米で青少年のヘロイン乱用が増加|ヘロインを語る1

ヘロインは、阿片から精製されるモルヒネを原料に作られる薬物で、その中枢神経抑制作用は、モルヒネよりも強力です。もともとは、医療用の鎮痛、麻酔薬として開発されたものですが、依存性が極めて強く弊害が大きかったため使用が禁止され、現在では、ヘロインの製造、流通は国際的な統制によって厳しく管理されています。わが国の法律(麻薬及び向精神薬取締法)でも、ヘロイン(ジアセチルモルヒネ等)は他の麻薬(一般麻薬ということもあります。モルヒネやLSDは一般麻薬です)とは区別されて、重く処罰されています。

現在、先進国の薬物市場には多種多様な薬物が出回っていますが、なかでもヘロインの注射使用がとくに警戒されているのには、理由があります。
まず、注射使用に特有のラッシュと呼ばれる強い陶酔感によってこの薬物にのめり込む人が多く、繰り返して使うことで短期間にヘロイン依存が形成されること。またヘロインには身体依存性があり、使用を中断すると極度の禁断症状に苦しむため、自分の意思でやめることが難しく、依存者はこの薬物を使い続け、しかも次第に使用量が増えていくのです。その結果は、過量摂取(オーバードウズ)・・・。ヘロインの過量摂取による中毒事故は特に多く、ヘロイン依存者のほとんどが中毒事故を経験しているといわれます。

でも、ヘロインは古典的な薬物で、近年では新たな乱用の拡大はみられず、欧米でもアジアでも、乱用者は高齢化し、減少傾向をみせています。

ところがごく最近になって、アメリカの一部地域で、青少年の間でヘロイン乱用が増加する動きが出始めて、注目を集めています。すでに過去の薬物となりつつあるヘロインを、今になって復活させた原動力は、意外にも、青少年に蔓延した処方せん薬乱用にあるというのです。

今年4月にホワイトハウスが発表した2013年版国家薬物抑止戦略(NATIONAL DRUG CONTROL STRATEGY 2013)は、処方せん薬乱用に関連した新たな脅威として「とくに大都市以外の地域の若年層で、ヘロイン使用が増加しているようだ」と指摘しています。
ヘロイン使用者は、薬物使用と健康に関する全米調査(National Survey on Drug Use and Health:NSDUH)のデータによると、2007年には373,000人であったものが、2011年には620,000人と増加しています。また、ヘロイン使用によって薬物依存治療(トリートメント)を受ける18~25歳の参加者は、2000年には最大43,000人であったものが、2010年には最大68,000人と増えています(下記参照①71ページ)。

近年、若者に広まるもうひとつの薬物問題として、アメリカ社会を悩ませているのが処方せん薬の乱用です。最近では、オピオイド系鎮痛薬の乱用が広まるにつれ、これをゲートウェイとして、やがてヘロインを使い始める若者の増加が指摘されてきました。処方せん薬も、ヤミ市場で入手すれば高価なものにつき、使用量が増えた乱用者にとっては、ヘロインに乗り換えたほうが割安になるという事情もあるようです。
また、各州では処方せん薬乱用に対する対策が講じられ始めていますが、ようやく動き出した対策によって、処方せん薬の入手が困難になったことが、ヘロインへの移行に拍車をかけているという観測もあります。

今年4月、ワシントン大学(米ワシントン州)の研究チームが発表した報告は、こうした動きをより鮮明に描き出しています(下記参照②)。
ワシントン州では、他州に先駆けて対策が導入され、処方せん鎮痛薬の乱用は目に見えて減少しているといいますが、いっぽうでは、ヘロインの需要を拡大させたという声もあります。キング郡(州都シアトルを含む群)では、ヘロインによる死亡は、2009年の49例から2012年では84例に増えていますが、増加分のほとんどは30歳以下の年齢層で占められています。

薬物乱用状況の変化を進行途上でとらえ、データ化するのは、なかなか難しいことです。データとしてよく使われるのは、中毒事故による死亡数や、治療(トリートメント)参加者数ですが、はっきりした数値になって表れるには、数年かかります。
この研究報告では、いま進行中の変化をいち早くとらえるデータとして、犯罪鑑識に送られた尿サンプルから検出された薬物に注目しました。下のグラフは、州警察の犯罪鑑識に送られた尿サンプルから、ヘロインと処方せん鎮痛薬が検出された件数を表したものです。

画像

↑薬物鑑定で検出されたヘロインと処方せん薬の件数
黒実線は処方せん鎮痛薬、青点線はヘロイン
ワシントン大学研究チームの資料より転載(下記参照②)

近年では、薬物の検出件数が全体的に減少している中で、処方せん鎮痛薬の検出は群を抜いて増加し続けましたが、対策が導入されたことで、2009年をピークに減少に向かいました。ところが、このころからヘロインの検出数が急増しているのです。入手しにくくなった処方せん薬に代わるものとして、ヘロインの需要が増えたことが、このグラフから読み取れます。なお、グラフでは2012年のヘロイン検出数が少し減っていますが、資料中にその説明は見当たりませんでした。

[参照]
①ホワイトハウスの2013年版薬物抑止戦略
NATIONAL DRUG CONTROL STRATEGY 2013
http://www.whitehouse.gov//sites/default/files/ondcp/policy-and-research/ndcs_2013.pdf

② ワシントン大学の研究チームによる発表資料
ADAI INFO Brief:Heroin Trends Across Washington State(June 2013)
http://adai.uw.edu/pubs/InfoBriefs/ADAI-IB-2013-02.pdf

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