画像入りの警告表示義務化に差止命令|米国のタバコ問題

「警告:タバコは生命を奪うことがある。」こんな警告文とともに胸に大きな手術痕のある男性死体の写真・・・。
米食品医薬品局(FDA)は、2009年に成立したタバコ規正法に基づいて、タバコのパッケージの半分以上に画像入りの警告表示を載せるようメーカーに義務付けよう準備作業を進めていましたが、このたび米連邦地裁は、これを差し止める仮処分決定をしました。

<ニュースから>*****
■ たばこパッケージの警告写真義務、裁判所が差止命令 米国
(CNN) たばこのパッケージに喫煙の危険性について警告する写真の掲載を義務付ける法律が米国憲法に違反するかどうかが問われている裁判で、米連邦地裁は7日、同法の施行差し止めを命じる仮処分を言い渡した。
写真掲載を義務付ける法律は米食品医薬品局(FDA)や米国議会が推進し、来年9月に施行される予定だった。これに対して、たばこ業界側が反発、提訴していた。
リチャード・レオン裁判官は決定の中で、言論の強要を禁じた米国憲法を引き合いに、パッケージへの写真掲載が義務付けられれば回復不可能な損害を被るというたばこ会社側の主張を支持。一方、施行差し止めによって政府や公衆がそれに匹敵するような損害を被ることはないと判断し、裁判所が同法の合憲性について判断を下すまでの間、現状維持を支持するとした。
たばこのパッケージに表示する候補として提案されていた36枚の写真の中には、のどに空けた穴からたばこの煙を吐き出す男性や、患者の肺と健康な肺を比較した写真、口にできたがんの病変部とみられる写真、胸から胴体にかけて縫い目がある男性の遺体の写真などが含まれていた。
レオン裁判官はこの写真について、中には感情に訴える目的でデジタル的に加工されたとみられるものもあり、政府側が主張するような「純粋な事実」を示すとは言い切れないと指摘した。
[ソース] CNN Japan (2011.11.08)
http://www.cnn.co.jp/usa/30004510.html
*****

●広告規制と表現の自由
2012年秋の実施を目指して、FDAが進めてきた、画像入り警告表示の義務化。米国のタバコ会社は、この措置に対して強く反発し、FDAの要請は合衆国憲法修正第1条などに違反するとして提訴し、FDA要請の仮差止を求めていたものです。この訴えを起こした原告は、全米2位から5位までの各社を含むタバコ製造会社5社。

ワシントンの連邦地裁でこの決定を言い渡したリチャードJ.レオン裁判官は、FDAが示したラベル案の画像は真実に基づくものとはいえず、タバコのパッケージを政府による露骨なタバコ反対キャンペーンの広告塔に利用しようとするものだと指摘しています。
FDAの措置は、タバコのパッケージの表2分の1を規格化された警告表示に当てることを義務付けるもので、つまりタバコ会社の表現に対する押し付けであり、だれでも自由にまた存分に自分の考えをあらわすことができるとする合衆国憲法修正第1条に違反すると、原告側は主張してきました。レオン裁判官の決定は、「純粋に真実であり、議論の余地のない情報」を含む情報を開示する際には、表現の自由を保障する合衆国憲法修正第1条の規定が「不当または過度な重荷」であるとして排除されうるが、はたしてFDAが表現案として提示した画像は「純粋に真実であり、議論の余地のない情報」に当るだろうかと疑問を投げかけ、次のように判示しています。
「残念ながら、ここでいう画像を掲載するという規定は、『純粋に真実であり、議論の余地のない情報の開示』には当らないと、提出された証拠は示唆している。提示された画像のなかには、漫画のようにみえるものや、デジタル処理が加えられたように見えるものがあり、『純粋な真実』の定義にそぐわないように思われる。これらの画像は、疑いなく、感情に訴えるためにデザインされ、ごく控えめにみても、FDAが感情的な反応に重点を置いて定めた基準によって選定されたものだといえる。さらに、これらの画像をみれば、タバコをやめる気になったり、吸わない気持ちになったりするという感情的な反応を引き起こすよう、これらが設計されていることは明らかであり、純粋に真実であり、議論の余地のない情報の提供とはかけはなれている[1]。」(私訳)

いっぽう、11月7日付のニューヨーク・タイムズは、この判決に対する関係者の多様な反応を紹介しています。煙害から子どもを守る活動を続けてきたある弁護士は、FDAにとって今回の決定は織り込み済みでありすぐにでも控訴するだろうという見通しを示し、また、米国内の複数の裁判所でほぼ同様の内容の訴訟が審理されていることも指摘しています。実際、ケンタッキー州の連邦裁判所では、上記の決定とは異なる判断が示されています。
なお、米国の最大手タバコ製造会社アルトリア・グループ(マルボロなどのブランドを展開するフィリップ・モリスの親会社)はこの訴訟に参加しておらず、大手タバコ会社のなかでは唯一、今回のFDAの措置を支持していると、この記事は伝えています。

[参照]
[1] 連邦地裁の決定書(November 7,2011 [Dkt. # 11])
https://ecf.dcd.uscourts.gov/cgi-bin/show_public_doc?2011cv1482-38
[2] NYタイムズの記事
■タバコ包装の画像入りラベルに、裁判所の差止めCourt Blocks Graphic Labels on Cigarette Packs(November 7, 2011)
http://www.nytimes.com/2011/11/08/health/policy/court-blocks-graphic-labels-on-cigarette-packs.html

[関連の過去記事]
■ タバコに画像入り警告表示|アメリカのニュースから(2011/06/22)
http://33765910.at.webry.info/201106/article_18.html

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