無承認薬のインターネット販売を考える1

バイアグラなどのED治療剤のニセモノが、インターネットを通じて広告され、販売されていることが、問題になっています。
このサイトで取り上げるのは精神作用物質、つまり覚せい剤や麻薬に類似した精神作用をもつ薬物で、ED治療薬はその範疇外ですが、日ごろから気になっていたインターネットを通じて外国から購入する医薬品の問題として、あえてこの話題を追ってみることにします。
ED治療薬に限らず、精神安定剤や睡眠剤なども同じようなルートで販売され、医師の処方せんが必要な医薬品の類似薬品なども、同じようにインターネットを通じて販売されているという現実があるのです。

<ニュースから>*****
●無承認医薬品:日本語の広告サイト61件 発信元は中国か
国内で無承認の医薬品を日本語で広告しているウェブサイトが中国に61件あるとして、警察庁は29日までに国際刑事警察機構(ICPO)を通じて中国当局に捜査協力を依頼した。販売されているのは規制量を超えた勃起不全治療の錠剤などで、国際郵便で日本の購入者に届けられているという。
ICPOの主導で世界81カ国の警察機関が9月20~27日に一斉に行った集中取り締まりの一環。法令違反が疑われる日本語の医薬品広告サイトはその他の国も含めて海外で計128件見つかったが、ほとんどは中国が発信元になっている可能性が高いという。
また、無承認の医薬品を広告する国内所在サイトは44件見つかり、薬事法に違反するとしてプロバイダー(接続業者)に削除を依頼した。同庁は「無承認の医薬品は健康被害を招く危険がある」と注意を呼びかけている。
毎日新聞 2011年9月29日 22時52分
毎日jp>http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110930k0000m040126000c.html
*****

●先進国ではED治療薬や精神科治療薬が問題になっているが
無承認医薬品には、正規商品をまねたコピー商品や、先行品の「ジェネリック」を名乗る特許侵害商品から、粗悪なまがいものまでが含まれていますが、とりあえず以下では、これらを総称してニセモノ医薬品と呼ぶことにします。
実はこの数年、ニセモノ医薬品の問題は、国際社会で大きな関心を呼んでいるのです。先進国では主にED治療薬や発毛促進薬などの生活改善薬が問題になっているため、あまり深刻さを感じないのですが、アジアやアフリカの新興国では生死にかかわるマラリアや感染症の治療薬でニセモノ医薬品が問題になっています。また、ニセモノ医薬品の流通には、国際犯罪組織が関与しているとも言われています。
2010年、国連薬物犯罪事務所が発表した『犯罪の国際化―国際的な組織犯罪アセスメントThe Globalization of Crime―A Transnational Organized Crime Threat Assessment』という分厚い資料のなかに、ニセモノ医薬品に関する項目があるので、これを参考に、ニセモノ医薬品の問題を考えてみたいと思います。

世界の医薬品の約90%を消費しているのは欧米や日本などの先進国で、残りの10%がアジア(日本を除く)、アフリカ、オセアニアで消費されています。
医薬品の大消費地である欧米市場も、もちろんニセ医薬品の標的になっています。2008年に、ヨーロッパ税関連合では3200件のニセ医薬品輸入を発見しましたが、900万点に及ぶニセ医薬品の半数以上はインドから仕出しされたもので、その多くはオンラインで購入されたバイアグラなどの「生活改善薬」と呼ばれるものでした。WHOは、先進国でのニセ医薬品は、総市場の1%未満とみていますが、その割合は増加中です。
いっぽうアフリカ、アジア、ラテンアメリカなどの発展途上国では、ニセ医薬品の割合がはるかに高く、総市場の10%から30%となっています。たとえば、ナイジェリアの581薬局から任意に抽出した医薬品を検査したところ、抗炎症薬の48%で有効成分の含有率が許容範囲外だったといいます。また2003年にアフリカの7か国で行った研究では、基準を満たしていないマラリア薬の割合が高いだけでなく、こうしたニセ医薬品が公立病院から地方の薬局までひろくいきわたっていることがわかりました(184~185ページ)。

さて、問題のニセモノ医薬品の源として、中国とインドがあげられます。両国とも、製薬業界の成長が著しく、その陰にかくれる形で、ニセモノ医薬品が生み出され、流通しています。
画像

↑ニセ医薬品の流れ
国連薬物犯罪事務所編『The Globalization of Crime―A Transnational Organized Crime Threat Assessment』183ページより転載

資料から、中国のニセモノ医薬品に関する部分を私の私訳で紹介します。
「中国では、医薬品製造の認可を受けていない化学会社がニセモノ医薬品の製造することが多いが、認可を受けた会社が正規品のかたわらニセモノ医薬品を製造する場合もある。2008年には、中国政府は363箇所のニセモノ薬品製造施設を閉鎖した(187ページ)。」
「中国の法廷で審理されたある事件は、中国に住むナイジェリア人ビジネスマンが、中国の医薬品輸出業者にニセモノのマラリア治療薬を注文したのがことの始まりだった。輸出業者は、製薬会社の従業員にコピーする医薬品の見本を渡して発注した。この従業員は、印刷会社の従業員に容器と外箱を外注した。この医薬品の原産地がタイであるという、偽の船積み書類が手配された。商品は、別の中国人グループによって、同じくニセモノの抗生物質抗とともに輸出される途中、ベルギーで押収された。このとき押収されたニセモノ医薬品は43トンだった。こうした貨物は、他の通常商品とともに、一般の運送会社を通じて輸送されることが多い。貨物の内容は、検査を回避するために、偽って申告される。ニセモノ医薬品の多くは、コンテナに積み込まれ、賄賂によって税関を通過し、中国から輸出される。
東南アジア向けの製品のなかには、香港まで高速艇で運ばれ、そこでコンテナ積みされ、出荷されるものもある。
インターネット販売に関連するものなど、少量のものは、国際宅配便で発送される。」

次回に続きます。

[出典]
国連薬物犯罪事務所編『The Globalization of Crime―A Transnational Organized Crime Threat Assessment』2010
http://www.unodc.org/documents/data-and-analysis/tocta/TOCTA_Report_2010_low_res.pdf

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 4

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック