阿片からヘロインへ|芥子と阿片3

中国の阿片問題は、その後、日本の侵攻とともにますます深刻さを増していきますが、それについては別な機会に改めてまとめることにして、話を先に進めましょう。
第二次大戦後、かつて阿片禍に苦しんだ中国や東南アジアでは、阿片の乱用はほとんどみられなくなり、中国の阿片喫煙にまつわる文物も、今では過去の遺産となりました。阿片を薬物として摂取する習慣は、現在では少数派になっており、地域としてはイラン、アフガニスタン、パキスタン、インド、およびロシア連邦の一部に集中しています。前述したように、わが国では乱用目的で阿片が流通することはほとんどなく、ごくまれに、阿片が押収されるのは、たいてい、中東地域出身の外国人が自分で使うために所持したり、密輸したケースに限られます。

では、世界の阿片問題は、すでに解決したのかというと、とんでもない。阿片をめぐる不正取引はますます拡大し、2008年では世界の不法阿片の生産高は年間650億ドル(約5.2兆円)に達しています。5.2兆円といえば、日本の国防費の年間予算と同じくらい、途上国のなかには1年分の国家予算がこのくらいの国もあります。生産量でいうと、2009年の世界の不法阿片の生産量は7,754トンと推計されています。ちなみに、その89%に当る6,900トンがアフガニスタンで生産されています。

さて、この大量の阿片がどこで消費されているかというと、そのうち550億ドル(約4.4兆円)分はヘロインに加工されて、世界の薬物マーケットに流れているのです。ヘロイン消費が多いのはヨーロッパとロシアですが、中国でも乱用される薬物の第1位はヘロインなのです。
実は、中国のヘロイン禍を広げる下地を準備したのは、少なくとも東北地域に関しては、日本人だったのかもしれません。昭和18年の在北京日本大使館員による報告書によると、中国華北地域では、ヘロインなどの麻薬の密造、密売が横行し、ヘロインの不正注射をする乱用者が20万人内外いたといい、また北京市内では1日に100人以上が路傍で変死しており、そのほとんどが麻薬乱用者だとしています。そして、華北で麻薬の密造を始めたのは、そもそも日本人が最初だったとも述べているのです(渡辺寅三郎「華北に於ける麻薬秘密社会の実体」岡田芳政ほか編『続・現代史資料12 阿片問題』415~462頁、みすず書房、1986)。

阿片は古くから使われてきましたが、17世紀ころに喫煙によって阿片乱用問題が深刻化し、やがて阿片戦争に象徴される大きな社会問題となりました。さらに、20世紀に生み出されたヘロインの注射使用が広まったことで、乱用は一気に世界へ拡大し、ますます大きな弊害をもたらすようになっているのです。
阿片やヘロインは、日本人にとってはあまりなじみのない薬物ですが、でも、近代の歴史のなかで、日本あるいは日本人がこの問題に関与した痕跡は、はっきり残っているようです。

[参考文献]
①国連薬物犯罪事務所『2010年版世界薬物報告書World Drug Report 2010』
http://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/WDR-2010.html

[ヘロインに関する過去記事]
●羽田でヘロイン密輸入事犯を摘発|そこでヘロインについて
http://33765910.at.webry.info/201105/article_13.html

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