インターネットの役割|世界薬物報告書2

国連薬物犯罪事務所(UNODC)が発表した「2013年版世界薬物報告書World Drug Report 2013」を通じて、新精神作用物質:NPS(New psychoactive substances)の問題を世界の視点で考えています。

●EUではインターネット販売サイトが急増(72-74ページ)
EU加盟国を対象にしたNPSの販売サイトは、2010年1月では170、2011年1月は314、2012年1月には693とうなぎ上りに増加しています。UNODCの調査でも、回答国の88%が、インターネットが主要な販売経路になっていると回答しています。いまや、NPSの流通にとってインターネットは欠かせないメディアになっているといえるでしょう。
ところが、EUの調査によると(Eurobarometer survey, 2011)、15-24歳のユーザーのうち実際にインターネットを通じて購入した割合は、わずかに7%という結果も出ています。ちなみに、入手経路を多い順にあげると、友人から(54%)、クラブやパーティで(36%)、専門店で(33%)となっています。
インターネットは、NPSの拡大に大きく関与しているとはいえ、実際のマーケットでは、依然としてクチコミでの情報伝播や、手から手へといった流通経路が、大きな比重を占めているようです。

いっぽう、実証的なデータが乏しいNPSに関して、インターネットの検索データを通じて、一般人の関心度を把握しようとする試みも続けられています。これは、世間で話題になっている薬物ほど、インターネットで検索されるという仮説の下で行われている調査で、google検索の上位を占める薬物関連のキーワードを集計しているものです。もちろん、インターネットの普及率が国ごとに違い、またインターネット上に掲載されるNPS関連情報の量にも地域差があるため、このデータは、主に西欧先進国の状況を反映しているものといえますが、刻々と変化するNPS市場のトレンドを素早くキャッチできる指標のひとつです。

2008-2012年の間で、世界で最も多く検索されたNPS関連のキーワードは「スパイス」で、次いでケタミン。カート、サルビア、クラトムといった植物系の脱法ドラッグも上位に名を連ねています。
画像

↑世界でgoogle検索された薬物関連の用語、2008-2012
World Drug Report 2013, 73ページより
・赤紫は国連条約で国際統制されている薬物
・青はNPS

なお、わが国では、上のデータでNPSの上位を占めているケタミン(麻薬)、サルビア(指定薬物)はすでに規制されて脱法ドラッグ市場から退場しているため、現在では乱用薬物としての流通はほとんどありません。

ところで、こうしたデータを目にして、意外に思われる方もあることでしょう。たとえば、上のグラフによれば、インターネットのユーザーが検索した実績からいえば、「スパイス」は「大麻」の15%に過ぎないのです。
報告書73ページには、アンフェタミン系薬物を代表する「エクスタシー」「メタンフェタミン」「アンフェタミン」と主要なNPSを対比したグラフも掲載されていますが、ここでも同様の傾向が示されています。ヨーロッパで蔓延している「メフェドロン」も、google検索の頻度からすれば、「エクスタシー」の8%でしかありません。

先進国の薬物マーケットでは、いま、国際統制されている旧来タイプの薬物(わが国では麻薬、覚せい剤、大麻)の伸びが鈍化し、それに代わるかのようにNPSが急速に拡大する動きが見られます。しかし、これはあくまでトレンドであって、薬物市場に根を下ろした旧来型薬物の市場規模は依然として巨大であり、それに比べて、新興のNPS市場は、急成長しているとはいえ、規模としては、まだ小さな市場です。
薬物の動向を語るとき、こうした全体のバランスを見失うことなく、変化に目を配っていかなければなりません。

[参照]
UNODC「2013年版世界薬物報告書World Drug Report 2013」
http://www.unodc.org/wdr/

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