最も危険なドラッグはアルコール|英国の研究から

アメリカの中間選挙の陰で、先週、報道されていた地味なニュースが気になっていました。
英国のナット教授がランセット誌に発表した新しい論文によると、アルコール・薬物の害を科学的に評価して格付けしたところ、ヘロインやコカインをしのいで、最も有害なドラッグはアルコールという結果が示されたということです。
週末に、ランセット誌の論文になんとか目を通すことができました。ざっと読んだ程度ですが、とりあえず、私が理解した範囲でおおまかに紹介しておきます。
[出典]
David J Nutt, Leslie A King, Lawrence D Phillips. Drug harms in the UK: a multicriteria decision analysis. The Lancet, 2010; DOI: 10.1016/S0140-6736(10)61462-6
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(10)61462-6/abstract
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●アルコール・薬物の害を科学的に比較する
アルコールやタバコを含む精神作用物質(ドラッグ)は、使用者本人と、社会に対して害をもたらすため、その薬物のもたらす害の大きさに応じて、規制策が講じられています。薬物を規制する政策の策定、運用に当たっては、各物質のもたらす害を科学的に評価することが必要不可欠ですが、害の範囲が広範なため、客観的な評価は難しいといわれてきました。
ナット教授らのチームは、以前からこの問題に取り組んでおり、判断基準の項目や数値化する際のウエィト付けなどの改良を重ねてきたといいます。このたび発表されたのは、代表的な20種のアルコール・薬物のもたらす害を16項目の判断基準によって評価し、数値化したものです。

・使用者本人に及ぼす害
このシステムでは、薬物のもたらす多様な害を、[使用者本人に及ぼす害][社会に及ぼす害]の両面から評価しています。16項目の評価基準のうち9項目は、薬物が使用者本人にもたらす害を評価するもので、薬物特有の死亡率、薬物関連の死亡率、疾病によるダメージ、依存性の強さ、精神機能の損傷などです。
使用者本人のもたらす害が大きかった薬物は、ヘロイン、クラック・コカイン、メタンフェタミンなど。

・社会に及ぼす害
評価基準のうち7項目は、薬物が社会にもたらす害に関するもので、犯罪、薬物の製造・使用による環境破壊、家族内の対立、治療や取締りなどの経済的負担などがあげられています。
社会にもたらす害のスコアが高いのはアルコール、ヘロイン、クラック・コカインでした。

・総合的なスコアは
各薬物のもたらす総合的な害の大きさを数値化したものが、下のグラフです。
害のスコアが最も高かったのはアルコールで、総合スコアは72点。一般に害の大きい薬物といわれてきたヘロインは55点、メタンフェタミン(覚せい剤)は33点。
画像

↑The Lancet>Drug harms in the UK: a multicriteria decision analysis
クリックでグラフが拡大します

なぜアルコールが第1位なのでしょうか。この点について、BBCニュースのインタヴューで、ナット教授は「クラック・コカインは依存性がきわめて強いが、アルコールは広く使用されていることで、総合的に見て、最も危険度が高い。」といいます。[使用者本人に及ぼす害]と[社会に及ぼす害]を分離することが重要だということです。
教授は、国の薬物規制政策は、こうした科学的な評価に基づいて行われるべきだと語っています。
[参照]BBC>Alcohol 'more harmful than heroin' says Prof David Nutt(1 November 2010)
http://www.bbc.co.uk/news/uk-11660210

この記事へのコメント

太郎
2010年11月08日 03:09
酒は本当に怖いですね。 
私も一時期アル中でしたが抜け出すのに苦労しました。
トーリス・ガリ
2010年12月21日 01:06
酒の害はそれだけじゃないですよ。
日本も含め世界中で何億人が餓死ラインに達しているか知らないですが、世界中でどれだけの農産物がアルコールにされているかが問題です。
普通に食べるだけの米を作るのも酒専用の米を作るのもコストがほとんど変わらないと仮定して…現在アルコール依存症とその予備軍が完全に酒を飲まなくなれば、少なくとも日本人全員の生命維持に必要なカロリーと栄養素を国内だけで供給するのも不可能ではないんじゃないですか?
次郎
2012年09月16日 07:03
酒で身を滅ぼした著名人がこれほど多いのに酒造メーカーは相も変わらず自己責任として酒造を続けます。

社交の場において潤滑油になるのはよくわかります。
ただですね、深酒して頭の冴えない状態で仕事がはかどりまっか?これが労働生産性の低下として年一兆円以上の
損失として試算されているのです。
政府はGDPを上げたければ労働者の業務前日禁酒を
命ずるべきなのです。

飲酒運転にせよ、社会的に抹殺される事が分かっていながら
なおも「やっちゃう」人がいるのは彼らが依存症だからです。
分かっちゃいるがやめられない。
だから酒は薬物なんです。
どうしてもいい気分になるから依存してしまう人も
出てきてしまうんです。本当に酒は怖い薬物です。

「酒なんてこの世からなくなってしまえばいいのに」

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