俗説、巷説、なんでもご存知の方はお教えください。
小森 榮
2008/10/05 17:20
嗜好品として生産販売はもちろん貿易や広告も禁止
医療面も全面的に禁止したのも嗜好目的の抜け道を防ぐため
阿片が戦争の引き金になってるからアメリカは
日本国やテロ組織に大麻(麻薬)を売らせたくなかったんでしょう

使用罪を適用しないのは、産業用の伐採・野焼き・副流煙などの
意図しない吸引があるからだと思います
あへんケシ栽培の方は産業として潰したかったのでしょうか
猫次
2015/07/17 21:08
私は大麻を禁止にした最初の理由は、
ケシ(栽培)を減らすためだと考えております。
1925年の万国阿片条約でなぜ大麻が本格的に禁止になったか
1948年の大麻取締法でなぜ大麻草に重規制を掛けたか
1961年の麻薬に関する単一条約でなぜ大麻をヘロイン並みに禁止にしたのか
これらの説明が付くんじゃないのでしょうか
大麻草植えたら芥子は植えられないし、
大麻草が売れたら芥子を売らなくなるんじゃね
という発想です。

案の定、アメリカの大麻解禁で
メキシコのケシ栽培が増えたいう情報があり、
もし世界的に大麻が解禁されたら、
ケシ栽培も世界的に増えると予測します。
猫次
2016/01/14 12:21
逆転の発想をし大麻を闇で売らせるため
と考えてみてはどうでしょうか

麻薬カルテルを壊滅させることは現状不可能
これを踏まえて
麻薬組織に覚醒剤・危険ドラッグ・ヘロイン
・大麻・アルコール
のうちどれを売って欲しいか問われたら、
真っ先に‘大麻’と答えます。
麻薬組織に大麻を売らせるためには
大麻は禁止じゃないと無理
違法薬物問題のリスクヘッジのために
大麻は違法であるべきだと考えております。

一つの説として受け止めてくれると有難い。
猫次
2016/01/14 12:22

コメントする help

ニックネーム
本 文
大麻取締法の生い立ちを考える・その16−大麻の使用罪 弁護士小森榮の薬物問題ノート/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる