米国の危険ドラッグ事件_インターネット業者カールトンの場合

昨年夏、米ノースダコタ州の連邦地裁で、危険ドラッグのインターネット販売業者に対して、20年6か月の拘禁刑が言い渡されました。大量の薬物を組織的に売買した営利事犯なみの重い刑です。2012年6月に、同州で発生した、危険ドラッグを使用した少年2人が相次いで死亡した事故に関連して、その原因となった危険ドラッグを販売したとして起訴された、カールトン(事故当時28歳)が被告人でした。
少し古い話ですが、危険ドラッグでの死亡事故に関して、米国では、どのような捜査が行われ、どんな風に事件処理されているのか、よくわかるケースとして、紹介します。

なお、この事件では終身刑の求刑も予測されたなかで、被告人カールトンは、贖罪のために積極的にメディアの取材に応じ、危険ドラッグの現実を明かしたため、裁判の経過が米国で注目を集め、詳細な報道がされてきました。末尾に紹介しているCNNのサイトには被告人自身が語っているビデオもあります。

2012年6月、ノースダコタ州グランドフォークス市で、18歳と17歳の2人の少年が、立て続けに薬物のオーバードーズで死亡し、一緒に薬物を使った少年数人が救急搬送されるという惨事が発生しました。
少年たちを死に追いやったのは、当時は米国でも新顔だった幻覚性薬物の25I-NBOMeでした。

この白い粉の流通経路をたどって捜査が進められるなかで、当初は全く接点がないように見えた2件の事故が、地元の少年バッヂ(18歳)に結びつくことがわかりました。
彼は、知り合いの薬物密売人の元から危険ドラッグの白い粉を盗み出し、その一部を友達の少年に売ったのです。白い粉を買った少年は、さっそく友達と3人でこの危険ドラッグを一緒に使いました。間もなく、大暴れしている人がいると通報を受けて出動した警察官は、路上で死亡している少年を発見し、さらに近くには、裸で叫び声をあげている少年と、倒れて気を失った少年も見つかりました。
さてその2日後、最初の事故を知らないままバッヂは、友達のパーティーで、手に入れた白い粉を混ぜたチョコレートドリンクを作って、友達にすすめました。ドリンクを飲んで間もなく、被害者は頭を壁に打ち付けて暴れ出し、救急車が到着する前に動かなくなりました。病院で、脳死が確認されたということです。
パーティの場で、バッヂは、この白い粉末がマジックマッシュルームの成分だと説明していたといいます。彼は、この粉末を知り合いのところから無断で持ち出したので、その正体を知りません。ごく少量を少し試してみて、幻覚剤だという程度のことはわかったようです。でも、25I-NBOMeがごくわずかの量で作用し、オーバードーズにつながりやすいという事実には無知のまま、他人に売ったり、友達に使わせたりしてしまったのです。
バッジが薬物を盗み出した相手は、地元の密売人スポッフォード(22歳)でした。彼は、インターネットのリサーチ・ケミカル販売サイトから25I-NBOMe という新しいタイプの危険ドラッグを購入し、これを小分けして地元で売りさばこうとしていたのです。

インターネットを通じて販売された危険ドラッグのせいで、配達先のノースダコタで2少年が生命を奪われ、一緒に使った少年たちが救急搬送されるという惨事を巻き起こしました。原因となった薬物が、ごく少量で強い作用をもたらす幻覚剤だったことと、たまたま知り合いの元から盗み出した少年が、その正体も知らないまま友達に売ったり、飲ませたりしてしまったということも重なり、ことさら被害が大きくなってしまったのでしょう。

この事件は、米国に大きな衝撃をもたらしました。DEAは地元警察と協力して捜査に当たり、死亡事故の原因物質が25I-NBOMeであると特定し、この薬物に関する危険情報を全米に発しました。また、当時の米国では25I-NBOMeは未規制物質でしたが、DEAはこれを2C-Bのアナログであるとして、正式に取締まりの対象に指定しました。

この危険ドラッグの流れをたどって捜査が進められ、最終的にはインターネットで25I-NBOMeを販売した業者にたどり着きました。リサーチ・ケミカルを販売した会社の代表者カールトン(28歳)が逮捕され、事故発生から60日で、ついに危険ドラッグ流通ルートの全体に対する捜査を終え、関係各所で薬物を押収して新たな被害の発生を防止したと、DEAの責任者は語っています。

リサーチ・ケミカル販売業者のカールトンは、2011年にテキサス州のオフィスビル内に会社を立ち上げ、中国から危険ドラッグ原料を輸入しては小分けして、インターネットで販売していました。もともと彼自身がこうした薬物を使ううち、原料を輸入して販売することを思いついたのだといいます。
取り扱うのは、法規制の対象になっていない未規制薬物です。自分がきわどい線上を進んでいることは分かっていたので、アナログ法での摘発を回避しようと、商品1点ずつに「化学分析及び研究目的専用」と表示していました。会社の売り上げは順調で、2人の仲間と一緒に働き1月当たり4~5万ドル(日本円で5~600万円)のクレジットカード売り上げがありました。

ノースダコタで死亡事故が起きた時、カールトンは、ニュースに映し出された商品パッケージ写真をみて、すぐに自分の会社の品物だとわかり、ショックを受けたといいますが、その後も会社は危険ドラッグ販売を続けました。
しかし、水面下では、彼の共同経営者が、弁護士を通じてノースダコタの検察庁に連絡し捜査協力を申し出ていたのです。共同経営者は訴追を免れ、捜査陣の目標はカールトンに絞られました。
やがてカールトンは逮捕され、共謀して規制薬物のアナログ物質を販売目的で所持しまた販売して重大な死傷をもたらした罪、薬物を虚偽の表示で販売した罪、マネーロンダリングの罪で起訴されました。

一連の捜査で、販売元のカールトンから末端の密売人まで15人が起訴されました。下された判決は、末端の使用者や下位の密売人に対してはプロベーション(保護観察)から3年前後、事件の核心になったバッヂ少年は11年3か月、地元の密売人スポッフォードは17年5か月の拘禁刑が、それぞれ言い渡されました。
被告人のうち最後に刑を宣告されたのが、危険ドラッグ流通網のトップに位置したカールトンで、15人中で最も重い刑となったものです。

[参照]
①米法務省(ノースダコタ検察庁)の報道発表
Texas Leader of Synthetic Drug Ring Sentenced for His Role in the Deaths of Grand Forks Area Teenagers(August 28, 2014)
②ハフィントンポストの記事
Charles Carlton Gets 20 Years In Synthetic Drug Deaths(2014年8月28日)
http://www.huffingtonpost.com/2014/08/28/charles-carlton-sentenced_n_5733536.html
③CNNのビデオと記事
Deadly High: How synthetic drugs are killing kids(December 3, 2014)
http://edition.cnn.com/2014/12/01/us/synthetic-drugs-investigation/index.html

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この記事へのコメント

貴族
2015年10月16日 15:42
アメリカも無理矢理起訴する感じですね

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