新制度導入の背景|変わり目の薬物政策5

ニュージーランドは、人口わずか450万人(東京都の約3分の1)、しかも大陸から遠く離れた島国です。この立地条件のせいで、この国では、世界で最も広く乱用されているヘロインやコカインの流入が限られ、それに代わるものとして、合成薬物が広く流通してきました。
まず、最初に広まったのは覚せい剤(メタンフェタミン)の密造で、2000年ころには覚せい剤使用者が急増しました。次いで、2000年ころから急速にBZP(ベンジルピペラジン)などの錠剤型薬物、いわゆるパーティーピルズが広まり始め、「合法」をうたってこうした製品を販売する業者が乱立し、2007年には推定500万錠が国内で消費されたといいます。
2007/2008年(BZPに対する法規制導入前)の調査によると、過去1年の薬物使用率では、大麻(14.6%)に次いでBZP 等パーティーピルズ (5.6%)の使用率が高く、とくに若い年代の使用者が多いことが指摘されています(下記参照①)。

ニュージーランド政府は、2008年にBZP及び類似構造をもつ薬物群に対して法規制を導入しましたが、脱法ドラッグ市場には新たな未規制成分が次々に登場し、同時に、アングラ市場に追いやられた多様なBZP等錠剤も密売され、合成薬物の流通はますます加速してしまいました。さらに2010年ころからは合成カンナビノイド製品が大々的に流通し始め、主にオセアニア地域で流通しているクロニックというブランドで、多様な製品が出回りました。
2010年を過ぎたころのニュージーランドは、こうした多様な新型薬物(新型精神作用物質:NPS)の氾濫に見舞われており、その解決は重要な政治課題となっていたのです。
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↑薬物常用者のうち新型薬物を知っている人の割合
Massey大学の調査(下記参照②)報告書から

Massey大学が行っている薬物使用実態調査では、2010年から2011年にかけて、新型薬物の流通が急増したことが指摘されています。この調査は薬物常用者(覚せい剤常用者、MDMA常用者、注射使用による常用者)に対する聞き取りによって薬物使用の動向を把握しようとするものですが、薬物常用者の34%が何らかの新型薬物を知っていると回答しています。挙げられた薬物として最も多かったのは脱法・違法が混在して流通している多様な錠剤で、次いで「クロニック」などの合成カンナビノイド製品、メフェドロンとなっています(下記参照②)。

[参照]
①ニュージーランドの公的な薬物使用調査
Drug Use in New Zealand: Key results of the 2007/08 New Zealand Alcohol and Drug Use Survey
http://www.health.govt.nz/publication/drug-use-new-zealand-key-results-2007-08-new-zealand-alcohol-and-drug-use-survey
②Massey大学の調査
Wilkins, C., et al., Recent trends in illegal drug use in New Zealand: Findings from the 2006, 2007, 2008, 2009, 2010 and 2011 Illicit Drug Monitoring System (IDMS) , 2012
http://www.massey.ac.nz/massey/fms/Colleges/College%20of%20Humanities%20and%20Social%20Sciences/Shore/reports/IDMS%202011%20Final%20Report.pdf

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