脱法ハーブによる危険運転、京都地裁で初の判決

脱法ハーブに対する社会の非難が高まるなかで、立て続けに報じられた、脱法ハーブ使用者による無謀運転事故。社会への警鐘を打ち鳴らす意図もあってか、危険運転致死傷罪で起訴されたケースが相次ぎましたが、その第1例目となる判決が京都地裁で言い渡されました。
いっぽう、外見からはよく似ているように思える事件でも、自動車運転過失致傷罪で起訴されている例も少なくありません。

もちろん、脱法ハーブを吸引し、その薬理作用によって心身に強い影響を受けた状態で自動車を運転するなど、とんでもないことで、大いに非難されるべきです。しかし、その行為に危険運転致傷罪を適用し、有罪を宣告するためには、自動車運転過失致傷罪とは明確に違う立証が尽くされ、判断が示されなくてはなりません。私は、大いに関心をもって一連の裁判の判決を待ってきました。

脱法ハーブの影響による危険運転致死傷罪の認定には、大きく2つのポイントがあると思います。第一に、事故の原因となった無謀あるいは異常な運転操作が、薬物の影響によるものかどうか。第二に、被告人が、摂取した薬物の影響によって正常な運転が困難な状況になっていることを認識していたかどうか、という点です。

まず、被告人が吸引した脱法ハーブの作用によって、事故の時点で被告人の運転技能が大きく損なわれ、正常な運転が困難な状態にあったことが認定されなければならないはずです。とりわけ、本件は、脱法ハーブによる危険運転致傷事件で最初の判決となることを意識すれば、脱法ハーブのもたらす作用と、正常な運転が困難な状況との因果関係について、ある程度具体的な判断を示す必要があったと思います。

法改正時の議論では、アルコールの場合についてではありますが、「正常な運転が困難な状態」とは、道路交通法の酒酔い運転罪がいう「正常な運転ができないおそれのある状態」では足りず、前方の注視が困難となったり、ハンドルやブレーキ等の操作を意図したとおりに行うことが困難になるなど、現実にこのような運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることが必要である、とされています。
アルコールの影響については、これまでに多くの研究が積み重ねられ、血中アルコール濃度に応じて運転能力にどんな影響が現れるか、また飲酒量と血中アルコール濃度の関係や、呼気検査の数値と血中アルコール濃度の関係についても、ある程度明確になっています。それでもなお、個々の事件では、個人差などが問題になっているのです。
いっぽう、脱法ハーブに含まれる薬物(本件ではMAM2201)については、その薬理作用の詳細については研究途上であり、人が摂取した場合にあらわれる具体的な影響や症状については不明な点が多々あります。このような不確かな状況で、はたして検察官はどの程度まで立証しうるのか、その立証は認定に十分なのか。私にとっては、この点が一番気になっていました。

ところが判決は、この点については争いがないとして、ほとんど触れなかったようです。いかに争いがないとはいえ、裁判の過程で、被告人が薬物の影響によって正常な運転が困難な状態に陥ったことが立証されたはずです。たしかに、踏み込んだ立証は困難でしょうが、資料がまったくないわけではなく、科学的知見を語ってくれる証人がいないわけではありません。犯罪を基礎づける核心部分として、どの程度の立証が必要なのかについて、何らかの判断を示してほしいところでした。

第二に、争点となっている認識(故意)について。
危険運転致死傷罪では、薬物の影響により正常運転困難状態にあることにつき被告人が認識を有していることが必要とされます。当然、事故当時の被告人の認識が問題となるはずで、これまでの裁判例でも、事故前の被告人の言動や運転状況などが子細に検討されています。しかし、今回の京都地裁での判決では、認定の根拠となったのはすべて、被告人が過去に脱法ハーブを吸引した際のことであり、問題になっている事故の前に脱法ハーブを吸引した状況や、その結果についてはほとんど検討されていないようです。
吸引後、目立った変化が観察されていなかったのか、あるいは唐突に変化が現れてそのまま事故が起きたのか、それさえ明らかではありません。
過去に脱法ハーブを何度も吸引して記憶を無くすなどの経験を繰り返していた被告人は、本件運転を開始した時点で、その直前に脱法ハーブを使用したことで、正常な運転が困難な状態になりうるという認識があったという認定ですが、うーん、これで被告人に認識があったと認定するのは無理ではないか、と考え込んでいます。

次回にもう少し続けます。

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