弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 執行猶予とパスポート|旅券法違反

<<   作成日時 : 2014/04/16 23:51   >>

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朝刊の片隅に「『執行猶予』隠し、パスポート申請―容疑の会社役員逮捕」という、小さな記事がありました。
旅券法違反事件そのものが珍しいうえ、めったにニュースになることもないケースです。

<ニュースから>****
●「執行猶予」隠し、パスポート申請―容疑の会社役員逮捕
刑事裁判で有罪判決を受け、執行猶予期間中だったことを隠して旅券申請したとして、池袋署が港区・・・会社役員T容疑者(37)を旅券法違反(虚偽申請)容疑で逮捕していたことが同署への取材でわかった。同法では、執行猶予期間中に申請された旅券について発給制限の対象としている。
同署幹部によると。T容疑者は2009年1月22日、都旅券課に、詐欺罪などで有罪判決を受けて執行猶予中であることを隠し、旅券発給の申請をした疑い。同29日に公布された旅券を使い、計6回、海外に渡航していた。(以下略)
読売新聞東京版 2014年4月16日
*****

上記の新聞記事のとおり、旅券法には「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」に対しては、一般旅券の発給をしないことができる(13条1項3号)という規定があります。
執行猶予中の人は、執行猶予期間を満了するまでの間は、法がいう「執行を受けることがなくなるまでの者」にあたるわけです。仮釈放中の人も、刑期が満了するまでの期間は同様です。

パスポートの発給を受けるためには、まず、「一般旅券発給申請書」という書類に記入するのですが、この書面の表面に「刑罰等関係」という記入欄があり、6項目の質問が並び、申込者は、各項目について、「はい」「いいえ」のいずれかにチェックを入れて回答するようになっています。

【刑罰等関係】欄の内容*****
次の各事項に該当しているか否か、□に✔印を記入してください。
(本人又は法定代理人が記入してください。)
1.外国で入国拒否、退去命令又は処罰されたことがありますか。
2.現在日本国法令により起訴され、判決確定前の状態ですか。
3.現在日本国法令により、仮釈放、刑の執行停止又は執行猶予の処分を受けていますか。
4.旅券法違反で有罪となり、判決が確定したことがありますか。
5.日本国旅券や渡航書を偽造したり、又は日本国旅券や渡航書として偽造された文書を行使して(未遂を含む)、日本国刑法により、有罪となり、判決が確定したことがありますか。
6.国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律を適用され外国から帰国したことがありますか。
*****

執行猶予中の人に関係するのは質問の3で、刑事裁判で執行猶予付の有罪判決を受け、現在執行猶予期間中の人は、この項目で「はい」の箇所にチェックしなければなりません。また、仮釈放中の人、ごくまれなケースとして刑の執行停止によって釈放された人も、この項目に「はい」と回答することになります。

この項目に「はい」と回答した人は、別途に書類を提出し、審査を受けることになります。審査の結果により、渡航先や有効期限が制限された特別な旅券が発給される場合や、また、パスポートの発給を受けることができないこともあるといいます。
外務省のホームページには、こんな説明があります。

<外務省HPから>*****
●こんな時、パスポートQ&A(平成26年3月14日)
Q23.申請書の刑罰等関係欄に該当(「はい」)がある場合、どのような書類を用意すればいいですか?
A.通常の一般旅券発給申請に必要な書類の他に、「渡航事情説明書」等をご用意願います。
通常の一般旅券発給申請に必要な書類の他に、各都道府県の申請窓口に備え付けの「渡航事情説明書」に所定事項をご記入の上、提出いただくとともに、刑罰等関係欄の項目に応じた書類(たとえば、執行猶予中の方は判決謄本1通)をあらかじめご用意ください。なお、渡航事情説明書の記入に関し、ご不明な点等がある場合には、各都道府県の申請窓口にお尋ね下さい。なお、海外にあっては最寄りの在外公館(日本大使館又は総領事館)の領事窓口にご照会ください。

Q24.刑罰等関係欄に該当(「はい」)がある場合、審査に時間がかかるのはなぜですか?
A.慎重な審査を行う必要があるため、時間がかかります。
刑罰等関係欄の各事項のいずれかに該当する方については、ご本人より提出していただいた関係書類に基づき、旅券の発給可否などにつき慎重に審査を行うため時間がかかります。
*****

私のところには、薬物事件で執行猶予判決を受けた元被告人から、いろいろな相談が寄せられますが、なかでも多いのが海外渡航についての相談です。
執行猶予中のパスポート申請について、彼らがよく口にするのが「もし、執行猶予中だということを隠したらバレますか?」という質問です。嘘をついてもわからないから大丈夫という情報が、出回っているのだといいます。
こんな質問に対して、私はいつも、嘘をついて申請することによって負うリスクを具体的に説明し、きちんと手続きするよう勧めています。冒頭のニュースのように、嘘をついて手続きしたことから、旅券法違反(23条1項1号)で有罪判決を受けることになれば、その後のパスポート取得はかなり難しくなるのですから。

しかし、多くの日本人にとって海外渡航が日常的になり、職種によっては、欠かせない条件になっている現在の社会で、果たして、執行猶予中の人に対して、一律に旅券の発給を制限することが、妥当なのでしょうか。また、このような措置がほんとうに必要なのでしょうか。

いっぽうでは、すでにパスポートを取得している人が、執行猶予付の有罪判決を受けたことで、その返納を求められることは、実際には、ほとんどないようです。
旅券法は、一般旅券の名義人が、旅券の交付を受けた後、執行猶予中や仮釈放中、起訴されてまだ判決を受けていないなど旅券の発給を制限する事由(13条1項各号)に該当するに至ったときは、「旅券を返納させる必要があると認めるときは、旅券の名義人に対して、期限を付けて、旅券の返納を命ずることができる。」と定めています(19条1項2号)が、私がこれまでに担当した被告人が、逮捕後、あるいは執行猶予付判決を言い渡された後に、旅券の返納を求められた例に接したことはありません。

最近では、執行猶予中の人については、有罪判決を受けた罪種や言い渡された刑などによって、ある程度弾力的な運用がされているとも聞きます。それなら、申請者に何らかのガイドラインを示すことも必要ではないでしょうか。申請に当たって嘘をつくことをとがめるより、具体的な情報を提供して無用な嘘をつかせないよう工夫することも、大切だと思います。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
この会社役員T容疑者は
中国残留孤児の3世であり
愚連隊のリーダーであることも
考慮するべきではないでしょうか?
Hony
2015/04/13 03:27

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