危険ドラッグ販売の取締まりに、あの手、この手

神戸市では、立入検査で虚偽答弁した疑いで捜索、仙台市では購入客の過労運転を幇助したとして販売店を捜索・・・、危険ドラッグ販売店に対する強制捜査としては、いずれも全国初だとか。

<ニュースから>*****
●危険ドラッグ店捜索 検査後初の強制捜査 虚偽答弁疑い、神戸
近畿厚生局麻薬取締部などは29日、薬事法違反の疑いで、神戸市中央区元町高架通の危険ドラッグ販売店「DREAM(ドリーム)」を家宅捜索した。同店は厚生労働省が8月下旬に始めた一斉立ち入り検査の対象で、検査後に強制捜査に踏み切ったのは全国初という。
同部によると、今月11日に立ち入り検査した際、店側は「在庫が無い」と答えたが、その後も営業を続けていることを確認。虚偽答弁をした疑いがあるとして、この日、再び立ち入り検査し、店側が同じ回答をしたため、兵庫県警薬物銃器対策課などと合同で強制捜査に入った。(以下略)
神戸新聞NEXT 9月30日(火)9時45分配信
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立入検査を受けた業者は、薬事法に基づく立ち入り検査を甘く見たのか、それとも在庫品を検査されることを避けたかったのか、嘘をついてしまったようです。立入検査で質問を受けた販売業者が、正当な理由なく質問に答えなかったり、嘘の回答をすれば、それだけで、薬事法違反に問われることになります。
薬事法は、立入検査において販売業者に対して必要な報告をさせることができるとし(76条の8第1項)、求められた報告をせず、若しくは虚偽の報告をした場合や、質問に対して正当な理由なしに答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者は、50万円以下の罰金に処すると定めているのです(87条1項9号)。
そういえば、立ち入り検査における虚偽答弁で強制捜査が行われたという例には、初めて接しました。この夏以来、全国で徹底した立入検査が行われているなかで、嘘の回答などで検査を妨げる行為に対しても厳しい対応がとられるようになってきたのでしょうか。

<ニュースから>*****
●危険ドラッグ:ほう助容疑で店を初捜索…運転予想し販売
客が車を運転することを知りながら危険ドラッグを販売した疑いがあるとして、宮城県警は25日、仙台市青葉区一番町の海外輸入雑貨店「FOUR SIDE(フォーサイド)仙台店」を道交法(過労運転等の禁止)違反ほう助容疑で家宅捜索した。
県警によると、危険ドラッグ問題で販売側に同容疑を適用し捜索するのは全国初。
県警によると、同県内の40代男性が・・・道路脇電柱に衝突する物損事故を起こした。車内から植物片が見つかり、男性は「危険ドラッグを吸って運転した」などと供述、購入先として同店の名前を挙げたという。
県警は同法違反容疑で男性から事情を聴いているが、店が入るビルが事故現場の目の前だったことなどから、店側が男性が運転することを知っていた可能性があると判断した。(以下略)
毎日新聞 2014年09月25日 20時09分
*****

危険ドラッグに関係した交通事故が発生した場合、交通事件の関係先としてその製品を販売した店に対して捜索を行うのは、よくあることです。6月の池袋暴走事件の際も、警視庁は事件発生翌日に購入先の販売店を捜索したと報じられました。
通例どおりに、交通事件の関係先として捜索するのではなく、あえて過労運転の幇助の疑いで捜索したとなると、当然、販売業者を幇助犯として検挙することを視野に入れての動きということになります。たしかに、いつも車を乗り付けて買いに来る常連客や、車のキーを手に持ったまま店に入ってくる客など、販売員の目から見ても、購入後すぐに自動車を運転することが容易にわかることも多いでしょうが、さて、購入客が自分の車に戻ってすぐに、今買った危険ドラッグを使うことまで予見できたと立証するのは、けっこう難しいかもしれません。
危険ドラッグ関連の交通事件では、これまで、運転者に危険ドラッグを提供した同乗者が幇助犯として起訴された例がありますが、販売者の責任が問われた前例はありません。

先に警察庁が発表した「平成26年上半期の薬物・銃器情勢(暫定値)」によると、今年上半期中に薬事法違反で検挙した販売業者等は、41件、52人。昨年1年間の検挙実績をすでに上回っています(下記参照①)。
しかし、そのいっぽうで、販売業者を検挙してみても、事件として立件できるのはごく少数にとどまっているという事実もあります。8月4日に行われた衆議院厚生労働委員会で、警察庁刑事局組織犯罪対策部長は、「平成25年中の指定薬物に係る薬事法違反の検挙被疑者は37人でありまして、このうち、18・9%に当たる7人がこれまでに起訴をされております。薬物事件では、被疑者の、当該物品について違法薬物であるとの認識が必要でありますけれども、被疑者がこれについて認識を否定した事件の中には、不起訴とされる事例も見られるところであります。」と回答しています(下記参照2)。
あの手、この手で検挙実績を上げることも大切ですが、これ以上起訴率を低下させることのないよう、捜査に着手する際には、あくまで慎重であってほしいものです。

そういえば、北九州市で危険ドラッグ販売店の元経営者らが逮捕されたというニュースもありました(朝日新聞デジタル「危険ドラッグ保管容疑で4人逮捕 ハーブ店に植物片」2014年9月29日13時14分)。なんと2年前の9月に販売店を捜索し、押収した製品中に指定薬物が含まれていた件での逮捕だそうです。2年間も積み残していたとは。適時処理もどうかお忘れなく。

[参照]
①平成26年上半期の薬物・銃器情勢(暫定値)
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/yakubutujyuki/yakubutu/H26_kami_kikendrug.pdf

②衆議院 厚生労働委員会(平成26年08月04日)議事録
http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=5161&SAVED_RID=2&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=10&DOC_ID=4378&DPAGE=1&DTOTAL=172&DPOS=1&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=6867

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この記事へのコメント

滅智蓮寺 熾
2014年10月01日 15:55
>たしかに、いつも車を乗り付けて買いに来る常連客や、車のキーを手に持ったまま店に入ってくる客など、販売員の目から見ても、購入後すぐに自動車を運転することが容易にわかることも多いでしょうが、さて、購入客が自分の車に戻ってすぐに、今買った危険ドラッグを使うことまで予見できたと立証するのは、けっこう難しいかもしれません。

その店、フォーサイドには公式ブログがあります。
(ご存じでしたらすみません)
http://foursidesendai2.blog.fc2.com/blog-entry-39.html

そして、9月初めの時点ではこんなことが書いてありました。

>お店付近は無料でデリバリーします\(^o^)/
>車でお越しのお客様で駐車場を利用されてたお客様にも店下までデリバリー致します(^^)
>お気軽にお問い合わせください(≧∇≦)

ところが、9月初めごろからはこの記述は現れなくなってしまい、そしてブログ自体も9月11日で更新が停止しています。

もちろん、店に車で来た人に対して、店員が車まで商品を持って行って売ったからといって、当然危険運転を認識していたという論法は成り立ちません。
酒屋に車で来た人に酒を売るなというのと同じ論法ですから。
(駐車場がある酒屋はいっぱいあります)

とはいえ、一時期からこの記述が消えていることを考えれば、ショップ内部で問題視されたのだろうと思います。
滅智蓮寺 熾
2014年10月01日 16:07
このフォーサイドのブログですが、検索用キーワードに「危険ドラック」という単語が含まれています。
「ドラッグ」でなく「ドラック」なのはご愛嬌ですが、これに気づいたときは、「販売する側が自ら危険ドラッグと名乗るなよ……」と、微妙な気持ちになりました。

検索エンジンからのアクセスを増やすSEO目的があったのでしょうが、それにしても集客のためならなりふり構わないというか何というか……

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