メキシコで就任直後の市長殺害|カルテルと暴力

相次ぐ誘拐や殺戮・・・、メキシコの薬物カルテルによる暴力事件も、この1年ほどはやや落ち着きをみせていましたが、その平穏が、年明け早々に破られてしまいました。1月2日、メキシコ中部のテミスコ市で、就任したばかりの新市長がわずか1日で殺害されるという事件が発生したのです。

<ニュースから>*****
●市長就任翌日に暗殺=メキシコ
【クエルナバカ(メキシコ)AFP=時事】メキシコ警察当局は2日、首都メキシコ市から約90キロ南にあるテミスコ市のモタ市長(33)が銃撃を受け、殺害されたと発表した。
市長は1日に就任したばかりだった。
・・・テミスコ市のあるモレロス州は麻薬をめぐる抗争が深刻で、誘拐や殺人事件も頻発している。モタ市長はこうした問題の一掃を訴えていた。
時事通信 1月3日(日)7時34分配信
*****

テミスコは、人口10万人ほどの静かな町、温暖な気候とスペイン植民地時代の古い街並みが人気の観光スポットでしたが、近年は薬物カルテルの抗争に巻き込まれて治安が悪化、観光客もすっかり遠のいたといいます。
この町から暴力犯罪を一掃することを掲げて市長に就任したのは、33歳の元女性連邦議員。しかし、就任の翌日未明、数人が自宅を襲撃し、新市長は殺害されました。
駆け付けた警察との銃撃戦で2名が死亡、少年と女性を含む3名が拘束されたということです。犯罪組織、いわゆるカルテルがらみの事件とみられていますが、当局からは詳しい事情は発表されていません。
事件に関しては、下記①の英文記事に詳しい説明があります。

●カルテルと地方政治
メキシコで、薬物カルテルによる暴力事件が頻発するようになったのは、2006年に前大統領がカルテルの撲滅を宣言し、軍や警察を投入して掃討作戦が展開され始めたころからです。掃討作戦によって、カルテルの勢力分布は急速に変化し、各地で勢力間の抗争が繰り返され、さらに一般市民まで巻き込んで暴力沙汰がエスカレートしました。

カルテルの手は、州や市の行政組織の隅々にも及び、警察組織にも汚職がはびこっているといわれます。地方自治体を意のままに操るために、カルテルは、賄賂と暴力で官僚や政治家を攻略します。思い通りに動かない場合は、暗殺という手段に訴えることも珍しくありません。カルテルによる暴力がピークに達していた2010~2013年ころには、地方政治家や選挙戦に打って出た候補者の殺害事件が相次いだものです。
とくにカルテル間の攻防が激しい米国境沿いの地域では、相次ぐ暴力事件のために政治家や行政職員が次々に退職し、自治体として機能しない地域さえ出現しました。

フリー百科事典ウィキペディアの英語版には、「メキシコ麻薬戦争で殺された政治家のリスト」という項目があり、カルテルの手で暗殺された政治家や行政幹部などの膨大なリストが載っていますが、その数は、2005年から2016年までおよそ80人にも上ります(下記参照②)。

いっぽう、市長や地方行政組織の幹部職員が、カルテルと共謀して殺人や誘拐などの犯罪に関与したとして逮捕されることも珍しくありません。大学生など43人が集団失踪した事件に関係したとして、元市長が逮捕されたというニュースが流れたのは、昨年初めのことでした。
最近では、カルテルによる暴力犯罪の報道も減り、メキシコの治安も少しは回復してきた様子ですが、カルテルの活動が鎮静化したようには見えません。衝突が減った反面では、この国の政治や行政の奥深くまで、カルテルの手が伸びているのかもしれません。

私たち日本人にとっては、はるか遠いメキシコの事件ですが、メキシコの薬物カルテルは、日本にも覚せい剤を密輸しています。メキシコの情勢は、日本の覚せい剤密売にも、少なからず影響を及ぼしているのです。

[参照]
①CBSニュースの記事(英語版)
Mexican mayor assassinated one day after taking office
http://www.cbsnews.com/news/mexico-mayor-gisela-mota-assassinated-one-day-after-taking-office/
②ウィキペディア「メキシコ麻薬戦争で殺された政治家のリスト」(英語版)
List of politicians killed in the Mexican Drug War
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_politicians_killed_in_the_Mexican_Drug_War

"メキシコで就任直後の市長殺害|カルテルと暴力" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント