インドネシア|薬物密輸と死刑の問題4

国際ハームリダクション協会The International Harm Reduction Association(IHRA)が最近発表した『薬物犯罪に対する死刑:2010世界の概観 The Death Penalty for Drug Offences:Global Overview 2010』を読みながら、薬物犯罪と死刑の問題を考えています。
[出典]
Patrick Gallahue and Rick Lines‘The Death Penalty for Drug Offences:Global Overview 2010’(2010) International Harm Reduction Association
http://www.ihra.net/Assets/2538/1/IHRA_DeathPenaltyReport2010.pdf

薬物犯罪に対して死刑を定めている国は、現在32か国。報告書は、薬物犯罪に対して死刑を定めている32か国を「象徴としての死刑存置国」、「死刑関与の低い国」、「死刑関与の高い国」の3つのカテゴリーに分類しています。ここで「死刑関与の低い国」とは、現に死刑の宣告が行われているが、その執行が行われるのは3、4年に1例程度という国で、このカテゴリーに属する8か国のうち、インドネシアの部分を読んでみましょう。

●インドネシア
[薬物犯罪に関する法制度]
薬物犯罪を規制しているのはインドネシア共和国法1997年の麻薬に対する法律第22号LAW OF THE REPUBLIC OF INDONESIA NUMBER 22, YEAR 1997,ON NARCOTICSです。薬物は、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの3つのカテゴリーに分類され、最も厳しく規制されるカテゴリーⅠには、コカイン、ヘロイン、あへん、大麻、大麻樹脂などが含まれます。
この法律は、カテゴリーⅠの麻薬の生産、処理、抽出、化学処理、準備(80条⑴)、輸入、輸出、販売目的提供、分配、販売、買受、配達、ブローカー行為、交換(82条⑴)に対する罰則を、死刑、終身刑、または20年以下の拘禁刑及び10億ルピア(約970万円)以下の罰金と定めています。また、常習犯、共謀犯に対しても最高刑は死刑とされ、これらの犯罪が組織犯罪として行われた場合の最高刑も死刑となっています。
[参照]
UNODC> The Legal Library> Law Number 22 Year 1997 on Narcotics
http://www.unodc.org/enl/browse_country.jsp?country=INS

[薬物犯罪に対する死刑執行の状況]
さて、以下は『薬物犯罪に対する死刑:2010世界の概観』に従って、インドネシアにおける薬物犯罪に対する死刑の状況をみていきます。
・2007年 薬物犯罪に対する執行は0、全体での死刑執行は1+
・2008年 薬物犯罪に対する執行は2、全体での死刑執行は10
・2009年 薬物犯罪に対する執行は0、全体での死刑執行は0
・死刑確定者 薬物犯罪56、全体で111

●外国人の死刑確定者が多い
本書によれば、現在、インドネシアにいる死刑確定者のおよそ半数が薬物犯罪によるものであり、その多くが外国人だといいます。本書31ページから引用します。
「インドネシアで薬物事犯として初めて死刑執行されたのは、1986年に420グラムのヘロインを密輸したマレーシア人で、1995年に銃殺された。2007年には薬物犯罪で5人(うち2人はインドネシア人で、3人はオーストラリア人)に対する裁判で死刑の合憲性が問われたが、インドネシアの憲法裁判所は、6対3で、死刑は合憲であり、薬物取引は最も重大な犯罪であるから死刑が相当であるという判断を示した。この判断を受けて、インドネシアは2008年の国際薬物デーに合わせて、2人のナイジェリア人に対する死刑を執行した。
2009年に検事総長事務局が明らかにしたところでは、111人の死刑確定者のうち56人が薬物犯罪者であるという。」(本書31頁)、
2007年の国連特別調査によると、薬物犯罪で死刑宣告を受けた人の多くが外国人であり、調査のために面接を受けた死刑確定者の多くが、拷問によって自白を強いられこと、弁護人による適切な弁護を受けなかったことなどを訴えているといいます。

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