ニセ錠剤に警告|米でニセ処方薬関連の事故が急増

米カリフォルニア州サクラメント地区で、医薬品として処方されるオピオイド鎮痛薬そっくりのニセ錠剤が出回り、オーバードーズによる事故が急増、死亡者はすでに10人を超え、病院で救急措置を受ける患者は数十人にのぼっています。
最近のケースで問題になっているのは、鎮痛薬としてよく処方される鎮痛薬「ノルコNorco」にそっくりのニセ薬品です。
このニセモノは、正規品にそっくりの外観だといいます。本来なら、「ノルコ」の主成分はヒドロコドン(鎮痛薬ジヒドロコデイノン・日本での規制区分は麻薬)なのですが、ニセ錠剤から検出された成分は、モルヒネの100倍強力な作用をもつといわれる合成麻薬フェンタニル系のアナログでした(下記参照①)。
正規の医薬品とそっくりの外観、ところが作用ははるかに強力というのが、この種のニセ錠剤の問題点で、気付かないままいつもの使用量を服用してしまった人たちが、オーバードーズに見舞われるというわけです。

●オキシコドンやヒドロコドン、向精神薬などのニセ錠剤
この数年、米国各地で、オピオイド鎮痛薬や向精神薬のニセ錠剤が出回り、オーバードーズ事故を引き起こしています。
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↑DEAはニセ医薬品に関する匿名通報番号を開設(2016年4月4日)
http://www.dea.gov/divisions/sf/2016/sf040416.shtml

■鎮痛薬「オキシコンティンOxyContin」のニセ錠剤
オキシコドン(鎮痛薬・日本での規制区分は麻薬)錠剤そっくりのニセモノも、2014年ころから米国各地で押収されています。
今年4月上旬、カリフォルニア州サンディエゴで、1000錠を超えるニセ医薬品をメキシコから密輸しようとした男性が逮捕されました。男性は、オキシコドン錠剤を密輸するつもりだったといいますが、押収された錠剤の主成分は、オキシコドンではなく、フェンタニル系の薬物でした(下記参照②)。
■鎮痛薬「ノルコNorco」のニセ錠剤
前述したように、最近カリフォルニア州で出回ったのが、ヒドロコドン(鎮痛薬・日本での規制区分は麻薬)錠剤のニセモノです。
■向精神薬のニセ錠剤
昨年は同じ地域でザナックス錠剤(抗不安薬アルプラゾラム・日本での規制区分は向精神薬)のニセ医薬品が出回り、オーバードーズ事故が発生し死亡者もでましたが、ここでもニセ錠剤からフェンタニル系の薬物が検出されています(下記参照③)。

外観がそっくりとはいっても、こうしたニセ錠剤が、正規の医薬品ルートに紛れ込んで流通するおそれは、まずありません。
しかし、医師の処方せんがなければ入手できないはずの医薬品が、インターネット経由で密売されたり、手から手へ売買されているヤミ市場に、こうしたニセ錠剤が紛れ込んで流通しているのです。
日本にも、こうしたニセ錠剤が流入しているかもしれないなかで、出所のはっきりしない処方薬には、これまで以上に警戒しないといけません。「処方せんなしで購入できる」「正規品のジェネリック」などとうたって、医薬品規制をかいくぐろうとする怪しげなサイトにも、注意が必要です。

●いつ動き出しても不思議ではない危険ドラッグの新局面
近年、米国で中毒事故を引き起こしているのは、主にフェンタニル系のアナログ物質を主成分にしたニセ錠剤です。原材料の粉末が中国から輸入され、米国内やメキシコで錠剤に加工されているといいます。

今年3月、米DEAはカリフォルニア州で稼働していた錠剤の密造施設を摘発したと発表しましたが、現場では多くの加工済み錠剤と、13キロに及ぶフェンタニルのアナログが押収されたといいます(下記参照④)。
9015年9月、米コネチカット州の連邦地裁で有罪判決を受けた男性は、ニセのオキシコドン錠剤を作ろうと、錠剤加工装置を中国から輸入したとして起訴されていました。インターネット上で知り合った相手から、加工装置とともに、原料の薬物粉末も購入したといいます。
ただし、この男性が「オキシコドン」といわれて買い入れた大量の粉末は、オキシコドンではなかったということです(下記参照⑤)。

危険ドラッグの世界で繰り返されてきた、イタチごっこが、またしても展開されています。フェンタニルはヘロインよりはるかに強力な合成オピオイドで、医師の処方によらない売買は禁止されています。ところが、法規制に引っ掛からない新型のアナログが、近年「研究用試薬」として次々に登場して、インターネット上で販売されているのです。
日本でも、2015年にはアセチルフェンタニル、2014年にはパラフルオロ・ブチルフェンタニルが指定薬物に追加されています。

しかも、原材料の薬物粉末だけでなく、どうやら、錠剤に加工する装置や錠剤の金型まで、インターネットを探せば、簡単に手に入るようです。
そういえば、危険ドラッグが出回るようになったころから、ヨーロッパ各地では、エクスタシー/MDMA錠剤として密売される錠剤にも、多様な新型薬物を含むものが発見されてきました。こうした錠剤の多くは、中国あたりから輸入された原料薬物を使って、ヨーロッパ内で錠剤に加工されるものが多いといいます。

その延長線上に、今度は米国で、処方薬のニセ錠剤が登場したわけです。
世界規模で拡大した危険ドラッグ禍は、とりあえずピークを超えましたが、危険ドラッグを生み出してきた製造会社や、インターネット上の売買ネットワークはそのまま残り、今も稼働しています。
次の新局面が、いつ拡大し始めるか、油断はできません。

[参照]
①「ノルコNorco」のニセ錠剤
abc News / FAQs about tainted Norco overdose deaths(March 30, 2016)
http://www.abc10.com/news/local/sacramento/faqs-about-tainted-norco-overdose-deaths/110590066
②オキシコドンのニセ錠剤
DEAの報道発表:メキシコ国境でニセ錠剤を大量押収(April 15, 2016)
Hundreds of Counterfeit Oxycodone Tablets Seized at Port of Entry Contained Ultra-Deadly Fentanyl
http://www.dea.gov/divisions/sd/2016/sd041516.shtml
③ニセ向精神薬「ザナックスXanax」
CBS News / Fake Xanax blamed for woman's death(October 26, 2015)
http://www.cbsnews.com/news/fake-xanax-blamed-for-womans-death/
④米司法省の報道発表:ニセ錠剤密造施設を摘発(March 16, 2016)
DEA Agents Arrest Four Men on Federal Charges of Distributing Narcotics, Including Pills Manufactured with a Fentanyl Analogue
https://www.justice.gov/usao-cdca/pr/dea-agents-arrest-four-men-federal-charges-distributing-narcotics-including-pills
⑤DEAの報道発表:中国から錠剤加工機を買った男性有罪に(September 23, 2015)
Bridgeport Man Who Purchased Tableting Machine to Produce Oxycodone Pills Sentenced
http://www.dea.gov/divisions/bos/2015/bos092315.shtml

プリンスさん死亡でまた医療用麻薬の乱用が話題に

「伝説のミュージシャン」と呼ばれるプリンスさんの急死に関して、医療用麻薬問題が取りざたされています。正式に死因が発表されるには、まだ数週間かかる見通しで、その間にも、様々な観測や憶測が飛び交うことになりそうです。

4月29日付のCNN記事は、解剖時に体内からオピオイド鎮痛薬が検出され、自宅にもオピオイド鎮痛薬が残されていたと伝えています。また、急死の1週間前に、コンサートを終えて自家用ジェット機で帰る途中、機内で体調が急変したため、イリノイ州の飛行場に緊急着陸し、病院で応急措置を受けたといいますが、その際に、鎮痛剤の過剰服用の手当てを受けたともいわれます(下記参照①)。

ガンなどの強い痛みを緩和するために処方されるのが、オピオイド鎮痛薬です。強い痛みを緩和する貴重な医薬品ですが、その反面、医学的な適量を超えて多量に乱用すると、特有の陶酔感をもたらすことから乱用されやすく、また、急速に耐性が生じるため、乱用者はどんどん摂取量を増やし、過量摂取(オーバードーズ)による死亡事故につながりやすいため、注意深く使わなければなりません。
日本では医療用麻薬として厳格に管理されていますが、米国での処方量は桁違いに多く、歯科医や腰やひざの慢性痛などにも使われていて、流通量が極めて多いことが、乱用問題を引き起こしているといわれます。

処方薬乱用には、覚せい剤やコカインなどの乱用薬物の場合とは、また違った背景があります。もともと、外傷による痛みや慢性痛を抱えた人が、医師から鎮痛薬を処方されたことがきっかけで、やがて乱用に至った人が多く、また、現在も処方を受けている患者が、医師の指示を守らずに服用して事故に至るといったケースもあります。
冷静にみれば問題の多い乱用状態に陥っている人でも、本人の意識では、あくまで治療目的で使っているような例もあり、どこまでが治療のための服用で、どこからが乱用なのか、線引きが難しいのです。

さらに、オピオイド鎮痛薬乱用をやめ、健康な生活を取り戻すための治療にも、他の薬物と異なる苦労があります。オピオイド鎮痛薬は、あへんやヘロインと同じように、身体依存を生じるため、自分勝手に断薬すると身体は極端な苦痛に見舞われ、死亡に至ることもあるのです。そのため、断薬から依存治療まで、一連の過程を踏んだ治療体制が必要です。

2009年にマイケル・ジャクソンさんが急死した時には、大スターの急死の裏で、アメリカ社会をむしばんでいる処方薬乱用の問題が浮かび上がったものです。鎮痛薬として医師が処方する医薬品が、正規の用途を超えて乱用を引き起こし、オーバードーズによる死亡事故が多発している現状が、大きくクローズアップされました。

それから7年、米国の処方薬問題はますますエスカレートし、最近では、オピオイド鎮痛薬を乱用してきた人たちが、ヘロインに手を伸ばすという新たな問題も出現しています。
折から、最近発表された統計資料によって、薬物オーバードーズによる死亡事故が急増し、なかでもオピオイド鎮痛薬による事故の増加が際立っていることが明らかになり、政府をあげての対策が発表されたところでした(下記参照②)。

幸い、日本では、医療用麻薬の乱用問題が大きく広がる事態は、今のところ起きていません。しかし、日本でも比較的手に入りやすい向精神薬による死亡事故が問題になり、こうした処方薬がインターネットを通じて密売される現実もあります。
米国でいま起きているオピオイド鎮痛薬問題には、成熟社会が抱える新たな薬物問題として、私たちにもつながる要素があるように思います。

[参照]
①CNNの記事
Source: Prince had opioid medication on him at time of death(April 29, 2016)
http://edition.cnn.com/2016/04/27/entertainment/prince-opioid-medication/
日本語版「急死のプリンスさん、遺体から鎮痛剤のオピオイド検出」
http://www.cnn.co.jp/showbiz/35081977.html
②当サイト関連記事
「処方薬オーバードーズへの取り組み|米の処方薬乱用問題」2016/03/04
http://33765910.at.webry.info/201603/article_1.html

大阪の繁華街でトイレに覚せい剤約50グラムを置き忘れ

ファーストフード店のトイレに、約50グラムもの覚せい剤の入ったポーチを置き忘れたとして、女性が逮捕されました。こうした置き忘れ事案は意外に多いのですが、今回発見された覚せい剤は大量です。

<ニュースから>*****
●マクドのトイレに覚醒剤置き忘れ…所持容疑で無職女を逮捕、大阪府警
マクドナルドのトイレに置き忘れられていた覚醒剤を端緒に、大阪府警曽根崎署が4月上旬、覚せい剤取締法違反(所持)容疑で大阪市の無職女(40)を現行犯逮捕していたことが30日、同署への取材で分かった。大阪地検は同法違反(営利目的所持)罪で容疑者を起訴した。
産経ニュース2016年4月30日 11:35
*****

ニュース記事によると、忘れ物に気付いた店側の通報を受け、警察官がポーチの中身を調べているところへ、問題の女性客が忘れ物に気付いて戻ってきたものの、警察官に気付くと、自分のものではないと言い立てたといいます。しかし、所持品検査で別の覚せい剤を所持していることが見つかり、現行犯逮捕されたそうです。

忘れ物、落し物のバッグやポーチから覚せい剤が見つかったというケースでは、こんな展開になることはよくあります。忘れ物に気付いて戻った持ち主は、覚せい剤がすでに発見された様子に気付くと、あわてて立ち去ろうとするのですが・・・。

たいていは、まず「自分のものじゃない」と否定します。でも、バッグやポーチの中には、カード類や携帯、名刺など、持ち主を特定できるものが入っています。
もし、名前のわかるものが見あたらなくても、持ち物のあちこちに指紋がついているし、さらに近ごろの繁華街には至る所に防犯カメラがあるので、この荷物を持った状態が捉えられているかもしれません。警察官は、持ち主が判明するのは、時間の問題だと説得することでしょう。ちなみに、防犯カメラの例では、捜査に数か月かかることが多いようです。

問い詰められて、次に出て来るのが「バッグは自分のものだが、覚せい剤や注射器に覚えはない。自分が置き忘れた後に、誰かが入れたに違いない」という言い訳です。
当人が否認する場合は、またしても科学的な証拠の出番です。覚せい剤の入ったビニール袋(パケ)や、使用済みの注射器には指紋が検出されるかもしれません。でも小さな袋や注射器の細い筒から、対照可能な指紋を採取することは難しいようで、私はこれまで、パケや注射器から指紋が検出されたというケースに出会ったことがありません。
もっと有力なのが、DNA型鑑定です。置き忘れるケースでは、パケと一緒に使用済み注射器や吸引用パイプが入っていることが多いのですが、ここから採取したDNAで、使った人間を特定できることがあります。

当人と覚せい剤を結びつけるものは、ほかにもあります。たとえば、覚せい剤事件での検挙歴があったり、覚せい剤とかかわりの深い暴力団と関係があったりすれば(これは警察のデータベースですぐにわかります)、当然、発見された覚せい剤との関係が疑われることになります。携帯電話に遺されたメールから、覚せい剤の入手が発覚することもあります。また、当人が「自分は覚せい剤など使っていないので、持ち歩くはずがない」と主張する場合には、毛髪鑑定をして、覚せい剤を日常的に使っているかどうかを確かめという方法もあります。

状況からみて、かなり疑いが濃厚であっても、当人があくまで否認する場合は、こうした様々な間接証拠を積み重ねて、総合的に判断することになります。近年では、こうした立証に多様な科学的証拠や客観証拠が使われるようになり、否認事件の認定にも、確実性が加わってきたように感じます。
そういえば、科学的証拠による立証の威力は、否認する当人に対して絶大なプレッシャーを与えるようです。DNA型鑑定用のサンプル採取や、毛髪鑑定用の毛髪採取を告げられると、それまでかたくなに否認していた被疑者が、観念して自白を始めたという例にもいくつか会いました。

たしかに、限られた時間とはいえ、不特定多数が手に触れることのできる場所に荷物が放置されていた以上、第三者がそこに覚せい剤を入れた可能性がまったくないとは言い切れません。
最後の決め手は、やはり当人の主張の真実らしさということになるでしょうか。何度繰り返しても、ぶれない内容、しかも真摯に自分の立場を説明する態度、こうした被疑者の主張に出会うと、弁護人は思わず身を乗り出すものです。
いっぽう、一般常識も意外と重要です。覚せい剤は、一般人が普通に持ち歩くものではなく、また、少量であっても高価な品物です。それを所有者不明の荷物に入れたりすることは、あまり考えられませんよね。

[参考]
古い記事ですが、置き忘れた覚せい剤事件について、法律上の「所持罪」の観点から、簡単にまとめた記事があります。興味のある方はお読みください。
●覚せい剤の落し物、忘れ物2 (2010/02/06)
http://33765910.at.webry.info/201002/article_6.html

スノーボード選手がコロラド遠征中に大麻を使用

全日本スキー連盟所属のスノーボード選手が、昨年、米コロラド州に遠征した折に、大麻を使用したことが発覚し、連盟は処分を検討していると伝えられました。
遠征先がコロラド州となると、現地で合法大麻を入手したのかなと連想してしまうのですが・・・。

<ニュースから>*****
●強化指定の未成年男子選手 昨年米遠征中に大麻使用
全日本スキー連盟(SAJ)の強化指定を受けている未成年のスノーボード男子選手が、昨年12月の米国コロラド州への遠征中に大麻を使用していたことが26日、関係者への取材で分かった。SAJは27日に臨時理事会を開いて処分などを協議する。未成年のため氏名は公表しない方針だが、国際大会上位の実績がある別の未成年選手も関与した疑いがあり、SAJが調査している(以下省略)。
毎日新聞2016年4月27日
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スポーツ選手が選手として活動しているなかでの大麻使用が問題になっているとすれば、まず、ドーピングの観点や、スポーツ選手としての倫理規定に反する行為があったかどうかが問われるべきでしょう。

全日本スキー連盟がどのような規定を定めているかはわかりませんが、同連盟の上部組織にあたる日本体育協会の倫理規定ガイドラインには、「アンチ・ドーピング及び薬物乱用防止について」という項目が設けられ、アンチ・ドーピングの教育・啓発活動の積極的な展開を求めるとともに、麻薬や覚せい剤などは、いかなる目的であっても絶対に使用しないこと、としています。

●大麻が合法化されている地域では
大麻を使用した場所が、娯楽大麻が合法化されているコロラド州であったことから、その行為が「合法」であるかどうかに関心を示す方も多いでしょう。コロラド州では、娯楽用大麻や医療用大麻の認可販売店が営業し、また21歳以上の成人であれば自己使用のために6本までの大麻草を栽培することができます。21歳以上の成人は1オンスまでの大麻を所持することが認められているのです。

21歳以下にとっては、娯楽用大麻や医療用大麻を購入することはできず、栽培することも、少量を所持することも認められていません。
とはいえ、仮に子どもが大麻を使ったとしても、基本的には健康上の問題や社会ルール違反として対処されているようです。

いっぽう、米国の連邦法では大麻所持は依然として犯罪とされていることから、連邦政府関連の職場や全国的な企業などでは、社内規定で大麻の使用を禁止し、職場で行う薬物検査で大麻陽性となった場合には、従業員を配置転換することや時には解雇を定めている例もあります。
また、大麻影響下で自動車を運転することを禁じ、違反者に対しては免許の停止などを含む罰則が科される法律も制定されました。

大麻が合法化されたとはいえ、それぞれの立場に応じて、責任ある対応がもとめられているわけです。

●ちなみに、国外犯罪規定とは
しかし、コロラド州はどうあれ、日本では大麻所持は違法です。いくらか法律に詳しい人は、こうした問題が起きると、日本の薬物管理法には「国外犯処罰規定」と呼ばれる条項があり、国外で犯罪を行って帰国した日本人は、国内法によって処罰されると定めていることに思い当たるかもしれません。

結論から先にいえば、このケースでは、日本の大麻取締法によって処罰を受けることはないでしょう。そもそも大麻取締法には、使用罪の規定がなく、仮に本人が外国で大麻を所持したことを認めたとしても、本人の言葉以外に犯罪が行われたことを証明するものがないのですから、その大麻所持を立件しようもありません。

ここでいう「国外犯処罰規定」とは、たとえば、大麻取締法では24条の8に定められているもので、麻薬等の輸入、輸出、製造、譲渡、所持等の罪について、国外で行った違法行為について日本国内で処罰することができるとする規定です。
これは、わが国が、国連のいわゆる麻薬新条約を批准したことに伴う国内法の整備として、1991(平成3)年の麻薬取締法、大麻取締法、覚せい剤取締法の一部改正時に設けられたものです。ただし、わが国では犯罪とされている麻薬の施用・受施用罪や、覚せい剤の使用罪については、国際条約が犯罪として取り扱うことを要求していないため、国外犯処罰規定は設けられていません(大麻取締法に使用罪の規定がないことは前述したとおりです)。

なお、麻薬新条約は、薬物犯罪が国の枠を超えて国際的規模で行われるところから、国際的な取締まりを強化することを目的として、外国で行われる薬物の取引や輸出入といった薬物犯罪に対しての処罰を求めているものです。この条項は、国際的な薬物取引に対する取り締まり強化を意図して新設されたもので、末端使用者に対する取り締まり強化のための導入ではありません。

[参照]
①公益財団法人日本体育協会及び加盟団体における倫理に関するガイドライン
http://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/about/pdf/plan02.pdf
②大麻取締法(e-Gov)該当箇所は第24条の8
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%91%e5%96%83%8e%e6%92%f7%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S23HO124&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

米サンディエゴ郊外でまたしても薬物密輸トンネルを発見

メキシコと米国をつなぐ薬物密輸トンネルが、またしても発見されました。CNNのニュース記事によると(下記参照①)、トンネルが見つかったのは、カリフォルニア州サンディエゴ南郊のオタイ・メサ工業団地の一画。木製パレットが積み上げられた、資材置き場の地面に、ぽっかり空いた直径1メートルほどの穴が、密輸トンネルの出口でした。
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↑密輸トンネルの発見を報じるCNNの記事
http://edition.cnn.com/2016/04/20/us/u-s-mexico-drug-tunnel/index.html

トンネルは、地表から約16メートルの深さに掘られ、国境をまたいで約730メートルにわたって延びていました。
トンネルの向こう側は、国境を越えたメキシコ、ティファナ市内の住居の内部です。大型クローゼット内に備え付けたエレベータで、薬物はトンネル内に運び込まれ、トロッコ風の台車に載せられて、米国側の出口までレール沿いに運ばれます。
米国側の出口では、地面に空いた穴を塞ぐように、大型の廃材容器が置かれ、薬物はこの容器のなかへと荷揚げされるのです。フォークリフトで廃材容器を動かし、トラックに積んで移動しても、見た目には、木くずが入った廃材容器を出し入れしているとしかみえません。

この大型廃材容器内で発見されたのは、約650キロもの大麻でした。さらに、容器の中身を運んでいたトラックからは1トンを超えるコカインと、500キロ近い大麻も押収されました(CNN記事ではコカイン2トンとなっていますが、DEAの発表によると1トンのようです)。

最近、カリフォルニア州で、相次いで密輸トンネルが発見されています。
今回と同じオタイ・メサ工業団地では、昨年10月にも大型のトンネルが発見され、大麻12トンが押収されました。
また、太平洋岸から150キロほど内陸に入ったカレクシコという小さな街では、今年3月と4月に相次いでトンネルが発見されたばかりです。

トンネルが集中しているのは、国境をまたいで市街地が広がっている地域です。オタイ・メサ工業団地の一帯は、国境をはさんで米国側はサンディエゴ市、メキシコ側にはティファナ市という大都市が広がっていて、国境沿いの道路を走ると、フェンスのすぐ向こうにメキシコの家並みが見える場所もたくさんあります。上記のカレクシコという街も、国境の南側はメキシコのメヒカリ市街地と接しています。

もうひとつ、密輸トンネルに欠かせない条件が、地盤の構造だとか。米国メディアのなかには、サンディエゴ周辺の地盤が比較的やわらかい砂岩でできていることから、スコップで楽に掘り進めることができると解説している記事もありました。

1990年5月、アリゾナ州で最初のトンネルが見つかって以来、米国・メキシコ国境では、150を超える密輸トンネルが発見されてきたといいます。海上、陸路、空路、そして地下トンネルと、ありとあらゆる手段で、薬物は国境を越えて運ばれています。
今日もまた、どこかで新しいトンネルが掘りすすめられているのでしょうか。

[参照]
①密輸トンネル発見を報じる記事
CNN / U.S.-Mexico drug tunnel spanned 800 yards, held 2 tons of cocaine(April 21, 2016
http://edition.cnn.com/2016/04/20/us/u-s-mexico-drug-tunnel/index.html
②DEAサンディエゴ支局の報道発表
Feds Seize Longest Tunnel on California-Mexico Border(April 20, 2016)
http://www.dea.gov/divisions/sd/2016/sd042016.shtml
*なお、本文中のカリフォルニア州でのトンネル発見は、いずれもDEAサンディエゴ支局のニュースからひろったものです。

大麻合法化、ウルグアイに次ぐ2番手にカナダが名乗り

21日までニューヨークで開催された、国連の薬物問題に関する特別総会で、メキシコとカナダの代表が、相次いで大麻政策を変更する意向を示しました。
20日にカナダ代表として登壇した保健相は、同国では大麻合法化の準備が既に進んでおり、子どもたちの手が届かず、犯罪組織を潤すこともない形で、2017年には大麻合法化を導入すると発表しました(下記参照①)。
また、メキシコ大統領は19日の演説で、薬物との戦いを方向転換すべき時を迎えていると説き、同国が医療用大麻制度を導入し、現行の大麻規制の一部を見直すと明言しました(下記参照②)。

2013年末、南米ウルグアイは国として最初に大麻を合法化しました。その後、各地で合法化に向けた動きは報じられてきましたが、現実問題として、2番手がどこになるかなかなか的が絞れませんでしたが、このたびカナダ政府が具体的な導入時期を示したことで、有力な2番手候補として浮上してきました。

●カナダが合法化すれば、先進国では最初の例になる
現首相は、昨年の総選挙戦で大麻合法化を公約のひとつに打ち出して支持を獲得しており、また、現政権が議会の過半数を占めていることから、大麻合法化法案が提出された場合は、成立する公算が大きいといわれます。
最近の世論調査では、カナダ国民の68%が大麻合法化を支持し(支持39%、どちらかというと支持29%)、反対はわずか30%(反対22%、どちらかというと反対8%)となっていて、民意も固まっているとみられています。
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↑大麻合法化への支持
カナダの世論調査会社の報告書(下記参照③)より転載

カナダでは2000年に医療用大麻制度が導入されましたが、患者が自分で栽培することは認められず、供給所の認可条件も厳しいため、医療用大麻の入手はかなり制限されていました。この現状を変えようという運動が続けられていて、近年、カナダ各地の裁判所で、医療用大麻の自家栽培を容認する判決が下されていますが、今年2月、バンクーバーの連邦裁判所は、現在の医療用大麻供給制度は憲法違反との判断を示し、期限付きで違憲状態の解消を政府に求めました。

政府はすでに合法化に向けて準備作業を進めているといいます。その内容はまだ発表されていませんが、大枠では、米コロラド州やワシントン州で導入されている娯楽用大麻の合法化策と同じようなものになるのではないかとみられています。

さて、カナダが大麻合法化に踏み切るとなると、国連条約締結国としての拘束が問題になります。2013年にウルグアイが合法化した際には、国連の関係各機関は様々な調整を試み、また警告を発したりしましたが、南米の小国での動きが国際社会に及ぼす影響はそれほど大きなものではなかったようです。
しかし、カナダはG7を構成する先進国、その影響もケタ違いに大きなものとなることでしょう。今回の国連特別総会で、大麻政策に関して何らかの新たな展望が示されるかどうか、注目されます。

●メキシコの場合は深刻な背景がある
2010年、米カリフォルニア州で娯楽用大麻の合法化法案が提出され、大麻議論が急速に盛り上がったころから、メキシコ首脳は、薬物取締まりの方向転換策として大麻の合法化について度々言及してきました。

薬物カルテルによる暴力事件が頻発し、メキシコの治安を脅かしているなかで、カルテルの活動を弱体化させる有力な対策のひとつとして提唱されてきたのが、大麻合法化です。メキシコから米国にカルテルの手で密輸される各種薬物のなかでも、大麻は格段に量が多く、カルテルの資金源になっています。大麻の取締まりが厳しくなるほど、カルテルの収益は増えるというわけです。
カルテルの活動を封じ込める対策のひとつとして、米国とメキシコが連動して大麻を合法化するというビジョンが前メキシコ大統領によって提案され、合法化を求める波は、その後南米各地へと広まってきました。

現メキシコ大統領はこれまで、大麻合法化に反対の姿勢を示してきましたが、このたびの国連演説で、大麻問題は健康上の問題として取り扱われるべきで、使用者を処罰すべきではないとして、大麻政策の方向転換について具体的な展望を示しました。
今のところ明らかになっているのは、医療用大麻制度を導入すること、および刑事訴追の対象とならない単純所持の下限量が、現行の5グラムから28グラム(1オンス)まで引き上げられるという内容です。
今回の大統領演説が、メキシコでの大麻合法化への第一歩という見方もありますが、その背景に薬物カルテルの違法活動という大問題を担っているだけに、メキシコの動きを見通すことは、そう簡単ではないようです。

[参照]
①国選特別総会でのカナダ代表演説を報じる記事
CBCnews / Federal marijuana legislation to be introduced in spring 2017, Philpott says(Apr 20, 2016)
http://www.cbc.ca/news/politics/philpott-un-marijuana-legislation-legalize-1.3544554
②国選特別総会でのメキシコ大統領演説を報じる記事
CNN / Mexico easing up on marijuana laws(April 20, 2016)
http://edition.cnn.com/2016/04/19/americas/mexico-marijuana-laws/
③カナダの世論調査報告書(nanos survey2016年2月)
http://www.nanosresearch.com/tickers/PDF/POLNAT-S15-T674.pdf

覚せい剤事案の捜索現場から被疑者が逃走、4時間半の大捜索で身柄を確保

さいたま市内で、覚せい剤事案の捜索中に現場から逃走した被疑者が、4時間半に及ぶ捜索によって、確保され、覚せい剤所持の現行犯として逮捕されたというニュースがありました。
400人体制での大捜索が展開された4時間半の間、周辺の皆さんは「いったい何事か」と不安な思いをされたことでしょう。とりあえず被疑者の身柄を確保して、この件は落着しました。逃走中の突発的な事態もなく、けが人もなかったようです。

<ニュースから>*****
●覚醒剤の容疑者逃走 4時間半後確保 埼玉県警「油断あった」
19日午前7時55分ごろ、さいたま市北区のマンション5階で、覚せい剤取締法違反容疑で家宅捜索中だった部屋から男が逃走した。県警は約400人体制で捜索を行い、同日午後0時20分ごろ、約19キロ離れた草加市の路上で男を確保。同容疑(営利目的所持)で緊急逮捕した。捜査員らで一時騒然としたマンションの住人らは不安を訴え、県警は「油断があった」と失態を認め謝罪した(以下省略)。
産経新聞 4月20日(水)7時55分配信
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警察が覚せい剤事案の捜索を行う際には、令状を用意し、体制を整えて臨むわけですが、それでも現場の混乱にまぎれて、関係者が逃走を図ることは珍しくありません。私がこれまでに担当した事件のなかにも、逃走を図ったものの間もなく警察官に取り押さえられた例や、一度はその場から逃走した被疑者が、後日逮捕されたといった例はいくつかありました。

普通なら、取り立ててニュースになることもない出来事ですが、「逃走は絶対に許さない」という、埼玉県警の強い意思によって、捜査員400人を投入して大捜索を行ったことから、大捕り物劇が展開されたということでしょうか。
たしかに、警察官が相応の体制を組んで現場に臨んでいながら、被疑者の逃走を許してしまうような事態が、「ありがちなこと」として見過ごされてしまうことは、決して好ましいことではないと思います。

ときには、ちょっとした油断が、予期しない悲惨な結果につながることもあるのです。
そういえば、近年、薬物事件の捜索の過程で、任意同行を求められた被疑者が、警察官たちの手を振り切って逃走・・・、高層階のベランダや通路から飛び降りようとして転落死というニュースがいくつかありました。
■2016年3月9日、広島市で覚せい剤使用の疑いで任意同行を求められた男性が、マンションの5階通路から飛び降り、死亡。
朝日新聞デジタル「県警任意同行中の男性、飛び降り死亡」2016年3月9日12時05分
■2015年5月8日、大阪市中央区のマンション3階の一室で、任意同行を求められた男性が、ベランダから飛び降り死亡。
産経ニュースWEST「任意同行求められた男性がマンションから飛び降り死亡 覚取法違反容疑で家宅捜索後/大阪市中央区」2015.5.8 20:10

パトロール中の警察官が不審者を発見・・・といったケースと違い、令状を用意して赴く捜索では、事前に現場の状況を確認し、あらゆる事態に対応できる体制を組んで臨むことになります。とはいえ、とくに薬物事件では、薬物らしい物を発見すると、簡易検査をし、発見状況を記録し、証拠保存するという複雑な手順が要求されるだけに、警戒がおろそかになってしまう瞬間もありがちです。
しかし、現場での手順は当初から想定されていること、それを織り込んで、なお十分な警戒をすることができるよう、人員が配備され、役割が決められていなければならないはずです。

とりあえず、今回、埼玉県警は「逃走を許さない」断固たる意思を示しました。でも、そこでとどまることなく、逃走する気が失せるような陣容づくりへ、もう一歩進めてほしいところです。