劇的に広まった危険ドラッグ「フラッカ」が消えた|米フロリダ州

2014年夏ころ、米フロリダ州南部の乱用薬物マーケットに出現し、あっという間に地域を混乱の渦に巻き込んでしまった危険ドラッグ「フラッカ」。1回分がわずか500円程度という安さと、幻覚・妄想をともなう強烈な作用から「5ドルの狂気」と呼ばれて、その急拡大ぶりが全米で話題になったのが昨年夏のことでした。
ところが、それからわずか数か月後に、その流行は急速に後退し始め、いまではこの地域から「フラッカ」が姿を消したといいます。ワシントンポスト紙が、4月4日付の記事で報じています(下記参照①)。

「フラッカ」の劇的な拡大を伝えるニュースで、一般市民を驚かせたのは、防犯カメラがとらえた、幻覚・妄想にとりつかれた人たちが繰り広げる、信じられない奇行の数々でした。
裸で通りを駆け抜ける姿、道路の真ん中で着衣を引き裂きながら泣き叫ぶ人、警察署のドアを蹴りつけて怒鳴り散らす男性・・・。妄想上の「敵」から逃げようと鉄柵をよじ登り、突起部に脚を突き刺した男性が、切り取った鉄柵ごと救出されていく様子は、薬物のもたらす幻覚を生々しいまでに伝えていました(下記参照②)。

フラッカの名で広まった新型薬物の正体はα-PVP。この薬物は、中国の化学会社で合成され、インターネット上で取引されてきました。
米国ではバスソルト型の危険ドラッグとして出回り、米連邦は2014年にこの薬物をスケジュール1に指定しましたが、中国からの輸入や国内での流通を完全に遮断することはできず、フロリダ州では、密売人の手で販売されていたのです。
ちなみに、α-PVPは日本でも、2010年ころ市場に現れて、危険ドラッグ市場の拡大をけん引した薬物のひとつとなりましたが、日本では、いち早く2012年10月に指定薬物に指定され、2013年1月にはさらに麻薬に指定替えとなり、そのころにはほぼ流通がみられなくなりました。

さて、フロリダ州でのフラッカ騒動が話題を集めて数か月後、問題の薬物が急速に姿を消し始めたというのです。その後退ぶりもまた、劇的な推移をたどりました。
昨年10月、流行の震源地となったブロワード郡では、フラッカに関連した救急搬送が306件あったものが、翌11月には178件に急減、さらに12月にはわずか54件となりました。
死亡事故も急減しました。1年半ほどの流行期間に、同郡ではフラッカ関連の死亡(急性中毒による死亡、事故、自殺など)が63件発生しましたが、昨年末には新たな死亡者がゼロになりました。

悩みの種だった「フラッカ」がウソのように急速に姿を消した背景には、取締まり強化や啓発活動の成果、この薬物の有害性に対する一般人の認識が広まったことなど、さまざまな要因があったことでしょう。
そのなかでも、この薬物の出荷元である中国政府への働きかけによる成果は、とくに大きかったようです。昨年9月、中国の国家食品薬品監督管理局は危険ドラッグ成分として流通している化合物116種を新たに規制すると発表しましたが(下記参照③)、その裏には、「フラッカ」騒動をテコに、中国側と粘り強い交渉を進めてきたDEAなど連邦政府機関の努力があったと、ワシントンポストの記事は報じています。

そういえば、わが国でも、2014年後半に起きた危険ドラッグの急激な縮小は、まさに劇的な出来事でした。取締まりの強化、広報活動やメディア報道、そして次々に報じられた中毒死のデータなどによって、危険ドラッグに対する社会の見方が急速に変化していったものです。
危険ドラッグという世界的な流行を乗り越えた時、私たちは、薬物の流行を短期に終息させるという、貴重な体験を共有することができそうです。

[参照]
①フラッカの消滅を報じたワシントンポストの記事
The surprising disappearance of flakka, the synthetic drug that pushed South Florida to the brink(April 4)
https://www.washingtonpost.com/news/wonk/wp/2016/04/04/the-mysterious-disappearance-of-flakka-the-synthetic-drug-that-pushed-south-florida-to-the-brink/?postshare=131459864025536&tid=ss_tw-bottom
②サイト内過去記事
5ドルの狂気|米国でα-PVPがふたたび流行(2015/06/15)
http://33765910.at.webry.info/201506/article_6.html
③サイト内過去記事
中国が危険ドラッグ116物質を規制(2015/10/31)
http://33765910.at.webry.info/201510/article_15.html

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