中国が前駆物質のオンライン取引規制を強化

<中国発のニュースから>
●中国は薬物の前駆物質となる化合物のオンライン取引に対する規制を強化(2010年9月27日)
中国政府の公安部など5部門は、麻薬類の前駆物質のオンライン取引に対する規制強化策を公布した。
麻薬製造に使われる前駆物質に関してオンライン上に情報を掲載するのは、これら前駆物質の製造、販売の許可を受けた企業に限られ、他の者がオンライン上で取引することは禁止される。さらに、エフェドリンやリゼルギン酸などとくに厳格に規制される4物質に関しては、企業個人ともに、オンライン取引は一切認められない。
「eコマースの急成長の裏で、薬物犯罪組織はインターネットの匿名性を利用した取引をしており、近年では、麻薬前駆物質の取引の主要チャネルになっている」と語るのは公安部のチャン副大臣。チャン氏によると、麻薬前駆物質は、工業原料や農業資材として利用されるが、悪用されると、危険な麻薬の原料になる。たとえばケタミンの合成に使われる前駆物質ヒドロキシルアミンの場合、中国本土でこれを製造する許可を得ているのは1工場だけで、しかもこの工場は現在操業していないのだが、中国のインターネットで検索すると20万件以上のヒットがあるという。中国の警察は、2006年から2009年の間に、前駆物質の不法取引を1,554摘発し、3,814トンを押収した(記事の概要・私訳)。
[出典]人民網英語版>China tightens restrictions on online transactions of drug precursor chemicals
http://english.people.com.cn/90001/90782/90872/7152321.html

覚せい剤などのATSをはじめ、多種多様な合成麻薬が出回っている現在、薬物合成に使われる前駆物質のコントロールはますます重要課題になってきています。
前駆物質とは、合成麻薬の主原料となる化学物質で、覚せい剤の合成に使われるエフェドリンやプソイドエフェドリン、ケタミンの製造に使われるヒドロキシルアミン、MDMAの原料となるサフロールなどをさします。前駆物質は本来、さまざまな分野で産業用に活用されています。たとえば覚せい剤の原料となるエフェドリンは一般的な風邪薬に配合され、またプソイドエフェドリンは鼻炎薬に使われています。こうした用途に供給を確保しながら、しかもこれが転用されて麻薬合成に使われることのないよう、製造、輸入、流通の過程を管理しなくてはならないのです。
こうした前駆物質に対しては、国連ベースで国際的な流通コントロールが行われていますが、これまで中国、インド、南米諸国など国内での取締りが徹底していない諸国が、前駆物質の国際的な不正流通を助長しているといわれてきました。

さらに、インターネット取引の拡大が、こうした流れを加速化しています。Eコマースなどという新語を隠れ蓑にして、ほとんど素性のわからない売り手と買い手の間で、大量の取引が成立してしまうのです。私がかかわったある事件では、実績も経験もない素人の青年が外国にペーパーカンパニーを設け、インターネット取引を駆使して、中国やパキスタンからサプリメントや医薬品を買い入れていたのですが、その中には相当量の覚せい剤原料も含まれていました。一昔前なら信じられないようなことが、インターネット取引では実際にできてしまうのです。

たしかに、中国は前駆物質の不正取引に関しては、芳しくない評判が定着していました。たとえば、欧米の薬物マーケットに新しいタイプの合成薬薬物が登場すると、その原産地は中国かインドだろうと噂されるのです。「インターネットで検索して、中国の化学会社に注文すれば、いくらでも新しい薬物を売り出すことができる。」といった批判も絶えません。
中国政府は、この状況に対して、いよいよ対応策をとり始めたようです。今年3月には、「薬品類有毒化学品前駆物質管理弁法」が公布され、前駆物質などの生産、経営、販売購入に対する監督管理が強化されています。今回は、これを補足して、インターネット取引の規制を強化したものでしょうか。
とはいえ、9月29日現在、相変わらずインターネット上には、前駆物質の供給者として、中国の会社らしい名前がぞろぞろ並んでいますが、間もなく、この状況にも変化が生じることになるでしょう。

ちなみに、わが国では、前駆物質に対しては、覚せいや麻薬に準じて厳格な管理が行われています。覚せい剤の合成原料となる物質は、「覚せい剤原料」に指定されて、覚せい剤取締法で規制されています。また合成麻薬の原料となる主な前駆物質は、麻薬及び向精神薬取締法で「麻薬向精神原料」に指定されて、規制対象となっています。それでも、2009年8月には麻薬向精神薬原料に指定されている無水酢酸の無許可輸出事件が起きるなど、まだまだ管理しきれない現実があることを忘れてはいけません。

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