スーパー・カルテル|コカインの世界戦略4

現在、コロンビアのコカインを支配している組織の実態は、きわめて見えにくくなっています。とはいえ、巨額の資金の流れ、無造作に使い捨てられる高価な飛行機や潜水艇、そして数トンのコカインを運ぶ密輸船、こうしたコマをつなぎ合わせると、浮かび上がってくるのは豊富な資金力を持つ巨大組織の存在です。
最近、米国機関の捜査によって明らかになった、コロンビア系コカイン組織の一端を紹介しましょう。

●スーパー・カルテルの摘発
2009年9月、コロンビアの大西洋に面した港町では、国土安全保障局、入国・税関管理局などの米国機関とコロンビア警察の合同捜査チームによって、メキシコから届いた肥料を満載したコンテナの捜索が行われていました。肥料の中からは、20ドル紙幣を圧縮包装した大きな塊が次々に取り出され、この捜索で発見された現金は、実に4100万ドル(約41億円)にのぼりました。
これは、コロンビア系カルテルがコカイン密輸、誘拐、人身売買などの不法取引で稼いだ資金の一部で、こうして貨物に隠して、世界の各地からコロンビアに運び込まれているのです。
これは、コロンビア系コカイン組織を標的に、260人体制で編成された特捜チームが、3年にわたって取り組み、巨大組織を率いる中心人物たちを検挙するに至った、一連の捜査が開始された時の一コマです。

かつて悪名をとどろかせたメデジン、カリの2大カルテルを合わせた規模を持ち、世界に流通するコカインの大半を取り仕切り、数百億円の資金を動かす巨大組織、人はそれを「スーパー・カルテル」と呼びます。
その経営戦略は、巨大企業のそれに似ているといいます。非合法活動から不動産経営までの多様な分野での事業展開、高度な専門知識を駆使した資金運用、圧倒的な占有率による価格支配、多国籍な人員による世界展開・・・。
コカイン運搬用に、多数の自家用飛行機を持ち、ジャングルの奥地の加工場のそばには広大な草地が広がり、滑走路用に整備されています。海を越えた密輸に用いるために、数百万ドルかかるという専用の潜水艇を自前で建造しています。米国境警備隊やコロンビア警察の手で、これまで多数の飛行機や潜水艇が発見され、押収されていますが、組織の運送能力に大きな変化はみられず、相変わらず、空から、海から、コカインが運搬されています。
この巨大組織は、コロンビアの首都ボゴタに本拠を置いていましたが、しかし、そこには堂々たる本社ビルはなく、最高経営責任者の名前も顔もほとんど知られていません。この組織が運営する施設も、機材、自動車なども、すべて架空名義や無登録のもの。
組織の重要人物には高学歴の人も多く、表向きのビジネスを持ちながら簡素な住宅で目立たない生活をしています。組織のボスは、住宅街の小さなカフェのテーブル越しに、幹部に重要な指示を出し、誰も気づかないうちに、大量のコカインや多額の現金が、世界を駆け巡っているのです。

2012年末、米大手メディアCBSは、この特別捜査の様子をまとめた番組を放映しました。CBSのサイトに、今年6月に再放送したビデオがあるので、ご覧ください。
[参照]
CBS>Taking down Colombia's "super cartel”
http://www.cbsnews.com/videos/taking-down-colombias-super-cartel/

●バレラの逮捕
米国とコロンビアの合同捜査チームに逮捕された重要人物のひとり、コロンビアの麻薬組織を率いるダニエル・バレラ・バレラ(2010年9月にベネズエラで逮捕)が、今年7月、米国へ引き渡されました。その際の報道発表から、その活動を追ってみましょう。

バレラは1998年からコカインの密造・密輸事業を続けてきました。彼は、未精製のコカイン・ベースを処理して粉末コカインを精製しており、年間では最大約400トンのコカインを密造してきました。訴訟記録によると、2003年から2008年までの5年間でバレラがコカインであげた売上は、総額で約200億円にのぼるといいます。

バレラのコカイン・ビジネスは、コロンビアの武装集団と密接に結びついていました。バレラは、コロンビア国内のコカ栽培地域を支配していた左翼系反政府勢力FARC(コロンビア同盟軍)との関係を深め、FARCを通じて1月当たり約30トンのコカ・ペーストを買い集めてきました。ところが、それを精製してコカインに仕上げる加工施設があったのは、FARCとは敵対関係にある極右武装集団AUCの支配地域で、バレラはAUCに対して毎月の上納金を納めることで密造施設を維持し、同時に、コカイン運搬の安全を確保していたのです。FARCとAUCは、どちらも非合法な武装勢力とはいえ、真っ向から対立し、武力抗争を展開していた関係です。バレラは、そのどちらにも属さず、しかも両者と同時に取引してコカイン・ビジネスを続けてきたのです。

バレラの活動拠点はコロンビア東部のビチャーダ県、ベネズエラと国境を接する森林地帯でした。バレラは、多額の賄賂によって地方行政官を買収し、摘発されることなく、長年にわたってコカイン・ビジネスを続きていました。
バレラ一味の密輸先は、アメリカ合衆国からヨーロッパにまで及んでいました。ヨーロッパに密輸するために、隣接するベネズエラ国内にも貯蔵・出荷のための拠点を設け、さらに、密輸の中継地として、西アフリカも利用してきました。一連の捜査活動で押収された膨大な装備の中には、21機の航空機も含まれていたといいます。

[参照]
米入国・税関管理局の報道発表
ICE>Colombian drug kingpin extradited to US following HSI, DEA investigation(July 10, 2013)
http://www.ice.gov/news/releases/1307/130710newyork.htm

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