脱法ドラッグ対策|過去の経験を振り返る1

脱法ドラッグ販売業者の実態把握が、ようやく全国規模で行われるようになったようです。これまで報告のなかった地域でも、実態の把握が進んだ結果、全国29都道府県で389業者が脱法ドラッグを販売していることが明らかになりました。

<ニュースから>*****
●脱法ドラッグ販売、全国に拡大 29都道府県で389業者
「脱法ハーブ」など、麻薬に似た幻覚症状や興奮作用がある脱法ドラッグを店頭やインターネットなどで販売している業者数が3月末現在、29都道府県で389業者に上ることが14日、厚生労働省のまとめで分かった。厚労省は規制強化を検討している。
厚労省によると、3月末現在で業者数が最も多かったのは東京の94、次いで大阪73、愛知34、沖縄27、福岡21。
厚労省は3月、各都道府県からの報告を基に『1月18日現在で17都府県212業者』と明らかにしていたが、3月末現在で再報告を求めたところ大幅に増加。大都市圏にとどまらず各地に業者が広がっている実態が浮かび上がった。
2012/05/14 08:56 共同通信/47NEWS
http://www.47news.jp/news/2012/05/post_20120514085802.html
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● 日本は8年前に同じような事態を乗り越えてきた
現在の脱法ドラッグ市場は、日ごとに拡大の勢いを増しているように見えますが、日本社会は、いまはじめて脱法ドラッグ問題に直面しているわけではありません。今から8年ほど前の2005(平成17)年ころにも、同じように脱法ドラッグが広まり、大きな社会問題になったことがありました。当時の資料を改めて読み直すと、販売店の数やその分布などが現在の状況と似ており、また、健康被害例の報告が相次いでいたことも、現在の状況と重なります。
さて、かって日本の社会が直面していた脱法ドラッグ問題ですが、決してスムーズではなかったものの、多くの議論や試行錯誤を繰り返した末、私たちの社会はその問題をある程度解決することができたのです。2007年、現在の指定薬物制度が制定され、当時の脱法ドラッグ市場の人気商品がいっせいに規制対象に指定された後は、脱法ドラッグ販売業者がみるみる減少しました。
当時どんな対策がとられたのか、その足跡を振り返ってみることにしましょう。

2000年を過ぎたころから、脱法ドラッグの世界ではいわゆるケミカル系の新規薬物が次々と供給され始めていました。1990年代にアメリカの薬理学者アレクサンダー・シュルギンによって刊行された「PiHKAL」(愛しのフェネチルアミン)「TiHKAL」(愛しのトリプタミン)という2冊の本によって、合成薬物に対する一般の認識が大きく広がり、この2冊に掲載されたフェネチルアミン系(メチロン、2C-T-2、 2C-T-7、 2C-Iなど)とトリプタミン系(AMT、5-MeO-DIPTなど)の新規薬物が脱法ドラッグとして、続々と市場に登場していました。
しかも、折から本格的に普及し始めたインターネットの波に乗って、インターネット上にも大量の「合法ドラッグ」販売サイトが開設され、店舗販売とあいまって、脱法ドラッグ販売は急速に拡大し、死亡事故を含む多数の健康被害事例や、薬物使用に関連した殺人事件なども発生し、野放しになっている脱法ドラッグに対する取締りを求める声は、次第に高まっていました。

最初に対策に乗り出したのは東京都で、2005(平成17)年3月に「東京都薬物の濫用防止に関する条例」を制定し、知事指定薬物を指定すると同時に、販売業者に対する立ち入り調査などを強化して、問題の解決に向けて動き出したのです。
私の手元に、当時の資料が少しだけ残っていますが、それによると、条例制定前に都内で121 軒確認されていたいわゆる脱法ドラッグの取扱店舗が、監視指導体制を強化した結果、平成18 年9月末時点には37 軒になるなど、販売店舗は大きく減少したと報告されています[下記資料9ページ]。
同じ資料には、条例制定後に東京都が行った指導監視強化の内容が具体的に示されていますが、把握されていた販売店に対する立入調査を繰り返して行い、違反事業者に対しては警告書を交付し、また違反が悪質であれば警視庁による摘発も辞さずに取り組んだ軌跡を読み取ることができます。
[東京都の資料から]
2 指定後の一斉監視指導(4回実施)
ア 平成17 年6月:121 の対象店舗のうち80 店舗を立入調査
イ 平成17 年9月:60 の対象店舗のうち54 店舗を立入調査
ウ 平成18 年2月:55 の対象店舗のうち52 店舗を立入調査
エ 平成18 年9月:37 の対象店舗のうち35 店舗を立入調査
すべての立入店舗で知事指定薬物の取扱いはなかった。
3 都による警告例(2件)
平成17 年12 月、知事指定薬物の「5-MeO-MIPT」を含有する脱法ドラッグを販売していた都内の有限会社に対し、条例に基づき警告書を交付、当該品の販売中止、回収、廃棄を指示した。
また、平成18 年8月、知事指定薬物の「3CPP」を含有する脱法ドラッグを販売していた都内の株式会社に対し、条例に基づき警告書を交付、当該品の販売中止、回収、廃棄を指示した。
4 警視庁による摘発例(1件)
平成17 年11 月、警視庁は、知事指定薬物の「5-MeO-MIPT」を含有する脱法ドラッグを販売目的で所持していた都内在住の男性を逮捕した(50 万円の罰金刑が確定)
[下記資料34ページ]

【参照資料】
東京都薬事審議会編「東京都薬事審議会答申:東京都における今後の薬物乱用対策の推進について」2007(平成19)年12月

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この記事へのコメント

日鷲
2012年05月17日 23:22
合成カンナビノイドは、マリノール(合成カンナビノイド製剤)を使う患者の間でも評判が悪かった。曰く「きつい」「パラノイアになる」と言った類いが多く、天然大麻製剤サティベックスのようなものが開発されるようになった。つまり、大麻を使わず科学的に作ったものを使うが、それは大麻よりも有害性の高いものになってしまい、それでも合法的に大麻の真似事をしたい人たちが犠牲になった、ということですね。

「合法化して安全な大麻にスイッチさせるべき」という意見をよく聞きます。大麻が合法かされていたら、そんな合法ハーブのようなものに手を出す事も無いのでは、と。

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