薬物使用者と生活保護

不況のなかで生活保護の受給者が急激に増加し、2008年度の保護費の支給総額は約2兆7000億円にのぼり、国や自治体の財政負担が増しているとか。生活保護の見直しが議論される中で、薬物犯罪で逮捕される人たちへの支給が槍玉にあげられています。

<ニュースから>
●薬物事件:昨年の容疑者、3割が生活保護受給--あいりん地区 /大阪
府警薬物対策課と西成署は19日、大阪・西成の「あいりん地区」で進めている薬物特別取り締まりで、昨年1年間に覚せい剤取締法違反などの疑いで493人を逮捕したと発表した。うち約3割が生活保護受給者であることも分かり、公金が違法薬物の購入にあてられている実態が浮かび上がった。
(略)また、生活保護の不正受給が社会問題化していることを受け、今回初めて、逮捕者の受給状況を調査した。その結果、大阪市などから受給していたのは145人で、全体の29・4%に上った。
府警は「薬物はあらゆる犯罪の温床で、暴力団の資金源にもなる。今後も取り締まりを徹底する」と強調。大阪市は「3割という数字は多いが、逮捕されたことだけで生活保護は廃止できない。ケースワーカーを通じ、地道に生活指導を徹底するしかない」としている。
毎日新聞>地方版>大阪 2011年1月20日(記事の抜粋)
http://mainichi.jp/area/osaka/news/20110120ddlk27040335000c.html

たしかに、薬物事件の被告人には、生活保護受給者が多いことは、私も日ごろから痛感しています。でもそれは、薬物事件に限ったことではありません。根拠のある統計に出会った記憶はありませんが、刑事事件全般にかかわる人たちのなかに、かなりの割合で生活保護の受給者がいることを感じています。
急増する保護費に歯止めをかけるために、厚生労働省は生活保護法の改正を検討しているとか。支給対象者の見直しに際して、世間のコンセンサスを得るための「目玉」として、犯罪者への支給がクローズアップされることになるでしょう。「生活保護費で薬物を買うとはけしからん!」こんな声が聞こえてきそうです。

でも、ちょっと待ってください。薬物事件の逮捕者に生活保護の受給者が集中しているのは、当然といえば当然なのです。覚せい剤事件の逮捕者の過半数は、犯罪歴のある人で占められており、服役を繰り返して職につけない人も含まれています。しかも逮捕者の過半数は暴力団関係者です。
問題は、この人たちに再犯防止対策を講じないまま、生活保護を給付するだけで済ませてきたことなのです。この人たちが薬物や暴力団と縁を切り、人生を出直す支援をしない限り、この悪循環は断ち切れません。いま必要なのは、生活保護の制限ではなく、生活保護と再犯防止対策を一体化した支援策ではないでしょうか。

そういえば、財政難に直面している英国で、昨年、薬物トリートメントを受けない依存者に対する、福祉給付の減額が検討されているというニュースがありました。薬物依存者対策と福祉給付の支給をさらに有機的にリンクさせようという提案でしたが、こんな懲罰的な給付条件は、依存者を犯罪に追いやるだけだと批判され、政府はこの案を撤回したといいます。一体化も、ほどほどがいいですね。
[参照・過去記事]
■薬物依存者に対する福祉給付の見直し?|英国のニュースから
http://33765910.at.webry.info/201008/article_25.html

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