変わる密輸ルート|ヘロインを語る2

国連薬物犯罪事務所は、世界の主要なけし栽培地域の観測や、各地での押収データなどに基づいて、世界のヘロイン需給状況に関して、毎年、精密な推計を発表しています。このデータによると、世界中の薬物市場に供給されているヘロインの総量は、年間430~450トンと推定されています。最大の生産地域はアフガニスタンで、年間380トンがヘロインまたはモルヒネとして、この地域から世界中へ運ばれています。第二の生産地域はミャンマー及びラオスで、年間50トンほどが生産されています。

いっぽう消費量が最も多いのはロシアとヨーロッパで、アフガニスタンで産出するヘロインは、トルコからバルカン半島を経由してヨーロッパへと運ばれてきました。これが、いわゆるバルカン・ルートと呼ばれる密輸ルートで、様々な犯罪組織が関与し、多数の人の手を経て、ヘロインが運ばれてきたのです。
ところが、近年、このバルカン・ルートに代わる新たな密輸ルートが生まれ、次第にその重要性を高めているといわれます。
まず注目を集めたのが、中央アジアを経由してロシアへ運ばれるルートです。安定化への道を見失ったアフガニスタンで、けしの栽培が増加し、ヘロインが増産されていることに加え、旧ソビエト連邦中央アジア諸国の政治的な不安定さが、薬物犯罪組織の温床になったことなどが、新たなルートを成長させたといわれます。

次いで、2009年ころから第三のルートが急速に浮上し始めました。アフガニスタンからパキスタンへ運ばれたヘロインが、インド洋を経由してアフリカ大陸の東部沿岸地域へ陸揚げされるのがこのルートで、西アフリカの薬物マフィアが支配しているといいます。
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↑2010~2012年にアフリカでヘロイン押収が報告された地点
2013年版世界薬物報告書34ページから転載(下記参照①)

このルートの特徴は、何といっても、密輸の規模が大きいことです。商業貨物に紛れ込ませて運ぶのではなく、密輸船を仕立てて、一気に百キロ以上のヘロインを密輸するのが標準的な手法です。そういえば、南米産のコカインの場合も密輸船を仕立てて、カリブ海を経由してアメリカへ運ばれ、大西洋を経て西アフリカへ運ばれています。南米の薬物組織の影響を強く受けているといわれる西アフリカの薬物マフィアなら、こうした大規模な密輸を取り仕切ることもできそうです。
今年3月、インド洋でテロ防止の作戦に当たっていたカナダ海軍の軍艦が、洋上で密輸船を摘発し、500キログラムのヘロインを押収したと報じられました(下記参照②)。

↑カナダCBCのニュースビデオ
http://www.cbc.ca/news/canada/story/2013/03/31/heroin-bust-warship.html

中東やアフリカ大陸を中継拠点とする、ヘロインの大量密輸の幕開けで、またしても、世界の薬物密輸ルートが、大きく変容しようとしています。縮小傾向を示す欧米の市場に代わって、新たなマーケットが開拓されることになるでしょう。標的は、ロシア、アフリカ、そして・・・・
そうそう、最近では、中東に新たな密輸中継拠点が構築され、ここから海路で東アフリカへ運搬されるとともに、東南アジア各地へ運ばれるものもあるようです。従来はミャンマー産のヘロインが主に流通していた東南アジアに、アフガニスタン産のヘロインが大量に供給され始めているという観測もあります。

[参照]
①2013年版世界薬物報告書
UNODC, WORLD DRUG REPORT 2013(該当ページはp.30~37)
http://www.unodc.org/wdr/
②カナダのニュース
CBC News>Canadian warship crew seizes $100M of heroin in Indian Ocean(Apr 1, 2013)
http://www.cbc.ca/news/canada/story/2013/03/31/heroin-bust-warship.html

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