向精神薬転売事件が一段落|向精神薬問題を考える16

生活保護受給者から向精神薬を入手し、インターネットなどで密売していた事件が、横浜地裁で審理されていましたが、今月10日に実刑判決が言い渡された1名に続き、今日、もうひとりの被告人に対する有罪判決が言い渡され、一応の決着となりました。
<判決のニュース>
●生活保護受給者から向精神薬入手 不正転売の被告に実刑判決(2010年9月10日)
生活保護制度を悪用した向精神薬の転売事件で、麻薬取締法違反(営利目的譲渡、所持)などの罪に問われた神奈川県横須賀市の無職、O被告(42)に、横浜地裁は9日、懲役3年6月、罰金100万円(求刑懲役6年、罰金150万円)の判決を言い渡した。
小池勝雅裁判長は判決理由で、医薬品を無償で入手できる生活保護受給者や密売人らから多くの種類の向精神薬を仕入れ、インターネットや宅配便などを利用して密売していたとして「職業的な犯行」と指摘。「規制薬物の害悪を社会に拡散し、薬物乱用を助長して悪質だ」と述べた。
判決によると、O被告は1月、販売する目的で向精神薬約1500錠を所持するなどした。
神奈川県警によると、転売された薬には大阪市のあいりん地区などの生活保護受給者が病気を装って医師から処方された薬も含まれていた(被告人名を省略)。
MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/100910/trl1009100031001-n1.htm

●向精神薬転売の男に有罪=生活保護受給者使い入手―横浜地裁(2010年9月27日)
生活保護受給者を使った向精神薬などの不正転売事件で、麻薬取締法違反などの罪に問われた無職K被告(54)=大阪市港区=の判決が27日、横浜地裁であった。大寄久裁判官は懲役3年、執行猶予5年、罰金70万円(求刑懲役3年6月、罰金50万円)を言い渡した。
大寄裁判官は「向精神薬を生活保護者から仕入れていた」と認定。被告自身も無職の生活保護者で、転売収益で生活していたとし、「職業的な犯行で悪質」と批判した。
判決によると、K被告は4月、自宅で向精神薬アルプラゾラムなど17種類、約2000錠を営利譲渡目的で所持するなどした。
K被告から向精神薬などを譲り受けた無職O被告(42)は、同法違反などの罪で懲役3年6月、罰金100万円の実刑判決を言い渡されている(被告人名を省略)。 
時事通信 9月27日(月)11時43分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100927-00000041-jij-soci

<向精神薬転売事件のおさらい>
●最初の報道
2010年4月、「向精神薬、生活保護者に入手させネット転売」といったニュースが主要メディアで報じられました。神奈川県警が、覚せい剤事件で逮捕した被告人の周辺から大量の向精神薬が押収されたことから捜査を開始したもの。生活保護受給者らに病気を装って向精神薬を入手させ、インターネットなどを使って転売したとして、2人の被告人が起訴されました。
●実態調査
主な問題は、生活保護制度の悪用でした。生活保護受給者は、国民健康保険の被保険者から除外されているため、その医療費はほとんどの場合医療扶助でまかなわれています。つまり、生活保護受給者は自己負担なしで診療を受け、処方された医薬品を入手することができるわけです。医療扶助は生活保護費全体の約半分を占めています。
4月27日、厚労省社会・援護局保護課は、生活保護制度を悪用した向精神薬等の入手について、レセプトによる緊急調査を行うと発表しました(4月27日通知「生活保護法による医療扶助の診療報酬明細書等の点検の徹底及び緊急調査について」)。
3ヵ月後に緊急サンプル調査の一次調査結果が、9月3日には二次調査結果が発表されましたが、2010年1月中に精神科に通院した生活保護受給者42,197人のうち、不適切な重複受診が認められたのは1,797人という結果でした。
[出典]厚生労働省>報道発表資料>向精神薬大量入手事案を受けた生活保護の緊急サンプル調査結果 (二次調査)について(平成22年9月3日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000orgt.html

<この事件を通じて明らかになったこと>
●ドクターショッピングの一端
上記の厚労省による緊急調査は、患者が複数の医療機関で診療を受け、重複して向精神薬の処方を受ける、いわゆるドクターショッピングの実態に一端を明らかにしました。
調査では、精神科に受診した患者の4.3%が、重複受診によって不適切な向精神薬の処方を受けていました。この調査は生活保護受給者だけを対象としたもので、また精神科受診者に限定しています。向精神薬を処方するのは精神科に限らないことを考慮すれば、他の診療科での重複も加えると、さらに大きな数字になるかもしれません。

●向精神薬不正流通の一端
この事件を通じて、向精神薬が不正市場に流出するメカニズムの一端も明らかになりました。
これまでの報道によれば、被告人Kは暴力団関係者数人を介し、あいりん地区の生活保護受給者数十人と接触。数人のグループに分けて受診日を決め、病気を偽って向精神薬の処方を受けていたといいます。受給者からKが向精神薬を買い取る価格は10錠200円ほどだったとか。
薬物密売の世界で「薬局」「クスリ屋」などと呼ばれる人たちがいます。向精神薬を中心に扱うブローカーで、さまざまな手段で向精神薬を買い集め、自ら密売するほか、密売人仲間に販売しているといわれます。多くは、K被告人のような零細なウラ稼業を営んでいるようで、暴力団関係者の介在も取りざたされますが、実態はよくわかりません。
被告人Oは、ブローカーから向精神薬を仕入れて、インターネットなどを利用して密売していたと伝えられています。薬物をテーマにした掲示板などに書き込んで顧客を募り、宅配便などを使って各地に送る手法で、これも多くは零細な密売人です。
いわゆるウラ掲示板や携帯サイトなどが、顧客開拓の場になっているといい、覚せい剤や麻薬も、こうしたメディアを利用して取引されることがあります。密売の実態に関しては、麻薬や覚せい剤と向精神薬には、あまり大きな違いはないようです。

●重複処方はレセプトで防止できる
前記の厚労省緊急調査をみて、目からウロコの思いをした点があります。長い間話題になり、懸念されている向精神薬の重複処方の問題は、レセプトの検査で防止できるではありませんか。今回は、緊急調査ということで、多大なマンパワーを投入したことでしょう。しかし、これをコンピュータ処理することはそう困難ではないでしょう。やる気になれば監視システムは作れるのだと、今回の事件を通じて気づかされました。
私には、レセプトの仕組みはさっぱりわかりません。専門知識をお持ちの方が、この問題に取り組んでくださることに期待しています。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 3

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック