誰でもわかる脱法ハーブ問題|Q&Aその2

「合法ハーブ」と称して販売されている脱法ドラッグについて、基本的なポイントに絞り込んで、できるだけわかりやすく、Q&Aとして整理したものを何回かに分けて掲載しています。
第2回目は、包括規制についてまとめます。

誰でもわかる脱法ハーブ問題Q&A その2
Q.7 次々に登場する新成分に対して、先手を打って規制する方法はないのですか?
A.7 その手法として、いま包括規制の導入が検討されているわけです。従来の(麻薬等取締法の麻薬指定、薬事法の指定薬物への指定などによる)薬物規制は、個々の薬物を指定して規制するものですが、包括規制とは、化学的構造の似た薬物をまとめて規制対象に指定するものです。
前述したように、いま脱法ドラッグ市場に登場する新ドラッグのほとんどは、既に規制されている物質と、化学的な基本構造は同一で、細部がほんの少し違うだけの、アナログ薬物です。そこで、一定の基本構造とそのアナログ薬物をまとめて指定することで、次々と類似薬物が登場するという現在の状況に対して、ある程度先手を打つことができることになります。
たとえば、これまで脱法ハーブに使われた成分のほとんどは、すでに発表されている合成カンナビノイドですが、その化学構造はわかっているので、あらかじめ規制することも可能で、英国では、これら合成カンナビノイドに対して包括規制を採用しています。英国では、すでに発表された多数の合成カンナビノイドを6種類の基本構造に分類し、それぞれのアナログも含めていっせいに規制するという方法が採用されました。

Q.8 では、包括指定を採用すれば、問題は一気に片付くのでしょうか?
A.8 仮に包括規制が導入されるとすれば、業者の側は、これまでのように、ある成分が規制されると、よく似た別な成分に切り替えて、すぐに代替商品を供給するという体制をとることが難しくなるでしょう。これまでの販売手法は、通用しにくくなると思います。
しかし、それだけですべてが解決すると、楽観的に見ることはできないでしょう。包括規制によって、新規薬物の登場をある程度抑えることは期待されますが、その効果がいつまでも持続するとは限りません。
実際、英国では、代表的な脱法ドラッグ群に対して包括規制を導入したのですが、それでも包括規制に含まれない新成分を使ったものが、市場に出回るという結果になっています。
仮に包括規制が導入されたとしても、これまでどおり、新規成分の登場を常に警戒して、市場の変化を監視する努力を怠ることはできません。
また、包括規制がされたからといって、それに沿った監視指導や取締りが実際に行われなければ、意味がありません。規制するだけでもそれなりの効果はあるでしょうが、その効果も、指導などが実際に行われなければ、やがて消えてしまうでしょう。

Q.9 包括規制には、マイナスの面もあるのでしょうか?
A.9 罰則を伴う規制は明確であることが要請されます。個々の薬物を規制したほうが、何が規制されているかがはっきりするので、外国でも、薬物規制については、個別規制が原則だと思います。
また、化学構造の似た薬物でもその効果は一律ではなく、なかにはほとんど無害なものや、多方面で活用されているものもあるので、個々の薬物の有用性などを検討したうえで、規制の適否を考えなくてはなりません。こうしたものを一括して規制対象とすれば、いろいろな不都合が出てくるかも知れません。
外国には、包括指定は、医学的研究を妨げる、と考えている専門家もいます。

Q.10 なぜ、業者は、こんなに次々に新規成分を投入することができるのですか?
A.10 脱法ドラッグを扱う販売業者のほとんどは零細な業者ですが、その背景には、世界規模で動いている脱法ドラッグの市場があります。たとえば、日本で脱法ハーブとして販売されている製品は、数年前にヨーロッパの脱法ドラッグ市場で広まったものが原型で、それがアメリカや日本にも波及しているのです。製品や、その原料となる化合物なども、地球規模の供給網で動いていると見られています。こうした国際的なネットワークの中で、法規制の対象となっていない、新しい成分が次々に配合されては、新商品として市場に出てくるのです。
しかも、人が摂取した場合に、何らかの精神作用が表れる可能性のある化合物は無数にあり、また、精神作用のある成分を含む植物も多数あります。まだまだ、出番を待っている成分はたくさんあることでしょう。

この記事へのコメント

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2012年02月19日 16:16
馬鹿馬鹿しい。
包括規制は、更に事態を混乱・悪化させるだけでしょうね。

英国ではアミノアルキルインドールと呼ばれる一連の化合物群のうち、ナフトイルインドール類の一部とフェニルアセチルインドール類の一部を包括規制しました。
ところが、中央部のメタノンにナフタレン環以外の環状構造が付くと、規制を逃れてしまいます。
これから、ベンゾイルインドール類(RCS-4やAM694など)が英国で広く出回りました。
また、インドール環の窒素原子に結合するアルキル基についても、その先端にモルホリン環以外の環状構造(ピペリジン環、シクロヘキサン環等)やハロゲンが結合すると規制対象外になってしまい、AM2201や1220(なお、これらはナフトイルインドール類です)などが出回っています。

英国の例、及び現在未規制の合成カンナビノイドの組成を鑑みるに、日本で包括規制を行うと、恐ろしく広範な化合物群を規制することになる可能性が極めて高いです。
では、セロトニン5-HT3受容体アンタゴニストとして過敏性腸症候群の治療に使用されているこの物質は、「アミノアルキルインドール類」に含まれるのでしょうか?
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%A2%E3%82%BB%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%B3
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2012年02月19日 16:17
しかも、世の中には既に、THCアナログや、(インドメタシン辺りを基にしたプラバドリンを洗練させる形で見出された)JWH-018をはじめとするアミノアルキルインドールとは若干/全く異なった構造を有する合成カンナビノイドが既に存在します。
また、素人考えではありますが、既存の合成カンナビノイド(特にAAIs)の環状構造などを改変する事で、比較的容易に規制を逃れることも可能なのではないでしょうか。その場合、ただでさえ疑われている発癌性などの特殊毒性が増大する事も考えられます。
つまり規制は人の命を守ることにつながらず、更に危険度の高い物質の乱用に人々を走らせ、科学研究の発達を妨げるに過ぎないと考えられます。
化学も医学も法律も存じない愚か者で申し訳ございませんが。

最後に、指定薬物如き、業者は何とも思っていないようです。
昨年9月までの検出品目一覧を見て、驚きました。
http://www.pref.kyoto.jp/yakujikaisei/resources/1321326678650.pdf
貴ブログで取り上げられたMDPVやPMMAといった危険性の高い化合物までもが、「脱法ハーブ」に含まれています。
阿呆鳥
2012年02月19日 21:22
法改正すればする程、危険な未知の物質が売られるようになるのだから、厚生労働省は逆に危険を増やしているだけのこと。命を救ってるというのは建前で、実は危険や社会的なマイナス面を増大させてるだけだよ。
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2012年02月22日 22:01
阿呆鳥様へ。

おっしゃるとおり危険性を増大させているだけなのですが、現在厚生労働省が検討しているのは、国民の代表たる国会における議論が必要な「法改正」ではなく、役人と御用学者だけで規制が可能な「省令改正」なのです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001592k-att/2r98520000015960.pdf
以上のような顔ぶれです。

そして、指定薬物部会では、候補物質が無数に記載されたJ.W.ハフマン教授やA.マクリヤニス教授の論文や特許文書を片手に、「これは現在流通してるよね、受容体結合能が高いよね、規制しましょう」ってやっているわけです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001r5ip.html

結果として規制後も流通は止まらず遂に死人が出たわけですが、中井川課長や佐藤企画官が何らかの処分を受けたという話はありません。
更に、科学研究を大幅に阻害し人命を守ることにも繋がらない包括規制を、国民のお伺い無しに進めるという暴挙に出ているわけです。

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