弁護士小森榮の薬物問題ノート

アクセスカウンタ

zoom RSS 改めて大麻を考える その13

<<   作成日時 : 2008/05/18 21:57   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

国連薬物犯罪局(UNODC)の『世界薬物報告書2006』第2章、CANNABIS: WHY WE SHOULD CARE を読みながら、改めて大麻について考える連載に戻ります。

第3節 The emergence of ‘new cannabis’and the reassessment of health risks
●公衆衛生への衝撃:危惧する3つの理由
さて、同報告書は、THC効力の強い新大麻の登場によって、どのような健康影響がでているかについて、次の3ポイントで語っています。
@ 急性健康症例の増加
A リハビリテーション需要の伸び
B 健康影響について我々の考えかた

その1、急性健康症例の増加。
ここでは、救急医療のデータから、大麻の健康影響を検討しています。
検討されるのは、アメリカ厚生省の薬物乱用・精神衛生管理庁(SAMHSA)の管理するさまざまなデータを取り上げて、救急医療を受ける大麻ユーザーの増減を計算しています。基本になるのは、薬物乱用警告ネットワーク(DAWN)の救急医療に関するデータです。このデータは、違法及び合法薬物使用による症例は、救急治療部門の医療スタッフが判定した結果が参照すべき備考として記載され、検視官が「薬物関連」と判定した死亡件数とともに記録されています。 

計算の具体的な説明はいささか複雑なので、そのまま引用します。
「大麻使用に起因する死亡は極めて少数であるが、大麻使用関連の救急症例はかなりの数にのぼり、ここ数年にわたり増加している。DAWNのシステムに参加する医療専門家によると、1995年においてマリファナ(大麻樹脂を含む)の記載のある救急治療症例は4万5259であった。備考に記載された数は、2003年には、164パーセント増の11万9472まで増加した。期間中の人口増加を加味して、この数字から割合を計算すると、2002年には、10万例あたり47の備考記載があり、1995年と比較して139パーセントの増加であった。この増加は、MDMAの増加(767パーセント)より少ないが、コカイン(33パーセント)やヘロイン(22パーセント)より多い。この数字は、大麻での緊急入院の増加は、大麻が増加し、他の乱用薬物の大半と比べて破格に増加したことによるとする主張を支持するかもしれない。しかし、他のSAMHSAデータは、また、この期間に大麻の使用が全体的に増加したことを示してもいる。
薬物使用と健康に関する全国調査(NSDUH)によれば、1995年には、合衆国の大麻ユーザの数は1775万5000人であった。2002年には、この数字は、31パーセント増の2575万5000人になった。この数字を用いて、大麻ユーザー中の救急治療症例で大麻の備考記載のある者の割合を計算することができる。1995年には、この年に大麻を使用した392人当たり1名が救急治療を受けた。 2002年には、216人のユーザあたり1名で、55パーセント増であった。これは、救急治療症例中の大麻ユーザのシェアが増加したことを示唆している。
しかしながら、備考に大麻が記載される場合、通常、それは他の薬物との併用として記載されている。大麻が記載された症例の72パーセントは、他の薬物も記載されている。したがって、救急治療室に運ばれたことに大麻だけが関係していると明確に言うことができるのは、少数の症例に過ぎない。しかしこうした「大麻のみ」の症例の割合は増加しており、1995年には、備考に大麻が記載された症例の78パーセントに他の薬物も記載されていたのであって、この薬物自体がより問題のあるものになってきていることを示唆している。薬物に関係して救急医療を求める例では、緊急事態の正確な原因についてさらに分類されている。近年、大麻で救急治療を求める最も一般的な理由は、薬物に対する予期しない反応である。これは、強力大麻(high potency cannabis)が増加している環境から予測されるものと一致する。」
国連薬物犯罪局編『世界薬物報告書2006』第2章 178頁
http://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/WDR-2006.html

うーん、確かに増加しているのでしょうが、正直なところ、あまり切実なものを感じません。数年前、アメリカのティーンエイジャーにMDMAが広まり、高体温症などの救急事例が急増したとき、やはりこのデータが紹介されていましたが、それと比べて、具体的なイメージがつかめないのです。

しかし、別なところで、あらためて感心したことがあります。ここで紹介された薬物乱用・精神衛生管理庁(SAMHSA)が公開している情報の豊富さには、驚きさえ感じます。
SAMHSA  http://www.samhsa.gov/index.aspx
DAWN   http://dawninfo.samhsa.gov/
薬物使用と健康に関する全国調査 https://nsduhweb.rti.org/ 

日本には、DAWNと同じようなシステムはありませんが、精神科病院の調査を通じて、薬物の健康影響の実態を把握しようとする試みが、「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」として続けられています。
この研究は、国立精神・神経センター精神保健研究所を中心に定期的に行われているもので、全国の精神科病床を有する医療施設を対象に、薬物関連精神疾患の実態調査をしています。公表されている最新版は平成18年度のものですが、その研究要旨に「大麻は乱用拡大が懸念されており,『大麻症例』は全体の2.4%と前回調査よりは若干減少したものの,「大麻使用歴を有する症例」は全体の27.7%と高水準を保っており,症状の遷延例も少なからず存在することがうかがわれた。」とあります。
なお、この報告書は、なぜかインターネット上に見当たりません。平成16年版は下記
http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/drug-top/data/researchJHS2004.pdf

ちなみに、労働科学研究には、薬物問題に関するよい研究がたくさんあるのですが、思いついてすぐ入手できるものはわずかです。公費を使って研究するのですから、インターネット上で公開することを考えてほしいものです。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
改めて大麻を考える その13 弁護士小森榮の薬物問題ノート/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる