自国民が外国で死刑にされるとき、政府は・・・

薬物犯罪と死刑の話題を続けます。
2010年4月、中国で4人の日本人に対して死刑が執行されたときのことを、私は改めて思い出しています。このとき、日本もまた死刑存置国であるという事実が、日本人と日本政府の言動に重くのしかかって、自国民に対する死刑に正面から異議を申し立てることをためらわせました。またしても、日本人に対して執行猶予の付かない死刑が宣告された今、日本は、そして日本人は、どう考え、何を言えばよいのか、もう一度考えてみたいと思います。
折から、この12月上旬に、中国では、薬物犯罪で死刑が確定した外国人に対する執行が相次いで行われました。メディアで報道された、フィリピン人男性と南アフリカ人女性のケースをみておきましょう。その母国はどちらも死刑を廃止している国ですが、政府の対応にはいくらか温度差があったようです。ただし、こうしたケースでの政府による外交努力は、きわめて微妙なもので、報道記事だけでは断定できませんが。

<過去のニュースから>*****
●中国、比人に死刑執行 今年4人目、麻薬密輸
中国で麻薬密輸罪に問われ、死刑判決が確定したフィリピン人の男(35)の死刑が8日、執行された。フィリピン政府高官が明らかにした。
中国では今年3月、同じ罪で死刑判決が確定したフィリピン人3人の死刑が執行されている。
フィリピン外務省によると、男は2008年9月、マレーシアから空路で中国内にヘロイン約1・5キロを持ち込んだ罪に問われた。
フィリピン政府は減刑や執行の延期を求め、政府高官が訪中を計画したが、中国側に断られた。
フィリピン外務省によると、中国には、麻薬密輸罪などで執行猶予2年付きの死刑判決を受けたフィリピン人が約70人いる。(共同)
MSN産経ニュース 2011.12.8 17:45 [中国]
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111208/chn11120817480002-n1.htm
*****

●フィリピンでは「運び屋」の弱い立場が強調された
上記のニュースがフィリピンで報道されたとき、そのヘッドラインは「中国は、フィリピン人運び屋の死刑を執行」というものでした。薬物組織の密輸活動に巻き込まれた「運び屋」という立場にスポットが当てられていたのです。
実際、薬物密輸事件で裁判を受ける被告人の大多数は、薬物の運搬役や荷物の受け取り役など、密輸計画の全体像さえ知らされないまま部分的に関与した人たちです。世間に疎い高齢者や年少者、経済困窮者が、運び屋として薬物密輸に巻き込まれています。フィリピン外務省は、外国で働く自国民に、薬物犯罪組織に運び屋として利用されないよう、警戒を呼びかけていました。
フィリピンは2006年に死刑制度を廃止しています。国内には死刑制度の存否をめぐっていまだに議論が続いていますが、社会的な弱者である運び屋に対して死刑を科す中国のやりかたに、カトリック教会をはじめ国民の反対意見が強かったといいます。
フィリピンと中国の外交関係は、いま微妙なところにありますが、それでもフィリピン政府は、中国で死刑判決が確定した自国民を救うために、昨年来、さまざまな外交努力を続け、今回の執行を回避するために副大統領の派遣も予定していたとコメントしています(中国側が受け入れなかったそうですが)。また、昨年12月、フィリピンが劉暁波氏のノーベル平和賞受賞式に欠席した理由も、死刑確定者を救うための外交交渉の経過で、中国の姿勢に歩み寄ったためといわれています。
[参照]
The Manila Times>China to execute Pinoy drug mule(December 01, 2011)
http://www.manilatimes.net/index.php/news/top-stories/12328-china-to-execute-pinoy-drug-mule

●南アフリカでは政府の弱腰に批判が出ている
2011年12月12日、南アフリカ女性のジャニス(37歳)に対する死刑が、中国で執行されました。
ジャニスが逮捕されたのは2008年11月。中国広州の国際空港に到着した際に、スーツケースの中に、3キログラムのメタンフェタミン(覚せい剤)が発見されたのです。無罪を主張する彼女に対し、人権団体などが支援を続けてきました。
政府は、政府高官の動きも含め、できることはすべて実行したと発表していますが、その対応は十分とはいえないと、野党の批判を浴びています。野党側によれば、南ア政府は、経済関係が緊密な中国に対してとかく弱腰が目立つというのです。今秋、ダライラマ師が南ア訪問を予定していながら、ビザの発給遅れから訪問を果たせなかったのも、中国に迎合する政府の姿勢の現われだと、噂されているとか。
なお、南アフリカは1990年代に死刑を廃止していますが、近年の治安悪化から一部では死刑の復活を望む声も出ているといいます。
[参照]
BBCアフリカ>South African Janice Linden executed in China(12 December 2011)
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-16137327

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この記事へのコメント

隠者
2012年06月24日 20:27
現在の法の考えとは異なるとは思いますが、
法と罰って言うのは韓非子も強く解いていますよね
法が国の体系を作り、それを実行するための力が罰って…
だから韓非子の言い分からすれば法と罰は公平性に価値があり、そしてその罰は重い刑が大事って説いてますよね?
とすれば死刑というのは国の秩序を守る上で必要と思います
ただ残念なのは、江戸時代と異なり、現代では肉刑と言われてるのがせいぜい死刑位しかないんですよね
だから自殺志願者が死刑になるような犯罪を犯すような気もします
必要に応じて、市中引きずり回しの上撃ち首獄門とか、
かつてモンゴル帝国が捕虜に対して行った皮剥ぎの刑とか、
その他の刑罰も必要なのではないかってつくづく思います
人が1番嫌がる物は刑罰として最適と思います

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