アンデス3か国|コカインの世界戦略2

●アンデス山地でのコカ栽培
コカインの原料はコカ葉、アンデスの産地に自生する低灌木の葉で、古くからこの地域では民間薬や健康増進薬として、コカの葉を噛む習慣があったといいます。
戦前には、日本占領下の台湾や、ドイツが占領していたジャワでコカが栽培され、日本やドイツの製薬会社がコカインを生産したこともありますが、現在では、この植物の栽培地は、コロンビア、ボリビア、ペルーの3か国にまたがるアンデス山地に限られています。
コカの栽培地は、衛星写真なども用いた観測網で監視され、毎年の収穫量も綿密に推計されています。全世界での集計として最新の数字は2011年のもので、コカの栽培面積は155,600ヘクタール、最終的にコカインとして得られる量は776 ~1,051トン(純度100%として計算)と見積もられています。
この数字は、長期的に見ればゆるやかに減少し続けています。減少の原動力は、ひとつには、コロンビアを中心にコカ栽培の取り締まり強化や、代替作物への転換などによって、栽培面積が縮小していることがあげられます。またいっぽうで、消費市場の縮小も産地に大きな影響を及ぼしています。従来、最大のコカイン消費市場だったUSAでコカイン消費が減少し続け、第二の巨大市場のヨーロッパでも拡大傾向に歯止めがかかっているのです。
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↑アンデス山地で栽培されるコカの葉

[参照]
世界のコカ栽培、コカイン生産の現状については、国連薬物犯罪事務所(UNODC)が発表する『世界薬物報告書』に、詳細な推計値があります。
①2013年版世界薬物報告書WORLD DRUG REPORT 2013 
http://www.unodc.org/unodc/secured/wdr/wdr2013/World_Drug_Report_2013.pdf

●コカ葉からコカインへ
■コカ葉→コカ・ペースト
この工程は栽培地周辺のジャングル内に設けられた粗末な作業小屋で、栽培農家の手で行われるのが普通です。コカ葉をガソリンや灯油に浸し、成分が溶け出たところへ希硫酸を加え、沈殿物に石灰を加えて中和させたものが、コカ・ペーストです。栽培農家は、コカ・ペーストを仲買人に売り渡します。
■コカ・ペースト→コカイン・ベース
コカ・ペーストは栽培地周辺の作業場に集められ、再び硫酸で溶かされ、過マンガン酸カリウムを加えて不純物を取り除き、ろ過されます。これがコカイン・ベースと呼ばれるものです。この工程では化学原料を用い、いくらか大型の設備を用いますが、手工業レベルの加工技術でできるため、栽培農家の手で加工されることもあります。
■コカイン・ベース→コカイン
粉末コカインとして出回っているのは、コカイン塩酸塩で、コカイン・ベースを塩酸で処理して、安定した結晶体にしたものです。こうして出来上がったコカインは、型に入れて水抜きをして固め、コカイン・ブロックとして出荷されます。一般的なコカイン・ブロックは、1個が約1キロ、表面に型押しのロゴが入っています。
この工程には、いわゆる化学工業レベルの技術や設備が必要なため、栽培地を離れた場所に、やや大型の加工拠点が設けられる例が多くなります。
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↑コカイン・ブロックと抜き型
DEA Museum>Cocaine Production & Distributionより転載

[参照]
米DEAのサイト内に、コロンビアでのコカイン生産過程を写真で見せてくれるページがあります。大変わかりやすい資料なので、ぜひご参照ください。
②DEA Museum>Cocaine Production & Distribution
http://www.deamuseum.org/ccp/coca/production-distribution.html

●大規模化する加工施設
欧米のメディアは、ときおり、驚くほど巨大なコカイン加工施設の摘発を報じています。コカインを生産しているアンデス3か国でも、もちろんコカの栽培コカインの加工・生産は不法行為であり、厳しく取り締まられているため、いきおい、生産施設の多くは、人目につかないジャングルの奥地に設けられることになります。
たとえば、2011年10月、コロンビアの密林の奥地で発見されたものは、上記の工程③のコカイン塩酸塩に仕上げる加工施設ですが、週に800キロのコカインを生産する能力を持っているといいます。人里から遠く離れ、ジャングルの茂みに隠された施設は、コカインを運搬する飛行機のために広大な滑走路を備え、作業員40人が1か月暮らせるだけの食料や日用品が備蓄されていました。
もうひとつ、近年目につくのは、最終加工施設の分散です。最大のコカイン生産地コロンビアでは、軍や警察による取り締まりが強化されているため、国境を越えたエクアドルやベネズエラなどに設ける例が増えているのです。
コカイン加工施設の生産能力、自家用航空機を利用した運搬、国境を越えた活動領域などから見えてくるのは、莫大な資金力をもつ薬物組織の存在ですが、これについては、後ほど改めて考えることにしましょう。

[参照]
2011年10月、コロンビアで摘発された巨大加工施設の写真集がBBCのサイト内にあります。
③BBC>In pictures: Colombia cocaine 'megalab' (15 October 2011)
http://www.bbc.co.uk/news/world-latin-america-15318733

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