2012年版世界薬物報告書

世界麻薬撲滅デーの6月26日、国連薬物犯罪事務所(UNODC)はニューヨークで『2012年版世界薬物報告書2012 World Drug Report』を発表しました。
同報告書によれば、世界の薬物状況はおおむね安定傾向にあるものの、脱法ドラッグとして流通する新規薬物の増加や、処方薬の医療目的外乱用など、新たな問題も浮上し、依然として、薬物問題は世界の公衆衛生上の一大脅威であるとしています。
今年の報告書は、これまでの編集スタイルを一新したシンプルな構成になっているため、私にとってはいささか使い勝手が悪いのですが、とりあえず、関心のある部分から少しずつ紹介していきましょう。
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↑World Drug Report 2012

1、覚せい剤をめぐる世界の状況
メタンフェタミン(覚せい剤)の押収量が増加しています。世界全体での押収量は、2008年には22トン、2009年は31トン、2010年では45トンと急増しています。
世界のメタンフェタミン押収は、主に北米と東南アジアに集中しています。メキシコを含む北米地域は相変わらずメタンフェタミン大国で、2010年では、世界の押収量のおよそ半分に当たる22トンが押収されました。そういえば、今年2月にはメキシコで15トンという膨大なメタンフェタミンが押収されたという事件がありましたが、来年の集計では北米地域での押収量がさらに増加することになります。
もうひとつは東南アジアから東アジアにかけての地域で、2010年の押収量は約20トン。ただしこの量には、錠剤型メタンフェタミンも含まれており、2010年での錠剤型メタンフェタミン押収は約1億3600万錠に上ります。(pp.51-53)

東南アジア一帯は、メタンフェタミンの巨大消費市場であると同時に、密造地域でもあります。密造がとくに集中しているのは、中国、ミャンマー、フィリピンなどですが、このうちミャンマーとフィリピンでは押収量が減少、いっぽう中国では増加しました。

さて、近年、西アフリカや中近東といった地域が、メタンフェタミンの国際流通への関与を深めていることが注目されています。今年の報告書は、不法薬物の国際流通について、簡潔にまとめていますが、そこで日本の覚せい剤市場は次のように記載されています。
「収益性の高い日本の市場へのメタンフェタミン密輸は、伝統的な日本の暴力団組織であるヤクザによって行われている。数年来、メタンフェタミンの供給地は変化しているが、取引をする者は変化していない。メタンフェタミン取引での検挙者のおよそ半数は、ヤクザの構成員である。二次大戦後、メタンフェタミンは国内で製造されたが、1951年に禁止された。その後メタンフェタミン製造は韓国や台湾へ移転し、さらにフィリピンや中国本土へと移動した。近年では、イラン人犯罪組織がメタンフェタミン密売に加わるようになり、イスタンブール(トルコ)に拠点を置くヤクザの出先機関が、イラン・イスラム共和国の領土内で密造されたメタンフェタミンを日本に密輸し始めている。加えて、ナイジェリア人グループは、ナイジェリア国内でメタンフェタミンの密造を開始し、東南アジア・東アジアに向けて密輸し始めている。」(84ページ)

[参照]
①UNODC, 2012 World Drug Report ,June 2012
http://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/WDR-2012.html
②国連薬物犯罪事務所の報道発表(26 June 2012)
http://www.unodc.org/unodc/en/press/releases/2012/June/unodc-chief-calls-for-health-development-and-rights-based-approach-to-drug-problem.html

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