プリンスさん死亡でまた医療用麻薬の乱用が話題に

「伝説のミュージシャン」と呼ばれるプリンスさんの急死に関して、医療用麻薬問題が取りざたされています。正式に死因が発表されるには、まだ数週間かかる見通しで、その間にも、様々な観測や憶測が飛び交うことになりそうです。

4月29日付のCNN記事は、解剖時に体内からオピオイド鎮痛薬が検出され、自宅にもオピオイド鎮痛薬が残されていたと伝えています。また、急死の1週間前に、コンサートを終えて自家用ジェット機で帰る途中、機内で体調が急変したため、イリノイ州の飛行場に緊急着陸し、病院で応急措置を受けたといいますが、その際に、鎮痛剤の過剰服用の手当てを受けたともいわれます(下記参照①)。

ガンなどの強い痛みを緩和するために処方されるのが、オピオイド鎮痛薬です。強い痛みを緩和する貴重な医薬品ですが、その反面、医学的な適量を超えて多量に乱用すると、特有の陶酔感をもたらすことから乱用されやすく、また、急速に耐性が生じるため、乱用者はどんどん摂取量を増やし、過量摂取(オーバードーズ)による死亡事故につながりやすいため、注意深く使わなければなりません。
日本では医療用麻薬として厳格に管理されていますが、米国での処方量は桁違いに多く、歯科医や腰やひざの慢性痛などにも使われていて、流通量が極めて多いことが、乱用問題を引き起こしているといわれます。

処方薬乱用には、覚せい剤やコカインなどの乱用薬物の場合とは、また違った背景があります。もともと、外傷による痛みや慢性痛を抱えた人が、医師から鎮痛薬を処方されたことがきっかけで、やがて乱用に至った人が多く、また、現在も処方を受けている患者が、医師の指示を守らずに服用して事故に至るといったケースもあります。
冷静にみれば問題の多い乱用状態に陥っている人でも、本人の意識では、あくまで治療目的で使っているような例もあり、どこまでが治療のための服用で、どこからが乱用なのか、線引きが難しいのです。

さらに、オピオイド鎮痛薬乱用をやめ、健康な生活を取り戻すための治療にも、他の薬物と異なる苦労があります。オピオイド鎮痛薬は、あへんやヘロインと同じように、身体依存を生じるため、自分勝手に断薬すると身体は極端な苦痛に見舞われ、死亡に至ることもあるのです。そのため、断薬から依存治療まで、一連の過程を踏んだ治療体制が必要です。

2009年にマイケル・ジャクソンさんが急死した時には、大スターの急死の裏で、アメリカ社会をむしばんでいる処方薬乱用の問題が浮かび上がったものです。鎮痛薬として医師が処方する医薬品が、正規の用途を超えて乱用を引き起こし、オーバードーズによる死亡事故が多発している現状が、大きくクローズアップされました。

それから7年、米国の処方薬問題はますますエスカレートし、最近では、オピオイド鎮痛薬を乱用してきた人たちが、ヘロインに手を伸ばすという新たな問題も出現しています。
折から、最近発表された統計資料によって、薬物オーバードーズによる死亡事故が急増し、なかでもオピオイド鎮痛薬による事故の増加が際立っていることが明らかになり、政府をあげての対策が発表されたところでした(下記参照②)。

幸い、日本では、医療用麻薬の乱用問題が大きく広がる事態は、今のところ起きていません。しかし、日本でも比較的手に入りやすい向精神薬による死亡事故が問題になり、こうした処方薬がインターネットを通じて密売される現実もあります。
米国でいま起きているオピオイド鎮痛薬問題には、成熟社会が抱える新たな薬物問題として、私たちにもつながる要素があるように思います。

[参照]
①CNNの記事
Source: Prince had opioid medication on him at time of death(April 29, 2016)
http://edition.cnn.com/2016/04/27/entertainment/prince-opioid-medication/
日本語版「急死のプリンスさん、遺体から鎮痛剤のオピオイド検出」
http://www.cnn.co.jp/showbiz/35081977.html
②当サイト関連記事
「処方薬オーバードーズへの取り組み|米の処方薬乱用問題」2016/03/04
http://33765910.at.webry.info/201603/article_1.html

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

lol again
2016年05月03日 23:32
オピオイド系に限らず、乱用が理由で処方が制限されたり委縮するようなことは絶対にあってはならないことだと思いますがどうなんでしょう?乱用者が増える問題より、苦痛で苦しんでいる患者が増えるほうがよほど問題ありだと思うのですが。日本(厚労省)は乱用者を減らすためなら、薬が奏功してQOLを高い状態で維持できている患者がいても、平気でそのような患者を切り捨てるのがいつものお決まりなようで。責任回避なのか何なのかはわかりませんが、激し怒りを感じえません。
オピオイド系はがんの疼痛だけではなく、がん以外に起因する痛みにもよく奏功するし、副作用がそれほど強くないですよね。ペインクリニックなどでは神経ブロックが割かし普通になってきた感はありますが、症状によってはオピオイド系鎮痛薬のほうが患者にとって負担が少ないものだったりするケースがあるのではないでしょうか?日本はもっと自由にオピオイド系を出せるようになるべきではないかと感じています。

この記事へのトラックバック