多重受診と偽造処方せんで、デパス7万錠|偽造処方せん事件1

配達された読売新聞夕刊(首都圏版)に、偽造処方せん事件の記事の続報がありました。昨日の記事では偽造処方せんを使って、7万錠を超える処方薬を入手したと報道されていた事件、約400枚の処方せんのうち12枚がカラーコピーによる偽造とのこと。

<ニュースから>
●精神安定剤不正入手「偽造、見抜くのは困難」―薬剤師会 詐欺容疑で被害届提出へ
静岡市内の薬局に偽造された処方箋が提出され、精神安定剤が不正に処方されていた問題で、同市薬剤師会は2日、今月中にも県警に詐欺容疑で被害届を提出する方針を明らかにした。偽造の手口はカラーコピーという至って簡単なものだが、薬局関係者は「精巧で見抜くのは難しかった」と口をそろえる。
市薬剤師会などによると、処方箋に名前が書かれていたのは静岡市に住む40歳代の女性。2008年から約3年間にわたり、同市内の薬局約30軒で約400枚の処方箋が提出され、精神安定剤約7万錠が処方された。処方箋のうち12枚がカラーコピーだったという。カラーコピーを見た薬剤師の1人は「判子の部分も本当に押してあるように見える精巧なものだった」と話す。
県薬事課によると、女性は複数の医療機関で受診し、多数の処方箋を得ていたという。
静岡市内で2日、記者会見を開いた市薬剤師会は病院や薬局が、患者が複数の医療機関で受診する「多重受診」をして、大量の薬の処方を受けることを見抜く方法がないことに触れ、「法的には問題ないが、1人の患者に必要量の10倍の薬が処方されており、悪用されている可能性がある」と指摘した。
不正に処方されたのは、精神安定剤「エチゾラム」で、神経症による不安や抑うつ、睡眠障害などに効果があるという。(以下省略)
(2011年9月3日 読売新聞 夕刊)

●知名度の高いクスリが不正マーケットでブランド化している
上記の事件で不正入手の対象となったのはエチゾラム、デパスと呼んだほうがわかりやすいでしょうか。不正マーケットでよく広告されている薬品のひとつです。
たとえば、ある掲示板にはこんな販売広告が掲載されています。
★デパス1 1s2500円 5s12000円 
★デパス1(海外製)1s2000円  
★デパス0.5 1s1300円 5s6000円 10s11500円

デパス(エチゾラム)は、神経症やうつ病における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害から高血圧症、胃・十二指腸潰瘍などからくる肩こりなどにまで幅広く処方されています。同じエチゾラムを成分とするジェネリック薬品も多数販売されていますが、デパス(田辺三菱製薬)の知名度が圧倒的に高く、同社のデパスの年間国内販売高は2010年では115億円となっています。
向精神薬・処方薬の不正マーケットでは、こうした知名度の高い医薬品が人気商品として取引されています。かつてはリタリンがさかんに売買されていましたが、2007年にリタリンの流通が引き締められた後は、抗不安薬や睡眠薬が中心になっているようです。最近目につくのは、ロヒプノール(フルニトラゼパム)、ハルシオン(トリアゾラム)、 エリミン(ニメタゼパム)などで、不正マーケットではあたかもブランド品のように扱われています。また、デパス(エチゾラム)やマイスリー(ゾルピデム)など、広く使われ知名度の高い薬品も、人気があるようです。
画像

↑「向精神薬事犯の検挙人員と押収量の推移」厚生労働省の資料から

●偽造処方せんの実態
こうした薬品が不正マーケットに供給されるルートのひとつに、偽造処方せんによる不正入手があります。小型カラープリンターやコンピュータの画像処理技術が普及したことで、偽造処方せんはどんどん巧妙になり、本物と見分けがつきにくいものが薬局に持ち込まれた例もあり、偽造が発覚しないまま薬品が処方されているケースもあると思われます。
東京都福祉保健局によると、都内では平成18年に35件 、平成19年に28件の偽造・変造処方せんによる向精神薬の詐取事件が発生したといいます。件数は薬局等からの届出があったもので、未遂は含みません。(東京都福祉保健局>違法です!偽造処方せん・平成18年6月29日更新)

そもそも、カラーコピー等による偽造処方せん問題は、2006年ころリタリン乱用が社会問題化し、その流通管理が厳しくなるなかで、全国の薬局で改ざん・偽造された処方せんでリタリンを入手しようとするケースが相次ぎ、クローズアップされたものです。厚生労働省は2007年9月、薬局における処方せん確認の徹底を求める通知を発しましたが、同時に発布された連絡文書では、カラーコピーなどによる偽造処方せん防止のための留意点を具体的に示し、処方せんの精査を強く要請しています。
その後、リタリン問題の収束とともに、向精神薬の不正入手は減少傾向にありますが、依然として偽造処方せんによる処方薬の不正入手事件は繰り返されており、日本薬剤師会は2010年3月に、偽造処方せん対策マニュアルを策定し、薬局での対応強化に取り組んでいるとききます(下記参考資料①)。

厚生労働省の資料は次のように報告しています。
向精神薬のその他の事故(詐取)
近年、偽造処方箋による向精神薬の詐取が目立ってきており、同一犯が複数の薬局から詐取する場合も少なくない。なお、平成20年に向精神薬の詐取として報告があったものは25件であった。
偽造処方箋の多くは、カラーコピー、パソコン等により偽造されたものが多く、被害品目は塩酸メチルフェニデートやトリアゾラムを含むものが多い。なお、詐取した向精神薬をインターネットで密売している事案もあることから、今後も十分に警戒を要する。(厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課編「麻薬・覚せい剤行政の概況(2009年12月)」67ページ)

[参考資料]
①日本薬剤師会編「薬剤師会・薬局のための偽造処方せん対策マニュアル」平成22年3月
http://www.nichiyaku.or.jp/contents/kaiken/pdf/100331_3.pdf
②東京都福祉保健局健康安全部薬務課編「向精神薬取扱いの手引(薬局用)」平成22年2月改訂
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/iyaku/sonota/toriatsukai/tebiki/kou_tebiki/

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この記事へのコメント

BLOGOSから来た人
2011年09月04日 13:13
もしよろしかったら、こちらの一件の考察などお願いします。

製薬会社の女子社員、不正入手した薬物「ハルシオン」を飲み会で使っているとTwitterで自慢
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1660724.html
不安でいっぱい
2013年08月17日 22:09
この記事の知り、びっくりしました。最近、92歳になる祖母が亡くなったのですが、遺品から叔母が処方を受けたデパス錠が出てきて、叔母が祖母に与えていたようで何ヶ月間も服用していたようです。くも膜下出血の死因とは直接の原因ではないとの検死結果でしたが、徘徊等の副作用がかなり出ていただろうとおしゃっておりました。考えてみると、昼間ぐったりしていることが多く、夜も徘徊していたのが思い出されました。
不正処方の記事とはあまり関係ありませんが、不正処方の申請をしたほうがよいでしょうか?
先日、なぜ鬱病の薬の処方を受けたのか、問いただしても答えてもらえず、叔父に確認しても鬱病ではないといいます。もしかしたら、転売をもくろみ処方してもたのではと思い不安になっています。
どうしたら、よいでしょうか?

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  • 09/07のツイートまとめ(向精神薬違法入手)

    Excerpt: mental_clinic 残念ながら「今更」感はありますね。批判を受けるリスクを承知の上で申し上げると、不自然さを感じても精神科の患者さんに問い質すのは抵抗がある、という薬剤師さんの側の心理が働いた.. Weblog: メンタルクリニック@ツイッター racked: 2011-09-09 16:10