指定薬物の単純所持、ようやく摘発第1号

指定薬物について、研究や医療目的以外での所持や使用を禁止する改正薬事法が施行されて1月半、ようやく第1号の摘発が報じられました。脱法ドラッグの取り締まりのハードルの高さが、改めて浮き彫りになっています。

<ニュースから>*****
●<指定薬物>所持罪で62歳男を初摘発 福岡
脱法ドラッグと呼ばれる指定薬物を持っていたとして、九州厚生局麻薬取締部は15日、福岡県飯塚市目尾、無職、A被告(62)=覚せい剤取締法違反で起訴=を薬事法違反(指定薬物の単純所持)容疑で福岡地検に追送検した。指定薬物の所持罪は4月1日に新設されたが、同罪での摘発は全国で初めて。
送検容疑は4月3日、同市の自宅で、厚生労働省が指定薬物に指定している粉末0.189グラムを所持したとしている。容疑を認めているという。
同部によると、4月3日にA容疑者を覚醒剤の所持容疑で逮捕した際、自宅から白い粉末の入ったポリ袋が見つかり、鑑定の結果、指定薬物の一種「4-Fluoro-α-PVP」と判明した(以下略)。
毎日新聞 5月15日(木)11時51分配信
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上記の新聞報道によれば、本件の薬物が押収されたのが4月3日、鑑定などを経て指定薬物であることを確認の上検察庁に送致したのが5月15日、連休が入っていたことを加味しても、やはり相当な日数を要したことになります。押収した薬物を分析・鑑定して、物質を特定するのに、やはり、かなりの時間がかかったようです。

これまでもしばしば指摘してきたことですが、脱法ドラッグ取り締まりの第一関門は、薬物鑑定の段階にあります。脱法ドラッグらしい物を押収した場合、科学的な鑑定を経てその物質を特定することになりますが、まだまだ基本的な装備が不足しているため、この段階で時間がかかってしまうのです。
脱法ドラッグ関連の事件や事故が発生し始めた2012年ころには、押収した物質を特定するのに2、3か月を要することもあったといいます。その後、体制整備が進み、所要時間もずいぶん短縮されましたが、まだ現状では、通常の刑事手続きの処理日程にはおさまりません。
これでは、取り締まりに大きな壁が立ちはだかっていることになります。

●資源と情報の共有はできているのか
厚生労働省と国立医薬品食品衛生研究所が、脱法ドラッグの成分構造の情報を集積するデータベースの構築に乗り出すと報じられてから、もう2年ほどになるでしょうか。その後の進捗状況は発表されていないようですが、すでに稼働しているのでしょうか。
脱法ドラッグ市場を監視している薬務担当部門には、試買調査で得られた情報が集まっています。この情報が、薬務担当部門だけでなく、取り締まりに当たる警察や麻薬取締部にも共有されれば、物質の特定はもっとスムーズになるはずです。厚労省がデータベースの構築に乗り出すと聞いた私は、省庁の壁を越えて貴重な情報が共有され、脱法ドラッグの取り締まりに大きく貢献する様子を思い描き、期待したものですが・・・。

分析・鑑定のキャパシティを高めるのは、一朝一夕ではできません。まず、物質の特定に不可欠な標準物質が足りません。次々に類似薬物が登場している脱法ドラッグの現状に追い付こうと、外国の試薬メーカーが次々に新製品を開発していますが、こうした標準物質は驚くほど高価で、しかも入手は順番待ちだそうです。また、参照する分析データも足りません。関係部署ではそれぞれ情報を収集しているそうですが、まだまだ実用に足るだけの蓄積はできていません。そういえば、分析機器や鑑定に当たる専門家の体制も、心細いのではないでしょうか。

なにしろ、敵は変わり身の早い脱法ドラッグ、ヨーロッパでは週に1種の割合で、新物質が市場に現れているといいます。この現状に追い付くために、とりあえず今できることは、省庁の壁を越えて、現有の資源や情報を共有すること。
このかじ取りが上手くいかなければ、いつまでたっても、脱法ドラッグを有効にとりしまることなど、できそうにありません。

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