医療用大麻に不協和音|2010カリフォルニア大麻論争4

今年1月、ニュージャージー州は医療用大麻法案を可決し、アメリカ合衆国では14番目の医療用大麻を容認する州が誕生しました。
ニュージャージー州の医療用大麻法令は、医療用大麻の処方を受けることのできる患者をがんや多発性硬化症など特定疾患や末期患者などに制限するなど、医療用途の枠組みを厳格に定め、また様々な安全策を講じるなど、独自の管理策を盛り込んでいると評価されています。
ところが、同州では、州内で唯一の認可機関として、医療用大麻の栽培と供給に当るよう要請を受けていたラトガース大学が、州の要請を拒絶したというニュースが伝えられました。ニューヨーク・タイムズの記事からその大意を紹介します。

<ニュースから>
● ニュージャージーの医療用大麻法は、大麻栽培と供給の機関を失った
ニュージャージー州では、州の認可を受けて医療用大麻を栽培し、患者に供給する唯一の機関をラトガース大学に設ける計画を進めてきたが、同大学は、連邦政府の助成金を失うおそれがあるとして、州からの要請を辞退すると決定した。
医療用大麻に関しては、州と連邦の見解が一致していない。オバマ大統領は、医療用大麻法令を整備している州では、大麻供給所の摘発を見合わせるとしているが、DEAは依然として研究目的の大麻栽培許可に対しても慎重姿勢をとっている。
ラトガース大学関係者は、連邦政府から受けている研究助成金や契約、学生への学費援助などを危険にさらすわけにいかないと語っている。
州当局は、ラトガース大学以外の選択肢も検討しているというが、州知事は大学の回答に怒りを表しているという(記事の大意)。
[出典]
New York Times>New Jersey’s Medical Marijuana Law Loses Planned Grower and Dispensers(ニューヨーク・タイムズ2010年7月23日)
http://www.nytimes.com/2010/07/24/nyregion/24marijuana.html

医療用大麻をめぐっては、州と連邦との間に、長年にわたる確執が展開されてきました。
大麻は、連邦の物質規正法Controlled Substances Act(CSA)のスケジュール1物質に指定されていますが、現在14州では、医療用途での大麻の処方や使用を容認する州法を制定しています。大麻に対する連邦法と、州法との差異が、これまで、多くの混乱や対立を引き起こしてきたのです。

州レベルで、医療用途での大麻使用を容認する流れには、1970年代後半からの第1波と、1996年から今日に至る第2波があったといいます。第1波は、連邦政府が大麻をCSAのスケジュール1に指定して厳しく管理し始めたことに対応したもので、連邦政府の大麻に対する姿勢は一時的なものだろうという予測の下で、医師による大麻処方を可能にする州法を成立させた州が現れました。
第2波は、1996年にカリフォルニア州、アリゾナ州が、医療用途での大麻使用を可能にする州法を成立させたときに始まりました(アンドリュース大学、ランド社ほか編『不法薬物政策:50州の法令集Illicit Drug Policies:Selected Laws from the 50 States』11頁、impacTEEN,2002)。
連邦政府と州の対立を象徴するものとして、第1波の時期には、大麻を処方する医師の免許をめぐる争いがあげられます。州法に基づいて大麻を処方する医師に対して、医師の処方資格を認可する連邦政府は、免許の取り消しという対抗策に出たといわれます。第2波では、州法において明確に規定されていない医療用大麻供給所に対して、連邦政府の摘発が続きました。
2009年10月、オバマ政権は、医療用大麻を容認する州法を整備した州では、大麻供給所の摘発を見合わせるとしたガイドラインを発表しましたが(MEMORANDUM FOR SELECTED UNITED STATES ATTORNEYS,October 19,2009)、これまでの混乱を考えると、大学が慎重になるのも理解できます。

さて、11月に予定されているカリフォルニアの住民投票案は、これまでの医療用大麻の枠組みを超えて、少量の大麻の所持や栽培を完全に合法化しようとするもので、連邦法とも、国連条約とも対立する内容を含んでいます。
大麻をめぐる法のねじれに対して、アメリカ人がどう向き合おうとしているのか、今後が気になります。

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