弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 改めて大麻を考える その14

<<   作成日時 : 2008/05/22 12:09   >>

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国連薬物犯罪局(UNODC)の『世界薬物報告書2006』第2章、CANNABIS: WHY WE SHOULD CARE を読みながら、改めて大麻について考える連載に戻ります。

第3節 The emergence of ‘new cannabis’and the reassessment of health risks
●公衆衛生への衝撃:危惧する3つの理由
その2、リハビリテーション需要の伸び

ここでは、薬物トリートメント対象者のなかで、大麻関連の件数について検討しています。トリートメントとは、薬物問題を克服するためのプログラムです。「薬物治療」と訳されることもありますが、病院でおこなう治療とは違い、自助グループのミーティングに、専門家の監督と尿検査(多くの場合)を組み合わせたものと理解していいでしょう。
末端の薬物乱用者に対する取締が比較的ゆるやかなヨーロッパでは、任意で参加するものが中心です。ところが取締りの厳しいアメリカでは、刑事司法制度と組み合わせになったトリートメント、つまりドラッグ・コートでおこなうものが中心です。薬物の所持などで逮捕された人に対して、通常の刑事手続のほかに、ドラッグ・コートという選択肢が提供され、これを選択した場合は拘禁を解かれて、1年程度の期間トリートメントに参加し、定期的に裁判所に出頭することになるわけです。

報告書は、まずアメリカから提供されたデータを検討します。1993年と1999年を比較すると、トリートメント参加者中の大麻関連件数はあきらかに増加しています。しかし、アメリカでのトリートメントは基本的に、上記のようにドラッグ・コートなど刑事司法と結びついたもので、薬物事犯として逮捕された人が対象です。1990年代には、ドラッグ・コートの開設が続き、提供されるトリートメントも増加しています。さらに、もうひとつ、この時期のアメリカでは、大麻事犯に対する取締が強化されたと報告書は語っています。期間中の大麻での逮捕者は85パーセント増加、大麻以外の薬物では11パーセント増。この変化に関して、公式の見解は発表されていないとあります。

次いでヨーロッパのデータですが、国によってトリートメントの体制や、大麻使用の規制状況が違うため、国別の単純比較は困難です。興味深いのは、主にアルメニアから大麻の供給を受けている(つまり旧来の栽培方法による大麻が供給されている)ギリシアとイタリアでは、トリートメントでの増加が低く、ドイツやオランダのようにシンセミアの市場シェアが増加した国では、トリートメント人口中で大麻関連件数が急騰しているという点です。しかし、イギリスやスウェーデンのように、大麻の使用状況がトリートメント需要の増加と結びつかない例もあり、データの評価は難しいとされます。
以下、オーストラリア、南アフリカと大麻消費の多い地域のデータ検討が続きますが、それぞれ傾向を評価しにくい問題があります。

全般に、大麻使用に関連してトリートメントを求める人が増加しているようにみえますが、しかし、明確に傾向を把握するには至らないというのが、結論です。この部分の最後を引用します。
「したがって、こうした傾向の背後に強力大麻の存在があると立証するのに十分なデータではないが、こうした調査研究が集中して行われている基盤は間違いなくここにある。国境警備が強化されるにつれ、国内で生産される大麻の割合が高くなり、多くの国では屋内生産されることになるであろう。しかし世界のほとんどの地域では、当面は大麻の状況に変化はないと考えられる。変化しているのは、この薬物に関するリスクについての我々の理解のしかたである。」
国連薬物犯罪局編『世界薬物報告書2006』第2章 178頁
http://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/WDR-2006.html

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>興味深いのは、主にアルメニアから大麻の供給を受けている(つまり旧来の栽培方法による大麻が供給されている)ギリシアとイタリアでは、トリートメントでの増加が低く

このレポードでいうところの「強力大麻」というのは、大きく分けて3種になる大麻の、インディカ種とサティバ種を交配させて作られるもので、それは種子として広まっています。栽培方法は、どこの国でも変わりません。旧来も今も、栽培方法はほぼ同じです。
アルメニアの事情は分からないのですが、現代で流通しているマリファナが、いわゆる「旧来の成分が低いもの」では流通しないのではないかと思います。ギリシャやイタリアでも大麻の非犯罪化はほぼ成されていますし、EUには国境が無いのと同じですから、ギリシャやイタリアだけ成分の少ないマリファナが主流になっている、という考え方は納得できないのですが。
日鷲
2008/05/23 16:44
「新大麻」「強力大麻」と言われている大麻とは、上記したように交配種です。そのオリジナルとなるインディカやサティバは、アフガニスタンやインド、東南アジアや中南米の原種を用いています。原種は原種で、THCが低いわけでもありません。
大麻は通常「花穂」の部分を使います。花穂は種をつけるわけですが、受粉させないで種の無い花穂をつくります。これが「シンセミア」と呼ばれるもので、成分量が多くなります。この方法は難しいことではなく、大麻草は雌雄異体なので、雄の株だけ排除すればいいだけです。このシンセミアは、1970年代にオランダで開発されたものです。つまり、「新大麻」「強力大麻」といわれるものは、ここ30年来吸われている大麻のことになります。
それまでオランダで人気があったのが「大麻樹脂」です。大麻樹脂はTHCが多く、シンセミアが開発されるまでは主流でした。つまり、シンセミアが出来る前から、THCの高い大麻製品は存在していたのです。
このため、「新大麻」「強力大麻」により社会に与える影響が深刻になった、かのような論調は、非常に懐疑的にみられ、それ自体「幻の大麻」と言われています。
日鷲
2008/05/23 23:13

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