弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 脱法ドラッグによる危険運転事件、対応力に地域格差?

<<   作成日時 : 2014/07/15 02:44   >>

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昨年9月、福岡県で発生した、脱法ドラッグによる暴走事件の判決が、ようやく言い渡されました。歩道に乗り上げた乗用車が4人をはね、重大な傷害を負わせたという事件です。

<ニュースから>*****
脱法ハーブ吸って事故、懲役3年6カ月の判決 福岡地裁
脱法ハーブを吸って事故を起こし、通行人らにけがをさせたとして危険運転致傷罪に問われた福岡県久留米市の無職I被告(38)に、福岡地裁は14日、懲役3年6カ月(求刑懲役4年6カ月)を言い渡した。村上典子裁判官は「2年前から脱法ハーブを使用し、危険性を認識していたにもかかわらず、吸引してすぐ運転した被告は厳しい非難に値する」と述べた。(以下略)
朝日新聞デジタル2014年7月14日20時43分
http://www.asahi.com/articles/ASG7G4WBWG7GTIPE02B.html
*****

この事故は、昨年9月8日の深夜、福岡県春日市の路上で発生、脱法ハーブを吸って乗用車を運転した被告人が、歩道に乗り上げ、歩道にいた4人を次々にはねたというもので、被害者は酒に酔って倒れていた男性と、介抱していた筑紫野署員などです。
比較的重い刑が言い渡されたのは、被害者に負わせた傷害の程度がかなり深刻だったことによるものでしょう。被害者のうち3名は、それぞれ約4か月の加療、約2か月の入院、および後遺障害を伴う約2か月の入院を要する傷害を負ったという被害状況でした。

思えば、昨年9月8日に発生したこの事件が、10か月後にようやく第1審の判決言い渡しとなったわけです。被告人は公訴事実を認めており、とくに争いのない事件の処理に、なぜこれほど時間がかかったのか、過去のニュースをあたってみると、事件は以下のような経緯をたどっていました。
・2013年9月8日 深夜に事件が発生
・I被告人は、当初、自動車運転過失傷害の疑いで逮捕されましたが、脱法ドラッグの影響による危険運転事件の疑いがあるまま、処分保留で釈放。
・2014年4月 在宅のまま危険運転致傷罪で起訴
・2014年5月19日 第1回公判 福岡地裁 被告人は公訴事実を認める
・2014年7月14日 判決

事件発生から、在宅で起訴されるまでおよそ7か月を要したことで、これほど時間がかかってしまったようです。
当ブログで何度も述べてきたことですが、脱法ドラッグ影響による交通事件では、原因になった薬物を特定し、その作用や自動車運転に及ぼす影響を確かめることに困難が伴い、事件処理が長引くこともあります。とはいえ、起訴までに7か月とは、いささか時間がかかりすぎたのではないでしょうか。

ちなみに、この事件で検出された薬物は5F-QUPIC(2013年10月に指定薬物、2014年7月2日に麻薬に格上げ指定)で、事件当時はまだ未規制の状態でした。この物質は、規制前には、脱法ドラッグの成分として広く出回っていましたが、摂取してすぐに作用が現れるという特性のためか、事故が多発していました。
ほぼ同じ時期に静岡県でも、5F-QUPICによる危険運転致傷事件が発生しましたが、こちらは、事件発生から約1か月で原因薬物を特定して、運転者と脱法ドラッグの提供者を逮捕。4か月後には第1審の判決が言い渡されました。
また、少し遡った昨年5月に、愛知県で発生した危険運転致傷事件では、発生から16日目に5F-QUPICを検出したと発表があり、運転者が逮捕されました。この事件でも発生から約4か月で第1審の判決が出ています。

[静岡県藤枝市の危険運転事件]
脱法ハーブの影響で意識が変調したまま軽乗用車を運転、対向車と衝突し、無職女性(46)に胸部骨折の重傷を負わせた事件。
・2013年9月7日  静岡県藤枝市で事件発生
・2013年10月10日 運転者を危険運転致傷、
           脱法ハーブ提供者を同ほう助の疑いで逮捕
・2014年1月9日  静岡地裁で判決 
           運転者は懲役1年4月(求刑懲役2年)、
           脱法ハーブ提供者は懲役1年、執行猶予4年(同1年)

[愛知県日進市で発生した危険運転事件]
脱法ハーブを吸って運転した乗用車が中央線をはみ出し、ガードレールに衝突後に女性が運転する対向車に衝突。さらに女性の車を押し戻して後続車と衝突させ、女性と長男に、それぞれ首などにけがをさせた事件。
・2013年5月27日  愛知県日進市で事件発生
・2013年6月12日  危険運転致傷の疑いで運転者を逮捕
・2013年9月17日  名古屋地裁で判決
           懲役2年、執行猶予4年

事件にはそれぞれ事情があり、外部からは見えない困難を抱えているケースもあることでしょう。でも、同じころに起きた事件、しかも原因になった脱法ドラッグから検出された成分も同じなのに、その事件処理に要した時間に、これほど大きな開きがあるのは何故でしょうか。
もしも、これが地域格差によるものだとすれば、見過ごせない問題です。

2012年初夏、関西で相次いで発生した脱法ドラッグによる交通事件に危険運転致傷罪が適用されて2年以上が経過し、最初はほとんど手探りだった捜査陣も経験を積み重ねて、事件処理のペースも確実に上がってきたようです。そういえば、池袋暴走事件では、原因薬物の特定が予測より早く進み、捜査陣の底力を感じさせてくれました。

残る問題は、格差の克服ということになりそうです。地域による格差なのか、あるいは個別事件の特性なのか、何らかの理由で、事件処理が際立って遅れるケースがあることは、法執行に対する信頼を損ねる原因になってしまいます。

なおここで取り上げた5F-QUPICについては、過去記事で取り上げているので、ご参照ください。
■合成カンナビノイド5F‐QUPIC、麻薬に格上げ(2014/07/03)
http://33765910.at.webry.info/201407/article_2.html

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