覚せい剤はどこから来るのか|国連のATS報告書2010年版

アジア太平洋地域を中心に、覚せい剤やエクスタシー、ケタミンなど合成薬物の動向を監視しているのが、国連薬物犯罪事務所のグローバルSMART 計画。その2010年版の報告書が、11月25日に発表されました。
2010年版では、アジア太平洋地域を通じてメタンフェタミン(覚せい剤)が広まり、今やこの地域全体で、もっとも乱用が広まっている薬物はメタンフェタミンになっていると報告されています。
この報告書に沿って、アジアでの覚せい剤について、考えてみましょう。
画像

国連薬物犯罪事務所(UNODC)
Patterns and Trends of Amphetamine-Type Stimulants and Other Drugs: Asia and the Pacific 2010―A Report from the Global SMART Programme
November 2010
この報告書のダウンロードはUNODCのサイト内の下記のページから
http://www.unodc.org/unodc/en/frontpage/2010/November/ecstasy-and-methamphetamine-first-choice-of-drugs-in-east-and-south-asia.html?ref=fs2

●錠剤タイプと結晶タイプ、2種の覚せい剤
アジアに広まっているメタンフェタミン(覚せい剤)は、実は大きく2タイプに分かれます。
ひとつは、わが国で一般的に広まっている結晶状の粉末。よく「白い粉末」といわれますが、塩や砂糖のような透明感のある結晶体で、無色透明なものから、褐色を帯びたものまであります。
もうひとつは南アジアや中国で広まっている錠剤タイプのもので、1錠が0.2グラム程度の小さな錠剤で、いろいろな色に着色され、表面にはロゴが刻印されています。タイで出回っているものはヤーバと呼ばれ、バニラの香りの主成分バニリンが含まれているものが多く、バニラアイスクリームのような香りがあります。
もともと錠剤タイプの需要が多かったタイをはじめとする東南アジア諸国でも、最近では、結晶タイプの押収量が増加し、結晶タイプの使用がアジア太平洋地域全体に拡大しています。

●覚せい剤はどこで作られるのか
メタンフェタミンは世界中どこでも密造することができ、じっさい、世界のいたるところで密造所が摘発されています。もちろん、最大の需要があるアジア太平洋地域でも、多くの密造所がメタンフェタミンを生み出しているとみられ、各国で、多数の密造所が摘発されています。
■中国は、2008年には244か所、2009年には391か所の密造所を摘発したと報告しています。密造所が集中しているのは広東省、四川省、湖北省で、主に結晶メタンフェタミンやケタミンが作られています。
■ミャンマーの山岳地帯、ミャンマー、タイ、ラオスの国境が接する「黄金の三角地帯」は、もともと錠剤タイプのメタンフェタミンの最大の供給地域でしたが、近年では、結晶タイプのメタンフェタミンも作られているといわれます。近年、タイで押収される結晶タイプのメタンフェタミンは、黄金の三角地帯で密造されたものだとみられています。
■インドネシアでは、2009年に37か所の密造所を解体。うち25か所は大規模な製造施設で、12か所は小規模なもの。
■マレーシアでは、首都クアラルンプールなどで11の密造所を摘発。また、ATSとヘロイン密造に使用される前駆物質の大量押収がありました。
■フィリピンでは、最近10年間、密造所の摘発が続いており、2009年には9か所が摘発されました。小規模な密造所が増加しているのは、数年来メタンフェタミンの高値が続いているによるのではないかとみられています。
■オーストラリアで2009年に解体された密造所は316か所。その大部分はメタンフェタミンとアンフェタミンを密造していました。

2009年、アジア太平洋地域で押収された結晶タイプのメタンフェタミンは5.7トン。この数字は、2008年の押収量と比べて32%の減少ですが、中国での押収量が大きく減少したことを反映しているといいます。
従来、アジア太平洋地域で押収される結晶メタンフェタミンの66%から81%が、中国での押収によって占められていました。2005年から2008年の間、中国では年間5.5トンから6トンといった大量の結晶メタンフェタミンが押収されてきたのです。その中国が、2009年の押収量が大きく減少したと報告しています。
どうやら、中国で密造される覚せい剤が減少傾向にあるようです。そういえば、わが国に密輸される覚せい剤の仕出し地が、急速に多様化し、はるばる西アフリカや中南米からも運ばれてくるようになっているのも、そのせいかもしれません。
覚せい剤問題の解決には、流通量の削減が何より。アジアの近隣諸国での密造が減ることで、日本の覚せい剤問題も、さらに好転が期待できるかもしれません。

"覚せい剤はどこから来るのか|国連のATS報告書2010年版" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント