MDMAのリバイバル版「モーリー」、その正体は・・・?

前記事で取り上げたように、ニューヨークの大型ダンス・イベントで2人の若者が薬物による急性中毒で死亡したことから、いま米国の若者に広まっている「モーリー」と呼ばれる、新しいタイプの薬物が、話題を集めています。「モーリーMolly」とは、分子moleculeから生まれた呼び名で、カプセル入りの粉末ドラッグとして広まっている、粉末状(正確にいうと白色の結晶体)のMDMAを指します。

MDMAはエクスタシー錠剤の成分ですが、1980年代初めに新しいクラブドラッグとして使われ始めたころは、主にカプセル入りの粉末状で取引されていましたが、その後、エクスタシー錠剤として大量に供給されて、世界の若者に広まってきたものです。いま再びカプセル入りの粉末で密売されているのは、さしずめ、先祖がえり、あるいはリバイバル版MDMAというところでしょうか。

さて、ダンスやテクノ音楽の流れに乗って一世を風靡したエクスタシー錠剤ですが、やがて、より刺激的な体験を求めるユーザーの期待に応えて、混ぜ物入りの錠剤が増えてきました。混ぜ物として配合されるのは、多量のカフェインやメタンフェタミンなどの興奮系薬物、そしてケタミンなどの幻覚系薬物入りも登場し、純粋なMDMA錠剤の割合はどんどん少なくなりました。
また、人気の拡大とともに、急性中毒の犠牲者も急増したのですが、多様な薬物の混入によって、エクスタシーの危険性が高まっているという指摘もあり、愛好家のなかには、純粋なMDMAを求める声も根強く存在していました。

右肩上がりを続けたエクスタシー人気に、陰りが見え始めたのは、21世紀に入ったころからです。これは、原料化学品の国際的な規制や、密造施設の摘発、密輸ルートの遮断といった取り締まりが実ったものですが、その結果、エクスタシー錠剤には更なる変化が生じました。不足しているMDMAに代わって、別種の薬物を配合した錠剤が出回り、BZPやTFMPP、2C-Bや2C-I、メチロン・・・、実に多彩な薬物が錠剤の成分として使われたのです(下記参照①)。

「正体不明」の度合いを深めたことで、結局、エクスタシー錠剤のイメージが陳腐化するいっぽうで、より本格派のドラッグとして支持を拡大してきたのが、モーリーでした。「高純度」を売りことばに、粉末状MDMAをカプセル入りで提供するというスタイルが、逆に新鮮に感じられたのでしょう。

しかし、「モーリー」と呼ばれて出回っているカプセル入りの粉末の正体は、実際には、かなり怪しい様子です。
ためしに、DEAのサイトに掲載された摘発情報をさがしてみると、実に多様な物質がこの名前で出回っていることがわかります。
たとえば2013年5月に、「モーリー」の輸入及び流通で2人が有罪を宣告されたという記事がありますが、ここで登場した薬物は、中国で製造されたMDMA類似のデザイナードラッグでした(下記参照②)。また2011年8月の記事では、「モーリー」として密売されたのは、現在では代表的なバスソルト成分として知られている4-メチルメトカチノンでした(下記参照③)。ほかにも、メチロン、TFMPPなどが「モーリー」として取り上げられています。

結局のところ、近年の薬物マーケットでエクスタシー錠剤として出回っている、多様な新型薬物が、カプセル入りの粉末ドラッグとして、形だけ変えて「モーリー」として出回っているのが、現実のようです。「純度の高いMDMA」を売り言葉に広まってきた「モーリー」も、知名度が上がるとともに、エクスタシー錠剤と同じように、正体不明の薬物になってしまったということでしょうか。

国立薬物乱用研究所(National Institute on Drug Abuse:NIDA)のサイトには、最近「モーリー」に関する情報が追加されましたが、そこには、次のような指摘があります。
「ユーザーは、エクスタシーとして出回る錠剤に含まれるカフェインやメタンフェタミンなどの有害な不純物を避けるためにモーリーを求めこともあるでしょう。しかし、純粋なMDMAであると思ってモーリーを購入する人たちも、実際には、同じリスクに身をさらしているのかもしれません。2012年にフロリダ州の2か所の犯罪分析ラボで、数百カプセルのモーリーが検査され、一般にバスソルトの成分として検出される危険な興奮剤のメチロンの含有が確認されました。その他にも、コカイン、ヘロインなどを含有するモーリーについての報道もあります。」(下記参照④・私訳)

[参照]
①錠剤型薬物の多様化についての過去記事
「エクスタシーまがいの錠剤|MDMAの次に来るものは」2011/07/30
http://33765910.at.webry.info/201107/article_21.html
②DEA>Federal Jury Convicts Two Syracuse Men for Conspiracy to Import and Distribute Synthetic Drug “Molly”(May 16, 2013)
http://www.justice.gov/dea/divisions/nyc/2013/nyc051613.shtml
③DEA>20 Charged With Conspiracy to Distribute Synthetic Drug “Molly”(August 16, 2011)
④NIDA>Emerging Trends>“Molly”
http://www.drugabuse.gov/drugs-abuse/emerging-trends

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

驚いた
かわいい

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック